第3節 100年先を見て足元で育ちつつある新しい芽

 地球環境の悪化を克服する大きな方向として、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会を形成するための取組が進められています。しかしながら、持続可能な社会は、これらの社会のうち1つの社会のみを追求することによっては実現されません。温室効果ガスの大幅な削減による低炭素社会、3Rと廃棄物の適正処理が進められている循環型社会、自然の恵みを享受し継承する自然共生社会を同時に実現しなくてはなりません。

 ここでは、第一に、各分野において環境保全効果を発揮するような環境対策の技術的な側面に着目し、これからの環境技術のあり方を考察します。第二に、環境対策は、個人の力や社会全体の力がうまく結集されれば大きな効果を発揮する側面があるため、相互に協力し合って行われている環境対策から、今後の私たちの取組の方向を考えます。

1 環境対策の技術面での相乗効果

 持続可能な社会づくりに必要なのは、個々の問題の解決にとどまらず、複数の環境問題を同時に解決するような取組です。例えば、バイオマスの利用は、大気中の二酸化炭素を循環させるものであり、石油・石炭などの化石燃料のように大気中への二酸化炭素の新たな放出は生じないことから、カーボン・ニュートラルと言われています。また、廃棄物由来のバイオマスの利用は廃棄物の抑制に、生態系の適切な管理によって生じるバイオマスの利用は生物多様性の保全にも繋がります。ここでは、一つの取組が環境問題に対して複数の効果を生んでいるバイオマスの利用により地域経済の活性化に貢献している事例を取り上げ、その特徴を見ることによって、今後の環境技術のあり方を論じていきます。


(1)メタンガス化により削減される廃棄物と二酸化炭素排出量

 わが国の廃棄物系バイオマス(家畜排泄物、下水汚泥、黒液、廃棄紙、食品廃棄物、建築発生木材、製材工場等残材)は、平成20年において、約30,000万トンと見込まれています。

 ア 食品廃棄物の発生抑制

 廃棄物由来のバイオマスのうち、食品廃棄物は年間約1,900万トン発生しており、そのうちの約1,400万トンが焼却・埋立処分されています。このうち、本来食べられるにもかかわらず廃棄されているものが年間500〜900万トンにものぼると推計されています。このため、まず第一に食品が廃棄物として処分されることを未然に防ぐ取組が望まれます。具体的には、食品製造業者においては、規格外品等について理解が得られる小売業者への販売やフードバンク活動(寄付された食品を貯蔵し生活困窮者や福祉施設などへ届ける活動)に寄贈するという選択肢があります。小売業者においては、売れ残りを防ぐための値引き販売や的確な在庫管理をすること、消費者においては、食品を無駄にしない買い物の仕方(量り売りの活用等)や調理方法・献立の工夫ができます。また、外食産業においては、店と客のコミュニケーションを通じて、客の好みや食べたい量に応じた料理の提供をすることが大事ですし、それでも発生してしまう食べ残しについては、適切な管理や食中毒の回避を含め消費者の自己責任を前提に、可能な範囲で持ち帰りが許されることが望まれます。

 イ 食品廃棄物のメタン発酵

 これらの取組をしても、どうしても発生してしまう食品廃棄物については循環資源としての再生利用を行うことが望まれます。具体的な方法としては飼料・肥料化、熱・電気に転換するエネルギー利用等が挙げられます。飼料及び肥料の原材料として利用しやすいものや、原材料としての利用が地域の事業者が営むシステムの中で成立している場合には、飼料・肥料化を進めることが望ましいところです。しかし、異物の混入が多い場合や、飼料・肥料として利用することが難しい地域ではエネルギー利用を行うことが望ましい場合があります。エネルギー利用の方法としては、主に、発酵等の生物化学的変換、ガス化等の熱化学的変換及び直接燃焼の3つが挙げられます。以下に、廃棄物の再生利用方法としてのみならず地球温暖化対策にも有効な取組として注目されている、食品廃棄物のエネルギー利用方法のうち、含水率の高い生ごみ等の食品廃棄物の処理に際して、熱化学的変換や直接燃焼よりもエネルギー効率の面でより適している生物化学的変換のうち、多数の実用化事例が見られるメタン発酵について紹介します。

 メタン発酵(メタンガス化)とは、メタン菌等の微生物の働きにより有機物からメタンなどを生成することです。メタンガス化施設では、生ごみなどの有機性ごみをメタン発酵させ、発生するバイオガス(メタンを主成分とする混合ガス)を回収しています(図3-3-1)。回収されたバイオガスには、メタン以外に二酸化炭素や少量の硫黄分なども含まれているため、硫黄分を除去してボイラーの燃料として使うほか、さらに二酸化炭素等を除いた後で天然ガス自動車の燃料として利用されたり、ガス会社に供給されたりすることで、化石燃料の消費量削減に寄与しています。国内では、バイオガスを利用して、ガスエンジンやマイクロガスタービンを用いたコージェネレーションにより電力と熱を回収し、施設内の電力と発酵槽等の加温のために熱を利用しているケースが多く、一部では余剰電力を販売しているところもあります。


図3-3-1 メタン発酵施設における代表的な処理フロー

 バイオガスの組成と発生量は分解する有機物によって異なりますが、メタンガスの含有比率は概ね50〜75%であり、平成17年度生ごみ等食品リサイクルに関する基礎調査報告書によると、生ごみ1トン(湿ベース)当たりのバイオガス(メタン濃度60%、二酸化炭素濃度40%)発生量は100〜200Nm3です。処理されるごみに、たんぱく質や脂質が多い場合にメタン濃度が高くなります(図3-3-2)。


図3-3-2 有機性廃棄物1トン当たりのバイオガス発生量例


メタン発酵処理施設


 ある会社では食品製造・加工業やレストラン、デパート、コンビニエンスストア等から食品廃棄物を1日約110トン受け入れメタン発酵を行い、バイオガスを回収しています。バイオガスより取り出したメタンガスは燃料電池及びガスエンジンで使用し、1日およそ24,000kWh(約2,400世帯分の電気量に相当)の発電を行っています。また、そのうちの約60%は外部に売電しています。この発電による二酸化炭素削減効果は1日当たり14トンになります。

 メタン発酵を行う場合には、メタン発酵に適さないプラスチックなどの異物の混入をできるだけ少なくすることが望ましいのですが、この会社では3基の投入口と破砕・選別機により食品廃棄物を破砕し、不適物と生ごみに分別しているため、レストランなどで食品廃棄物を排出する際の分別は簡単な作業のみで済んでいます(写真3-3-1)。


写真3-3-1 処理している食品廃棄物例


 ウ メタンガス化の課題

 家庭からの生ごみ等の有機性ごみのメタンガス化を行う場合にはいくつかの課題があります。有機性ごみのみを分別収集する必要があるため、収集運搬の費用が増加すること、有機性ごみの排出場所において臭気が問題になるおそれがあること、分別された有機性ごみに異物の混入が見られること等の課題が挙げられます。また、メタン発酵に伴い廃液や汚泥などの残さ物が発生することから、あらかじめその有効利用や適正処理の方策を確保しておくことが極めて重要です。

 エ メタンガス化施設導入のための政府の取組

 これまで見てきたように、有機性ゴミのメタンガス化は、廃棄物の再生利用のみならず、地球温暖化対策の観点からも有効な取組の一つです。このような複合的な効果に着目し、国では、メタンガス化施設の整備支援を行っています。

 循環型社会の形成を図ることを目的とし、市町村を対象に交付している「循環型社会形成推進交付金」では、高効率なメタンガス化施設について交付率を平成17年度から3分の1を2分の1に嵩上げして重点的に支援しています(図3-3-3)。また、平成19年度からはメタンガス化施設及びメタン発酵残渣とその他のごみ焼却を行う施設を組み合わせた方式について交付率2分の1の対象に加えました。


図3-3-3 循環型社会形成推進交付金の概要 〜国、都道府県、市町村が構想段階から協働〜

 さらに平成20年1月に、市町村がメタンガス化施設整備を検討する際に必要な情報を提供し、支援することを目的にメタンガス化(生ごみメタン)施設整備マニュアルを作成しています。


千葉市生ごみ分別収集モデル事業


 千葉市では、家庭から排出される可燃ごみの4割を占める生ごみのバイオガス化処理の実現に向けた検討を行うため、平成19年度より生ごみ分別収集モデル事業を行っています。モデル地区の住民は生ごみを蓋付きバケツに保管し、カラス対策用の専用袋に入れて、週2回集積所に出すことになっています。分別して排出された生ごみは、同市にある民間のバイオガス化施設へ運ばれて処理されます。回収されたバイオガスは隣接する製鉄所に燃料ガスとして供給されています。モデル地区は、開始当初は1地区でしたが、平成20年度は環境省の支援も受け、3地区に拡大されました。モデル地区の住民の多くは事業の意義を十分理解した上で非常に熱心に分別に協力しています。

 平成19年11月から平成21年2月までに回収した生ごみの量は166.3トンであり、集められた生ごみから回収されたバイオガスより得られる熱量は、一般家庭のお風呂を約2万回沸かすことができる量に相当します。

 同市ではモデル事業を通じて、生ごみの分別収集による温室効果ガスの排出抑制効果や経済性などを評価した上で、市内における生ごみ処理のあり方を決定することとしています。





生ごみ分別収集の様子 資料:千葉市


バイオガス化施設 資料:千葉市



(2)自然共生社会に係る取組と二酸化炭素排出量の削減

 わが国の未利用バイオマス(農作物非食用部、林地残材)の賦存量は、平成20年時点で、約2,200万トンと見込まれています。こうしたバイオマスの活用は、大気中に新たな二酸化炭素の放出が生じないことから地球温暖化対策に資するものです。また、人工林の間伐、里山林の管理、水辺や二次草原における草刈り・採草などの管理作業によって生じるバイオマスの利用や、食料供給と競合してしまうトウモロコシのような作物ではなく稲わらなどのセルロース系バイオマスや資源作物の栽培・活用は、森林、草原及び農地を適切に維持することにつながり、生物多様性の保全にも貢献します。

 これまで草本や木質のバイオマス利用は、製材工場の残材や間伐材などの林地残材が中心でした。しかし、近年はこれらに加え、里地里山で行われる生態系の保全の取組によって生じるバイオマスを有効活用する取組も行われるようになってきています。

 ア 里山林の管理によるバイオマスの利用

 里山林は、林業生産活動をはじめ薪炭材や、落葉の採取など地域住民の利用による適度な働きかけが加わることによって、地域によって特徴のある生態系が形成されています。しかしながら、近年は、山村の過疎化・高齢化や生活様式の変化に伴ってその利用が急激に低下しており、カタクリやササユリといったかつては普通に見られた生物が姿を消すなど、全国でその荒廃が問題となっています。

 神奈川の秦野市表丹沢野外活動センターでは、ボランティアなどと協働で周辺の里地里山の整備を行っており、活動の際に生じた伐採木を木質バイオマスボイラーの燃料として、周辺施設の暖房や給湯に利用しています。これによって年間約1,000m3のチップ材が利用され、約2万Lの灯油の削減効果が見込まれています(写真3-3-2)。


写真3-3-2 秦野市表丹沢野外活動センターの木質バイオマスボイラー

 イ 草原の管理によるバイオマスの利用

 熊本県の阿蘇の草原は、放牧や採草、野焼きなど、長い年月にわたり人々が生活や農畜産業のために手を入れたことによって維持されてきたもので、約22,000ヘクタールにも及ぶ広大な草原が広がっています。阿蘇の草原には、ヒゴタイやツクシマツモトなど草原環境に適応した多くの希少動植物が生息・生育するとともに、広大な草原景観を目的として、年間1,800万人以上が訪れています。しかし、化学肥料の普及など営農形態の変化や農業従事者の減少・高齢化によって、野草地面積の減少や草原の変容が進み、景観の劣化や草原生態系における生物多様性の劣化などが問題となっていました。

 このため、平成11年よりボランティアが野焼きに参加するなど、地域の様々な主体が連携して、草原の維持に取り組むとともに、放牧による飼料としての利用や、野菜栽培のための堆肥としての利用など、農畜産業における野草の利用が進められています。近年ではこれらに加え、未利用となっていた秋以降の枯れた野草を収集・ガス化し、既存の温水プールとその付帯設備へ電気と熱の供給を行うような取組もはじまっています。このように、未利用となっていた草本系バイオマスの複合的かつ高度な利用を進めることで、二酸化炭素の排出削減対策に資するとともに、草原環境の保全にも貢献しています(写真3-3-3)。


写真3-3-3 阿蘇草原における採草


(3)木材の有効利用等による循環型社会と自然共生社会の実現

 ア 循環型社会の形成が自然環境を守る

 持続可能な開発を達成するには、地球の大気、水、土壌、野生生物といった資源や、これらが織りなす生態系の大循環に適合するような経済活動のあり方を考え、具体化していかなければなりません。そのために私たちは、資源採取、生産、流通、消費、廃棄などの社会経済活動の全段階を通じて、省資源化技術等を活用した廃棄物等の発生抑制循環資源の利用などの取組により、新たに採取する資源をできるだけ少なくした、循環型社会を築く必要があります。経済社会における物質循環を適切に行うことができれば、自然環境への負荷を少なくすることができます(図3-3-4)。


図3-3-4 自然の循環と経済社会における循環の図

 イ 循環型社会と自然共生社会の実現

 (ア)間伐材等の利用

 森林のもつ国土の保全や地球温暖化の防止などの公益的機能を発揮していくためには、森林を適切に整備・保全することが必要です。しかしながら、近年、わが国では間伐等の手入れが不足する森林が増えるなどにより、森林の機能の低下が危ぶまれています。国土保全、生態系の維持、水源涵養等の森林機能を向上させるためにも、また、人工林の木材の利用価値を高めるためにも間伐を適切に進めていく必要があります。木材を有効利用することにより「植える→育てる→収穫する」という森林のサイクルがうまく循環し、林業の生産活動が活発になり、森林の持つさまざまな機能が十分に発揮されるようになるのです。間伐材を含め、国産木材を有効利用することは、金属や化石燃料などの枯渇性資源の使用量を減らすことにつながり、循環型社会をはじめ、低炭素社会や自然共生社会の形成にも貢献します。

 a 紙製飲料容器

 わが国の森林育成で生じる間伐材や端材を有効活用するため、紙製の飲料容器(カートカン)が開発されています。これを普及することによって、「日本の森林を育むこと」の重要性を広く国民に知らせることを目的として、飲料メーカーや関連企業を中心に、趣意に賛同した企業などの呼びかけで「森を育む紙製飲料容器普及協議会(もりかみ協議会)」が発足しました。もりかみ協議会で普及を推進しているカートカンは、原料として間伐材を含む国産材を30%以上利用しています。内面に金属フィルムを使用していないことから、トイレットペーパー等紙製品へのリサイクルが可能です。また、カートカンの売上金の一部は、国土緑化推進機構の「緑の募金」に寄付されており、植林を行うボランティアやNPOの支援に使用されています。平成19年度のカートカンの生産量は約1億7,000万本で、これは、500mL以下飲料容器の約0.3%に相当(もりかみ協議会調べ)します(図3-3-5)。


図3-3-5 紙製飲料容器

 b 集成材、木屑利用

 集成材は、若年の間伐材等これまで限られた用途でしか使用できなかった材料を、建材、壁材、家具等の幅広い用途で使用することを可能にします。

 ある構造用集成材製造業者では、国産の木材を用いて集成材を作り、様々な形状の建物を建てています。また、集成材を製造するだけではなく、集成材製造時に発生した木屑を利用して木質ペレットの製造やバイオマス発電を行っています。この取組は、自然を守り、化石燃料等の消費量と廃棄物の削減に貢献する取組です(図3-3-6)。


図3-3-6 構造用集成材製造業者における木質バイオマス利活用の概要


写真3-3-4 集成材の利用例

 c コピー用紙の間伐材利用

 国は、グリーン購入法に基づいて、環境に配慮した物品の基準を定め、みずから優先的に調達しています。従来は古紙パルプ配合率100%のコピー用紙しか購入できませんでしたが、基準が改訂され、平成21年度からは古紙パルプ配合率が70%以上であれば間伐材等を利用したものも調達することができるようになりました。

 実際に、一部の製紙メーカーにおいては、間伐材を利用したコピー用紙の開発に成功し、市場に供給しています。こうした間伐材の有効利用が、温室効果ガスの吸収源となる健全な森林の育成につながると期待されています。

 (イ)海の森

 東京都は、東京湾にある最終処分場(ごみと建設発生土の埋立地)で、市民・企業・NPOによる植樹活動を通じて、88ヘクタールの緑あふれる森に生まれ変わらせる「海の森」プロジェクトを進めています。本プロジェクトでは、都内の小学生やボランティアがドングリから育てた苗木や市民・企業等の募金により購入した苗木を植樹するなど民間と行政との協働による森づくりを行っています。平成20年11月には、一般都民約2,000名の参加による植樹イベントを開催し、約9,000本を植樹しました。

 「海の森」は、海からの風を都市の内部に導く「風の道」の起点と位置づけられています。また、植樹を行う土には都内の公園や街路樹の剪定枝葉から作った堆肥や建設発生土を利用しており、資源循環型の森づくりが進められています。

 この場所は自然共生やリサイクルに貢献する場所としてよみがえろうとしています(写真3-3-5)。


海の森プロジェクト


写真3-3-5 植樹をする参加者

2 個人や社会の力を結集する環境対策

 平成20年5月に内閣府が行った低炭素社会に関する特別世論調査では、90.1%の方が「低炭素社会を実現するべきである」と答えています。新聞でも毎年、地球温暖化に関する記事は増え続け、地球環境問題が報道されない日は無いくらいです。

 また、実際にも環境への取組が各地で盛んになっています。個人や企業、生産者、地方公共団体など環境対策の主体や規模は様々であり、その目的も環境を良くしようという心掛けから、コストを少しでも減らそうという実利、企業のイメージアップなど多様です。様々な主体の取組は、環境を良くしようとする方向で一致しているものの、一つひとつの取組が単独で行われると、ややもすれば努力が実らず、大きな成果に結びつかない場合も出てきます。

 ここでは、環境対策に係る様々なレベルでの力の結集の在り方について紹介し、私たちが環境対策を行う上での知恵を得たいと思います。100年後の、地球の生態系の良い一部となるような新しい形の経済社会の芽が既に各地に姿を現しつつあるのです。


(1)低炭素社会をめざす個人や地域の取組

 私たちの住まい方、ものの使い方、商品の選び方等により、エネルギーの消費は変わってきます。自分自身の暮らしとエネルギー消費の関係について認識した上で、エネルギー多消費型の生活から、エネルギー消費の少ない生活へと転換していくことが必要です。その際に、消費者が需要の方法や量をまとめることにより、供給側への大きな影響を与えることができます。

 ア チーム力の結集

 わが国の総理大臣をチームリーダーとする地球温暖化防止のための国民運動「チーム・マイナス6%」では、「めざせ!1人、1日、1kgCO2削減」キャンペーンとして、国民からの「私のチャレンジ宣言」の受付等を行っています。これは、冷暖房の温度調節、商品の選び方、自動車の使い方、電気の使い方などについて、身近なところでできる地球温暖化防止メニューの中から個人が「実践してみよう」と思うものを選び、毎日の生活の中で1人1日1kgの二酸化炭素排出量削減を目指そうとする取組です。平成21年4月末現在、約100万5千人の人がチャレンジ宣言を行っています。

 「1人1日1kgCO2削減運動」事務局が平成20年9月に「私のチャレンジ宣言」参加者に行ったアンケート調査によると、宣言後、参加者が実践しているエコ活動は、1人当たり平均17項目、二酸化炭素削減量は、1日平均1,023gでした。平成21年4月末現在の参加者の約100万5千人が削減した二酸化炭素排出量は、調査のとおりの成果が出ているとすれば年間約37万5,000トンと推計されます。

 多くの参加者が実践しているエコ活動(図3-3-7)は、「夏の冷房時の温度設定を26℃から28℃に2℃高くする」(76.0%)、「ゴミの分別を徹底し、廃プラスチックをリサイクルする」(71.8%)、「テレビを見ないときは消す」(69.1%)などでした。


図3-3-7 私のチャレンジ宣言「多くの参加者が実践しているメニュー」

 一方で「白熱電球を蛍光ランプに取り替える」(43.2%)、「古いエアコンを省エネタイプに買い換える」(16.0%)、「太陽光発電を新規に設置する」(3.5%)など、買い換えや新規購入を要するエコ活動は実践されにくい傾向があります。

 「1人1日1kgCO2削減運動」や「私のチャレンジ宣言」について、家族や友人、知人と話題にした人は61.5%(図3-3-8)にのぼり、話題にした人は平均で11.8人の周りの人に運動や宣言について伝えています。皆が参加できる仕組みがあると成果は当然大きくなります。参加の成果が目に見える物になると一層の取組の励みにもなります。このようなチームを組んだ分かりやすい形での二酸化炭素排出量削減に向けた取組が更に多くの国民の間に広がっていくことが期待されます。


図3-3-8 「私のチャレンジ宣言」参加者アンケート調査結果


星は、もっとたくさん見えるはず


 環境省は毎年、「CO2削減/ライトダウンキャンペーン」を呼びかけ、ライトアップ施設等の電気を消すことを呼びかけています。平成20年は、キャンペーンの初日と最終日(6月21日と7月7日)に、全国のライトアップ施設等の一斉消灯を呼びかけました。特に7月7日は、2008年北海道洞爺湖サミットの開催初日であったことを受け、低炭素社会づくり行動計画に「クールアース・デー」として位置づけられ、「七夕ライトダウン」を始めとする様々なイベントを全国に呼びかけることとしました。照明を消すことは、地球温暖化の防止や省エネルギーに繋がるほか、光害の防止にもなります。特に、温暖化の防止や省エネルギーは、その効果を直接見ることは難しいですが、不要な電気を消した夜は、星空がいつもより明るく輝いて見えるかもしれません。キャンペーンそのものが短期間で終わったとしても、こうした取組をきっかけに、普段の生活で電気の使用を控えたりする次の行動につながることが期待されます。

 平成20年10月、山梨県の甲府盆地では、「第10回ライトダウン甲府バレー」が行われました。「街の明かりを消してきれいな星空をとりもどそう」と10年間続いているイベントです。午後8時から9時の1時間、甲府盆地の夜景がずいぶん暗くなりました。

 ライトダウンは、地球温暖化防止等に貢献し、夜空を眺めながら、一人一人が環境問題を考えるきっかけにもなります。ライトダウンを行うためには、地域ぐるみの賛同と行動がなければなりません。星の見える夜空の暗さは、そうした地域の意志の表れといえましょう。私たちの身の周りにも、不要な照明があるのではないでしょうか。2009年は世界天文年です。全国でこのような取組が一斉に行われれば、日本の夜空はもっと美しく見えることでしょう。また、それに伴い、二酸化炭素の排出量も減っていくことが期待できます。


ライトダウン前の甲府盆地夜景


ライトダウン中の甲府盆地夜景


 イ 認証製品等の環境ラベリングを活用した取組

 (ア)生物多様性に配慮した認証製品等

 生物多様性条約COP9では、ドイツ政府が提唱した「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」に日本企業9社を含む34社が署名するなど、生物多様性に配慮した事業活動の取組が世界で始まっています。これまで事業活動における生物多様性への取組は、法令に基づいた義務的なものやCSR活動の一環としてのものが主流でした。しかし、最近は持続可能な経営のためのリスク回避や他商品との差別化など新たなビジネスチャンスとして本業の中で生物多様性の向上に取り組む企業が増加しています。こうした中、わが国の農林水産業においても、生物多様性に配慮した持続可能な森林・漁業経営によって生産された林産・水産物を生産から加工・流通の段階まで認証する制度や、地域の生きものに配慮して生産された農産物を地域ブランドとして販売する取組などが各地で進められるようになりました。

 世界の森林認証制度には、平成5年に世界で最初に設立された森林管理協議会(FSC)をはじめ、世界各地の森林経営に応じたさまざまな認証制度があり、わが国でも、人工林の占める割合が大きく、零細な森林所有者が多いわが国の実状に合わせた『緑の循環』認証会議(SGEC)が平成15年に設立されています。こうした認証制度によるわが国の認証森林面積は、平成12年以来増加を続け、平成21年3月末現在、107件、約102万ヘクタールが認証されています。これは、わが国の人工林面積の約1割に当たります。

 漁業の認証制度としては、平成9年に設立された海洋管理協議会(MSC)があげられます。これは漁獲量や種類、期間、漁法などに一定のルールを定め、漁業資源を枯渇させずに持続的に利用できる漁業を第三者機関が認証するもので、平成21年3月末現在、MSCの認証漁業は41件で、認証された水産物は約500万トンに達するといわれ、これは世界の食用水産物漁獲量の約7%に当たります。わが国では平成18年から卸売業者や大手小売業者などが、認証された水産物の流通と加工に対する認証を取得しています。平成21年3月現在、約150品目が国内で流通しています。また、平成20年には京都府機船底曳網漁業連合会がズワイガニとアカガレイの底引き網でアジアで初めてMSCの漁業認証を取得しました。国内の漁業の認証制度としては、平成19年に(社)大日本水産会によって設立された「マリン・エコラベル・ジャパン」があり、平成20年に日本海べにずわいがにが認証されています(表3-3-1)。


表3-3-1 日本の漁業認証の状況

 減農薬や無農薬など生物多様性にも配慮した取組によって生産された農産物を、地域を代表する生きものや、身近な生きものを通じてアピールする取組も行われています。具体的には、水田に生息するメダカやゲンゴロウ、水田を餌場として利用するトキやコウノトリ、カモなどといった生きものの名前を付けた生き物ブランド米が全国各地で生産・販売されています。生き物ブランド米は、一般的に価格は通常のものに比べてやや割高なものの、魚や鳥、水生昆虫など多様な生き物が暮らす水田で育った米であるということが、食の安全を求める消費者に歓迎されています。このため、各地でこうした取組が広がってきています。

 平成19年度に環境省が行った市民を対象とした調査では、「環境に配慮している」と表明している企業に対する印象について、「信頼できる」が約5割、「その企業の製品を買いたい」が約4割に達しています。また、製品やサービスを選択する際の考慮点として、約9割が「環境によい」ことを条件としてあげ、同じく約7割が「同じ製品ならば、高くとも環境にやさしい製品を選ぶ」と回答しています(図3-3-9)。


図3-3-9 商品を選択する際の環境配慮の状況

 生物多様性にも配慮した農林水産業の取組は、こうした消費者や企業のニーズにも対応したものですので、認証制度を活用することにより、今後益々力強く広がっていくことが望まれます。

 (イ)グリーン購入による環境配慮

 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築するため、国等の公的部門が調達する際に、価格だけでなく、温室効果ガス等の排出など、環境負荷の低減をも考慮すること等を目的として、グリーン購入法が平成13年度から全面施行されています。同法に基づき、国等の各機関では、基本方針に即して各年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しています。また、地方公共団体においても、すべての都道府県及び政令指定都市において調達の方針を作成してグリーン購入に取り組んでいます。

 全国の1874の地方公共団体を対象に実施された「平成19年度地方公共団体のグリーン購入に関するアンケート調査結果」によると、全地方公共団体で何らかの方法で、グリーン購入に「組織的に取り組んでいる」とした団体は58.3%となり、担当者のレベル等での配慮まで含めると87.1%となり、ほとんどの地方公共団体においてグリーン購入に取り組んでいるとの結果になりました。また、グリーン購入の効果として「よく実感する」及び「少し実感する」の合計が40%を超えているのは、高い順に、「職員の意識啓発効果」51.8%、「環境製品普及効果」49.6%、「環境負荷低減効果」46.2%、「企業の環境意識向上」42.9%となりました。その一方で、「コスト縮減効果」25.1%、「住民の環境意識向上」24.7%と30%を割る結果となり、これらの面ではグリーン購入の効果は実感されていないという結果になりました。

 次に、グリーン購入の進展に必要な仕組みについては、物品・役務と公共工事のいずれにおいても、「環境物品等に関する情報提供システム・広報活動の充実」、と「対象となる製品の基準の明確化」となっています。そして、製品選択に関する情報提供制度の充実に必要な仕組みとしては、物品・役務と公共工事のいずれにおいても、「環境にやさしい製品を認定しマーク表示する制度」が最も多く、次いで「製品情報の比較方法や表現方法の標準化・共通化」となっています(図3-3-10)。


図3-3-10 物品・役務のグリーン購入の製品選択時における必要な仕組み

 これらのことから、わが国のグリーン購入の取組は公的部門において普及定着し、環境製品の普及、環境負荷の低減、企業の環境意識の向上などに効果をあげつつあると考えられますが、さらに社会の隅々まで効果を広げていくためには、多くの人の目にとまる環境ラベリングが重要な役割を果たすものと考えられます。

 ウ 二酸化炭素排出量を削減するための需要と供給の結節

 低炭素社会を築くには、産業、運輸、業務、家庭といったあらゆる分野において、市民、企業などの社会の構成員が主体的に温室効果ガスの排出削減を進めていくことが必要です。自らが主人公となって取り組む手法の一つとして、近年、カーボン・オフセットが注目され、広がりを見せています。ある航空会社がカーボン・オフセットサービスを導入したきっかけについて「環境保護、地球温暖化防止に関心の深いお客さまの声にお応えするため」としているように、企業がカーボン・オフセットに取り組む動機付けとして、消費者が環境配慮商品を求める姿勢が重要であることがうかがえます(図3-3-11)。


図3-3-11 航空会社のカーボンオフセットの仕組み

 カーボン・オフセットとは、いわば、協力による削減です。すなわち、市民、企業、NPO/NGO、地方公共団体、政府などの社会の構成員が、まず自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行います。その上で、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施することなどにより、その排出量の全部又は一部を埋め合わせる活動がカーボン・オフセットという取組です。平成20年は、カーボン・オフセットについて活発な取組が見られました。企業は環境への取組をアピールでき、消費者は消費行動に伴う環境負荷を減らす選択肢が増え、両者にとって有益な仕組みの1つとなるものです。一方で、いわゆるダブルカウントがないようにするなど透明性が確認できる仕組みとしなくてはなりません。

 カーボン・オフセットの商品・サービスや取組は様々に広がっています。神戸で開催されたG8環境大臣会合のカーボン・オフセットの取組は、会議場の電力使用等に伴って排出された約512トンの二酸化炭素排出量のうち、約45トンはグリーン電力証書を135,000kwh購入し、残りの約467トンは韓国やインドにおける風力発電事業によるCDMクレジットを550トン分購入することにより、その全量をカーボン・オフセットしています。

 また、販売価格(55円)のうちの5円を寄付金として購入者が負担し、CDMクレジットの購入などに充てる年賀状(カーボン・オフセット年賀状)も普及しています。平成20年のカーボン・オフセット年賀状寄付金により寄せられた7,464万円と、事業者からのマッチング寄付金を合わせた寄付金総額1億4,985万円により、38,175トンのCDMクレジットが取得されました。わが国の通常の家庭生活で発生する1日1人当たりの二酸化炭素排出量は約6kg(平成18年度)ですので、カーボン・オフセット年賀状により約636万人の1日分の二酸化炭素排出量が削減されたことになります。また、同ハガキ1枚当たりの二酸化炭素削減量は約2.6kgであり、16枚のハガキを購入することにより、1人当たりの1週間分の二酸化炭素排出量(約42kg)が削減できます。

 さらに、廃棄家電の収集運搬に係る温室効果ガス排出量をCDMクレジットの購入によりカーボン・オフセットするような、事業活動全体をカーボン・オフセットする取組もあります。

 前述のような、各主体が自らの温室効果ガスの排出量を認識し、これを削減しつつ、削減が困難な部分の排出量については他の場所での削減・吸収量等(クレジット)を購入し埋め合わせるというカーボン・オフセットの枠組み以外にも、様々な商品やサービスにおいて、クレジットの購入等による温室効果ガス排出量の削減と結びつけた取組が始まっており、多くの消費者の支持を得ています。

 ある地方銀行では、京都議定書第一約束期間の開始日である平成20年4月1日から、利用者が定期預金をすると、預金受入銀行が預金額の一定割合(0.1%)分の排出枠を5年間にわたり購入し、それを政府へ無償譲渡する取組が始まっています。当初募集予定金額の60億円を超える62億3千万円の預金があり、初年度分として2,000トンが政府に無償譲渡されました。この銀行では、その預金を温室効果ガスの削減に寄与する事業者の活動に融資する等、融資面でも環境配慮を促進しています。このようにして、預金を環境に配慮している企業や分野に融資してほしいという預金者の思いが、金融機関の取組により、環境に配慮した取組を促進したい事業者の思いと結びつくことになります。

 特定の通信販売事業者から商品を購入して宅配便を利用する際に、商品購入者がCDMクレジットの代金の一部を負担する宅配便サービスもあります。このサービスでは、商品購入者が1円(宅配便1個当たりの輸送にかかるCO2排出量346gに相当。)を負担する「CO2排出権付きの宅配便」を選択すると、更に商品販売事業者及び宅配便事業者がそれぞれ同額を負担し、合計1,038g(3円相当量)の排出枠を政府に無償譲渡するものです。このサービスは平成20年9月から始まり、21年4月現在、このサービスの利用によって、宅配便事業者が購入した排出枠1万トンのうち、86.76トンが政府に譲渡されました。この量は、サービスが提供されている半年間で考えると、約480人の二酸化炭素排出を一人当たり1日1kg削減した量に相当します。

 また買い物でためたポイントを、風力発電事業で創出されたCDMクレジットと交換しオフセットすることができるコンビニエンスストアの会員カードもあります。これは会員に代わってコンビニ本部が政府口座へ償却目的の移転を行うもので、現金での申し込み分と合わせて約1,000トンのクレジットが移転されています。

 このようなカーボン・オフセットや、温室効果ガス排出量の削減と結びついた商品やサービスは、地球温暖化対策の重要性を個人などにアピールし、自ら温暖化対策に貢献するための手段を提供する新たな手法として、未来開拓戦略においても、幅広い普及を図ることとしています。


地方公共団体の間の協力による二酸化炭素削減・吸収方策


 地方公共団体では、地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画の策定やこれに基づく対策の推進を始め、様々な取組を進めています。さらに最近では、複数の地方公共団体が協力して対策を進める例も出てきています。

 平成20年2月に、新宿区と長野県伊那市は、環境保全の連携に関する協定を締結しました。この協定により、間伐を要する伊那市の市有林を新宿区が事業主体となって間伐等を進めることで、伊那市の森林の二酸化炭素吸収量を増加させ、吸収量相当を新宿区内の排出量から相殺する取組が両地域間で始まります。新宿区は、平成18年2月に策定した「新宿区省エネルギー環境指針」において、新宿区における2010年度の二酸化炭素排出量を1990年度比で5%増に抑えることを目標にしています。伊那市では、森林整備の行き届かない市有林を有していましたが、これにより効率的な森林整備も進み、間伐による木材も建築材やパルプ材等に活かすことができます。また、伊那市の森林を活用した環境学習事業には新宿区民が参加しています。

 このように、両地域が不足している点を補い合う画期的な取組となっています。

 また、長野県では、森林整備に貢献する環境先進企業と森林整備を必要とする地域との連携を進めており、同県が二酸化炭素吸収量の認証を行います。新宿区と伊那市のこのような提携は、二酸化炭素を吸収する森林等、環境保全上価値のあるものが積極的に経済的にも評価されることによる、新しい物やお金の流れによる新しい経済のあり方を示している一例と言えます。このように、環境への貢献度合いそのものを取引することができるようになると、環境対策へ参加する主体が一挙に広がります。こうした仕組みが、今後は皆に広く活用されることが期待されています。


地元の木材を利用した公共施設 新宿区に提供されている森林 資料:環境省



(2)地域づくりと連携した環境負荷削減効果の高い取組

 環境対策は、個々の主体がすぐに取り組めるものもあれば、中長期的な視点でまちづくり、地域づくりから変えていくことも重要です。まちそのものを環境負荷の少ない構造にすることで、個々の主体の環境保全努力は大きな実を結びます。また、こうしたまちづくりをきっかけに地域が活性化することも期待されます。

 ア 各主体の協力で作られるコンパクトシティ

 青森市では、市街地の拡大に伴い、除雪費など多額の行政支出を余儀なくされたことをきっかけに、無秩序な郊外化の進展は、持続可能なまちづくりには大きなマイナスであるとして、平成11年にコンパクトシティの形成を基本理念に掲げた青森都市計画マスタープランを策定し、郊外開発を抑制した都市整備が進められています。

 また、青森都市計画マスタープランでは、交通体系に関する整備方針として、自家用自動車に過度に依存することのない、人と環境にやさしい交通体系の確立を目指して、中心部では徒歩と公共交通による移動が可能な交通体系を設ける方針とするなど、エリア別の交通体系を定めています(表3-3-2)。


表3-3-2 交通体系の違いを意識した青森市のコンパクトシティのあり方

 この青森市のコンパクトシティ形成の取組は、環境負荷の低減という観点で見た場合、どのような効果をもたらしているのでしょうか。今、他の同規模の地方公共団体と比較するため、全国の中核市について、同市がコンパクトシティ形成のための計画を策定した平成11年から平成17年までの乗用車に起因する二酸化炭素の排出量を比較してみます。

 一つの地域における乗用車による総走行距離は、人口、一人当たりの一年間に自動車により移動する回数及び一回の移動当たりの走行距離を掛け合わせることでとらえることができます。これに二酸化炭素排出係数をかけることにより、域内の一年間における自動車の乗用車に起因する二酸化炭素排出量を推計することができます。

 青森市ではこの間に、25パーセントの二酸化炭素排出量の削減を達成しており、他の中核市と比較しても、全国で5番目であり、首都圏、関西圏を除けば最も大きな削減割合となっています(表3-3-3)。これらの要因ごとに青森市での変化を分析してみますと、この間に一人当たりトリップ(移動)数は増加しているものの、トリップ当たり走行距離が大きく減少していることが分かります(表3-3-4)。実際に二酸化炭素排出量が削減されていることの要因としては、他の事情も含めて分析する必要がありますが、ここにコンパクトシティの形成により一定の成果が現われているとも考えられます。


表3-3-3 平成11年から17年までの中核市における自動車に起因する二酸化炭素排出量の変化


表3-3-4 平成17年及び11年の青森市における乗用車の走行の状況

 また、一人当たりの乗用車でのトリップ数を減少させることは、青森市を始め各地域での二酸化炭素排出量の削減に結びつきます。このためには、後に見ますように、自動車の移動に代替する公共交通機関を充実させること等が重要です。それは、ガソリン価格の高騰による支出の増大や渋滞による不便性等の影響を受けず、安定的に必要に応じた域内での移動が可能となるような地域をつくることに繋がります。

 青森市のコンパクトシティの形成は、商業の活性化としての空き地・空き店舗率の低減や、街の楽しみづくりとしての歩行者通行量の増加等を意図しながらも、環境負荷を低減する効果も有していたことが分かりました。都市機能の無秩序な拡散に歯止めをかけ、地域の実情に応じて、都市の郊外開発の抑制や都市の中心部への都市機能の集積・促進といったコンパクトなまちづくりに取り組むことは、移動に要するエネルギー消費や除雪費用の削減、中心市街地の活性化などの効果も有しています。

 このように、都市機能の無秩序な拡散に歯止めをかけ、地域の実情に応じて、都市の郊外開発の抑制や都市の中心部への都市機能の集積・促進といったコンパクトなまちづくりに取り組むことで、移動に要するエネルギー消費や除雪費用の削減、都市機能の集中による活性化などの効果も期待されます。こうした持続可能なまちづくりを進めるには、広範な関係者の協力が不可欠です。このように、地域の利益に根差した動きが、地方公共団体の中で広がっていけば、環境負荷が少なく活気にあふれた地域社会づくりが進むものと期待されます。


インフラが変える交通手段の選択肢


 ドイツ、ミュンスター市では、人口28万人に対して自転車が30万台あり、自転車所有率がドイツで最高です。ミュンスター市は、自転車利用を優先させるため、自転車の環状高速道路(アウトバーン)、主要道路の自転車専用道、自転車専用の標識・信号、駅前の地下駐輪場(3,000台収容)等の整備が行われています。こうした施策により、外出の交通手段として自転車が利用される率は43.1%にも上ります。これによる二酸化炭素削減効果を見積もってみます。ドイツの乗用車保有率から計算すると、28万人の市民がいるミュンスター市にはおよそ15万8,000台の自動車があり、これらの自動車保有者の43%が、1日の中で1回だけ近距離(1km)を自転車で移動すると仮定した場合、約12トンの二酸化炭素排出が抑えられることになります。(注:自家用乗用車のエネルギー消費原単位はわが国の数値(0.1786kg-CO2/人)で計算)

 愛知県では、環状鉄道線の沿線の岡崎市、瀬戸市、春日井市及び豊田市の4市が、通勤時の自動車利用を減らし、渋滞緩和、大気汚染物質及び二酸化炭素の排出削減を目指した取組を実施しました。平成18年度に行った「チャレンジECO通勤」と名付けたこの取組には、41の事業所、団体が参加しました。この取組により、通勤時の排出量として、5日間で約2,700kg、約27%の二酸化炭素排出量を削減することができました。


 イ 街区の造り替えによる環境負荷の低減

 (ア)住宅地の熱環境改善による二酸化炭素の排出削減と快適性の向上

 都市全体の構造の改革より狭い地域での環境改善の効果をみてみましょう。具体的には、街区単位に焦点を当て、温室効果ガス削減と都市の快適性や生活の質の向上を両立するために、密集した住宅地で熱環境を改善する方法とその効果を見ていきます。

 a 熱の発生が少ない街区をつくる

 建物や地面の被覆の表面温度が高くなり、熱を蓄える材質で覆われる割合が高いと、街区に熱が蓄えられ、ヒートアイランド現象の要因となることに加え、夏季において空調などに必要なエネルギー消費はなかなか削減されません。ここに示す新しい街区は、顕熱(大気を暖める要因となる熱)の発生が少ない、近い将来の低炭素社会の街区です。図3-3-13、3-3-14に示すように、街区全体と個々の住戸の随所に顕熱が発生しにくい工夫をしています。例えば、中層集合住宅に集約することで緑地(緑地と川の面積)率を40%程度、屋上菜園も含めると80%程度を確保し、壁面も緑化しています。また、暗渠であった小川を再生し、その水を植栽や歩道への散水に利用します。さらに、個々の住戸は、熱を蓄えにくい壁面とし、窓も夏季の室内に入る日射を遮るようにしています。こうした熱環境の改善が、冷房の需要を減らし、エネルギー消費を抑えて、二酸化炭素の排出を減らします。緑に囲まれた街区はヒートアイランド現象も緩和し、快適な屋外空間となります。

 特に、既存街区と比べて専有部分と共有部分を合わせた居住空間を約2割増やして生活の質を向上させていること、他方で、熱環境の改善による省エネ効果に加えて先進的な設備・機器の導入により大幅な省エネルギーが可能となることがこの街区の特徴です。心地よい緑に囲まれ、お年寄りから子どもまで世代間交流が盛んなコミュニティが二酸化炭素の排出が少ない環境共生型の生活を送っています。

 以下では、屋外の熱環境対策と建物の次世代省エネ基準への対応がもたらす二酸化炭素排出量の削減、ヒートアイランド現象の緩和、快適な屋外空間の形成の効果をさらに細かく検討しました。

 b 熱環境改善の効果

 図3-3-13に示す新しい街区について、真夏の晴天日の電力消費がピークになる条件でシミュレーションしたところ、屋外の熱環境対策と建物の次世代省エネ基準への対応により、個々の住宅の冷房に係る電力等が削減され、太陽光発電などの2010年に導入可能な最先端機器を利用した効果と併せて、二酸化炭素排出量は約85%削減されました。2030年頃に普及していると考えられる機器の場合は、高効率の太陽光発電の効果も加わり、100%削減された上でさらに20%の余剰電力が生じることが分かりました(図3-3-19)。また、大気への顕熱の指標であるHIPの値が30℃から15℃まで下がり、日没後、HIPは0℃程度となり、顕熱の放出はほぼゼロになります(図3-3-18)。

 つまり、この街区は、熱を蓄えにくい材料などで覆われているなど、十分な熱環境対策が行われているため、日没後にすっと冷え、夜間にヒートアイランド現象を起こすような蓄熱が少ないと言えます。さらに、暑さの体感指標の一つであるMRTの値について、子どもたちの遊び場で比較します。既存街区の道路では日射によりアスファルト道路面の表面温度が高温化し、MRTは40℃近くに達しますが、新しい街区の欅の集会所付近では8℃も下がることが分かります(図3-3-20)。なお、本検討では、現時点、2010年時点及び2030年時点の設備・機器による二酸化炭素削減量の比較について、運用時の値で比較しています。

 省エネ対策は、長期的な視点に立つと、高効率機器の導入だけでなく、街の構造から検討することが大切です。このことにより、二酸化炭素排出量の削減に加え、快適な屋外環境や生活空間の質の向上をもたらすことができます。地球生態系と共生する新しい経済社会づくりに当たっては、不可欠の政策になるものと言えます。


図3-3-12 既存街区のイメージ、図3-3-13 新しい街区の全体イメージと改善点、図3-3-14 新しい住棟の仕様、図3-3-15 1日の生活パターン(タイプB)、図3-3-16 夏季日中(12時)の表面温度分布、図3-3-17  夏季日没後(20時)の表面温度分布、表3-3-5  導入予定の建物性能(設備機器)、表3-3-6  全戸の家族構成


図3-3-18  ヒートアイランドポテンシャルの日変化(夏季晴天日)、図3-3-19  夏季・冬季におけるエネルギー消費量と二酸化炭素排出量、図3-3-20  生活空間の熱的快適性(MRT)の状況

 (イ)温室効果ガス排出削減の目標を掲げたまちづくり

 次に、実際のまちづくりで進められている温室効果ガス排出削減を目指した取組を見ていきます。地域が一体となって取り組むまちづくりにおいては、関係各主体の事業を促すだけでなく、地方公共団体が主導して各主体間の連携と協力を図ることが特に重要です。これにより、地域で共有する環境目標の達成が計画的に進み、併せて地域活性化も期待できます。

 ここでは、地区の再開発を進めるに当たり、中長期的視点に立って、地区全体の二酸化炭素排出量削減目標を掲げ、様々な環境改善策を進めていこうとしている東京都千代田区の飯田橋駅西口地区と大阪府摂津市の南千里丘地区の事例を紹介します。

 a 地域のまちづくりにおける配慮

 −二酸化炭素排出原単位の削減目標を盛り込んだ飯田橋駅西口地区のまちづくり−

 東京都千代田区は、平成19年12月「千代田区地球温暖化対策条例」を制定し、中期目標として2020年までに、区内の二酸化炭素排出量を1990年比で25%削減することとしています。同区では、電力会社による二酸化炭素排出原単位の削減対策に加え、区内の中小既築ビルの省エネルギー対策、街区・地区の面的対策を重点的に進めるとともに、再生可能エネルギーなどの導入を促進して目標を達成することとしています。特に、既築ビルの省エネルギー化を進めるため、大企業に蓄積されている省エネルギーの手法やそのコスト・ベネフィットなどの情報を中小ビルに活かすなどのグリーンストック作戦を展開していくこととしています。同区は、平成21年1月、内閣官房地域活性化統合事務局により、環境モデル都市として選定されました。

 さらに、同年3月には、環境モデル都市として温室効果ガスを1990年比で2020年に25%、2050年に50%削減するという目標を達成するための環境モデル都市行動計画も策定し、公表しています。

 平成20年には、地球温暖化対策推進法が改正され、都道府県並びに指定都市、中核市及び特例市は、地方公共団体実行計画において、その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策に関する事項を定めることとされ、また都市計画その他の温室効果ガスの排出抑制等に関係のある施策について、当該施策の目的の達成との調和を図りつつ地方公共団体実行計画と連携して温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意することになりましたが、その他の市町村についても、都市計画等と連携した温室効果ガスの削減が期待されます。

 千代田区の飯田橋駅西口地区は、5つの鉄道路線が結節する都心有数の交通の要衝である飯田橋駅前に位置し、新たな業務、居住機能の集積が進んでいる地区です。同区では同地区の開発を街の魅力向上につなげるための基盤整備を目指し、平成20年6月に都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づく「飯田橋駅西口地区地区計画」を決定しました。

 同地区計画においては、区全体の地球温暖化対策を牽引する取組として、建物の省エネルギー化や二酸化炭素の削減、地区内建物間での連携によるトータルな環境負荷低減を推進することとしています。また、周辺地区との連携を推進して、地区周辺を含めた環境対策を図ることも目指しています。

 加えて、千代田区においては、今後飯田橋駅西口地区の再開発に当たり、地球温暖化防止条例、環境モデル都市行動計画等と飯田橋駅西口地区地区計画と相まって、建築物の機能更新の際には、エネルギー使用の合理化を図るとともに、資源の適正利用等の環境改善に向けた取組を計画的に進めていくこととしています。特に、二酸化炭素の排出削減について地区内の平均二酸化炭素排出原単位を、原則として、区内の業務部門に係る平均二酸化炭素排出原単位の6割以下とすることとしています。

 地区内では建物の省エネルギー対策として、高断熱ガラスによる熱負荷低減、省電力照明の使用を実施するほか、緑化、保水性舗装等を実施することにより、上述した業務部門の原単位の削減を実現し、2012年(平成24年)には、容積率の緩和による建物の床面積の増大を見込んでも、地区内の建物からの二酸化炭素排出総量を現行区域における総量と比較して5%以内の増加に抑えることを目指しています。

 さらに、千代田区では、事業者等と連携協力を図りつつ、同地区における建物からの二酸化炭素排出総量を2020年には1990年ベースより約25%削減することを目標とし、地区内に生じた廃熱の周辺地区における利用、周辺地区に集中的に設置した太陽光発電装置による電力の地区内における利用、地区内及び周辺地区の建物におけるエネルギー使用量データをコンピュータシステムにより収集し、収集したデータを基に専門家による省エネルギーに関するアドバイスを行うエリアエネルギーマネジメントシステムの導入などの対策を行うことにしています。

 b 民間ディベロッパーと市役所との協働による工場跡地再開発

 −二酸化炭素排出量及び夜間のヒートアイランド負荷の低減を目指す摂津市南千里丘地区の再開発−

 大阪府摂津市では、市内の南千里丘地区において、大規模工場移転後の跡地のまちづくりを行い、私鉄の新駅を中心に、市の総合計画に基づき、「未来をひらく“高感”都市せっつ」を創り上げることを目的として、「南千里丘まちづくり構想」を平成18年5月に取りまとめました。同まちづくり構想では、深刻さを増す地球温暖化問題への対応のため、同地区を地球温暖化防止モデル地区と位置づけるなど環境や景観に配慮したまちづくりの推進に併せ、「健康・福祉・医療」「文化・教育」の機能集積と交流拠点づくりを基本コンセプトとして、官・民が一体となって、様々な事業を進めています。

 平成19年には、新駅を設置する私鉄会社と民間活力を導入したまちづくりに関する提案を行った民間事業者と市役所との三者間で「南千里丘まちづくり地球温暖化対策モデル地区に関する覚書」が締結され、地球温暖化対策の実現に向けて、関係者間の連携及び協力に努めること、温室効果ガスの削減に関する事業の効果の検証等を実施していくことについて合意が成立しました。

 同地域においては、二酸化炭素排出量を、新たなまちの完成時である2013年春頃に大阪地域の平均的な住宅や業務用施設等を前提に推計した現状値に比して25%削減することを目標としています。また、ヒートアイランド対策については、まだ大部分の住宅が木造であり、ヒートアイランドに係る気象データが整備され始めた概ね30年前の気温に戻すために必要となる熱負荷量として、夜間の熱負荷量を現状より12W/m2削減することを目標としています。

 これらの目標達成に向けた対策としては、民間事業者による住宅・業務施設における白熱灯の蛍光灯ランプへの変更、住民による家電製品買換え時のトップランナー家電への買換え促進、駐車場の削減による公共交通機関の利用促進などが計画されています。また、市役所により、道路歩道部等での連続的な植栽設置、透水性アスファルト舗装等の実施、雨水利用、省エネ方式の照明灯設置、照明灯等への太陽光パネル設置、建物敷地内での植栽による緑化率(緑被率)の最低25%確保といったことが計画されています。さらに、民間事業者によるエネルギー使用状況のモニタリング、エネルギー消費量・二酸化炭素排出削減量の評価システムや、地区単位での排出量取引の仕組みの導入等も検討されています。現在、これらの目標値の設定や対策効果の評価手法に関する検討や検証に関する調査が行われているところです(図3-3-21)。


図3-3-21 南千里丘まちづくり構想土地利用ゾーン概要図(案)

 まちの玄関口となる新駅(摂津市駅)では、駅に起因する二酸化炭素排出量をゼロにするわが国初の「カーボン・ニュートラル・ステーション」への取組が進められています。照明やエレベーターなどの電力使用や水道使用により、新駅から排出される二酸化炭素排出量は年間約65トンと想定されています。そのうち約35トン(排出量の54%)は太陽光発電装置の導入やLED照明などの省エネルギー機器の導入などにより削減される予定です。また、直接的に削減困難な約30トン(排出量の46%)ついては、排出削減クレジットの購入などにより相殺し、新駅に起因する二酸化炭素排出量をゼロにする予定です。

 2006年度における鉄道部門の二酸化炭素排出量は全国で約760万トンで、そのうち約3割が駅から排出されています。仮に全国の駅がすべてカーボン・ニュートラル・ステーションとなった場合、年間約228万トンの二酸化炭素排出削減が見込まれます。

 以上のように、21世紀のまちづくりに向けた取組が各地で試み始められています。今後ますます各地域の特性を踏まえた知恵や工夫が都市構造の改善を通じて、地球温暖化やヒートアイランド等の様々な問題の解決につながっていくとともに、地域の活性化に貢献することが期待されます。

 ウ 行政、民間団体などの協働で進める環境教育と実践

 地域の環境保全の取組をまちづくりや地域づくりと一体となって進めていくためには、多様な主体の人々の参加と協力が不可欠です。各地域の行政と市民、関連する取組を行っている民間団体や、学校等の教育機関、事業者等が互いに積極的に協力して取り組むパートナーとなって力を合わせていくこと、すなわち「協働」が重要です。そのためには、そのような協働による持続可能な地域づくりを担う人材を育成していくことも大きな課題になっています。

 (ア)埼玉県東松山市の環境まちづくり

 埼玉県東松山市では、行政と民間団体とが互いに対等の立場で協力することなどを内容とする「協定」を結んでまちづくりを進めていることで有名です。同市では、単に協定を結ぶことが目的とはされず、実際に力を合わせることが不可欠な主体が積極的に役割を果たすことに力点を置いて協定が結ばれています。

 例えば、障害者の作業所で作ったリサイクル製品の販路拡大については、福祉関係者との付き合いの中だけでは、なかなか実現が困難でしたが、環境イベントに参加したところ、それまで全く売れなかった廃油石けんが飛ぶように売れました。その後、障害者団体は、更にモデル地区での廃食油の回収などにも参加した後、協定に参加してもらうことになりました。

 このように、実際の活動等を通じた協働の実績を踏まえた相互のルールとして協定を検討し、その検討結果を確認する形で協定を締結したことが、協定といった対等関係に立つ、一見拘束力の弱いルールが個々の地域における具体的な役割分担に関しては、より強い力を発揮することになっていることが注目されます。

 (イ) 大阪府「西淀川ESD協議会」における持続可能なまちづくりへの取組

 わが国の提案で開始された「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の下、世界の国々で取組が進められています。環境省では、平成18年度から3年間、地域におけるESDの実践モデルをつくるため、持続可能な地域づくりに向けた課題に取り組む地域を公募し、支援を行いました。

 モデル地域の1つ、大阪府「西淀川ESD協議会」では、持続可能なまちづくりの実現を目指す事業に取り組んでいます。協議会のメンバーである大阪府立西淀川高等学校では、必須科目「環境」の授業で「菜の花プロジェクト」(菜の花を栽培し、採取した油で調理を行い、その廃油で自動車を走らせ、排出された二酸化炭素を菜の花が吸収するという循環型のプロジェクト)に取り組みました。放課後には高校生達が自主的に同好会活動を行い、公害地域の再生を目指す財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)を中心に、地元の大学や中学校、行政、社会教育施設、自治会、ガールスカウトなど他の協議会メンバーと連携しながら、活動の場を広げています。このように「ESDによる持続可能な地域づくり」をキーワードにした地域と教育機関等との連携の下、まちづくりが進み、また、生きた環境教育が進むという相乗効果が生まれています。


図3-3-22 「菜の花プロジェクト」

 また、環境省では、これらモデル地域の取組の詳細やモデル事業でESDを進めるためのヒントを紹介した「地域から、学ぶ・つなぐ39のヒント」を取りまとめています。(http://www.env.go.jp/policy/edu/esd/achievement/index.html参照)


写真3-3-6 地域から、学ぶ・つなぐ 39のヒント

 エ 農業団体との協働によるエネルギーの供給

 太陽光や太陽熱、水力や風力、バイオマス、地熱、波力、温度差などの再生可能エネルギーは、自然環境の中で繰り返し再生され、持続的に利用することができます。

 中でも水力発電は、二酸化炭素の排出量が少なく、純国産の再生可能エネルギーであることから、大規模な水力発電を中心に開発が行われました。しかし、これらは自然環境を大きく改変することになるなど自然環境保全上問題となる面も有していました。一方、小水力として発電に利用可能な水流は、身近にある小河川や農業用水、上下水道など様々な場所があります。

 平成19年に新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(平成9年法律第37号)が改正され、出力1,000kW以下の小水力発電が、新エネルギーとして新たに加えられたことから、地方公共団体を中心に導入に向けた動きが広がっています。

 小水力発電の特徴としては、先に述べた水力発電の特徴に加えて、建設時の環境改変などの負荷が少なく、短期間で設置が可能であること、地方分散の小電力需要に臨機応変に対応が可能であること、が挙げられます。地元の身近な環境資源に着目して地域社会が知恵や工夫を活かしてその活用を図ることも今後の環境対策の大きな流れと言えます。

 長野県大町市では、北アルプス山麓の複合扇状地に総延長220kmにおよぶ農業用水路が整備されていることから、この急峻な斜面と豊かな水量を生かした、小規模水力発電を中核とした自然エネルギーの開発や普及が進められています。

 平成17年に策定された「大町市地域新エネルギービジョン」を受けて、平成19年に、(財)新エネルギー財団とNEDOの補助を受けて、小水力発電施設整備事業が始まりました。これは、町川用水路の未利用落差を有効利用するもので、農業用水に完全従属する流れ込み方式の発電所です。

 町川用水路は豊富で安定した水量が確保でき、最大1.1m3/sを取水し、急勾配な地形(有効落差16.0m、水圧管延長83.7m)を利用して、最大出力140kWの発電が可能です。

 発電した電力は、近隣のし尿処理場で自家消費され、年間569トンの二酸化炭素の排出が抑制されることから、環境・エネルギーの学習の場としても期待されています。

 また、大町市に活動拠点をおく「NPO地域づくり工房」は、大町市内の3カ所に1kW前後のミニ水力発電による環境学習施設を設置し、そのうちの一つは地元の漁業協同組合との契約で整備しています。

 これらの大町市の取組は全国からも注目され、各地からエコツアーや視察研修で多くの人々が訪れることから、地域の活性化にもつながっています。

 オ 地域特性を踏まえた汚水処理施設の整備による健全な水環境の保全・創出

 河川や湖沼等の健全な水環境を保全し、公衆衛生や生活環境を向上させるためには、地域の生活基盤である汚水処理施設を整備し、家庭や工場等から排出される汚水を適切に処理することが重要です。平成19年度末時点の汚水処理人口普及率は、全国平均で約84%に達しており、全人口の約7割を下水道、約1割を浄化槽や農業集落排水施設等で担っています。一方で、地方都市の郊外部や中小市町村等においては、依然として約2000万人にのぼる未普及人口を抱えており、早急な汚水処理施設の整備が望まれています。


図3-3-23 都市規模別の汚水処理人口普及率(平成19年度末)

 また、水質保全上重要な湖沼等の閉鎖性水域においては、汚水処理施設の普及を重点的に推進するとともに、富栄養化により赤潮・青潮の発生が問題となっていることから、その原因となる窒素・リンを除去するために高度処理の導入を推進しています。

 汚水処理施設の整備については、一般的に、家屋間の距離が離れている人口分散地では、個別処理である浄化槽が経済的であり、人口密度が高くなるにつれて集合処理である下水道や農業集落排水施設等が経済的となります。このため、各都道府県で策定する汚水処理に係る総合的な計画である「都道府県構想」について、近年の人口減少傾向等の社会情勢の変化も踏まえた経済性や水質保全上の重要性等の地域特性を十分に反映し、適切な汚水処理施設を整備するよう、早急な見直しを推進しています。


図3-3-24 集合処理と個別処理の区域分けの考え方

 汚水処理施設の普及により、例えば河川や湖沼に浮かぶ泡や臭いの減少等の水環境の改善に加えて、地域の生活・社会基盤の整備による定住促進や産業振興、観光地の魅力の向上など、地域の活性化に貢献しています。

 さらに、汚水処理の過程で発生するバイオガスや汚泥等のバイオマスは、エネルギーや資源としての有効利用が図られており、処理水についても、水洗トイレ用水への利用に加えて、せせらぎ用水や河川の水量の維持にも活用されるなど、貴重な資源の循環利用を図っています。


乗用車のCO2排出量を削減する−低燃費車や公共交通への転換−


 運輸部門はエネルギー起源二酸化炭素排出量の約2割、その中で自動車からの排出が約9割、さらに自家用乗用車(以下、「乗用車」という。)はその約6割を占めます。つまり乗用車は運輸部門のうち約半分の二酸化炭素を排出しています。少し前を振り返ってみると、わが国では、1990年代に乗用車の大型化と台数の増加が進み、乗用車の走行キロ燃費が低下したため、結果として運輸部門全体の二酸化炭素排出量を押し上げることとなりました。その後、2000年代に入ると低燃費車が増加し、走行キロ燃費が向上したため、二酸化炭素排出量が頭打ちとなっています。


自家用乗用車の走行キロ燃費

 この背景としては、上図のとおり複数の要因が考えられます。例えば、自動車税低減(平成元年)が普通乗用車(いわゆる3ナンバー)の増加要因となり、自動車税制のグリーン化(平成13年から本格実施)が低燃費車の普及を進める要因となるなど、税制もその要因の一つとして関係したと考えられます。

 乗用車起源の二酸化炭素排出量は、10年ほど前まで、増加傾向を続けていましたが、2000年代に入り乗用車の旅客輸送量が頭打ちとなったため、減少傾向となりました。今後も排出削減を続けていくためには、走行キロ燃費の改善や燃料の低炭素化に加えて、輸送効率の改善やモーダルシフト(手段転換)により乗用車の走行量を削減し、また、集約型の土地利用やITの活用により旅客輸送量そのものを抑えることで、利便性や生産性を向上させつつCO2排出量を減らすデカップリングを進めていくことが求められます。


自家用乗用車起源の二酸化炭素排出量と輸送旅客量の関係

 乗用車からの二酸化炭素の排出を削減するには、低燃費車や公共交通へ転換する方法があります。

 まず、地域内の通勤や買い物など身近な自動車利用に関して二酸化炭素排出を削減する効果について見ていきましょう。(独)国立環境研究所が行った「身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究」によると、次世代電気自動車の実路走行試験により、ガソリン軽自動車(4速自動変速機)から電気自動車(2人乗り)への乗り換えで約6〜7割、ガソリン軽自動車(無段変速機)から電気自動車(2人乗り)への乗換えで約5〜6割の二酸化炭素排出削減が期待できるとの結果でした。

 また、低炭素社会づくり行動計画では、2020年に新車販売の2台に1台を次世代自動車にすることを目指していますが、同研究所では、ハイブリッド乗用車の急速な普及を進めた場合の二酸化炭素排出削減効果を試算しています。その試算では、2020年までに乗用車の新車販売が全てハイブリッド乗用車となって、その普及率が40%に達した場合、運輸部門の二酸化炭素が基準年比で約3%の削減になると推計しています。


軽乗用車から次世代電気自動車への乗り換えによるCO2削減効果

 次に、乗用車から公共交通への転換が進んでいる例を見てみましょう。富山県富山市では、モータリゼーション等による富山港線の利用者数減が運行本数を減らし、さらに利用者数が減るという悪循環を絶つため、当該路線(6.5km)につながる路面電車化した路線を新設(1.1km)し、本格的なLRTとして再生を図りました。富山市は自動車への依存率が全国的にみても高く、交通手段別分担率は、自動車が約72%、公共交通機関は4.2%にとどまっていました。富山港線のLRT化後、平日の1日平均利用者数は、JR西日本時代の約2,200人から平成18年には約4,900人(2.2倍)に増えました。休日の1日平均利用者数も5.3倍に増加し、特に高齢者の利用割合が高くなっています。また、バスや自動車からの乗換えが平日で約25%、休日で約22%に上り、自動車利用による二酸化炭素排出が削減されたと考えられます。富山市のLRT導入は、公共交通を軸とするコンパクトなまちづくり、自動車交通に依存しない低炭素都市の形成だけでなく、少子・高齢化時代におけるバリアフリー都市の形成、観光客や住宅着工件数の増加等の経済効果など多方面に効果が見られました。


運輸部門の二酸化炭素排出量の削減シナリオ



(3)地域での地産地消等の取組

 わが国の食糧自給率はカロリーベースで約4割、木材自給率は約2割に過ぎず、私たちの暮らしは、多くの輸入品によって支えられています。

 食料の輸送に伴う環境負荷をあらわす指標として「フード・マイレージ」という考え方があります。これは食料の輸送量(トン)に輸送距離(km)を掛け合わせて求められる数値で、生産地と消費地が遠くなるとその分輸送にかかわるエネルギーがより多く必要となり、地球環境に大きな負荷を与えることをわかりやすく示すものです。平成12年の農林水産省の試算によると、わが国のフード・マイレージの総量は、世界でも群を抜いて大きく、第2位の韓国や第3位のアメリカと比べ約3倍に当たります(図3-3-25)。フード・マイレージを総輸入量と平均輸送距離でみると、わが国の食料輸入量はフランスを除く欧米各国の7〜8割の水準ですが、平均輸送距離をみると、欧米各国はわが国の2〜4割にとどまっています。つまり、わが国の食料輸入の特徴としては、その量の大きさに加え、諸外国と比べてかなりの長距離輸送を行っていることが分かります(図3-3-26)。


図3-3-25 各国の輸入食料のフード・マイレージの比較


図3-3-26 各国の食料輸入と平均輸送距離

 わが国の主要生鮮野菜のうち、代表的な4品目の輸入量とフード・マイレージの推移を図3-3-27に示します。たまねぎをはじめ輸入量が大きく増減しているのと比べ、フード・マイレージが全体として減少傾向にあることから、輸送距離が徐々に減少していることが分かります。ただし、フード・マイレージは食料の輸送に伴う環境負荷の指標で、例えば、生産過程で大量の化学肥料を使用したり、ハウス栽培を行ったりすることなどによって、生産から消費までの全体の環境負荷をみると、輸入と国産で逆転することもあります。この4品目を仮にすべて国内産に置き換えたとすると、海外輸送に伴う二酸化炭素を3千CO2トン程度削減できます。


図3-3-27 主要生鮮野菜4品目の輸入量とフード・マイレージの推移

 私たちの日々の生活の中での小さな選択の積み重ねが、結果として地球環境への負荷を大きく左右します。私たち一人ひとりが賢い消費者として、できるだけ地産地消を心がけたり、持続可能な方法によって生産された商品を購入したりすることによって、地球環境にも大きく貢献することができるのです。このような仕組みを整えることも、地球生態系と共生する経済社会づくりの一つの鍵となる取組です。以下では、いくつかの実例を見てみましょう。

 ア 地域産木質バイオマスによるエネルギー供給

 木質バイオマスは、再生可能エネルギーとしてその利用拡大が期待されており、仮に国内の2005年時点における未利用バイオマス(製材工場等残材、建設発生木材、林地残材)約600万トンの約40%にあたる約240万トンを利用した場合の温室効果ガスの削減効果を算定してみます。240万トンの未利用バイオマスを木質ペレットに加工して利用すると仮定した場合、灯油に換算すると114万kLに相当します。北海道、東北地方の約610万世帯での年間灯油消費量が約565万kL(平成19年)であることから、仮にこれを木質ペレットで置き換えた場合、約20%の世帯の石油ストーブに相当します。灯油の消費量が多い北海道、東北地方に割り当てた場合の試算ですので、各地で木質ペレットが普及すれば、多くの世帯の燃料を置き換えることが可能と考えられます。

 ペレットストーブの販売量は、東北地方のある2社の実績では、平成16年から20年にかけて約1.4倍に伸びていました。ペレットストーブと石油ストーブについて、木造20畳程度を暖房し1日の運転時間12時間で10月〜3月に使用すると仮定して、初期費用及び運転費用を比較すると以下のとおりです(表3-3-7)。


表3-3-7 ペレットストーブと石油ストーブのコスト比較

 ペレットストーブは、化石燃料を再生可能エネルギーに切り替えられる点で温室効果ガス削減に非常に有効です。しかし、その一層の普及を図るためには、コストを抑えたり、使い勝手を良くするなどの対策が必要と考えられます。

 イ 地域の生きものを活かした取組

 各地域には、それぞれの土地の特性に応じた生きものが生息しています。地域に固有な希少種から、地域の農作物に被害を与える有害鳥獣、本来地域にはいない外来種などは、活かし方によっては、地域の発展をもたらすものともなります。以下では、野生動物の再導入が地域を活性化した例、有害鳥獣や外来種を地域資源として有効活用する例などを見てみましょう。

 (ア)コウノトリが運ぶ地域の活性化

 平成17年9月に、兵庫県豊岡市で、人工繁殖させたコウノトリが試験放鳥されました。昭和46年に豊岡市で国内最後の野生のコウノトリが死亡してから34年ぶりのことで、野外で一度絶滅した野生動物を、野生復帰させるわが国では初めての試みでした。地域開発に伴う生活環境の悪化とともに自然界から姿を消したコウノトリと、ともに暮らせる環境を再び取り戻し、その環境を維持していくために、豊岡市では様々な取組が行われ、地産地消が盛んになったり、観光客が増加したりするなど、地域の活性化が図られています。

 豊岡市では、試験放鳥に先立つ平成17年3月に豊岡市環境経済戦略を策定しました。これは、コウノトリをシンボルとして、環境と経済をともに発展させることを目的として、「豊岡型地産地消の推進」「豊岡型環境創造型農業の推進」「コウノトリツーリズムの展開」「環境経済型企業の集積」「自然エネルギーの利用」の5本の柱からなります。環境をよくする活動により経済効果が生まれ、その経済効果によって環境をよくする活動が活発になり、さらに経済効果が高まるといった仕組みの構築を目指しています。

 具体的な取組としては、コウノトリの餌となる多様な生きものを育む無農薬や減農薬による水稲栽培があげられます。[1]無農薬や減農薬、[2]化学肥料の削減、[3]田んぼに水を張る期間を長くすることなどによる「コウノトリ育む農法」を確立し、この農法によって生産された米を「コウノトリ育む米」として販売しています。こうした農法は、雑草や水の管理に手間がかかるため、通常の米よりも3〜6割程度高い価格で販売されていますが、売れ行きは好調で、他地域の大手量販店でも販売されています。この農法による作付面積は、平成16年度は約16ヘクタールでしたが、平成20年度には183ヘクタールまで広がっています(図3-3-28)。


図3-3-28 コウノトリ育む農法による水稲作付面積

 また、観光面でも大きな効果があらわれています。豊岡市では「コウノトリツーリズム」として、コウノトリと地域の自然や文化、歴史、食、風景とのつながりを深く体験できる観光を推進しています。豊岡市立コウノトリ文化館の来館者は、平成16年度は約12万人でしたが、平成20年度には約42万人と、約3倍に増加しています(図3-3-29)。また、地域を訪れるリピーターが多いことも大きな特徴です。さらに、環境学習の一環として、国内外から多くの修学旅行生や研修生、視察団などが訪れています。慶応大学経済学部大沼教授のグループによると、コウノトリを目的とした旅行者の旅費や土産代は、年間総額約12〜30億円にのぼると試算され、さらに、こうした取組に賛同する企業や研究者などとの環境経済の取組のさらなる発展に向けた連携も深まっています。


図3-3-29 豊岡市立コウノトリ文化館の来館者数

 地域住民の理解と積極的な関与、そして多くの関係者による野生復帰と地域活性化に向けた地道な努力の積み重ねにより、コウノトリと共生したまちづくりの取組が地域の活性化に役立っています。


写真3-3-7 田んぼで餌をついばむコウノトリ


エネルギーの地産地消に向けた地域での取組


 環境モデル都市に指定された長野県飯田市では、エネルギーの地産地消に向けた取組が進んでいます。飯田市が今後進めようとしているのは、「おひさま」と「もり」の恵みを活かしたエネルギーによる地域の形成、すなわち、太陽光や木質バイオマスのエネルギーの活用です。飯田市は現在、豊富な森林資源を活かし、間伐材を利用したペレットの製造工場を市内に構え、公共施設でのペレットボイラーやペレットストーブの設置によりペレットの利用を進めてきました。また、太陽光発電等の分野では、出資者の9割以上を市民としている太陽光発電等への投資ファンドによる太陽光発電の普及で二酸化炭素換算約600トンの削減効果をあげている等、再生可能エネルギーへの取組について経験の蓄積があります。

 さらに飯田市は、これらの設備によって得られた自然エネルギーを地域で効率的に供給することを目指しています。すなわち、今後の街区更新によって生じた広場や青空駐車場には太陽熱集熱器を設置しつつ、街区内通路には温水の配管を敷設し、これを通じて熱エネルギーを個々の施設や住宅に供給する等、獲得した自然エネルギーを面的に効率よく利用しようとしています。飯田市ではこれまでにも、まちづくりを専門的に行う株式会社が中心となり、環境配慮に重点を置きつつ中心市街地の活性化を進めています。これまでに培っているノウハウを活かし、上述のような都市空間を活用した再生可能エネルギーのネットワークの構築について、まずは中心市街地において取組を進め、これをモデルとして地域全体に広めていこうとしています。

 これまでの取組による蓄積を活かしつつ、再生可能エネルギーの供給とまちづくりとを一体のものとして進めていることが飯田市の取組の特徴です。


市内で作られたペレットを利用するペレットボイラー ペレットボイラーは、ペレットの需要が大規模であり、夏季を含め通年であることが多く、ペレット利用の促進のために果たせる役割は大きいものがあります。


中心市街地にある環境配慮型施設 屋上の太陽光発電により、屋内住宅施設の給湯や床暖房、空調等のエネルギーを供給している。


 (イ)有害鳥獣や外来種を資源として活かす

 シカやイノシシなど地域的に増加した野生鳥獣や、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚による農林水産業や生態系への被害は依然として深刻です。こうした被害を防止するため、各地で野生鳥獣や外来魚の駆除が行われていますが、近年、これらの捕獲した動物を食品やペットフード、飼料などとして有効利用しようとする取組が各地で進められています。

 a 野生鳥獣の利用

 近年、中山間地域を中心として、シカやイノシシなどの分布域が拡大しており、農林水産業や生態系に大きな被害を与えています。野生鳥獣による農作物被害額は、年間185億円(平成19年度)にのぼります。こうした被害の軽減に向けて、生息環境の整備や有害鳥獣駆除などが行われていますが、捕獲数は年々増加しており、平成17年度には、全国でシカ約19万頭、イノシシ約22万頭が捕獲されています(図3-3-30)。これまで捕獲個体は、焼却したり、埋め立て処分することが一般的でしたが、捕獲数の増加に伴って、狩猟者などとも連携し、地域資源として有効活用しようとする取組が全国で進められています。安定供給や価格の面での課題もありますが、野生鳥獣の保護管理による生態系の保全と地域振興の両方に資する取組といえます。


図3-3-30 シカとイノシシの全国捕獲数の推移

 北海道では、エゾシカの分布域の拡大や生息数の増加により農林業被害が急増し、年間30億円前後の被害が報告されています。こうした中、エゾシカは本来貴重な自然資源でもあることから、北海道は捕獲したエゾシカの有効活用をエゾシカの保護管理の一環として位置付け、平成18年にエゾシカ衛生処理マニュアルを作成し、その普及を図っています。平成19年度には約12,000頭のエゾシカが食肉処理されています。

 島根県美郷町では、平成12年から町が中心となってイノシシ肉の資源化に取り組み、地域ブランド「おおち山くじら」として捕獲から精肉までの処理を迅速に行うシステムを構築し、これまであまり活用されていなかった夏場の有害鳥獣捕獲の個体も含め食品として利用することで、年間を通じて加工食品やペットフードなどを販売しています。

 b 外来魚の利用

 オオクチバスやブルーギルは北アメリカ原産で、食用を目的としてわが国に導入されましたが、在来の魚類や水生昆虫などを駆逐し、生態系や内水面漁業などに甚大な被害を与えています。このため防除の取組が各地で行われていますが、多いところでは年間数百トンにものぼる捕獲個体を埋め立てなどにより処分してきました。そこで、こうした捕獲個体を肥料や飼料として有効利用し、流域外から持ち込まれる肥料や飼料の量を減少させることにより、水域の富栄養化を防止する取組も行われています。

 滋賀県の推定によると、平成20年春の時点で琵琶湖には約1,500トンの外来魚が生息しているとされており、滋賀県は県漁業協同組合連合会や釣り人などの協力により、平成14年度より年間440〜570トンの外来魚を駆除しています。これら外来魚は魚粉に加工し販売されるなど有効利用が図られるとともに、食用化の検討もなされています。


写真3-3-8 琵琶湖で駆除された外来魚

 霞ヶ浦では、茨城県が平成8年より外来魚の駆除を行っており、平成20年度には約170トンの外来魚が回収され、魚粉にして農作物の肥料や家畜の飼料として利用されています。また、地元NPOが外来魚による魚粉を肥料として生産された農作物を地域ブランドとして販売する取組を行っています。



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