環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート3第3章>第3節 循環型社会の実現に向けた課題

第3節 循環型社会の実現に向けた課題

 ここまで見てきたとおり、循環基本法及び循環基本計画のいずれも、循環型社会の目標として二つの循環の調和を掲げていますが、その一方で、循環に関する具体的な施策は、主に廃棄物・リサイクル対策に力点が置かれ、経済社会システムにおけるモノの廃棄・再生段階での取組にとどまっており、その他の段階(採掘・生産・流通・消費等)の環境負荷低減に関する施策は必ずしも十分ではありませんでした。また、循環基本計画では、三つの指標(「資源生産性」、「循環利用率」及び「最終処分量」)とその関連指標でもって定量的な評価を行っていますが、これらは資源生産性を除き、特に廃棄物等のリサイクルや最終処分量に着目されているため、廃棄より前の段階の、モノのライフサイクル全体での環境負荷低減への取組を捉えるには、十分な指標とはなっていません。以上が、廃棄物の焼却等、廃棄段階での環境負荷の低減を中心に取組が進められ、環境配慮設計や長期間の利用等の、生産や消費段階での取組が主となるリデュースやリユースが遅れた一因とも考えられます。

 上述のとおり、国内的には資源生産性目標の達成が困難になる一方、国際的には資源効率・循環経済といった新たな視点・取組が進展する中で、従来から循環型社会を提唱し、世界をリードしてきた我が国としては、こうした取組に後れを取ることがないようにしなければなりません。このため、改めて循環型社会の形成を実現する上でのキーワードである「二つの循環の調和」という原点に立ち返り、その達成に向け、環境負荷の低減を通じた自然の循環の健全化の視点で捉え、廃棄段階だけでなく、モノのライフサイクル(採掘・生産、流通、消費、蓄積、廃棄及び再生)全体に改めて着目する必要があります。