環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート3第4章>第2節 PCB廃棄物に関するこれまでの経緯

第2節 PCB廃棄物に関するこれまでの経緯

1 カネミ油症事件の発生を受けたPCB製造の中止等

 PCBは、絶縁性や不燃性等の特性により、トランス、コンデンサといった電気機器を始め幅広い用途に使用されていましたが、昭和43年にカネミ油症事件による健康被害が発生し、PCBの毒性が社会問題化したことから、我が国では通商産業省(当時)の行政指導に基づき、昭和47年以降はその製造が中止されました。さらに、昭和48年に制定された化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)に基づき、昭和49年6月から、その製造、輸入等が禁止となりました。昭和51年10月からは電気事業法(昭和39年法律第170号)においてもPCBを使用したトランス、コンデンサ等の電気工作物を新規に施設することが禁止されましたが、昭和51年当時に既に設置されていたPCB使用電気工作物については、適切な管理の下で引き続き使用することが認められました。

2 紛失・漏洩(えい)事案の発生並びにPCB特措法の成立及びJESCOによる処理体制の整備

 その当時、我が国にはPCB廃棄物を処理する施設が存在しなかったことから、当面、使用が廃止されたPCB含有機器等のPCB廃棄物はその製品が使用されていた事業場等で保管されることとなりました。そのような中で、既に製造されたPCB廃棄物の処理に向けて、民間主導で全国39か所において焼却処理施設の設置が試みられましたが、いずれも地元の理解が得られず、30年以上にわたり処理が行われないまま保管が長期化しました。こうした中、平成4年及び平成10年に厚生省(当時)がPCB廃棄物の保管状況を調査したところ、2回の調査の合計で約1万1,000台のトランス、コンデンサ等の所在が不明であることが判明しました。また、平成12年には、東京都八王子市等の小学校において、蛍光灯の耐用年数を過ぎたPCB使用安定器が破裂し、PCB絶縁油が漏洩(えい)する事件が発生しました。これを受け、使用中の業務用・施設用蛍光灯等のPCB使用安定器については、原則、平成13年度末までにその交換を終えるなどの緊急の安全対策を各省庁が講じることについて、政府として閣議了解されました。この閣議了解においては、厚生省から都道府県市に周知を行うとともに、環境庁(当時)、厚生省及び通商産業省(当時)がウェブサイト等を活用してPCB使用安定器に関する情報提供を広く行いました。また、通商産業省は、関係業界に対し安全対策等の実施に必要な情報提供等の協力を要請することとされました。

 上記のように、PCB廃棄物保管の長期化により紛失や漏洩(えい)による環境汚染が懸念されたことなどを踏まえ、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進するために、平成13年にPCB特措法が成立し、同法の施行令において、平成28年7月までにPCB廃棄物を処理することが義務付けられました。また、国が中心となってJESCOを活用し、地元の理解と協力の下、全国5か所の処理事業所を整備し、平成16年から化学処理による本格的な処理を開始しました。

3 PCB特措法施行令の改正及び基本計画の変更

 PCB廃棄物を保管する事業者は、毎年保管や処分の状況についての都道府県知事等への届出に加え、施行令で定める期間内の処分が義務付けられています。この期間は、PCB特措法の施行時には平成28年7月までと規定されていました。しかし、同法の施行後に微量のPCBに汚染された電気機器が国内に多く存在することが判明したことや、処理開始後に明らかとなった課題への対応等により当初予定していた期限までの事業の完了が困難な状況になったことを踏まえ、平成24年12月に施行令が改正され、PCB廃棄物の処理期間は平成38年度末日に改められました。また、高濃度PCB廃棄物の計画的処理完了期限については、平成26年6月には基本計画が変更され、平成30年度末~平成35年度末と規定されました。