第3節 地球温暖化防止に向けた国内対策

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

 京都議定書上の6%削減目標の達成及び温室効果ガスの更なる長期的・継続的かつ大幅な排出削減に向けて、政府は、平成20年3月に閣議決定した改定京都議定書目標達成計画に基づき、今後、各部門において各主体が、対策及び施策に全力で取り組むことにより、森林吸収量の目標である1300万炭素トン(基準年総排出量比3.8%)の確保、京都メカニズムの活用(同比1.6%)と併せて、京都議定書第一約束期間の目標を達成することとしています。

 ただし、6%削減目標は、各部門において、各主体が、現行対策に加え、追加された対策・施策に全力で取り組むことを前提として見込んだものであり、今後、経済活動が活発になれば、達成が困難になることも考えられます。このため、今後、適宜適切に計画の進捗状況の厳格な点検と機動的な見直しを実施し、必要な対策の追加・強化を行うことにより、6%削減目標を確実に達成していくこととしています。平成20年12月25日に行われた進捗状況の点検においては、大半の対策について実績のトレンドが概ね見込みどおりでした。また、実績のトレンドが見込みどおりでないものについても、自主行動計画においては、各団体に対して取組の強化を促しているところであり、その他の対策においては、対策・施策の追加・強化を行っているところです。


(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

 ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 環境負荷の小さいまちづくりの実現に向け、公共交通機関の利用促進、未利用エネルギーや自然資本の活用等を面的に実施するため、CO2削減シミュレーションを通じた実効的な計画策定を支援しました。

 都市整備事業の推進、民間活動の規制・誘導などの手法を組み合わせ、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路網の整備や高度道路交通システムITS)の推進等の交通流対策等を行いました。

 物流体系に関しては、モーダルシフト関連施策の推進を含め、荷主と物流事業者の連携による環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。

 新エネルギーの面的導入に関しては、住宅街区や商業施設等を含むエリアで、太陽光発電等の新エネルギーの複合的な導入や、エネルギーを融通し合うシステムの導入などを行うモデル街区の構築等を進め、新エネルギーの導入促進を図りました。また、地域の様々なバイオマスを地域の関係者の幅広い連携の下、総合的に利活用するバイオマスタウンについては、構想の策定やその実現に向けた支援を行いました。

 イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

 (ア) 産業部門(製造事業者等)の取組

 自主行動計画は、政府による厳格な評価・検証を行いました。2008年度においては、特に排出量が大きく、また、全体の動向に影響を与える電力・鉄鋼業から、大幅な京都メカニズムクレジットの活用量の積み増しが表明等されるとともに、10業種において、目標達成が困難な場合には京都メカニズムクレジットの活用を検討する旨が表明され、自主行動計画の目標達成の蓋然性が向上したところです。中小企業における排出削減対策の強化のため、中小企業の排出削減設備導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等(いずれの自主行動計画にも参加していない企業として、中堅企業・大企業も含む。)が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する、又は、コンビナート等の産業集積地において工場排熱を企業間で融通する等、複数の事業者が共同して自主的に省エネ・排出削減を行う仕組み(エネルギー・CO2共同削減事業)を構築し、また、省エネルギー効果の大きい連携事業に対して支援を行います。

 さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、これら建設機械の取得時の融資制度を措置しました。

 農林水産分野においては、バイオマスの利活用や食品産業の自主行動計画の取組を推進しました。また、施設園芸、農業機械における二酸化炭素排出削減対策を推進しました。

 (イ) 業務その他部門の取組

 省エネルギー法を改正し、現行の「工場・事業場単位」による規制から「企業単位」での総合的なエネルギー管理へ法体系を改正するとともに、一定の要件を満たすフランチャイズチェーンについてチェーン全体を一体と捉え、本部事業者に対し、事業者単位の規制と同様のエネルギー管理を導入することで、工場・オフィスビル等の実効性のある省エネ取組の更なる強化を行います。また、建築物の省エネルギー性能の向上のため、建築物に係る省エネルギー措置の届出等の義務付けの対象について、一定の中小規模の建築物へ拡大するとともに、大規模な建築物に係る担保措置を強化することとしました。また、省エネ効果の高い窓等の断熱と空調、照明、給湯等の建築設備から構成される高効率ビルシステムをエネルギー需給構造改革推進投資促進税制の対象設備に追加するとともに、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及、省エネ改修等の建築物の省エネルギーに関する設計・施工等に係る情報提供等の推進等を行いました。トップランナー基準については、更に個別機器の効率向上を図るため、対象を拡大するとともに、既に対象となっている機器の対象範囲の拡大及び基準の強化を図ります。

 また、平成19年3月に閣議決定された新たな政府実行計画に基づき、政府の事務及び事業に関し、率先的な取組を実施しました。特に、全国の国の庁舎において、太陽光発電、建物緑化、ESCO等のグリーン化を集中的に推進しました。政府実行計画に基づく取組に当たっては、2007年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施しました。

 (ウ) 家庭部門の取組

 省エネルギー法を改正し、建築物と同様、住宅に係る省エネルギー措置の届出の義務付けの対象について、一定の中小規模の住宅へ拡大するとともに、大規模な住宅に係る担保措置を強化することとしました。また、消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、住宅等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)や住宅性能表示制度の充実・普及、住宅設備を含めた総合的な省エネ評価方法の開発を推進し、省エネルギー性能の評価・表示による消費者等への情報提供を促進しました。さらに、既存住宅において一定の省エネルギー改修(窓の二重サッシ化等)を行った場合に係る省エネ改修促進税制を創設しました。

 (エ) 運輸部門の取組

 自動車単体対策として、トップランナー基準による自動車燃費の改善、低公害車購入の優遇税制等によるクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行うとともに、環状道路等幹線道路ネットワークの整備を推進するとともに、高速道路の多様で弾力的な料金施策等の交通流対策を実施しました。また、モーダルシフトを含めた物流効率化の促進については、国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による取り組みを支援する等、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に取り組みました。さらに、公共交通機関の利用を促進するために、鉄道等新線整備、既存鉄道・バスの利用促進、エコ通勤等の施策を推進しました。

 このほか、海上輸送については、船舶実燃費指標(海の10モード)の開発・国際標準化等による海洋環境イニシアティブを推進するとともに、スーパーエコシップの普及促進等に取り組みました。また、航空分野においては、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空保安システムの高度化や環境にやさしい空港(エコエアポート)等を推進しました。

 (オ) エネルギー転換部門の取組

 発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電については、今後も安全確保を大前提に、原子力発電の一層の活用を図るとともに、基幹電源として官民相協力して着実に推進していきます。また、原子力等の他のエネルギー源とのバランスやエネルギーセキュリティを踏まえつつ、天然ガスへの転換等その導入及び利用拡大を推進します。太陽光や太陽熱、風力、バイオマス、小水力等を活用した新エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策の充実等によりその導入を促進しました。また、天然ガスコジェネレーションや燃料電池についても推進してきました。


(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、廃棄物の最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化を推進しました。


(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 代替フロン等3ガス(HFCPFCSF6)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象とされています。その排出抑制については、産業用途で削減が進んだこと等から大幅に目標を強化し、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画においては基準年総排出量比1.6%減の目標を設定しました。

 この目標に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、平成19年10月から施行された特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)の一部改正法に基づくフロン類回収の一層の徹底のため、引き続きフロン回収・破壊法の周知を行うとともに、「見える化」の一環としてのフロン量の二酸化炭素換算表示の導入の検討、都道府県における執行強化を推進しました。特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用電気冷蔵庫・冷凍庫、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 さらに、先導的な排出抑制の取組に対する補助の強化、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロンを用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等の実施、実用化されているフロンを使用しない建設用断熱材を始めとするノンフロン化の促進に係る普及啓発・周知、PFC破壊処理ガイドラインを策定しました。


(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量1,300万炭素トン(基準年総排出量の3.8%)の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、美しい森林(もり)づくり推進国民運動の展開等の総合的な取組を内容とする森林吸収源対策を展開しました。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌が有する温室効果ガスの吸収源としての機能及び本機能の向上に効果の高い営農活動に関する科学的な知見を集約し、食料・農業・農村政策審議会企画部会地球環境小委員会において「地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割について」をとりまとめました。

2 横断的施策

(1)地球温暖化対策推進法の改正

 京都議定書の6%削減目標の達成を確実にするために、排出量の伸び続けている業務部門・家庭部門への対策を抜本的に強化することが必要であることから、平成20年6月に、温室効果ガス算定・報告・公表制度の見直し、事業活動や国民生活における排出抑制等に関し、事業者が講ずべき措置に関する指針の策定、地方公共団体実行計画の充実などを盛り込んだ改正地球温暖化対策推進法が成立しました。


(2)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度により全国の14,841事業所(7,813事業者)及び1,447の輸送事業者から報告された平成19年度の排出量を集計し、平成21年4月3日に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は二酸化炭素換算で6億5,041万トンで、我が国の平成19年度排出量の約5割に相当します。


(3)排出抑制等指針の策定

 地球温暖化対策推進法が平成20年に改正され、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めることとされました。また、事業者が、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を行うにあたっては、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされました。

 平成20年12月12日には、国は排出抑制等指針を公表し、こうした努力義務を果たす上で事業者が講ずべき措置を「第一 業務部門における事業活動に伴う温室効果ガスの排出の抑制等に関する事項」と「第二 日常生活における温室効果ガスの排出の抑制への寄与に係る措置に関する事項」とに大別して具体的に示しており、事業者による本指針を活用した排出抑制等のための取組が今後推進されることが期待されます。


(4)国民運動の展開

 地球温暖化防止のために政府が推進する国民運動「チーム・マイナス6%」を引き続き推進し、夏期の冷房設定を28℃にして快適に過ごすビジネススタイル「クール・ビズ」の実施を各企業へ呼びかけるとともに、パブリック・スペース等での理解・実施を促す取組を実施しました。

 また、冬期の暖房設定を20℃にして快適に過ごすビジネススタイル「ウォーム・ビズ」の実施を各企業へ呼び掛けるとともに、「ウォームビズ20℃プロジェクト」として、北海道、東京、大阪、兵庫の商業施設や地域ぐるみでの理解・実施を促す取組を推進しました。

 さらに、家庭から排出されるCO2量も増加傾向にあることから、平成18年の冬から、衣食住を通じて「家(うち)」の中からできる温暖化対策「うちエコ!」を推進しています。

 平成20年度は「ウチから暖めよう」をテーマに、身体のうちから暖める食事や運動、家の防寒対策などにより、過度な暖房に頼らず暖かく過ごす工夫の普及に向けて「うちエコ!応援団」による活動を展開しました。

 このほか、「1人1日1kg」の温室効果ガスの削減をモットーとした「私のチャレンジ宣言」及び低炭素社会づくりへの呼びかけを実施するとともに、北海道洞爺湖において開催されたサミットを契機に低炭素社会への歩みを国民で共有する日(毎年7月7日)として設立された「クールアース・デー」において、全国のライトアップ施設や家庭の電気の一斉消灯を呼び掛ける「CO2削減/ライトダウンキャンペーン」を開催しました。


(5)「見える化」の推進

 温室効果ガスの「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言いますが、低炭素社会づくり行動計画において、「見える化」のあり方について検討を加え、また、排出量の算定や、その信頼性の確保、表示の方法等関するガイドラインを2008年度中に取りまとめることとされています。例えば、カーボン・フットプリント制度や、国民が日常生活において様々な商品やサービスを使用した際に発生する温室効果ガスの排出量や、その削減のための具体的な方法について情報提供するウェブサイト(日常生活CO2情報提供ツール(仮称))の開発などについて検討を進めているところです。


(6)公的機関の率先的取組

 地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき平成17年4月に閣議決定された「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」において、政府は自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスを18年度までに13年度比で7%削減することを目標としていました。

 平成18年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は170.6万トン(平成13年度値の14.5%減)となりました。

 また、政府の実行計画が平成18年度に終了したことを受けて、19年度から24年度までの期間を対象とする新たな実行計画を19年3月に閣議決定しました。この新しい計画では、22年度~24年度の平均の温室効果ガス排出量を、13年度比で8%削減することを目標としています。

 平成20年6月に改正された地球温暖化対策推進法においては、[1]都道府県、指定都市、中核市及び特例市(指定都市等)の地方公共団体に対し、地方公共団体実行計画の義務的記載事項を拡充し、従来から自治体に策定が望まれてきた地域推進計画の中において、盛り込むように努めることとされていた、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための施策の策定が義務づけられました。また、[2]都道府県に加え指定都市等も、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、[3]地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱できることとされました。さらに、[4]地方公共団体、関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により実行計画協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう措置しました。


(7)環境税等の経済的手法

 燃費の良い自動車への転換を促す等に活用する税制も重要な対策手段です。

 環境税等の経済的手法については、第6章第8節を参照してください。


(8)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度から、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、現在まで232社の企業が参加しています。

 2008年1月には、環境省国内排出量取引制度検討会を設置し、具体的な制度設計のあり方について掘り下げて検討を行い、5月に制度オプション試案を含む中間まとめを公表しました。このほか、「地球温暖化問題に関する懇談会」や「地球温暖化対応のための経済的手法研究会」においても検討が行われました。

 2008年10月からは、低炭素社会づくり行動計画(平成20年7月29日閣議決定)、地球温暖化対策推進本部決定(平成20年10月21日)に基づき、CO2の排出削減には、CO2に取引価格を付け、市場メカニズムを活用し、技術開発や削減努力を誘導する方法を活用することが必要であるとの観点に立って、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」を開始しました。これに伴い、JVETSは試行実施の参加類型の一つとなったほか、国内クレジット制度も開始されました。

 本試行実施については、全国各地で説明会を開催するなど企業等の参加を積極的に働きかけてきた結果、JVETSへの参加企業を含む500を超える企業等から参加申請がありました。目標設定参加者として電力、鉄鋼、化学等の主要排出業種における主要企業から参加申請がなされた上、これらの目標設定参加者の排出量の合計は産業部門全体の約7割に上り、多くの業種・企業から積極的な参加申請がありました。

 また、申請された目標について、2008年度の目標を中心に参加者の目標の審査・確認を行い、JVETS参加企業125社に加え、77の目標設定主体が目標水準に達しているとされ、目標水準が確定しました。


(9)カーボン・オフセット

 適切なカーボン・オフセット(以下、「オフセット」という)の普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成20年2月)に基づき、下記の取組を行いました。

・平成20年4月、オフセットの取組に関する普及啓発・相談支援等を行う「カーボン・オフセットフォーラム」(以下、「J-COF」という)を設立しました。

・平成20年8月、模範的なオフセットの取組を示すことを目的として9件の取組をモデル事業として採択しました。

・平成20年9月、日本国環境省と英国環境・食糧・農村地域省(Defra)との間で、カーボン・フットプリントの算定やオフセットに係る情報交換について一層の協力強化を図るための協力宣言文を締結しました。

・平成20年10月、オフセットに取り組む際に用いる温室効果ガスの排出量の算定方法やオフセットの取組を行う者が消費者等に対して明示すべき情報について示したガイドラインを策定しました。

・平成21年3月、適切なオフセットの取組に対して、第三者認証を実施するための基準を策定しました。

 また、平成20年11月には、国内のプロジェクトによる温室効果ガス排出削減・吸収量をオフセットに用いることのできるクレジットとして認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」(以下、「J-VER制度」という。)を創設しました。同年12月には、高知県から本制度に基づき木質バイオマスを利用した案件が申請されました。同案件の平成19年度分のJ-VERは株式会社ルミネが買い取り、社員の通勤に係る排出量をオフセットしました。また、平成21年3月には、森林によるCO2吸収量を認証するための基準を整備しました。これらにより、国内のプロジェクトにオフセットの資金が還流することが期待されます。

 さらに、上記のような取組について国と地方自治体との情報・意見交換を行うためのネットワークとして、平成20年6月に日本カーボンアクション・プラットフォーム(JCAP)を設立しました。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定手法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関する条約事務局による審査の結果を踏まえ、インベントリの整備体制や算定方法の改善について検討しました。


(2)地球温暖化対策技術開発の推進

 京都議定書目標達成計画において、技術開発は、その普及を通じて環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組として位置付けられており、第3期科学技術基本計画や分野別推進戦略関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的な推進を図りました。

 農林水産分野においては、地球温暖化適応策の農業生産現場への普及・指導や、地球温暖化が将来の農林水産業に与える予測研究、適応策に関する技術開発を推進しました。


(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、地球環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。また、地球環境研究総合推進費では、平成20年度に、[1]地球温暖化による影響への効果的・効率的な適応、[2]低炭素社会づくりに関する政策研究を行うための特別枠を設け、13研究課題を開始しました。

 「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」の成果は、平成20年2月に「行動の呼びかけ(Call for Action)」としてまとめられていますが、同年5月に開催されたG8環境大臣会合では、各国の低炭素社会にかかわる研究機関が低炭素社会に関する国際研究ネットワークを構築することが提案され、多くの国に支持されました。

 また、我が国においても顕在化しつつある地球温暖化影響に対する適応策の基本的な考え方、今後の影響・適応研究の具体的な方向性について、「気候変動への賢い適応」報告書を、2008年(平成20年)6月にとりまとめました。

 さらに、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。



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