環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

 京都議定書上の6%削減約束の達成及び温室効果ガスのさらなる長期的・継続的かつ大幅な排出削減に向けて、政府は、平成20年3月に閣議決定した改定京都議定書目標達成計画に基づき、今後、各部門において各主体が、対策及び施策に全力で取り組むことにより、森林吸収量の目標である1,300万炭素トン(4,767万t-CO2、基準年総排出量比3.8%)の確保、京都メカニズムの活用(同比1.6%)と併せて、京都議定書第一約束期間の目標を達成することとしています。

 また、地球温暖化を防止するためには、地球規模での温室効果ガスの更なる長期的・継続的かつ大幅な削減が必要です。そのため、わが国は、1990年比で、2020年までに温室効果ガス排出量を25%削減するとの中期目標を、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として掲げるとともに、2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減を目指すとの長期目標を掲げ、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標をすべての国と共有するよう努めることとしました。

 わが国の地球温暖化対策の基本的な方向性を明らかにするために、地球温暖化対策に関しての基本原則や国、地方公共団体、事業者及び国民の責務、温室効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画、基本的施策等を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を平成22年3月に閣議決定し、国会に提出しました。本法案は同年6月に国会閉会に伴って審議未了により一旦廃案となりましたが、同年10月に再度閣議決定し、国会に提出した後、継続審議となっています。法案の成立後には、基本法に基づき基本計画を定めることになります。

 環境省では、中長期目標を実現するための具体的な対策・施策の一つの絵姿、及びその経済効果等を提示するため、平成22年3月31日に「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」を発表しました。その後、中央環境審議会地球環境部会に設置した「中長期ロードマップ小委員会」において精査を続けており、同年12月には、これまでの検討の内容を取りまとめた「中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿(中長期ロードマップ)(中間整理)」をとりまとめ、中央環境審議会地球環境部会に報告しました。中長期ロードマップ小委員会は、平成23年7月に「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」として改組され、中長期的な低炭素社会構築に向けて、2013 年以降に実施すべき対策・施策に関する事項を検討することとなりました。

 また、平成23年6月には、「新成長戦略実現会議の開催について」(平成22年9月7日閣議決定)に基づき、エネルギーシステムの歪み・脆弱性を是正し、安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中期・長期からなる革新的エネルギー・環境戦略を政府一丸となって策定するため、国家戦略担当大臣を議長とする「エネルギー・環境会議」(以下、「同会議」という)が設置されました。同会議は、平成23年7月に「革新的エネルギー・環境戦略策定に向けた中間的な整理」をとりまとめ、戦略策定にあたっての論点を整理し、基本理念を決定しました。この中間的な整理を受けて、同会議の分科会として「コスト等検証委員会」が設置され、原子力を始めとする各電源のコスト検証が行われ、平成23年12月にその成果である「コスト等検証委員会報告書」が発表されました。

 加えて、同会議が国家戦略会議(平成23年10月設置)の分科会として位置づけられたことに伴い、2013 年以降の地球温暖化対策の国内対策についても、同会議を中心にエネルギー政策と表裏一体で検討されることとされました。そして、平成23年12月に同会議にて決定された「基本方針~エネルギー・環境戦略に関する選択肢の提示に向けて~」では、平成24年春をめどに、戦略の選択肢を提示し、国民的議論を経た後、同年夏をめどにエネルギー・環境戦略を策定することとされました。同会議に提示される原子力政策、エネルギーミックス及び地球温暖化対策の選択肢の原案については、原子力委員会、総合資源エネルギー調査会及び中央環境審議会等の関係会議体にて策定されることとなりました。これを受け、平成24年1月から「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」は、地球温暖化対策の選択肢の原案づくりの検討を開始しました。

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 環境負荷の小さいまちづくりの実現に向け、公共交通機関の利用促進、未利用エネルギーや自然資本の活用等を面的に実施するため、CO2削減シミュレーションを通じた実効的な計画策定を支援しました。

 都市整備事業の推進、民間活動の規制・誘導などの手法を組み合わせ、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路網の整備や高度道路交通システムITS)の推進等の交通流対策等を行いました。

 物流体系に関しては、モーダルシフト関連施策の推進を含め、荷主と物流事業者の連携による環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。

 再生可能エネルギーの導入に関しては、地域の住民等のステークホルダーで構成する協議会が主体となって地域主導による再生可能エネルギーの導入に向けた検討を行う取組や、東日本大震災の被災地において再生可能エネルギーを導入するための調査、調整等を支援しました。その他、わが国初となる2MWの定格出力の浮体式洋上風力発電実証機の設置・運転に先立ち、平成24年度に実海域に設置予定の小規模試験機の設計及び建造や環境調査を実施しました。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業分野等の事業者が行う省エネ効果の高い設備投資に対する補助を行いました。特に、平成23年度は節電効果の高い事業についても重点支援を行いました。

 産業界の中心的な取組である自主行動計画について、政府は、審議会による厳格な評価・検証を実施しました。2010年度実績に基づく2011年度の評価・検証では、各業種における技術革新、省エネ設備や高効率設備の導入、燃料転換、設備の運用改善等が継続されたものの、2008年度から続いた急激な景気後退が回復基調に転じたため、多くの業種で前年度より排出量が増加しました。こうした中で、電気事業者等から京都メカニズムクレジット等の償却が行われたほか、13業種において、目標達成が困難な場合には京都メカニズムクレジット等の活用を検討する旨が表明されるなど、自主行動計画の目標達成の蓋然性向上が図られました。また、2010年度時点で目標水準を達成していない業種については、未達幅を埋め合わせる今後の対策内容(京都メカニズム等の活用を含む)とその効果について定量的に明らかにするよう説明を求めたところ、各業種からは未達幅に対する今後の対策が示されたため、自主行動計画における取組を着実に進めれば目標達成は可能であると判断されました。また、一部の業種からは、2013年度以降における自主的取組に関する報告がなされました。中小企業における排出削減対策の強化のため、中小企業の排出削減設備導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等(いずれの自主行動計画にも参加していない企業として、中堅企業・大企業も含む。)が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する国内クレジット制度、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、これら建設機械の取得時の融資制度を措置し、また世界で初となる建設機械の統一燃費測定手法及び燃費基準値を策定しました。

 農林水産分野においては、バイオマスの利活用や食品産業の自主行動計画の取組を推進しました。また、施設園芸、農業機械における二酸化炭素排出削減対策を推進しました。

(イ)業務その他部門の取組

 業務・家庭といった民生部門におけるエネルギー使用量が増加傾向にあることを踏まえ、住宅・建築物における熱の損失を防止するための建築材料等の性能の向上に関する措置、いわゆるトップランナー制度を新たに導入すべく、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案を第180回国会に提出しました。また、エネルギー需給構造改革推進投資促進税制により、省エネ効果の高い窓、空調、照明等の設備から構成される高効率ビルシステムの普及の推進を行うとともに、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクトに対する支援等を行いました。トップランナー基準については、さらに個別機器の効率向上を図るため、対象を拡大するとともに、すでに対象となっている機器の対象範囲の拡大及び基準の強化を図ります。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施しました。

(ウ)家庭部門の取組

 消費者等が省エネルギー性能のすぐれた住宅を選択することを可能とするため、住宅等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)や住宅性能表示制度の充実・普及、「住宅事業建築主の判断の基準」に適合していることを表示する住宅省エネラベルの情報提供を実施しました。また、平成22年6月から「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」を開催し、住宅・建築物における取組について、住まいのあり方や住まい方を中心に、低炭素社会に向けた広範な取組と具体的施策の立案の方向性等の検討を進め、中間とりまとめ(案)の提示を行いました。また、高い省エネ性能を持つ家電(エアコン、冷蔵庫、地デジ対応テレビ)の購入や、断熱性に優れた住宅の新築・リフォーム等に対し、様々な商品等と交換できるポイントを発行する事業を実施しました。

 加えて、平成22年6月に閣議決定した「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」に位置付けられた「環境コンシェルジュ制度」の創設に向けて、各家庭のCO2排出実態に合った、きめ細やかなアドバイスを行う家庭エコ診断の推進のための基盤整備を行っています。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行うとともに、環状道路等幹線道路網の整備等の推進により、交通流対策を実施しました。特に、乗用自動車燃費基準については、省エネ法のトップランナー制度に基づき、平成23年10月に目標年度を2020年度とする新たな燃費基準(2009年度実績からの燃費改善率24.1%)の最終取りまとめが行われました。また、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、モーダルシフトに要する経費の一部を補助する「モーダルシフト等推進事業」や国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備等を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による取組に対する支援を行いました。

 海上輸送については、海洋環境イニシアティブとして、国際海事機関IMO)において船舶の燃費規制に係る条約改正(2011年7月採択、2013年1月発効)を主導するとともに、規制に対応する、船舶の革新的な省エネ技術22件の開発を支援しました。また、スーパーエコシップの普及促進等に取り組みました。また、航空分野においては、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や環境にやさしい空港(エコエアポート)等を推進しました。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 原子力等のほかのエネルギー源とのバランスやエネルギーセキュリティを踏まえつつ、天然ガスへの転換等その導入及び利用拡大を推進します。太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、ガスコージェネレーションや燃料電池など、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、廃棄物の最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化を推進しました。

 また、農地からの一酸化二窒素等の排出量の削減に向け、有機質資材の施用に伴う一酸化二窒素発生量の調査等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 代替フロン等3ガス(HFCPFCSF6)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象とされています。その排出抑制については、産業用途で削減が進んだこと等から大幅に目標を強化し、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画においては基準年総排出量比1.6%減の目標を設定しました。

 この目標に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、平成19年10月から施行された特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)の一部改正法に基づくフロン類回収の一層の徹底のため、引き続きフロン回収・破壊法の周知を行うとともに、都道府県における施行強化、「見える化」の一環としてのフロン量の二酸化炭素換算表示の導入を推進しました。また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 また、先導的な排出抑制の取組に対する補助の強化、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。

 さらに、フロン類の更なる排出抑制に向けた対策強化のあり方について、平成23年2月、産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会より、使用時の冷媒排出の抑制や物質代替の促進等の方向性を含む中間論点整理を、同年3月、中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会より、ノンフロン製品等の開発・普及や使用時排出対策の推進、回収・破壊制度の充実・強化、経済的手法の活用にかかる検討等を内容とする中間整理を公表しました。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量1,300万炭素トン(基準年度総排出量比約3.8%)の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進等の総合的な取組を内容とする森林吸収源対策を展開しました。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。

2 横断的施策

(1)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度により、全国の10,106事業者(11,385事業所)及び1,382の輸送事業者から報告された平成21年度の排出量を集計し、平成24年3月30日に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は二酸化炭素換算で6億435万トンで、わが国の平成21年度排出量の約5割に相当します。

(2)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、事業者が、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされており、こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した排出抑制等指針を、廃棄物処理部門において、新たに策定しました。

(3)国民運動の展開

  地球温暖化防止のために政府が推進する国民運動「チャレンジ25キャンペーン」を引き続き展開しました。「チャレンジ25キャンペーン」では、オフィスや家庭などにおいて実践できるCO2削減に向けた具体的な行動を「6つのチャレンジ」として提案し、その行動の実践を広く呼びかけており、趣旨に賛同していただいたすべての個人、企業・団体に対し、「チャレンジ25キャンペーン」への参加・登録を呼びかけました。

 キャンペーンの一環として、東日本大震災を受けた電力需給のひっ迫を踏まえ、家庭及びオフィスにおける節電の具体的なポイントをホームページ等で呼びかけました。

 また、以下の取組を中心に各主体の協力を得て様々な呼びかけを行いました。

 「COOLBIZ(クールビズ)」「SUPER COOLBIZ(スーパークールビズ)」:夏期の冷房時の室温を28℃にしても快適に過ごせるビジネススタイル「クールビズ」の期間を5月~10月に延長するとともに、6月からは「スーパークールビズ」として、さらなる軽装の強化、ワークスタイルの変革の呼びかけを強化しました。

 「ライトダウンキャンペーン」:全国のライトアップ施設や家庭の照明を消す呼びかけを継続して実施しました。平成23年度は夏至、七夕を特別実施日としたほか、6月22日から8月末までの間、夜間だけでなく、昼間についても、広くライトダウンを呼びかけました。

 「WARMBIZ(ウォームビズ)」:冬期の暖房時の室温を20℃にしても快適に過ごせるビジネススタイル「ウォームビズ」について、「一人ひとりが、やさしい冬をつくります」をテーマに、 "あったか忍者「あった丸」"をキャラクターとして、「衣食住」のあらゆる場面での工夫を提案し、暖房に頼りすぎずに快適に暖かく過ごす取組を広く呼びかけました。

  「smart move(スマート・ムーブ)」:"「移動」を「エコ」に。"をテーマに、よりCO2排出量の少ない「移動」にチャレンジする「smart move(スマート・ムーブ)~地球にやさしい移動にチャレンジ!」を提案し、エコなだけでなく、便利で快適に、しかも健康にもつながるライフスタイルを呼びかけました。

  「朝チャレ!(朝型生活にチャレンジ)」:朝から活動して夜には早く休み、夜遅くまで使用していたエアコン、テレビ、照明などの使用時間を減らすとともに、1日を有意義に健康的に過ごし、自分にも地球にとってもプラスの習慣を「朝チャレ!」と名付け、呼びかけを行いました。

(4)「見える化」の推進

  温室効果ガス排出量の「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルにいたるまでのライフサイクル全体を通しての温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品・サービスに簡易な方法で分かりやすく表示する「カーボンフットプリント制度」の構築・普及等の取組を進め、平成23年3月末現在でPCR(商品種別算定基準)の数は73、認定商品数は469となっています。また、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄などサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の見える化を促進するため、国際的な動向も踏まえつつ、当該排出量の算定方法に関するガイドラインを作成しました。さらに、前述した家庭エコ診断等において、各家庭における温室効果ガスの削減効果の把握を行いながら、家庭における「見える化」の促進を行いました。

(5)公的機関の率先的取組

 政府における取組として、地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」が旧実行計画を引き継ぐ形で平成19年3月に閣議決定されています。この新しい計画は、19年度から平成24年度までの期間を対象とし、平成22年度~平成24年度の平均の温室効果ガス排出量を、平成13年度比で8%削減することを目標としています。

 なお、平成21年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は169万トン(平成13年度値の15.0%減)でした。

 都道府県、指定都市、中核市及び特例市(指定都市等)については、平成20年の地球温暖化対策推進法の改正により、地方公共団体実行計画において、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画を定めるものとされています。計画策定を推進するため、政府においては、土地利用・交通、地区・街区に関する都市・地域の低炭素化手法の検討を行いました。また、指定都市等以外の市町村においても計画策定を促進するため、策定手法の説明会や、自治体からの事例紹介を交えた意見交換会を開催しました。また、地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに、関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。

(6)税制のグリーン化

 「地球温暖化対策のための税」の導入をはじめ、燃費の良い自動車への転換を促す税制等も地球温暖化対策のための重要な施策です。

 税制のグリーン化の詳細については、第6章第8節を参照してください。

(7)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度から、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、現在まで389社の企業が参加しています。

 2008年10月からは、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」を開始しました。2010年度の目標を設定した152者のうち139者については、自らの排出削減に加えて排出枠の取引等も活用し、目標を達成しましたが、13者は目標未達成となりました。また、国内クレジット制度については、制度開始以降、2012年3月時点で、全国各地から提出された事業計画のうち1,037件が承認され、2012年度末までに累計約154万トンCO2の排出削減が見込まれています。

 2010年3月には、国内排出量取引制度の創設を盛り込んだ「地球温暖化対策基本法案」を通常国会に提出しましたが、審議未了で廃案となったため、同年10月に臨時国会に提出し、2012年の通常国会において継続審議とされています。

 この間、環境省では、2010年4月に中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会を設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度のあり方について専門的な検討や論点整理を行い、同年12月に制度のあり方について中間整理を取りまとめました。

 また、経済産業省では、2010年6月に産業構造審議会環境部会地球環境小委員会政策手法ワーキンググループを設置し、関係業界・団体からのヒアリング等の結果も踏まえつつ、国内排出量取引制度を含む温暖化対策に関する各政策手法について検討し、同年9月に議論の中間整理を取りまとめました。

 2010年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度については、わが国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

 環境省では、閣僚委員会の方針で示された産業界に対する負担や雇用への影響等の課題について整理した「国内排出量取引制度の課題整理報告書」を公表しました。(今回の調査分析結果は、検討会における取りまとめ結果です。関係省庁を含めた政府全体としての見解を示すものではなく、排出量取引制度の導入に関する議論、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)に基づく調達価格等算定委員会における議論の方向性について何ら予断を与えるものではありません。)

(8)カーボン・オフセット

 適切なカーボン・オフセット(以下「オフセット」という。)の普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成20年2月)に基づき、下記の取組を行いました。

 さらに、上記のような取組について国と地方公共団体との情報・意見交換を行うためのネットワークとして、平成20年6月に設立された日本カーボンアクション・プラットフォーム(JCAP)を運営しています。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定手法の改善等

 国連気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化対策の研究開発・実用化は、その普及を通じて環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組であり、第4期科学技術基本計画の下、関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的な推進を図りました。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を強化しました。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、森林や農地土壌などの吸収機能向上技術の開発を推進しました。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進しました。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進しました。

  農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した生産安定技術の開発を推進しました。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。また、環境研究総合推進費では、平成22年度から、戦略プロジェクトである「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」を実施しています。

 2009年(平成21年)4月に開催されたG8環境大臣会合では、各国の低炭素社会にかかわる研究機関による「低炭素社会国際研究ネットワーク」(LCS-RNet)の発足が了承され、2011年10月には、フランスにおいて第3回年次会合が開催されました。現在、日本を含む7か国から16研究機関が参加しています。

 また、わが国における地球温暖化の観測・予測及び影響評価に関する知見を取りまとめた統合レポート「日本の気候変動とその影響」を作成し、2009年10月に公表し、2010年11月には、地方公共団体等の適応策実施を支援することを目的として「気候変動適応の方向性」をとりまとめ、公表しました。

 さらに、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を平成21年1月に打ち上げ、10月からは一般へのデータ提供を開始しました。

4 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、日本では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やオゾン層破壊物質の回収・破壊に関する日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 日本では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。臭化メチルについては、「臭化メチルの不可欠用途を全廃するための国家管理戦略」を改正し、適切な代替手段がないために現在も使用している用途のさらなる削減を図っています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図1-3-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。

(3)フロン類の回収・破壊の促進

 主要なオゾン層破壊物質の生産は、日本ではすでに全廃されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFC京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン回収・破壊法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。平成22年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-1図1-3-2のとおりです。


表1-3-1 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成22年度)


図1-3-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成22年度)

 平成19年10月に施行された改正フロン回収・破壊法には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が新たに規定され、これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知等、フロン類回収の一層の徹底を図っています。