第2節 環境影響評価等

1 戦略的環境アセスメントの導入

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法(平成5年法律第91号)第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定しています。

 平成21年度においては、環境影響評価法の施行から10年が経過したこと等を踏まえて中央環境審議会において審議がなされ、戦略的環境アセスメント手続の新設について積極的に措置すべき等とする「今後の環境影響評価制度の在り方について(中央環境審議会答申)」(平成22年2月)が取りまとめられました。本答申を踏まえ、事業の早期段階における環境配慮を図るための計画段階配慮書の手続の新設等を盛り込んだ「環境影響評価法の一部を改正する法律案」が平成22年3月に閣議決定され、国会に提出されました。

 そのほか、戦略的環境アセスメントの取組を推進するため、「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン(SEAガイドライン)」、「最終処分場における戦略的環境アセスメント導入ガイドライン(案)」に関し地方公共団体等に対して情報提供を行いました。

 また、特に道路、河川、空港、港湾等の公共事業については、関連する先行的な取組等を基に、戦略的環境アセスメントを含むものとして、「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」を踏まえた具体的な事例に取り組みました。さらに、より上位の計画や政策の決定に当たっての戦略的環境アセスメントに関する検討を進めました。

2 環境影響評価の実施

(1)環境影響評価法に基づく環境影響評価

 環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています(図6-2-1)。同法に基づき、平成22年3月末までに計179件の事業について手続が実施されており、そのうち、21年度においては、新たに2件の手続が開始され、また、6件の手続が完了し環境配慮の徹底が図られました(表6-2-1)。


図6-2-1 環境影響評価法の手続の流れ


表6-2-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

(2)環境影響評価の適切な運用への取組

 環境影響評価法の施行から10年が経過したことを踏まえ、中央環境審議会において「今後の環境影響評価制度の在り方について(中央環境審議会答申)」(平成22年2月)が取りまとめられ、本答申を踏まえた「環境影響評価法の一部を改正する法律案」が平成22年3月に閣議決定され、国会に提出されました。法律案には、環境影響評価図書の電子縦覧を行う規定や環境保全のために講じた措置等の結果について公表等を行う規定が盛り込まれています。また、環境影響評価に係る技術手法の向上、改善のための検討を行うとともに、平成18年に改正された事業の種類ごとの主務省令について確実な運用の実施に努めました。

 さらに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、これらの情報等を集積し、インターネット等を活用した国民や地方公共団体等への情報支援体制の整備を進めました。

(3)地方公共団体における取組

 平成21年度末現在、ほぼすべての都道府県及び政令指定都市において環境影響評価条例が公布・施行され、さらに知事意見を述べる際の審査会等第三者機関への諮問や事業者への事後調査の義務付けを導入しています。

 対象事業については環境影響評価法対象の規模要件を下回るものに加え、廃棄物処理施設やスポーツ・レクリエーション施設、畜産施設、土石の採取、複合事業なども対象としており、さらに環境基本法に規定されている「環境」よりも広い範囲の「環境」の保全を目的とし、埋蔵文化財、地域コミュニティの維持、安全などについても評価対象にするなど、地域の独自性が発揮されています。

(4)個別法等に基づく環境保全上の配慮

 港湾法(昭和25年法律第218号)、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)、総合保養地域整備法(昭和62年法律第71号)等に基づいて行われる事業の認可、計画等の策定等に際し、環境保全の見地から検討を行いました。



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