第2章 地球環境、大気環境、水環境、土壌環境、地盤環境の保全

第1節 地球環境、大気環境、水環境、土壌環境、地盤環境の現状

1 地球環境の現状

(1)オゾン層の破壊

 CFC、HCFC、ハロン臭化メチル等の物質によりオゾン層が破壊されており、その結果、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害の発生や、植物やプランクトンの生育の阻害等を引き起こすことが懸念されています。これらのオゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化も促進しています。

 オゾン層破壊物質は1989年(平成元年)以降、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)に基づき規制が行われています。その結果、代表的なオゾン層破壊物質であるCFC-12の大気(対流圏)中濃度は、北半球中緯度において1990年代後半以降ほぼ横ばいになっており、成層圏におけるオゾン層破壊物質の総濃度は減少傾向にあります。

 しかしながら、大気中のオゾンは、1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少した後、現在も減少した状態が続いています。

 また、2007年(平成19年)の南極域上空のオゾンホールは、この10年間(1998年以降)では2002年、2004年に次いで小規模でしたが、(図2-1-1)現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。モントリオール議定書科学アセスメントパネルの2006年(平成18年)の報告によると、オゾンホールは今後数十年間発生し続けると考えられ、南極地域のオゾンが1980年(昭和55年)以前の値に戻るのは今世紀中頃と予測されています。


図2-1-1 南極上空のオゾンホールの面積の推移

 なお、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。


(2)酸性雨・黄砂

 ア 酸性雨

 酸性雨により、湖沼や河川の酸性化による魚類等への影響、土壌の酸性化による森林への影響、建造物や文化財への影響等が懸念されています。酸性雨は、原因物質の発生源から数千kmも離れた地域にも影響を及ぼす性質があり、国境を越えた広域的な現象です。

 日本では、昭和58年度から酸性雨のモニタリングやその影響に関する調査研究を実施しており、平成21年に取りまとめられた最近5年間(平成15年度〜平成19年度)のモニタリング結果の概要は、次のとおりです。

 [1] 依然として、全国的に酸性雨が観測されている(全平均値pH4.68)。

 [2] 日本海側や西日本では大陸に由来した大気汚染物質の流入が示唆され、全国的にオゾンの越境汚染や黄砂飛来の影響が示唆された。

 [3] 生態系への影響については、酸性雨による衰退木等の生態被害や湖沼の酸性化は確認されなかった。

 [4] 周辺土壌等の酸性化が認められる岐阜県伊自良湖(いじらこ)集水域では、過去に大気由来で土壌に蓄積したと考えられる硫黄が渓流に流出するとともに、現在も多量の窒素沈着により土壌や渓流の酸性化が継続していると考えられた。ただし、現時点で、直ちに人の健康及び生態系に何らかの影響を及ぼす状況にはない。

 このように、日本における酸性雨による被害は現時点では明らかになっていませんが、一般に酸性雨による影響は長い期間を経て現れると考えられているため、現在のような酸性雨が今後も降り続けば、将来、酸性雨による影響が顕在化するおそれがあります。


図2-1-2 降水中のpH分布図

 イ 黄砂

 近年、中国、モンゴルからの黄砂の飛来が大規模化しており、中国、韓国、日本等でその対策が共通の関心事となっています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象には、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。


(3)海洋環境

 日本周辺の海洋環境の経年的変化を捉え、総合的な評価を行うため、水質、底質等の海洋環境モニタリング調査を実施しています。平成19年度は、平成16年度に調査を行った日本海西部海域の補完調査を実施した結果、堆積物中から有機スズや臭素系難燃剤(有機スズ汚染源特定の指標物質)が一般の沖合海域の調査結果と比較して高い濃度で検出されましたが、簡易リスク評価の結果、人の健康に影響を及ぼすおそれはないと判断しています。今後も引き続き定期的な監視を行い、汚染の状況に大きな変化がないか把握していくこととします。

 なお、海洋環境モニタリング調査結果のデータについては、(独)国立環境研究所が整備した「環境GIS」で公表しています。(http://www-gis4.nies.go.jp/kaiyo/

 また、平成20年の日本周辺海域における廃油ボールの漂流・漂着に関する調査の結果、漂流調査ではほとんど採取されず、漂着調査では平均採取量は前年に比べ若干増加しました。日本周辺海域を除いた北西太平洋海域においては、昭和57年以降低いレベルで推移しており、平成20年はほとんど採取されませんでした。同年の海上漂流物の調査の結果、プラスチック等の海面漂流物は、夏期の日本周辺海域に多く分布しています。

 最近5か年の日本周辺海域における海洋汚染(油、廃棄物、赤潮等)の発生確認件数の推移は図2-1-3のとおりです。平成20年は555件と19年に比べ78件増加しました。平成20年の海洋汚染のうち油による汚染についてみると、船舶からのものが265件と約7割を占めており、そのほとんどが取扱不注意によるものでした。油以外の汚染についてみると、陸上からのものが118件と約8割を占めており、そのほとんどが故意による廃棄物の排出でした。


図2-1-3 海洋汚染の発生確認件数の推移

 近年、外国由来のものを含む漂流・漂着ゴミによる、海岸機能の低下や生態系を含めた環境・景観の悪化、船舶の安全航行の確保や漁業への被害などの深刻化が指摘されています。


(4)森林

 世界の森林は、陸地の約30%を占め、面積は約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて、年平均1,290万haの割合で減少しました(増加分を差し引いて年730万haの純減:日本の国土面積の約5分の1)。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及びアジア地域のうち東南アジアで森林の減少が続いています(図2-1-4)。このような森林減少・劣化は、地球温暖化や生物多様性の損失に深刻な影響を与えています。


図2-1-4 世界の森林面積の年当たりの変化率(2000〜2005年)

 森林減少の原因として、プランテーション開発等農地への転用、非伝統的な焼畑農業の増加、燃料用木材の過剰採取、森林火災等が挙げられます。また、違法伐採など不適切な森林伐採が森林を劣化させ、森林減少の原因を誘発していることも大きな問題となっています。


(5)砂漠化

 砂漠化とは、国連砂漠化対処条約において、「乾燥地域における土地の劣化」と定義されています。乾燥地域は地表面積の約41%を占めており、その10〜20%は既に劣化(砂漠化)しているおり、乾燥地域に住む1〜6%の人々(約2千万〜1億2千万人超)が砂漠化された地域に住んでいると推定されています。砂漠化の原因として、干ばつ・乾燥化等の気候的要因のほか、過放牧、過度の耕作、過度の薪炭材採取による森林減少、不適切な灌漑による農地への塩分集積等が挙げられます。その背景には、開発途上国における人口増加、貧困、市場経済の進展等の社会的・経済的要因が関係しています。


(6)南極地域の環境

 南極地域は、地球上で最も人類の活動による破壊や汚染の影響を受けていない地域であり、地球環境研究の場等としてかけがえのない価値を有しています。近年は基地活動や観光利用の増加による環境影響の増大も懸念されています。

2 大気環境の現状

(1)光化学オキシダント

 ア 環境基準の達成状況

 平成19年度の光化学オキシダントの測定局数は、1,173局(一般環境大気測定局(以下「一般局」という。):1,143局、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。):30局)でした。

 環境基準(1時間値が0.06ppm以下であること)の達成状況は、極めて低く、全測定局で0.2%であり、依然として極めて低い水準となっています(図2-1-5)。一方、濃度別の測定時間の割合でみると、1時間値が0.06ppm以下の割合は全測定局で92.1%でした(図2-1-6)。


図2-1-5 光化学オキシダント濃度レベル毎の測定局数の推移(一般局と自排局の合計)(平成15年度〜19年度)


図2-1-6 光化学オキシダント濃度レベル別測定時間割合の推移(平成15年度〜19年度)

 イ 光化学オキシダント注意報等の発令状況等

 平成20年の光化学オキシダント注意報の発令延日数(都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したもの)は144日(25都府県)で、19年の220日(28都府県)と比べて減少しました(図2-1-7)。近年は発令地域が広域化する傾向にあり、平成20年は長野県と佐賀県で観測史上初めて各1日の発令がありました。都道府県別に注意報の発令延日数をみると、東京都が19日と最も多く、次いで埼玉県が18日、千葉県が12日となっています(図2-1-8)。月別にみると、7月が最も多く56日、次いで8月が34日でした。また、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数(自覚症状による自主的な届出による。)は10都県で合計400人であり、平成19年(14県、1,910人)と比べて減少しました。


図2-1-7 注意報等発令延べ日数、被害届出人数の推移(平成9年〜20年)


図2-1-8 平成20年の各都道府県の注意報等発令延べ日数

 ウ 非メタン炭化水素の測定結果

 平成19年度の非メタン炭化水素の測定局数は、一般局が319局、自排局が186局でした。午前6〜9時の3時間平均値の年平均値は、一般局0.19ppmC、自排局0.25ppmCで、近年では一般局、自排局とも改善傾向がみられます(図2-1-9)。


図2-1-9 非メタン炭化水素の午前6〜9時における年平均値の経年変化推移(昭和51年度〜平成19年度)


(2)窒素酸化物

 平成19年度の二酸化窒素に係る有効測定局(年間測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。以下同じ。)数は、一般局が1,379局、自排局が431局でした。環境基準達成率は、一般局100%、自排局94.4%であり、一般局では近年ほとんど全ての測定局で環境基準を達成し、自排局では平成18年度と比べてやや改善しました(図2-1-11)。


図2-1-11 二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(平成15年度〜19年度)

 また、年平均値は、一般局0.013ppm、自排局0.025ppmであり、一般局ではほぼ横ばいであり、自排局ではゆるやかな改善傾向がみられます(図2-1-10)。


図2-1-10 二酸化窒素濃度の年平均の推移(昭和45年度〜平成19年度)

 また、平成19年度に環境基準が達成されなかった測定局の分布をみると、自排局は自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号。以下「自動車NOx・PM法」という。)の対策地域のうち埼玉県を除く都府県(千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府及び兵庫県)に、岡山県、福岡県、を加えた9都府県に分布しています(図2-1-12)。


図2-1-12 平成19年度二酸化窒素の環境基準達成状況

 自動車NOx・PM法に基づく対策地域全体における環境基準達成局の割合は、平成19年度は90.6%(自排局)と平成18年度と比較して6.9ポイント改善しました(図2-1-13)。また、年平均値は近年ほぼ横ばいながら緩やかな改善傾向が見られます(図2-1-14)。


図2-1-13 対策地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(自排局)(平成10年度〜19年度)


図2-1-14 対策地域における二酸化窒素濃度の年平均値の推移(平成10年度〜19年度)


(3)浮遊粒子状物質

 平成19年度の浮遊粒子状物質に係る有効測定局数は、一般局が1,447局、自排局が412局でした。環境基準達成率は、一般局89.5%、自排局88.6%であり、平成18年度と比べて一般局、自排局ともやや低下しており、環境基準を達成していない測定局は全国24府県に分布しています(図2-1-15、図2-1-16)


図2-1-15 浮遊粒子状物質濃度の年平均値の推移(昭和49年度〜平成19年度)


図2-1-16 浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(平成15年度〜19年度)

 また、年平均値は、一般局0.024mg/m3、自排局0.027mg/m3で近年ゆるやかな改善傾向がみられます。


(4)二酸化硫黄

 平成19年度の二酸化硫黄に係る有効測定局数は、一般局が1,234局、自排局が82局でした。環境基準達成率は、一般局99.8%、自排局100%であり、近年ほとんど全ての測定局で環境基準を達成しています。

 年平均値は、一般局0.003ppm、自排局0.003ppmで、近年は、一般局、自排局とも横ばい傾向にあります(図2-1-17)。


図2-1-17 二酸化硫黄濃度の年平均値の推移(昭和45年度〜平成19年度)


(5)一酸化炭素

 平成19年度の一酸化炭素に係る有効測定局数は、一般局が78局、自排局が291局でした。環境基準達成率は、近年は一般局、自排局とも100%であり、全ての測定局において環境基準を達成しています。

 年平均値は一般局0.4ppm、自排局0.5ppmで、近年は一般局でほぼ横ばいであり、自排局ではゆるやかな改善傾向が見られます(図2-1-18)。


図2-1-18 一酸化炭素濃度の年平均値の推移(昭和45年度〜平成19年度)


(6)有害大気汚染物質

 平成19年度の有害大気汚染物質のモニタリング結果によると、環境基準の設定されている物質に係る測定結果は表2-1-1のとおりでした(ダイオキシン類に係る測定結果については第4章参照)。


表2-1-1 有害大気汚染物質のうち環境基準の設定されている物質の調査結果(平成19年度)

 また、指針値(環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値)が設定されている物質のうち、ニッケル化合物は2地点(317地点中)、1,2-ジクロロエタンは2地点(371地点中)で指針値を超過しており、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、クロロホルム、1,3-ブタジエンは、すべての地点で指針値を下回っていました。


(7)石綿

 石綿による大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供していくため、建築物の解体工事等の作業現場周辺等で、大気中の石綿濃度の測定を実施しました(平成19年度の対象地点は全国51地域145地点)。19年度の調査結果ではいずれの地域分類においても特に高い濃度は見られず、18年度と同様に問題になるレベルではないと思われます。


(8)騒音・振動

 騒音に係る環境基準は、地域の類型及び時間の区分ごとに設定されており、類型指定は、平成19年度末現在、47都道府県の750市、472町、44村、23特別区において行われています。また環境基準達成状況の評価は、「個別の住居等が影響を受ける騒音レベルによることを基本」とされ、一般地域(地点)と道路に面する地域(住居等)別に行うこととされています。

 また、航空機・鉄道の騒音・振動については、その特性に応じて、別途環境基準又は指針が設定されています。航空機騒音・新幹線鉄道騒音に係る環境基準については、地域の類型ごとに設定されており、平成19年度末現在で、航空機騒音については34都道府県、64飛行場周辺において、新幹線鉄道騒音については25都府県において類型の指定が行われています。

 騒音苦情の件数はここ数年増加しており、平成19年度は16,434件でした(図2-1-19)。発生源別に見ると、工場・事業場に係る騒音苦情の割合が33.0%を占め、次いで建設作業騒音に係る苦情の割合が31.4%を占めています。


図2-1-19 騒音・振動・悪臭に係る苦情件数の推移(昭和49年度〜平成19年度)

 平成19年度には全国の地方公共団体で、人の耳には聞き取りにくい低周波の音がガラス窓や戸、障子等を振動させたり、気分のイライラ、頭痛、めまいを引き起こすといった苦情が181件受け付けられました。

 また、振動の苦情件数は、平成19年度は3,384件でした。発生源別に見ると、建設作業振動に対する苦情件数が61.8%を占め、次いで工場・事業場振動に係るものが22.2%を占めています。

 平成19年度の一般地域における騒音の環境基準の達成状況は、全測定地点で80.9%、地域の騒音状況を代表する地点で81.8%、騒音に係る問題を生じやすい地点等で75.0%となっています。

 平成19年度の道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況は、自動車騒音常時監視の結果によると、全国3,861千戸の住居等を対象に行った評価では、昼間又は夜間で環境基準を超過したのは464千戸(12%)でした(図2-1-20)。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある1,610千戸のうち昼間又は夜間で環境基準を超過した住居等は311千戸(19%)でした。この状況は、「環境GIS全国自動車交通騒音マップ」として、インターネット上で一般に公開しています(http://www-gis.nies.go.jp/noise/car/)。


図2-1-20 平成19年度 道路に面する地域における環境基準の達成状況

 航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、長期的に改善の傾向にあり、平成19年度においては測定地点の約74%の地点で達成しました(図2-1-21)。


図2-1-21 航空機騒音に係る環境基準の達成状況(平成15年度〜19年度)

 新幹線鉄道騒音については、東海道、山陽、東北及び上越新幹線沿線において、主に住居地域を中心におおむね75デシベル以下が達成されていますが、一部で達成していない地域が残されており、引き続き音源対策を計画的に推進しました。また、新幹線鉄道振動については、振動対策指針値はおおむね達成されています。


(9)悪臭

 悪臭苦情の件数は昭和47年度をピークにおおむね減少傾向にありましたが平成5年度を底として以後は増加傾向にありました。19年度の悪臭苦情件数は17,533件となり4年連続で減少しました(図2-1-19)。発生源別に見ると、野外焼却に係る苦情が最も多く、全体の26.3%を占めました。前年度と比較すると、野外焼却、畜産農業等に対する苦情が減少しています。


(10)その他の大気に係る生活環境の現状

 ア ヒートアイランド現象

 都市部の気温が郊外に比べて高くなるヒートアイランド現象が大都市を中心に生じており、夏季には、30℃を超える時間数が増加しています(図2-1-22)。また、冷房等による排熱が気温上昇を招き、更なる冷房による排熱が生ずるという悪循環の発生等さまざまな環境影響を及ぼしています。


図2-1-22 関東地方における30℃を超えた延べ時間数の広がり(5年間の年間平均時間数)

 イ 光害(ひかりがい)

 不適切な夜間照明の使用から生じる光は、人間の諸活動や動植物の生息・生育に悪影響を及ぼすことがあります。また、過度の屋外照明はエネルギーの浪費であり、地球温暖化の原因にもなります。

3 水環境の現状

(1)公共用水域の水質汚濁

 ア 健康項目

 水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、平成19年度の公共用水域における環境基準達成率が99.1%(18年度99.3%)と、前年度と同様、ほとんどの地点で環境基準を満たしていました(表2-1-2)。(環境基準の設定状況等については第4節4を参照。)


表2-1-2 健康項目の環境基準達成状況(平成19年度)

 イ 生活環境項目

 生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標である生物化学的酸素要求量(BOD)又は化学的酸素要求量(COD)の環境基準の達成率は、平成19年度は85.8%(18年度86.3%)となっています。水域別では、河川90.0%(同91.2%)、湖沼50.3%(同55.6%)、海域78.7%(同74.5%)となり、河川では1.2%減少したものの上昇傾向にあります。湖沼では依然として達成率が低くなっています(図2-1-23、表2-1-3)。


図2-1-23 環境基準達成率(BOD又はCOD)の推移


表2-1-3 環境基準の達成状況(BOD又はCOD)

 閉鎖性海域の海域別のCODの環境基準達成率は、東京湾は63.2%、伊勢湾は56.3%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は78.0%となっています(図2-1-24)。


図2-1-24 三海域の環境基準達成率の推移(COD)

 一方、全窒素及び全燐の環境基準の達成率は、平成19年度は湖沼46.4%(同45.9%)、海域82.2%(80.3%)となり、湖沼では依然として低い水準で推移しています。閉鎖性海域の海域別の全窒素及び全燐の環境基準達成率は、東京湾は66.7%、伊勢湾は57.1%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は96.5%となっています(図2-1-24)。

 また、18年の赤潮の発生状況は、瀬戸内海94件、有明海29件となっており、東京湾及び三河湾では青潮の発生も見られました。湖沼についてもアオコや淡水赤潮の発生が見られました。


(2)地下水質の汚濁

 平成19年度の地下水質の概況調査の結果では、調査対象井戸(4,631本)の7.0%(325本)において環境基準を超過する項目が見られ、汚染井戸の監視等を行う定期モニタリング調査の結果では、4,854本の調査井戸のうち1,999本において環境基準を超過していました(表2-1-4、図2-1-25、図2-1-26)。施肥、家畜排せつ物、生活排水等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が、4.1%と最も高くなっており、これらに係る対策が緊急の課題となっています。一方、汚染源が主に事業場であるトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物についても、依然として新たな汚染が発見されています。


表2-1-4 平成19年度地下水質測定結果


図2-1-25 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過率(概況調査)の推移


図2-1-26 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過本数(定期モニタリング調査)の推移


(3)水質汚濁による被害状況

 水道水源(約7割は河川等の表流水、約3割は地下水)の水質汚染事故により影響を受けた水道事業者等の数は平成19年度は86(平成18年度は89)でした。また、近年、湖沼等の富栄養化などによる藻類の異常な増殖等により、水道水の異臭味が問題となっており、19年度には、82の水道事業者等(被害人口の合計約170万人)(平成18年度は、74の水道事業者等(被害人口の合計約266万人))において異臭味による被害が生じました。

 なお、水銀等による魚介類の汚染に関しては、汚染が確認された水銀に係る2水域において、引き続き漁獲の自主規制等が行われました。

 地方公共団体が実施した平成20年度の海水浴場等の水質調査によれば、調査対象とした841水浴場すべてが水浴場として最低限満たすべき水質を維持しており、このうち、水質が良好な水浴場は、702水浴場(全体の83%)でした。

4 土壌環境の現状

 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)に定める特定有害物質による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、平成19年度は5地域45.48haにおいて調査が実施されました。これまで基準値以上検出面積の累計は134地域7,487haとなっています。

 市街地等の土壌汚染については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づく調査や対策が進められているとともに、工場跡地などの再開発・売却の際や環境管理等の一環として自主的な汚染調査を行う事業者の増加、地方公共団体における地下水の常時監視の体制整備や土壌汚染対策に係る条例の整備等に伴い、近年、土壌汚染事例の判明件数が増加しています。都道府県や土壌汚染対策法の政令市が把握している調査の結果では、平成19年度に土壌の汚染に係る環境基準又は土壌汚染対策法の指定基準を超える汚染が判明した事例は732件となっています(図2-1-27)。事例を有害物質の項目別でみると、鉛、ふっ素、砒素などが多くみられます。


図2-1-27 年度別の土壌汚染判明事例件数

5 地盤環境の現状

 地盤沈下は、工業用、水道用、農業用等のための地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、主として、粘土層が収縮するために生じます。代表的な地域における地盤沈下の経年変化は、図2-1-28に示すとおりであり、平成19年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は37都道府県60地域となっています。


図2-1-28 代表的地域の地盤沈下の経年変化

 平成19年度において年間4cm以上沈下した地域は0地域でした。年間2cm以上沈下した地域は9地域で、沈下した面積(沈下面積が1km2以上の地域の面積の合計)は72km2でした(図2-1-29)。


図2-1-29 全国の地盤沈下地域の面積(年度別推移)

 かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止しています。しかし、地下水を消雪用に使用する積雪地や天然ガスかん水採取地など、一部地域では依然として地盤沈下が認められています。

 長年継続した地盤沈下により、多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じており、海抜ゼロメートル地域などでは洪水、高潮、津波などによる甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。



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