環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート3第3章>第4節 今後の取組の方向性

第4節 今後の取組の方向性

 世界全体で資源消費が増大し、資源の逼(ひっ)迫や資源採掘・消費に係る環境影響の増大が懸念される中、多くの資源を海外に頼る我が国としては、経済社会システムの在り方及びライフスタイルの在り方を見直し、海外の動向も踏まえて、施策を強力に進めていく必要が生じています。

 そのため、平成27年11月には、欧州の電気電子機器廃棄物(WEEE)の関係者を我が国に招聘(へい)し、意見交換を行いました。また、平成28年2月には、G7エルマウ・サミット(ドイツ)でのコミュニケを踏まえて、我が国主催で「国際協力」をテーマとした「G7資源効率のためのG7アライアンス・ワークショップ」を開催しました。さらに、我が国は現在、資源のストックや環境効率(環境負荷と財・サービスの付加価値の間の効率性を測るもの)に着目した指標の検討や、自動車リサイクル法における自動車の環境配慮設計の推進、再生資源の活用拡大、製造業等の動脈産業とリサイクル業等の静脈産業の連携・ネットワーク強化、食品ロス削減に向けたライフスタイルの見直し等を図っています。

 一方で、経済社会の今後の動向として、社会における電子化が一層進むことで、紙等の資源を消費しないサービスの提供が盛んになると考えられます。加えて、モノのインターネット(IoT)化やビッグデータの集積等による生産やストックの最適化、モノが他者にリユースされることによる有効的な利活用のほか、使用済みとなったモノが効率的に回収・集積され、組成情報を踏まえた高度なリサイクルと生産過程への適切な供給が図られたりするなど、これまで考えられなかったモノの効率的な利用を実現する可能性があります。

 また、地域社会の変化として、人口減少や過疎化が進展する中、市民生活の根幹となる社会インフラである廃棄物処理施設の老朽化が進んでいます。廃棄物処理施設を地域に根ざした中核的施設として積極的に捉え、中長期的視点に立った施設の効果的かつ効率的な更新を推進することが重要となります。

 さらに、特に資源消費が拡大しているアジアを中心とした途上国や新興経済国において循環型社会の実現に向けた取組を促進することは、世界全体の資源消費の抑制・低減のみならず、SDGs実現や廃棄物処分場からのメタン発生抑制等を通じたパリ協定の実施への貢献という観点からも重要です。こうした国では、資源消費の拡大に伴って廃棄物も多様化・増加している一方で、必要な制度の未整備や技術の不足によって、廃棄物が適切に処理されないことも少なくありません。廃棄物分野において豊富な知見、技術や経験を有している我が国に対する期待も大きく、フィリピンやタイ等、廃棄物分野の二国間協力や自治体間連携が拡大しています。こうした機会を捉え、技術、制度、運営ノウハウをパッケージとして、優れた技術を有する我が国循環産業の海外展開による廃棄物処理施設等のインフラ輸出を促進し、世界全体の持続可能な社会の実現に貢献していくことが重要です。

 このような経済社会システムの革新的変化(イノベーション)や地域社会の変化、国際動向に適切に対応しつつ、既存の様々な環境政策や経済政策、社会政策を循環の観点から再整理し、循環基本計画といった国の基本計画に戦略的に盛り込んで、資源効率を向上させる方向へ我が国及び世界を誘導していくことが必要です。

 こうした施策等を進めていくことで、初めて「自然の循環」と「経済社会システムにおける物質循環」の「二つの循環の調和」が実現した循環型社会を実現・達成すると同時に、地球温暖化対策、生物多様性保全、有害物質対策等、多様な環境上の課題の克服を目標としているSDGsに対応し、ひいては持続可能な開発の実現・達成に寄与することになります。