第2節 環境対策と世界の経済、国内の経済

 平成20年後半以降の世界の同時不況は、株価の下落や失業者の増加などにより、人々の生活を脅かしています。この不況下で、景気回復を優先して環境対策を後回しにするのではなく、100年後の社会を考え、むしろ環境の保全に資する分野に投資をしたらどうでしょう。第1節で見たとおり、100年後の人類が地球の生態系と共存できる社会の構築に向けては、膨大な投資が必要です。環境を守ることが経済的に報われるような社会へと変革する絶好の機会です。そうした積極的な発想によって、不況を乗り切る鍵を環境対策に求める動きが世界的に広がっています。いわゆる「グリーン・ニューディール」と呼ばれ、環境負荷を減らすとともに、経済効果や雇用効果を生み出そうとする政策です。わが国は、環境政策の持つ経済的な意義に関して、多くの経験を有しています。以下では、環境対策へと向かう国際機関や各国の動向、わが国におけるグリーン・ニューディール施策の最近の動向をとらえ、また、国境を超えた物の流れや環境対策における協調を通じて、わが国と他の国々とが密接なかかわりを持っていることについて論じます。

1 環境対策が牽引する世界経済

 国際機関や諸外国は、近年、環境対策の経済的効果等について見積もりを進めています。また、実際に環境対策と経済対策を同時に進めようとする政策が打ち出されています。ここでは、そうした環境対策へと向かう世界の動きについて見てみます。


(1)環境対策による経済や雇用への効果

 ア 国際機関における見積り

 環境保全のための取組と、雇用の創出や産業の育成等の経済的な取組、そして社会的弱者の保護等の社会的な取組は、そもそも対立するものと考えるべきではありません。むしろ、これらをいかにして組み合わせながら進めていくかが求められています。

 UNEPを始め国際機関では、既に、様々な提言がなされています。平成20年9月、UNEP、国際労働機関(ILO)等の国際機関が協力し、「グリーン・ジョブ:持続可能な低炭素社会における働きがいのある人間らしい仕事を目指して」(以下、「グリーン・ジョブ」という。)という環境と経済に係る分析を行った報告書を作成しました。同報告書では、環境の質の保全や回復に実質的に貢献する労働を「グリーン雇用」と定義し、エネルギー、建設業、運輸、製造業、食料と農業及び林業の6つの分野をとりあげて分析しています。そして、これまでのグリーン雇用は多くの分野において限定的であったものの、今後、世界的に、低炭素で持続可能な経済へと移行していく中で、グリーン雇用の創出が加速される見込みがあるとしています。

 例えばエネルギー供給の分野では、化石燃料による発電と比較して、再生可能エネルギーの方が、設備当たり、発電量当たり、あるいは投資額当たりの雇用創出量が高いと論じています。2006年における世界での風力発電による雇用量を30万人、太陽光発電による雇用量を17万人、バイオマス発電では117万4千人等とまとめています(表3-2-1)。また、各国には今後更にグリーン雇用を創出する潜在的な能力があるとしています。世界的に見て、2030年までに風力発電では210万人、太陽光発電では630万人の雇用を増やすことができ、バイオマス発電に関連して、原料を生産する農業や製造業では、1,200万人まで雇用することができると予測しています。また、このような経済のグリーン化のためには政府の役割が必要不可欠であり、環境の保全に資する企業活動への需要が高まり、利益を生み出せるような仕組みを作ることが企業、産業界からも求められているとしています。クリーン開発メカニズムCDM)や排出量取引のような炭素市場の整備、ヨーロッパの多くの国で採用されているような税制度のグリーン化、目標設定と義務化、再生可能エネルギーへのシフト等の政策は重要であると述べています。なお、同報告書では、世界では失業者や十分な賃金を受け取っていない労働者が多数いること、雇用の創出に苦慮している国があること等を挙げながら、グリーン雇用がこれらの問題の解決に資すること、グリーン雇用の拡大の動きは、きちんとした労働環境の確保等、持続可能で公平な経済を実現するための挑戦としてとらえる必要があるとしています。


表3-2-1 再生可能エネルギー分野での世界の雇用の見積もり

 さらに、UNEPは2009年の2月には、「グローバル・グリーン・ニューディール」という報告書を公表しています。ここでは、グローバル・グリーン・ニューディールの目的を、[1]短期的に、経済回復や雇用機会の創出や、社会的に弱い立場の人々の保護に貢献すること、[2]炭素への依存、生態系の損失、水不足を警告し、2025年までに、地球温暖化や生態系サービスの損失を止めることにおいて確かな前進をすること、[3]さらに、ミレニアム開発目標等の2025年までに世界の極貧を撲滅すること、としています。

 その上で、高所得のOECD各国は今後2年間に、炭素依存を減らすための各国における様々な行動に、少なくともGDPの1%を支出することや、国際社会として取り組むべきことを10の項目等にまとめて、その実行を求めています。

 このほか、UNEPでは、世界のエコノミストとともに、今後約2年間を視野に、「グリーン経済イニシアティブ」を始めました。このイニシアティブは、[1]自然がもたらすサービスの価値を評価し、GDP等の国民経済計算や国際勘定に組み込んでいくこと、[2]環境に関連する雇用の創出、そのための政策設計及び[3]経済のグリーン化を促進するための手法やマーケットシグナルの開発等3つの要素を柱としており、今後、約2年間に様々な調査を行い、その結果を踏まえ、各国に対し提言を行うこととしています。わが国においても、このような環境の価値の経済的評価や、環境対策と雇用の関係等、経済のグリーン化についての検討を進めることが求められています。

 イ 各国における見積り

 これまでも環境と経済との関係について分析を進めていたドイツでは、2009年1月に「環境経済報告書2009」を作成しました。同報告書では、2007年に製造された工業製品の5パーセントが環境関連製品であり、環境関連分野の雇用では、すでに180万人分が創出されているとしています。

 アメリカでは、民主党のオバマ大統領による新たな政権の発足に伴い、積極的な環境政策についての提言が打ち出されています。その背景となる考え方は、同政権にかかわりの深いアメリカのシンクタンクであるアメリカ進歩センターにより2008年9月に公表された報告書「グリーン・リカバリー」に見ることができます。これによれば、環境分野への1,000億ドルの投資等によって、直接的、間接的、及び誘発される効果として、およそ200万人の雇用を創出できるとしています。また、同様の支出について、家庭の消費活動を刺激する形で行った場合の雇用創出効果はおよそ170万人、石油産業においては、およそ54万人となることを述べ、相対的に、環境分野においては雇用創出効果が高いことを論じています。

 このように、世界では、環境の保全について、雇用の確保や経済の回復など、他の様々な目標の達成と一体のものとしてとらえ、それらの同時達成を目指して政策を進めようとしています。わが国においても、同様の様々な検討を行いつつ、環境と経済社会の統合的な向上についての知見を高めて、随時政策に活かしていくことが重要です。


(2)各国における環境対策と経済対策の一体的な推進

 ア 環境と経済の好循環

 わが国では、高度経済成長期に甚大な大気汚染を始め深刻な産業公害が発生し、後追い的に世界でも最も厳しい公害規制を行いました。この公害規制とマクロ経済との関係を分析した(独)国立環境研究所の研究では、実際よりも遅く規制を行うなど緩い環境政策を講じたとした場合の方が経済成長率は低くなり、逆に公害規制を早く講じる厳しい政策を採用した場合の方が経済成長率は高くなったものと推計されました。公害規制も決して反経済的ではなかったのです。また、規制が技術革新を生み、国際戦略商品を育てた例として、わが国の自動車排ガス規制の例が良く知られています。

 イ グリーン・ニューディールへと向かう世界の動き

 アメリカでは、民主党のオバマ大統領が就任し、環境対策にも積極的な姿勢を打ち出しています。

 2月に発表された予算教書に盛り込まれたクリーン経済に関する政策では、今後10年で1,500億ドルをクリーンエネルギーに対し戦略的に投資し、長期的には、再生可能エネルギー由来の電力の割合を、2012年までに10パーセント、2025年までに25パーセントにする方向を示し、また、米国全体でキャップアンドトレードプログラムを導入し、温室効果ガスの排出量を2020年までに2005年比14%、2050年までに2005年比83%削減することとしています。具体的には、平成21年2月17日に成立した米国再生・再投資法において、エネルギー分野に430億ドルを投資し、再生可能エネルギーの技術開発や導入促進を支援することによって、今後3年間でクリーンエネルギーのキャパシティを2倍にすることを目指しています。また、連邦政府の建物の省エネや改修等を進め高機能のグリーンビルディングとすることに55億ドルの予算を決定しています。さらに民間での住宅改修等により耐寒構造化、配電網の近代化と家庭へのスマートメーターの導入、風力、太陽光、水力等の再生可能エネルギー分野への税制措置等を盛り込んでいます。米国再生・再投資法ではこのほか、水質汚染対策、洪水対策、汚染地域等の浄化等により、科学技術研究、インフラ整備等とあわせ今後2年間で350万人の雇用創出を目指す等、環境対策も活用して経済対策を実施しようとする姿勢が示されています。

 韓国では、今後の経済政策のパッケージが2009年1月に公表されました。4年間で約50兆ウォン(約3兆5,400億円、平成21年1月現在)の公共投資を実施し、96万人の雇用創出を行う予定です。公共投資のうち雇用創出効果が高い分野である土木、建築等の分野において、従来型の公共投資に環境配慮の側面を追加することにより、短期的には雇用創出効果を、長期的には環境配慮型の社会インフラや事業の成長を促進しようとしています。

 これらの国を始め、環境対策と経済対策を同時に進めようとする取組が、いくつもの国で行われています。わが国においても、直面している深刻な不況を克服するためにも、これからの経済の成長分野を育成するためにも、また、環境、経済、社会の調和のとれた持続可能な社会を構築するためにも、グリーン・ニューディールとして求められている政策、環境対策と経済対策とを両立させた政策に大きく舵を切る必要があります。以下では、そのような国内の動きについて見ていきます。

2 環境対策が牽引する日本経済

 平成20年9月以降の世界同時不況下において日本経済も大きな影響を受けており、国内総生産(実質GDP、季節調整済み)は平成20年の10〜12月期で前期比3.3%減(年率換算12.7%減)という大幅なマイナス成長を記録しました。これは、昭和49年1〜3月期の年率換算13.1%減に次いで戦後2番目に低い水準でした。また、3四半期連続の実質GDPマイナスの最大要因は、輸出の落ち込みですが、設備投資の減少や人件費の抑制も原因となっています。

 このような状況の中で、環境分野への思い切った投資により、当面の経済成長と雇用を創出するとともに、将来の成長産業を育てることが期待されます。わが国の高い技術力を生かして、環境と経済をともに向上・発展させるための方法を探ります。


(1)「緑の経済と社会の変革」

 環境対策を思い切って実行することにより、直面する環境問題に対処するとともに、経済危機を克服するとの観点から、斎藤環境大臣が自らの考え方を4月20日に「緑の経済と社会の変革」として取りまとめました。この中では、「環境と経済の統合的向上」「低炭素社会、循環型社会、自然共生社会の統合的な実現」「すべての主体の参画と協働」「様々な政策のベストミックス」「アジアへ、そして世界へ広げる取組」という基本的な考え方の下に、中長期の視点も織り込みながら今後取り組むべき施策を示しました(表3-2-2)。


表3-2-2 緑の経済と社会の変革の施策内容


(2)「未来開拓戦略による低炭素革命」

 今回の経済危機は世界の経済や産業をめぐる競争の構図を一変させる可能性をはらんでいます。こうした状況下において、麻生総理大臣の指示のもと「未来開拓戦略」(平成21年4月内閣府・経済産業省)が取りまとめられ、経済財政諮問会議において了承されました。この戦略は、「健康長寿」及び「魅力発揮」とともに、環境分野では、太陽光発電・省エネ世界一プラン、エコカー世界最速普及プラン、低炭素交通・都市革命、資源大国実現プランといった「低炭素で世界をリードする国」を2020年におけるわが国の目指すべき将来像の柱の一つとして示しています。


(3)環境対策により活性化する地域経済

 ア 環境対策が地域経済にもたらす経済、雇用への効果

 前述のとおり、政府による思い切った環境対策の実行が決まり、地方においても、環境対策がもたらす経済効果への期待が高まっています。

 高知県は、単位面積当たりの太陽光発電の発電量や総面積に占める森林面積割合が全国一であり、自然エネルギーの潜在量が非常に高い県です。

 環境省では、このような特徴を持つ高知県を例に、約3割の温室効果ガスの削減を行う場合(2020年を想定)に必要な太陽光発電などの機器の購入・設置、住宅の省エネ改修や公共交通の利用促進などの対策を講じることによって、どのように地域経済に効果が波及するか算出しました。地球温暖化対策(投資額350億円)について、粗付加価値誘発額を試算したところ、269億円となりました。さらに、地球温暖化対策に投資した場合、化石燃料の消費に伴う域外への所得流出が確実に削減され、温室効果ガス排出削減クレジットの売却益による効果なども生じます。これを試算すると、合わせて469億円の経済効果が見込まれ、地域内に帰属する所得として、投資額を大きく上回る額が発生するとの結果を得ました(図3-2-1)。


図3-2-1 地球温暖化対策の地域経済への効果

 東京都千代田区では、環境モデル都市行動計画において、都心の低炭素化と地方の活性化を両立するため、地方の大型市民風車プロジェクトの支援を行うことを位置づけています。千代田区のこのような取組は、東京都が大規模事業所に対して、平成21年度から「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」(東京都環境確保条例)を導入しグリーン電力等の活用を削減義務の履行手段の一つとして認めたことを受けて実施されることになったものです。今後このような地域が連携した地球温暖化対策に関するプロジェクトが実施されていくことにより、都市から地方への資金移転を促すと考えられます。

 イ エネルギー需要部門の対策による経済への波及の推計

 平成19年度の業務その他部門及び家庭部門における二酸化炭素排出量は、それぞれ全部門の約18%、約14%を占めています(図2-1-7参照)。

 基準年(1990年)比で見た場合、それぞれ43.8%、41.2%も増加しており、他部門に比べて伸びが著しいため、2010年の目標を目指してエネルギー需要側として省エネ対策を行うことが強く望まれています。そうした対策の具体例の一つとして、仮に省エネ家電である高効率エアコンを導入する場合で試算しますと、1997年の機器に比べて2008年の機器は、年間で二酸化炭素を260kg削減し、電気代も19,080円節約できるとの結果でした(図3-2-2)。


図3-2-2 省エネ型エアコンへの買換え効果

 また、家庭部門の二酸化炭素総排出量1億8,000万トン(平成19年度)を単純に1世帯平均とした場合、年間3.4トンの排出となりますが、260kgはこの7.6%に当たります。

 同じように、二酸化炭素排出削減や経済効果が太陽光発電についても考えられます。太陽光発電の国内累積導入量は、平成19年時点で1,919MWです。一方で、ドイツは3,862MWを有し、平成17年に導入量でドイツに抜かれてからその差が広がっています(図3-2-3)。


図3-2-3 太陽光発電累積導入量の推移

 低炭素社会づくり行動計画でも既存先進技術の普及として、太陽光発電の大幅拡大を位置づけ、2020年に10倍、2030年に40倍に増やすことを目指しています。この目標を実現するには、およそ10年間の間に約12,100MWの太陽光発電を生産しなくてはなりません。また、約12,100MWの太陽電池パネルが設置されたと仮定し、平均稼動率から算出すると、年間で約121億kWhの発電量が得られると推測されます(太陽電池アレイ出力1kW当たりの年間発電量を約1,000kWh/年として計算)。これは、約340万世帯の年間消費電力に相当し(1世帯当たりの年間電力消費量を3,600kWh/(世帯・年)として計算(出典:電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集2009年版」))、家庭部門の二酸化炭素総排出量1億8,000万トン(平成19年度)の約4%を削減することになります(※電力排出原単位は、0.453kg-CO2/kWhで計算。)。

 さらに、麻生総理のスピーチ「新たな成長に向けて」(平成21年4月9日)に基づく未来開拓戦略において、太陽光発電の規模を2020年頃に20倍程度に拡大することが目標とされました。この目標の実現を目指し、公共建築物や公的施設、農業用施設等での導入促進を進めるとともに、太陽光発電による余剰電力を電力会社が買い取る新たな制度を導入します。

 ウ 地球環境問題に取り組む地方公共団体への期待

 地球環境問題への対応は、国、地域、個人など各主体での取組が必要であり、例えば、地球温暖化対策推進法では、身近な地方公共団体(義務化されたのは特例市以上の約100地方公共団体)が区域の温室効果ガス排出抑制のための施策を地方公共団体実行計画の中に策定することとされました。各地方公共団体は、同計画に基づき、水・緑・風の道等を生かした良好な都市環境の創出、次世代エコ建築の整備、新エネルギーを中心とする再生可能エネルギーの導入、低炭素交通インフラの整備などの区域の自然的条件に応じた温室効果ガスの排出削減等を進めることとなります。

 地域においては、このような対策が実行に移されると、雇用や地域経済にも良い影響が生まれると期待されます。一つの例を見てみましょう。昨年から今年にかけての緊急の雇用施策ではありませんが、地域では、既に環境対策を進めながら地域の雇用を維持している例があります。北海道標茶町では、大量の廃プラスチックや家畜糞尿の処理、カラマツの間伐材など、地域の廃棄物処理の問題を抱えていましたが、まちづくりの担い手となる市民と役場職員が地元の大学の知見も得ながら、廃棄物を資源にして地元に新産業を興す「地域ゼロ・エミッション」という構想をつくりました。間伐材と廃プラスチックを原料とする木質複合材の開発・製造、植物による水質浄化技術の開発等を進め、事業化の見込みが立ったため、平成14年に株式会社を設立し事業を始めました。その後も地域ゼロ・エミッション研究会を通じ藻場の再生技術の実証実験を進め、現在も地域で資源を循環させる経営を続け、人口8,500人の町で15人の雇用を維持しています。


(4)低炭素社会づくりに寄与する技術

 温室効果ガス排出量の大幅な削減は、既存技術やその延長戦上にある技術の普及だけでは決して達成できるものではありません。そのため、構造・素材やシステム等の点で既存技術やその延長線上にある技術を超えた革新性を持ち、2050年の世界における大幅な温室効果ガスの削減に寄与する技術(革新技術)の開発が必要です。低炭素社会づくり行動計画では、「環境エネルギー技術革新計画」や「Cool Earth−エネルギー革新技術計画(平成20年3月経済産業省決定。以下「革新技術計画」という。)」等に示された革新的技術を開発することが盛り込まれました。

 さらに、総合科学技術会議では、平成21年2月「2009年の科学技術政策の重要課題」について取りまとめたなかでも、現在、世界的な金融危機や地球環境問題等が世界の経済・社会全体を震撼させている中で、「科学技術こそ日本の生きる道である」との認識に立って、長期展望を持った科学技術・イノベーション政策を進める必要があるとされました。そしてわが国の強みである環境エネルギー技術を磨き、一層強化し、世界の地球温暖化対策等に貢献するとともに、新たな成長を目指すことが提言されました。そのため、エネルギー・資源を有効に活用し、世界に先駆けて低炭素社会を実現するために「環境エネルギー技術革新計画」を戦略的に推進することとされました。こうした技術開発を他国に先駆けて先行させることは、国際的な低炭素社会づくりに貢献するのみならず、わが国の産業の技術力をさらに高め、国際競争力の確保、雇用の新たな創出につながります。低炭素社会づくり行動計画では、「環境エネルギー技術革新計画」に示された技術ロードマップ(以下「ロードマップ」と言う。)等の実施に向け、今後5年間で300億ドル程度を投入することとしています。そのうち、革新技術計画に示された、重点的に取り組むべきエネルギー革新技術である革新的太陽光発電、ハイブリッド自動車・電気自動車等、革新的製鉄プロセス、先進的原子力発電技術、燃料電池技術、超高効率ヒートポンプ等について、必要な予算を確保して開発を進めることとしています。そのほか、最終的には、ゼロ・エミッションでの石炭火力発電の実現を目指した石炭利用の高度化が盛り込まれています。ここでは、これらの技術のうち、わが国の二酸化炭素排出量に占める割合が大きいエネルギー転換部門及び産業部門に関する低炭素化に向けた技術の代表例を中心に革新技術の概要や温室効果削減効果等について、ロードマップ、革新技術計画等に基づき紹介します。

 これらは、いずれも世界全体で膨大な需要が見込まれ、開発に成功すれば、わが国の国際戦略商品、技術になるものと期待されています。

 ア 革新的太陽光発電

 快晴時の1時間に地球上へ到達する太陽エネルギーの量は、およそ150億TOE(石油換算トン)にも達し、世界全体で1年間に消費する一次エネルギーの量(2006年で約106億TOE(石油換算トン))を上回ります。また、低炭素社会づくり行動計画では、太陽光発電は、再生可能エネルギーの中でも特に潜在的な利用可能量が多く、エネルギー自給率の低いわが国の国産エネルギーとして重要な位置を占める可能性があるとされています。先述したような太陽光発電世界一の座を再び獲得するためには、電力系統への影響を緩和する系統安定化技術や、大容量・低コストの蓄電池の技術開発等を進めていくこととしています。これらの技術の導入による温室効果ガス削減効果については、低炭素社会づくり行動計画に基づき、2030年に太陽光発電の導入量が現在の40倍、53GWとなった場合、3092万トン-CO2の削減が見込まれます。

 イ ハイブリッド自動車・電気自動車等

 ハイブリッド自動車とは、ガソリン又はディーゼルエンジンと電気モーターを組み合わせ、高効率で走行する自動車です。ディーゼルハイブリッド自動車、電気自動車は、二酸化炭素排出量をそれぞれ、ガソリン車の約1/2、約1/4までに低減することが可能であるとされています(図3-2-4)。世界の全自動車から排出される二酸化炭素量は現在の46.6億トンから2030年には80億トンに増大すると予測されていますが、仮に世界の自動車の約2割を占める日本車が、二酸化炭素排出量がガソリン車の約1/4の電気自動車に置き換わった場合、2030年に予測される世界全体の自動車から出される二酸化炭素世界全体の排出量のうち、15%を削減できるとの試算があります(図3-2-5)。


図3-2-4 Well to Wheel 二酸化炭素総排出量計算結果まとめ


図3-2-5 2030年における電気自動車導入効果

 本格的な電気自動車の実現に向けては、一度の充電によって運行を継続できる距離(航続距離)を一層拡大するとともに、大容量かつ低コストな電池の開発が必要となっています。しかし、現行のハイブリッド自動車への活用を目差して開発されているリチウムイオン電池では限界があるとも言われており、新たな電池の開発が必要となっています。このため、2030年には容量を現状比7倍、コストを1/40として、ガソリン自動車並みのコストで航続距離もガソリン車と同等の500kmまで拡大させることを目指して技術開発に取り組むこととしています。

 一方、燃料電池は、水素と酸素の化学的な結合反応によって生じるエネルギーにより電力を発生する装置のことです。この反応で生じる物質は水(水蒸気)だけであり、クリーンで、高い発電効率であるため、地球温暖化問題の解決策として期待されています。現在では、燃料用電池自動車、家庭用燃料電池の開発・普及などが進められています。燃料電池自動車からの二酸化炭素排出量はガソリン車の1/3程度に低減可能であるとされています。燃料電池自動車の普及に伴う二酸化炭素排出量削減効果について、上記の電気自動車と同様の方法で試算を行った場合には、2030年に予測される世界全体の自動車から出される二酸化炭素排出量のうち、13%が削減される見込みとなります。燃料電池についてはコスト要因である白金触媒の使用量低減や代替のための触媒技術の開発が必要となっています。

 ウ 革新的製鉄プロセス

 製鉄の過程で7割程度のエネルギーを使用する製銑工程での抜本的な二酸化炭素排出量を削減することにより、2050年頃までに製鉄プロセスからの二酸化炭素の3割程度の削減を目標とした技術開発が進められています。具体的には、コークス炉ガスの排熱利用により水素増幅し、その水素をコークスの一部代替として鉄鉱石の還元剤として用いる製鉄技術及び高炉ガスからの二酸化炭素を分離回収する技術を開発していくこととしています。本目標が達成され、わが国の製鉄業すべてに本技術が普及したと仮定した場合、内閣府では、日本鉄鋼連盟の自主行動計画を基に、二酸化炭素排出量原単位が現在の3割程度削減に当たる約1.15(トン/トン‐粗鋼)になると見込んでいます(図3-2-6)。


図3-2-6 革新的製鉄プロセスのイメージ図

 エ 先進的原子力発電技術

 発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電は、今後も低炭素エネルギーの中核として、地球温暖化対策を進める上で極めて重要な地位を占めるものです。現在世界に存在する原子力発電のもつ発電容量を、火力発電(LNG)で代替した場合と比較して、年間11億トン(世界の排出量の4%)の二酸化炭素排出を削減していると計算されています。そのため、安全の確保を絶対的な前提に、欧米諸国並みの設備利用率の向上を目指す電気事業者の取組に資する所要の環境整備等を進めることとしています。また、現在国内外で主流となっている軽水炉について、安全性、経済性、信頼性等を大幅に向上させる次世代型のものへの技術開発を進めることとしています。さらに、ウラン資源の利用率を飛躍的に高める高速増殖炉サイクル技術についても、2050年頃からの商業ベースでの導入を目指して技術開発を進めることとしています(図3-2-7)。


図3-2-7 高速増殖炉実証炉のイメージ図

 オ 超高効率ヒートポンプ

 大気など周囲の熱を取り込んで別の場所へ移動させて放出するヒートポンプ技術は、通常では利用しにくい低い温度の熱エネルギーを利用することができ、高効率でエネルギーを活用することが可能です。民生部門の二酸化炭素排出の約5割を占める空調・給湯等に適用可能であり、従来に比べ飛躍的に高い効率のヒートポンプ技術により一層の削減が期待できます。また、産業部門においても空調・プロセス冷却・加熱に適用可能です。わが国で家庭用エアコン暖房約3,000万台、家庭用ヒートポンプ給湯器約2,000万台が普及した場合、現状に比して約5,400万トンの二酸化炭素排出が削減されると推計されます。世界全体でも家庭用・民生用建物や工場に導入したと仮定すると約12億トンが削減可能であるとされています(図3-2-8)。


図3-2-8 ヒートポンプの普及による二酸化炭素削減効果

 カ CCSと組み合わせた高効率石炭火力発電

 エネルギー資源に乏しいわが国にとって、燃料の安定供給性、経済性に優れた石炭は不可欠なエネルギーです。しかしながら、石炭は石油や天然ガスに比べ、燃焼時の二酸化炭素排出量が多い燃料なので、引き続き、環境面に配慮しつつ使用していくために、わが国は石炭火力発電所の効率をより向上させていくことが重要です。また、発電効率を高めて排出量を削減できるクリーン燃焼技術や、CCS技術の開発を推進することとしています。わが国の火力発電所の熱効率については、(独)新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の調査結果によれば、わが国の石炭火力発電所の熱効率がトップランナー機器に置き換わったと仮定すると、約400万トンの二酸化炭素排出削減が達成可能であるとされています。さらに、世界の火力発電所の熱効率が現在のわが国のトップランナー機器と同程度になったと仮定すると14.2億トンの排出削減が達成可能であるとされています。

 これらの技術と併せ、最終的には、石炭火力発電等からの二酸化炭素の排出をほぼゼロにするために、石炭火力発電等からの二酸化炭素を分離し、回収し、輸送、貯留する一貫したシステムの本格実証実験を実施し、ゼロ・エミッション石炭火力発電の実現を目指すこととしています(図3-2-9)。


図3-2-9 ゼロエミッション石炭火力発電所の例(アメリカFutureGen)


炭素生産性の向上


 低炭素社会を構築するに当たっては、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした経済社会のあり方を見直し、同じ付加価値を生み出すためのエネルギー消費を削減していくというデカップリングを達成していかなくてはなりません。

 平成20年6月に発表されたマッキンゼー・グローバル研究所の分析レポート「炭素生産性に関する挑戦:気候変動抑制と持続可能な成長」の中では、これまで議論されてきた削減シナリオに適合するためには、現在二酸化炭素換算で1トン当たり740ドルの国内総生産となっている世界の炭素生産性を2050年までに10倍程度の7,300ドルまで増加させなければならないとしています。それによる経済的影響については、新たな低炭素化のためのインフラ整備のための投資手法によって違いが出てくるため一概には言えないものの、多くの国で国内総生産の増加が見られるであろうとされました。その上で、低炭素化に向けた改革を推進するための課題として次の5つを上げています。[1]費用対効果の優れた方法でエネルギー効率を高める機会を活用すること、[2]特に電力、石油、ガス部門でエネルギー源の脱炭素化を行うこと、[3]新たな低炭素化技術の開発と普及を加速化すること、[4]事業者と消費者の行動を変化させること、[5]特に世界の森林のような炭素吸収源を保全し、拡大すること。

 わが国の製造業における炭素生産性について考えてみましょう。(独)国立環境研究所が、二酸化炭素を対象に環境負荷の原単位を算出した「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」を基に、炭素排出量1トン当たりの粗付加価値(百万円-2000年実質価格基準)を各産業についてみると、その大小には大きな開きがあります。ここで、その改善度合いをみると、1990年を1として1990年、1995年、2000年の3時点で比較したところ、個々の業種毎に生産性の向上程度には大きな開きがあり、食料品、化学製品、石油・石炭製品、非鉄金属、電気機械の分野については、炭素生産性を増加させていますが、他の分野については、かえって悪化しており、特段の改善努力が期待されます。


わが国の製造業の炭素生産性の推移



(5)資源生産性の向上に貢献する技術

 ア 環境保全と経済発展を両立させる循環資源

 これまでの経済社会システムは、基本的に天然資源を枯渇させることなく利用できるという暗黙の前提の下に築かれていました。しかし、アジア諸国等の経済成長を背景に、天然資源需要量が急成長し、天然資源採取に伴う自然破壊や資源利用に伴う温室効果ガス発生量及び廃棄物発生量などの環境負荷が増大しており、また、天然資源需要量や環境負荷は今後もこの傾向が続くと見込まれることから、これまでの前提がもはや妥当しなくなってきています。

 天然資源をふんだんに利用して経済発展することが難しくなり始めた現在、経済発展と環境保全の両方を確保することができる循環資源の利用に世界の注目が集まっています。循環型社会への移行は必然であり、今後世界で循環資源利用の流れが飛躍的に拡大することが見込まれます。

 一方、天然資源の価格は、現在の経済状況の変化等を背景とした天然資源需要の変動を主な原因として、大きく変動しています。例えば銅の価格は2000年(平成12年)には1トン1,682ドルでしたが、2008年(平成20年)4月には1トン8,714ドルを記録するに至り、その後値を下げたものの、12月には1トン3,105ドルとなっています(図3-2-10)。


図3-2-10 資源価格の推移

 天然資源価格が高騰すると循環資源の需要が増し、天然資源価格が下落すると循環型資源の需要が減るというように、循環資源が経済に組み込まれると、循環資源の需要は天然資源の価格変動の影響を大きく受けます。循環資源の利用量の減少は直ちに廃棄物発生量の増加につながり、環境への負荷増大につながりかねないことから、一時的な国際市況の変動も考慮に入れた安定した国内循環システムの体制を整える、などの対策が必要です。

 イ 循環型社会づくりを牽引する日本の技術

 資源需要の増加に伴い、天然資源を安価で容易に入手することが難しくなるという状況は、わが国にとって必ずしも不利であるとは限りません。これまで日本は天然資源を輸入して加工し、付加価値をつけて輸出していたため、天然資源の価格が上昇した際には所得が海外に流出しました。しかし、投入する資源を減らし、資源の循環利用を行いながら最大限利用することは本来わが国の得意分野であり、わが国はこの分野に関する優れた技術やシステムを有しています。わが国はPCB廃棄物やアスベスト廃棄物等の有害廃棄物の適正な処理を行うとともに、廃棄物等からの有用な資源の回収や再生に関する技術を高めています。また、産業界を中心に世界最高水準の省エネルギーや省資源を進めてきており、着実に資源生産性を向上させています(図3-2-11)。さらに、他の先進国に比べ一般廃棄物の発生量は低い水準となっています(図3-2-12)。


図3-2-11 資源生産性の推移


図3-2-12 一般廃棄物発生量の国際比較

 つまり、資源需要が増加している現在の状況は、資源消費の増加と経済成長との分離を促進し、資源に過度に依存しない経済成長により、わが国が発展するチャンスであると考えることができます。さらに、わが国は、自らが持つ資源生産性向上に関する技術やシステムをアジアを始めとする開発途上国等における環境保全や循環型社会づくりに活かすことにより、世界全体の持続可能な発展に寄与することができます。

 以下に、わが国が持つ資源生産性を高める優れた技術について紹介します。これらの技術の積極的な活用も日本版グリーン・ニューディール対策の大きな柱となります。

 ウ 資源生産性を高め循環利用量を増やす日本の3R技術

 資源生産性を高めるには資源の投入を減らす上流側の技術と、廃棄物の循環的利用を増やし最終処分量を削減する下流側の技術の両方を高める必要があります。以下の表(表3-2-3)は、今後開発が見込まれる、資源生産性に関する技術のうち、世界的に見て優れていると考えられるわが国の技術をまとめたものです。


表3-2-3 わが国の代表的な3R技術

 エ 資源循環システムの展開

 資源生産性の向上を着実に図っていくためには、関連する個々の技術を有効に活用するだけでなく、それをシステムとして組み上げていくことが必要です。

 ある複写機メーカーでは、国内で1995年にリユース部品を活用した商品を市場に導入し、2000年にはリユースできない部品や部品リユースに活用できない商品を徹底的に再資源化する廃棄ゼロシステムを確立し、その後も改善に向けた活動を継続してきました。

 さらに海外での事業展開を進める中で、販売テリトリーであるアジア地域の環境負荷低減に対しても責任があるという考え方のもと、2004年12月から、タイを拠点として同地域の使用済商品やカートリッジを回収し、徹底的に分解・分別し再資源化する資源循環システムを稼働しています。2008年1月からは中国でも「廃棄ゼロ」「汚染ゼロ」「不法投棄ゼロ」を目指す同様のシステムを開始しました。

 「資源循環システム」とは、「使用済み商品は廃棄物ではなく、貴重な資源である」との考えに基づく商品のライフサイクル全体での環境負荷低減を目指したものづくりです。このシステムは、市場に出した商品を回収し、選別した部品を厳格な品質保証に基づき閉じた輪の中で循環させる「クローズド・ループ・システム」を根幹とし、部品の再利用により環境負荷の少ない商品作りを目指す「インバース・マニュファクチャリング(逆製造)」、再使用できない部分を分別・再資源化し、資源として徹底的な活用を目指す「ゼロ・エミッション」へと活動範囲を拡大してきました。

 これらの活動について、順次御紹介します。

 (ア)インバース・マニュファクチャリング

 a ライフサイクル企画

 使用期間が3〜5年と予想される複写機は、その間に機種の世代交代が予想されます。回収された使用済み商品から取り出した部品を効果的にリユースするため、後継機の部品として再使用できるような多世代にわたる企画を行っています。

 b リユース/リサイクル設計

 このメーカーでは、1995年に「リサイクル設計ガイドライン」を制定、さらに部品リユースを拡大するため、「リユース設計指針」を策定し部品リユース設計法を開発、技術標準化することで新商品の開発時にリユース設計を確実に商品に導入しています。さらに、部品・素材メーカーとの連携を強めるため「リサイクル調達ガイドライン」を制定し、ノウハウの共有化、リユース技術の共同開発などの協力を要請しています。また、特定有害化学物質の削減を「グリーン調達基準」として定め、特定有害化学物質の製品への含有/製造工程での使用を管理しています。

 c 環境影響アセスメント

 製品ごとに、資源循環型商品の環境配慮情報を自己認証型の「資源循環型商品ラベル」とライフサイクル・アセスメントLCA)評価結果を公表した「製品エコデータ」で公開しています。

 (イ)クローズド・ループ・システム(図3-2-13)

 a リユース部品の品質保証

 部品リユースの前提として、「リユース部品を使用して組み立てた商品」と、「新品部品のみで構成している商品」が、外観品質・性能機能・信頼性・機械寿命の全てにおいて同等品質であることを厳格に定め、部品リユースの品質保証活動を推進しています。

 b 部品リユース

 生産工程では厳しい基準を設けてリユースする部品の1点1点に対して品質を保証しています。そのため、部品の再使用を可能にする技術開発も行っています。

 カートリッジは部品レベルに分解し、品質基準を満たす部品のみをリユースし、新たなカートリッジを生産、新品同等の品質保証を行い、再び消費者に提供しています。


図3-2-13 クローズド・ループシステム

 (ウ)ゼロ・エミッション

 a 材料リユース

 使用済み商品の外装カバー(ABS樹脂)を分別・破砕・洗浄し、これを原料として新造ABS樹脂と同等のリサイクルプラスチック(ABS樹脂)として自社商品に導入する、材料リユースシステムを構築しました。このリサイクルプラスチックは、新造ABS樹脂と同等の品質(成型性・物性・色調など)を保証しており、アメリカの安全試験機関であるUL(Underwriter’s Laboratories)の認証を取得しています。

 また、現在の複写機部品に使われているプラスチックの主流であるPC−PS樹脂を20%配合したリサイクルPS−ABS樹脂のリサイクル技術を確立し、新商品への導入を行っています。

 b 有害物分別、マテリアル/サーマルリサイクル

 回収された使用済み商品は、鉄等の金属類を主体とした従来の材料リサイクルでは埋め立てが発生していました。「限りなく廃棄ゼロ(埋め立て/単純焼却のゼロ化)」を達成するため、使用済み商品の分解・分別から再資源化までをマネジメントシステムとして体系化した100%再資源化処理システムを構築、2000年8月より実践しています。このシステムは全国で発生した使用済み商品を国内6箇所に設立した分解・分別拠点で最大44部品類に分別し、最新のリサイクル技術を保有するリサイクル会社とのネットワークにより資源として回収するものです。

 有害化学物質を含む部品の分別と適正処理を優先し、環境負荷を発生させることなく徹底的に再資源化しています。

 c カートリッジのリユース/リサイクル

 1994年に社内にカートリッジ・リサイクルラインを設置し、回収した使用済みのカートリッジを分解・洗浄した後、選別・修理などの一連の再生工程を経て、厳しい品質基準に適合した部品だけを生産ラインに投入し、循環させるというカートリッジのクローズド・ループ・システムを確立しました。この結果、回収されたカートリッジは、リユースを最優先に行い、リユース困難な部品は100%再資源化されることになり、1997年から廃棄物の埋立ゼロ(ゼロ・エミッション)を達成しています。


省資源化に関する技術


 ある電機メーカーでは省資源化を目的に、薄型テレビの部品点数の低減及び小型・軽量化を進めています。平成15年秋に発売された際には27点あった機構部品(電子回路をつないだり切り替えたりする部品)を平成18年秋には14点に減らし、また、シャーシフレーム(基盤や液晶パネル等を固定する金属製プレス部品)の小型・軽量化、卓上スタンドの軽量化を進めることにより、薄型テレビのセット質量を48.4kgから25.6kgに低減しています。


薄型テレビのセット質量の推移



金属資源の3Rに関する技術


 秋田県の金属再生企業グループのリサイクルネットワークでは、ある製錬所を核とする10を超えるリサイクル関連企業が多種類のリサイクル原料を受け入れて、有価金属の回収と、無害化処理及び最終処分をしています。同グループでは長年の鉱山・製錬事業の中で、鉱石から微量に含まれる各種レアメタルを含む17種類もの有価金属を回収する高い技術を確立しており、現在はこの技術を基に金属のリサイクルを行っています。回収された金属資源は、アクセサリーや電子基板、フィルムや電線などの製品として生まれ変わり、社会へと循環します。これほど多種の有価金属を回収し、再び地域から出すことなく無害化処理と最終処分を地域内で完結しているリサイクルコンビナートは、世界的に見ても優れたわが国の技術システムであるといえます。


小坂製錬所におけるリサイクル処理量の推移


秋田県の金属再生企業グループのリサイクルネットワーク



(6)環境分野に対する民間投資促進のための条件整備

 以上のとおり、環境対策や技術には大きな環境上の効果、経済上の効果が見込まれています。こうした効果を実際に具体化させるためには、わが国において、環境問題への取組を長期的視点に立って強化するとともに、公的投融資のみならず、機関投資家や個人投資家が環境分野への投資に積極的に取り組める条件を整備することが重要です。平成16年に制定された「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律」第5条において「国民は、投資その他の行為をするに当たっては、環境情報を勘案してこれを行うように努めるものとする。」と定められています。平成18年に閣議決定された「第3次環境基本計画」においても、市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくりについて「環境問題への関心の高い個人投資家など、環境に取り組む企業に投資する意欲の高い層に焦点を当てつつ、幅広い層へのエコファンドや社会的責任投資(SRI)等の環境投資の拡大を図っていきます」という文言が盛り込まれています。これに対して、平成19年に閣議報告された「第三次環境基本計画の進捗状況・今後の展望について」では、わが国のSRI等の投資残高は、欧米と比較すると低い状況にあるものの、SRI等の環境投資の持つ環境への負荷の少ない事業などを促進する効果にかんがみると、効果的な政策ツールとして活用できるSRI等の環境投資の拡大に向けた抜本的な対策を採ることが有効であるとされました。このようにわが国でも環境投資や環境融資も徐々にその地位を高めてきました。環境投資と環境融資には様々なものがあります。それらのうち、欧米で発達しているSRIとともに、コミュニティファンド等の新たな環境投資や融資の取組に関し、今後の展望について述べていきます(表3-2-4)。


表3-2-4 環境投資の全体像

 環境への投資を円滑に、また強力に進める社会的仕組みを開発し活用することもグリーン・ニューディール政策の大きな柱となるものです。

 ア SRIについて

 SRIとは、財務指標などの経済的側面に限らず、環境への取組やコンプライアンス(法令遵守)、従業員への配慮など企業の社会的な取組を考慮して投資を行うこととされています。

 当初は、1920年代のアメリカの教会における取組に見られたように宗教観や倫理観といった理念から導き出されるモラル重視の考え方から始まりました。2000年以降は、環境経営の浸透、企業の非倫理的行動による企業不祥事の多発等に直面して、企業のESG(Environmental:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)に対して評価を行うという考え方が台頭してきています。その転機となったのは、英国の2000年の年金法改正で、年金基金の受託者が投資方針書において開示すべき項目に、投資銘柄の選択、保有、売却に際して、社会、環境、倫理に関する考慮を行っているか、行っているとしたらどの程度かといった項目が追加されたことです。それ以降、英国では、SRIに係る投資額が大幅に伸びてきています。フランス、ドイツなどでも同様の法整備がなされ、SRIが進展してきています。最近では、2007年にベルギーのNPOが、欧米やわが国の金融機関や年金基金がクラスター爆弾などの兵器を生産する企業や公害企業などに大量の投資を行っていることが問題であるとの指摘をしたところ、マスコミに大きく取り上げられました。特にオランダでは、それまでSRIに対して積極的でなかった年金基金が、これらの企業への投資を中止するとともに、SRIの拡大に力を入れるようになり、SRIの対象となった資産総額が2年間で8倍となるなどの変化が見られます。

 これに対し、わが国におけるSRIは、環境問題への関心の高まりを受け、平成11年に投資信託の一商品としてエコファンドが設定されたことから始まりました。特に、平成15年以降、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility(CSR))に対する社会的な関心が高まってきたことも反映し、企業の社会的な取組自体を評価する商品の設定が進み、資産残高も徐々に増加してきました。現在、200を超える銀行、証券会社等から約60本のSRI型投資信託の設定がされています。わが国におけるSRIは、現在のところSRI型の投資信託がその中心となっており、今後も個人の金融資産を環境投資に呼び込むに当たってその普及を図ることが重要となっています。

 一方、わが国のSRIは、個人向けの投資信託が中心であるため、諸外国と比べて全体の額は小さく、European SRI Study 2008によると、わが国におけるSRI資産総額は平成19年9月末現在で約8,400億円であったのに対し、同年におけるアメリカでは約292兆8,200億円、ヨーロッパ諸国では約407兆800億円となっています。欧米の企業は、わが国に比べて、環境に関する資金調達において有利な立場にあると言えます。わが国でも、今後は、年金基金など機関投資家がSRIを伸ばしていけるような仕組みの整備が早急に必要になっています。

 そうした中、わが国の年金基金に対して財団法人年金シニアプラン総合研究機構が平成19年度に行ったSRI及びPRIに関する調査報告では、現在SRIを組み入れていない年金基金がその理由として挙げたもののなかで最も多かったのが、「SRIに関する情報が不十分」であり、SRIの拡大に向けて、必要となる情報が不足していることが明らかとなっています。

 このため、わが国において、SRIを始めとする環境に関する金融を伸ばしていくためには、欧米のSRIなどに関する適切で十分な情報を普及しつつ、年金基金などの機関投資家に対する投資判断に役立つよう、わが国の実情に合わせた情報開示制度や情報の正確性を確保する仕組みを創設することなどについて検討していく必要があります。

 そのほか、今後、環境に関する金融を促進させる政策を検討する際、既存の金融商品や取引の普及を図るだけでなく、新たな制度や規制によって環境に関する金融が一層普及をし、それによって更に環境改善を促進させるという側面があることに注目すべきです。例えば、二酸化炭素に係る排出量取引制度に関連した新たな金融商品として、京都議定書で定められた市場原理を活用した排出量取引制度による排出量の売却代金を利率に連動させる外国債、将来発生する排出量を買い取るための排出量買取ファンド等が発売されるようになってきています。

 イ コミュニティファンド等の新たな環境投融資に関する取組について

 環境に係る投資と融資には前述したように、SRIやエコファンドのような投資信託のほか、定期預金でも、預金者が預けたお金を環境保全に使ってほしいという思いに応え、預金者の受け取る利息の一部を環境保全活動を営むNPOに対して助成するようなものも商品化されています。

 また、環境保全に対する市民の意識の高まりを背景として、コミュニティファンド等の取組が広がりつつあります。これは、組合出資などにより市民から調達した資金を原資とし、風力発電や太陽光発電の設置事業への投資や、リサイクルショップの運営など収益性のある社会的事業(コミュニティビジネス)への投融資を行う取組です。こうしたコミュニティファンド等の取組は、自分のお金を自分の意志で地域社会のために活かそうとする、新たな投資行動を生み出しうるものであり、単に地域環境の保全を実現するだけでなく、地域にとって必要な社会的活動を支える仕組みとして、今後さらに取組が広がっていくことが期待されます。平成21年3月に環境省が行った社会的事業への出資に関するインターネットを使った意識調査でも、「今後、社会的事業に対して出資したいと思う」及び「条件があえば出資したいと思う」者は43.4%となっています。政府としても、投融資先に関する情報提供の促進等コミュニティファンド等への出資に対するインセンティブを高めるための仕組みや、投融資先である事業の収益性を向上させる仕組み等について検討していく必要があります。

 今後、わが国が、現在の経済危機を克服し、実態のないマネーゲームによって引き起こされた金融危機を再発させることなく健全に発展していく上でも、環境への投資を伸ばしていくための条件整備が、今こそ必要になっているのです。


環境債務の企業会計への内在化


 今後、環境に配慮した企業活動を伸長し、健全な経済の発展を実現していく中で、企業会計においても環境に関連する会計基準の整備を進めていくことが重要です。

 平成22年度からは、そのような環境に関連する新しい会計制度が始まり、全上場企業に適用されます。平成20年3月31日に企業会計基準委員会が公表した「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号)等により、上場企業は、今後、土地や建物など保有する固定資産を将来において除去し売却等する際に支払わなければならない費用を「資産除去債務」として負債に計上することとなりました。資産除去債務には、固定資産の除去に当たって、それまでの事業活動に伴い発生した汚染の除去や処理を行う際の費用が含まれます。すなわち、将来の費用総額を把握し、これを減価償却費として各期に配分するため、企業は財務報告等において、環境に係る将来の費用(いわゆる「環境債務」)を含めた資産除去債務をあらかじめ計上することになります。


試算除去債務を組み込んだ貸借対照表のイメージ


制度施行前後の損益計算の比較

 このため、企業が大きな経営方針を定めるに当たって、あらかじめ環境の汚染を防止しようとする等、企業の環境に配慮した行動を促す働きがあり、この制度の導入により、汚染の未然防止や早期適正管理等が進むものと期待されています。また、環境負荷をコストとして把握することにより、各企業における業務の無駄の抑制にもつながります。

 この資産除去債務は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)及び労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)の規定に基づく石綿障害予防規則等で規定されているアスベスト建材の除去に係る措置や、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理に関する特別措置法(平成13年法律65号、以下「PCB特別措置法」という。)で規定されているPCBの適切な処理、さらに土壌汚染対策法で規定されている特定施設廃止時等の調査等を含み、環境分野の具体的な法制度とも密接に関連しています。また、例えばわが国の固定資産の環境汚染の除去費等の費用が全体で数十兆円規模に及ぶと考えられているように、このような汚染の除去費用の一部が財務諸表に記載されることとなる本会計制度の変更は、経済や企業行動に大きな影響を与えます。

 今回の制度改正では、環境汚染の対策のための費用のすべてが資産除去債務として計上されるわけではないなどの点が、企業の環境対策を推し進める上での留意点として掲げられます。このような問題意識から、例えばEUでは、環境債務について、詳細に記述する方向での検討が進められています。わが国でも一部の先進的な企業では計上が義務付けられる資産除去債務の範囲を超えて、将来の環境債務の全体を把握し、開示する動きがみられます。

 今後、このような取組が広がる中で、企業活動における環境保全の取組が進み、個々の企業活動のレベルから環境と経済の統合的な向上が実現していくことが期待されています。


資産除去債務を含めた環境債務の全体を把握・公表している先進事例


3 環境対策における世界経済と日本の関係

 経済活動と同様、環境問題も今日では、国境を超えて国際社会全体や多数の相手国との関係がより広く深くなっており、環境対策は、国内で完結するものではなくなっています。資源や原料の調達元における環境負荷がどの程度か把握し、その負荷にも配慮しながら経済活動を進めないと、わが国の環境が良くなっても国境を超えて環境負荷を増加させることになってしまいます。そのような状況にならないように、原料調達から輸送、製造、販売、再利用等までの全体の流れに亘る対策が必要です。

 わが国は、多くの資源を海外に依存しており、原料や部品の調達までさかのぼって効率的なもの作りを行うこと、わが国の優れた製品や技術を海外に普及させることなどを通じて、世界の環境を良くしていくことができます。他方で、部品の製造国や原料の生産国の環境を無視した輸入などを行うと、地球の環境を損なうおそれが生じます。こうしたことを踏まえて、環境対策の中でも世界経済を視野に入れた取組を行うことが重要になっています。


(1)バイオ燃料の確保に伴う課題

 ア 世界とわが国のバイオ燃料の状況

 世界全体でのバイオエタノールの生産量は、2001年の3,100万kLから2007年の6,400万kLへと生産量が2倍以上増加しています(図3-2-14)。わが国では、平成19年にサトウキビから砂糖を作る際の副産物や建設廃材等を原料とするバイオエタノールが約30kL、廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料が約1万kL生産されており、世界的には、自国内で管理ができる国産バイオ燃料を中心に導入の拡大が進められていることもあり、各国と比較して、まだ生産量は少ない状況にあります(表3-2-5)。


図3-2-14 世界のバイオエタノール生産量


表3-2-5 2007年の世界のバイオ燃料生産量

 バイオエタノールの普及拡大は各国でも進められており、例えばアメリカでは、2015年の導入量の目標として現状の2倍程度を掲げています。また、2005年8月に「2005年包括エネルギー政策法」が成立し、再生可能燃料(主にエタノール)の使用量を2012年に75億ガロン(約2,839万kL)まで拡大することとされ、さらに、2007年12月には「2007年エネルギー自給・安全保障法」が成立し、2022年に使用量を360億ガロン(約1億3,626万kL)まで拡大することとされています。これは、従来型のバイオ燃料は2015年以降は増やさず、セルロースなどの次世代バイオ燃料を210億ガロンまで導入するという目標です(図3-2-15)。


図3-2-15 アメリカの再生可能燃料導入目標

 イ バイオ燃料の確保に伴う課題

 運輸部門における二酸化炭素削減の観点から世界各国でバイオ燃料の導入が推進されています。我が国においても目標達成計画において、平成20年から平成24年までの平均で、原油換算で50万kLのバイオ燃料を導入する計画であり、その達成に向けてさらなる導入の加速が求められます。

 一方で、バイオ燃料の開発・利用は食料との競合問題や森林破壊等の環境問題等を引き起こす恐れがあり、こうした影響を引き起こすことなく持続可能な利用や開発を図ることが重要となっています。こうした状況の中で、現在、EU、アメリカや国際バイオエネルギーパートナーシップ(GBEP)等の国際的な枠組みにおいてわが国も含む各国の参加の下にバイオ燃料の持続可能性基準等の検討が進められています。

 例えば、平成20年12月に欧州議会で採択された「再生可能資源由来エネルギーの利用促進に関する欧州議会及び欧州理事会指令(以下「再生可能エネルギー指令」という。)」にある「バイオ燃料等の持続性基準」においては、温室効果ガスの削減率、原料の生産地等の持続性基準を満たしたバイオ燃料だけが、導入目標の算定対象とできることなどを定めています。具体的には温室効果ガスの削減率は、「原料採取や燃料製造及び流通段階も含めた温室効果ガスの最低削減率を35%とし、2017年以降は、同50%とすること」等、原材料の生産地は、「生物多様性及び炭素蓄積度の高い土地でないこと」等が持続性の基準とされています。

 わが国においても、次世代バイオ燃料の生産技術の開発はもとより、こうした取組も参考に、持続可能なバイオ燃料の調達を進めて行かなくてはなりません。


(2)製品製造の流れ(サプライチェーン)全体を対象にした海を超えた環境対策

 ある総合化学メーカーでは、デジタルカメラ、印刷製版用PS版(以下「PS版」という。)、印刷機器・材料、医療機器、カラーフィルム、複写機・プリンターなどを製造し、販売しています。この会社では、個々の製品の資源調達、製造、輸送、使用時、廃棄・リサイクルの各段階で生じる環境負荷を把握する取組を行っています。この分析によると、家電メーカーや自動車メーカーと異なり、製品の使用時より、PS版の原料であるアルミの精錬や、複写機の構造用のスチールなど、資源の調達・加工時の二酸化炭素排出が大きいことが分かりました(図3-2-16)。


図3-2-16 総合化学メーカーの二酸化炭素排出量の全体像

 資源を有効利用するために、使用済みのPS版を生産工程で投入すると、一から精錬する場合に比べて精錬から製造までに排出される二酸化炭素が74%削減できることが分かりました(図3-2-17)。同社では、こうした分析に基づき、海外から日本に至るまでの製品のライフサイクル全体について、環境負荷を最適な形で合理的に削減する努力を続けています。


図3-2-17 廃材アルミのクローズドループリサイクルの流れ


(3)持続可能な利用に結びつく調達の仕組み

 わが国は古くから、住宅や家具、紙、燃料などとして、たくさんの木材を利用していますが、現在、それらの多くが海外から輸入されています。平成19年にわが国で消費された木材約8,200万m3のうち、国産材は約23%に過ぎず、残りの約77%は北アメリカ、東南アジア、ロシア、ヨーロッパなどから輸入しています。このため私たちの生活は、外国の森林や森林を含む生物多様性により支えられているともいえます。

 世界の森林面積は、約39億5千万ヘクタールで、全陸地面積の約30%を占めています。わが国の国土のうち森林の占める割合は約70%ですから、その割合はちょうど逆転していることになります。世界の森林は、熱帯林を中心に、毎年約1,290万ヘクタールが減少しています。中国、ヨーロッパなど温帯林における増加分を差し引いても、その減少のスピードは、毎年約730万ヘクタールとなっています。また、その中で大きな割合を占める熱帯林は、世界でも有数の豊かな生物相を有する生態系であり、その減少は大きな問題となっています。

 森林は、多様な動植物の生息・生育場所を提供するだけでなく、水資源の涵養、土壌の浸食・崩壊防止、地域の文化・生活を維持・継承する役割などさまざまな恵みを提供しています。木材をはじめとする生物資源の供給もその役割の一つです。それらに加え、近年、森林の持つもう一つの大切な役割が世界的に注目され、かつてないほどに森林の重要性が見直されています。それが気候変動を緩和する役割です。

 気候変動を緩和するためには、二酸化炭素など温室効果ガスの大気中の濃度を低下させる必要があります。樹木は、これに大きく寄与します。つまり、光合成によって二酸化炭素を吸収し、有機物の形で炭素を蓄積します。さらに森林は土壌中にも大量の炭素を貯留しています。京都議定書では、森林が温室効果ガスの吸収源として位置づけられています。しかし、そうした大切な世界の森林は減少しており、森林内に蓄えられた炭素は、その減少に伴って、大気中に排出されています。IPCCの第4次評価報告書では、世界の温室効果ガス排出量の約20%が森林減少によるものとされ、その与える影響の大きさが改めて世界中に認識されました。

 森林減少の主な原因は農地への用途転用です。経済開発・人口増加を背景とした非伝統的な焼畑農業の増加やバイオ燃料の需要増加とも相まって、アブラヤシのプランテーションなど大規模な農園開発など、目先の経済的利益を追求する人間活動の結果、森林が次々と農地へ置き換わっています。また、燃料用木材の過剰な採取、森林火災などもその原因として考えられています。

 森林保全の大きな阻害要因として、違法伐採が指摘されています。違法伐採とは、木材が生産される国の法律に反して行われる伐採のことをいい、所有権や伐採権がない森林の伐採、許可された伐採量や指定された樹種を守らない伐採などのほか、先住民等の伝統的権利や伐採労働者の安全の観点などから問題があるような形での伐採など広い範囲のものが含まれます。

 違法伐採は、木材生産国における森林の減少・劣化をもたらします。そのことだけでなく、正当なコストを支払っていない違法伐採された木材が国際市場で不当に安価で流通することにより、輸入国の持続可能な森林経営をも阻害し、世界の森林に大きな負の影響を与えています。また、違法伐採により劣化した森林は、生態学的な健全性や経済的な価値が低下します。これに加え、農地へ転用されやすくなったり、森林火災が生じやすくなるなどの森林減少を引き起こす原因を増やしてしまいます。

 わが国が多量の木材を輸入しているインドネシアでは伐採の約50%、ロシアでは約20%が違法伐採であるとの調査結果もあります。このような違法伐採された木材がわが国にも輸入されている可能性があります。

 わが国は世界の森林の減少・劣化、違法伐採問題に対して、ODAを活用した技術協力や資金援助を行ったり、衛星技術を活用した森林資源のモニタリングなどわが国の森林技術を活用した途上国政府の能力開発、技術移転を進めたりしています。また、二国間、地域間、多国間の様々な国際会議において、積極的に森林問題を提起し、その対策についての議論にも進んで取り組んでいます。

 また、わが国は国内において、国等の公的機関が率先して環境の負荷ができるだけ少ないものを選んで購入することを定めたグリーン購入法において、平成18年から違法伐採対策として、木材・木材製品は「合法性」が証明されたものを購入することが規定され、また、「持続可能性」については配慮事項とされました。「合法性」の確認に当たっては、林野庁のガイドラインに準拠することとされており、以下の3つの方法が使われます。

[1]森林認証制度を活用する方法

[2]業界団体の認定を受けた事業者が証明する方法

[3]事業者独自の取組により証明する方法

 森林認証制度とは、森林が適切に管理されていることを個々の森林ごとに第三者機関が認証し、その森林から産出された木材を区分管理、ラベル表示することを通じ、消費者が選択的にこれらの木材を購入できるようにする民間主体の制度のことです。森林認証プログラム(PEFC)、森林管理協議会(FSC)、『緑の循環』認証会議(SGEC)などがあります。

 わが国における森林認証制度の認知度はまだ高いとはいえません。しかし、世界的には認証を受けた森林の面積が増加しており、認証木材を流通管理し、ラベルを貼付・表示する企業も増加しています。また、英国では認証木材の市場占有率が約6割となるなどヨーロッパでは認証木材の需要が非常に高くなってきています(図3-2-18)。こういった需要側のイニシアティブによって森林管理水準を引き上げるように促すことは、木材生産国の森林認証への取組に非常に大きな影響を与えています。例えば、マレーシアの木材生産は、マレー半島とボルネオ島の北部の大きく2つに分かれていますが、ヨーロッパが主要な輸出先とされるマレー半島の森林(森林として管理計画に計上されている永久森林)では約97%が認証されています。他方、わが国が主要な輸出先とされるボルネオ島北部では0.9%しか認証されていません。私たちは、世界有数の木材輸入国として、木材生産国の森林管理にも関心を持ち、また森林認証制度を活用した木材など、合法性が証明された木材を選択的かつ積極的に利用することで、消費者として木材生産国の生物多様性の保全及び持続可能な利用に貢献することができます。


図3-2-18 森林管理協議会(FSC)の認証森林面積

 このように、世界全体でグリーン・ニューディール政策を進めていく上で、資源の輸入に関する対策にも環境上の十分な配慮が求められるのです。


(4)途上国の公害克服と温暖化対策を同時に進める環境対策(コベネフィット対策)への協力

 ア コベネフィット・アプローチの推進について

 現在、多くの新興国においては、急速な経済成長等を背景として、大気汚染や水質汚濁といった環境問題が深刻で緊急な課題となっています。このような環境汚染への対策には、工夫次第では温室効果ガスの削減も可能な対策、つまり途上国自身のニーズである環境汚染対策と世界のニーズとしての温暖化対策の双方に役立つ対策も多く存在しています。わが国はこのように環境問題と温暖化問題という二つの問題解決に同時に貢献する(同時に二つのベネフィットを有する)取組を「コベネフィット・アプローチ」として、途上国はもとより国際社会に対しても、その採用を提唱してきました。

 コベネフィット・アプローチは、平成19年5月安倍元総理大臣により打ち出された「クール・アース50(美しい星50)」において始めて表明されました。その後開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)や東アジア・サミット(EAS)の首脳級会合、平成20年以降はG8環境大臣会合、北海道洞爺湖サミット、EAS環境大臣会合等においても宣言文書等にコベネフィット・アプローチが盛り込まれましたが、このような国際合意文書に盛り込むに当たっては、わが国が主体的な役割を果たしてきました。

 一般に開発途上国においては、環境問題への関心が高まりつつあるものの、経済を発展させることが最優先課題とされており、温室効果ガスの削減対策は優先度が低くなる傾向があります。そのため、温室効果ガスの削減に向けて開発途上国の積極的な取組を促すためには、開発ニーズを満たしつつ、地球温暖化対策にもつながる取組を進めていくことが有効となっています。IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書でもその効果が強調されています。

 特に開発途上国では、開発に伴う公害の発生が地域として解決すべき重要な課題となっており、このような地域の環境問題を解決するための公害対策に取り組みながら地球温暖化対策も進めるコベネフィット型温暖化対策は、開発途上国における開発ニーズを満たしつつ地球温暖化防止への主体的な取組を促すための有効な手法と考えられます(図3-2-19)。


図3-2-19 コベネフィットアプローチの概念

 イ コベネフィットCDMモデル事業の実施について

 環境省では、コベネフィット・アプローチの推進の一環として、平成20年から、コベネフィットCDMモデル事業を実施しています。本事業は、温暖化対策と環境汚染対策のコベネフィットの実現を目指したコベネフィットCDM事業(事業で生じた二酸化炭素等の削減量を京都議定書上の排出枠としてその一定割合をわが国が取得する事業)の拡大・推進を図るものであり、平成20年度は2件の事業を(マレーシア及びタイ)の実施に着手したところです。マレーシアにおける「閉鎖処分場の温室効果ガス排出削減に伴う環境改善事業」は、嫌気性状態である廃棄物処分場を準好気性に改善することによって、廃棄物処分場から排出される温室効果ガスを削減するとともに、廃棄物処分場の安定化、浸出水の水質改善及び悪臭防止等の環境汚染対策を行うものです(図3-2-20)。また、タイにおける「エタノール工場排水からの発電用バイオガス事業」は、嫌気性オープンラグーンで処理されているエタノール工場の排水を、嫌気性発酵槽を導入して処理することにより、排水の水質改善及び悪臭改善の環境汚染対策を行うとともに、温室効果ガスの大気放出を抑制するものです。


図3-2-20 閉鎖処分場の温室効果ガス排出削減に伴う環境改善事業

 このように、国際環境協力の政策展開に当たっても、グリーン・ニューディールを世界全体で進める上での配慮が求められますし、また、そうした配慮は十分に可能だと言えましょう。わが国としては、今後、コベネフィット事業の具体的な事業をなお一層発掘し、コベネフィット・アプローチを強力に展開していきます。


(5)循環型社会の形成に向けたわが国の経験・技術の国際的な展開

 ア アジアにおける廃棄物処理の現状

 アジアの開発途上国では、急速な都市化や人口集中により大量の都市ごみが発生しています。その結果、歴史的に形成されてきた廃棄物管理システムでは対処することができず、廃棄物の散乱や無秩序な投棄が起こっています。また、処分場や家庭から有価物を回収し、生計を立てているウェイストピッカー(拾い人)と呼ばれる人々により、環境上・健康上不適切な形でリサイクルが行われている事例も存在します(写真3-2-1、3-2-2)。そのため、都市ごみ収集体制の確立や衛生的で安全な処分といった適正管理が主要な課題となっています。また、経済成長が目覚ましい東アジア諸国の都市部等においては、廃棄物の発生量そのものが増加しており、発生抑制や循環利用を強化することがますます必要になっています。


写真3-2-1 処分場で暮らすウェイストピッカー


写真3-2-2 ごみが溢れて積み上がっているゴミ収集ステーション

 また、現地企業はもとより、日系企業がアジアに進出する際にも、自社の工場から排出される廃棄物の処理方法について考慮する必要があります。しかし、進出先において廃棄物処理に関する情報が少ない、十分な処理やリサイクルをする施設がない等の障害もあります。

 わが国はこれまで廃棄物処理や循環型社会形成に関する技術を高めてきました。さらに、わが国は高温多湿で人口や経済が密集しているという点で多くのアジア地域と共通点があります。そのためわが国の技術や経験は、アジアにおける廃棄物処理・リサイクルに関する問題解決に大いに貢献することができると考えられます。以下に、衛生的な処分と循環利用を促進するための取組と、アジアに進出した日系企業のリサイクル事業例について紹介します。

 イ 途上国における日本の経験・技術の展開事例

 (ア)循環型社会の形成に向けてのハノイ市3Rイニシアティブ活性化支援プロジェクト

 ハノイ市では近年急速に経済成長、都市化が進んでおり、2020年までには都市ごみの収集量が現在(1,600トン/日(2003年時点))の約3倍となると懸念されています。また、道路上や湖沼に未回収の廃棄物が投棄され、排水不良や地下水の汚染が引き起こされています。そこで、わが国はベトナム政府より技術協力プロジェクトの支援要請を受け、独立行政法人国際協力機構JICA)を通して2006年11月より3年間の予定で廃棄物管理に関する協力を進めています。ハノイ市では、都市ごみ発生量のうち生ごみがその約半分を占めていることから、モデル地区における生ごみの分別収集・リサイクル(コンポスト化)の導入、3Rに関する普及活動や環境教育を実施しました。その結果、処分場への搬入量はモデル地区であるファン・チュー・チン地区において湿重量ベースで59%減少しました。また、分別収集の徹底により回収される生ごみの質が向上し、本プロジェクトで作成したコンポストは2007年度の全国規模の農業博覧会で賞を受賞するに至りました。さらに、分別モデル事業で導入したコンテナ収集の効果により、ファン・チュー・チン地区では、道路に散在していたごみが減りました。地区の1,900世帯のうち115世帯を対象に行ったアンケートによると、「衛生状態が改善された」との回答は96%でした。本取組の影響を受けたベトナムの学生により、ハノイ以外の地域でも3Rの普及を促進する自発的な取組が行われることとなりました。今後は分別モデル事業の普及拡大や、現地関係者の環境教育等への支援が予定されています(写真3-2-3)。


写真3-2-3 ハノイ市3Rイニシアティブ活性化支援プロジェクト

 (イ)リサイクル事業進出例

 日系企業の進出と併せて、そのリサイクルを担当する企業が進出している事例が見られます。ある商社では、自動車メーカーの進出とともに、中国においてアルミ屑のリサイクル施設や鉄くずのリサイクル施設を操業しています。アルミ屑のリサイクル施設では、自動車の破砕屑などの非鉄屑を購入してアルミ屑を選別し、自動車メーカーの工場から発生したアルミ屑と共に溶解し、溶けた状態のまま顧客である自動車部品のアルミ金型鋳造工場に供給しています。アルミ屑の月間処理能力は約1,200トンです。アルミを溶けた状態のまま製造工程へ納入することにより、アルミ溶解の回数を減らし、省エネ、二酸化炭素削減にも貢献しています(図3-2-21)。


図3-2-21 中国における金属リサイクルシステムの展開

 ウ わが国の経験や技術を展開するに当たっての課題と方向性

 わが国が廃棄物の処理やリサイクルに関する事業を途上国において展開する際の課題としては、途上国では進んだ技術を導入する際に要する資金や施設を維持管理するために必要な人材、物資が不足しがちであるということが挙げられます。また、循環資源そのものについても、途上国の人々がその環境に配慮した廃棄物処理と循環型社会形成が有する大きな意義やメリットに関して認識が乏しいことや、実効性のある規制がなされていないという制度上の問題があることなどにより、資源として再生等が可能な廃棄物が不法投棄されたり、環境に十分な配慮を行っていない業者に高く買い取られたりなどしています。このため、環境に十分配慮したリサイクルを行う業者に必要な量が回りづらいという状況となっています。

 その他にも、リサイクル、あるいは最終処分場までの廃棄物の行方など廃棄物の流れに関する情報が途上国では不足していることも大きな問題です。さらに、知的財産権について、途上国にとってはライセンス料等の経費がかかり過ぎるために使いづらく、また、わが国の企業にとっては知的財産を保護する環境が整っていないために技術が流出するおそれがあるという課題もあります。

 ハノイの事例では、これまでハノイ市民が持っていなかった3Rの概念についてキャンペーンを通じて普及させ、さらに生ごみの分別収集のメリットを街の衛生状態の改善という目に見える形で市民に実感させたことで、分別収集をうまく進めています。さらに今後の現地スタッフの育成により、分別収集が継続して行われることが見込まれます。また、先に述べた商社の事例は、途上国に進出した日系工場が持つ廃棄物の適正処理や高品質な再生原料の確保に関するニーズを生かして、循環資源の調達と再生品の利用先を確保することに成功した事例ととらえることができます。途上国に進出した日系工場には、自社から排出される廃棄物について、相手国の法律による基準を遵守して処理することは当然ながら、さらに基準以上の環境配慮を行い処理することで企業の社会的責任を果たそうとする工場があり、わが国の廃棄物処理業者やリサイクル業者の海外進出を促進する可能性があります。

 このような事例から、相手国の状況を踏まえて廃棄物の適正処理や循環型社会の形成に関する意義やメリットを理解してもらい、廃棄物の排出者の行動を変えるインセンティブを与えることが重要であると考えられます。また、企業にとっては、相手国において、優れた廃棄物処理技術やシステムを維持するための人材を育てること、もしくは現地に進出している日系企業の廃棄物の適正処理や高品質な再生原料の確保に関するニーズを的確に捉えたビジネスモデルを構築することなどにより、わが国の経験や技術を幅広く展開させるチャンスを見出すことが可能であると考えられます。

 このように、廃棄物・リサイクル分野の国際協力や民間の取組は、グリーン・ニューディール政策を世界全体で進めていく上で大きな役割を果たすものと期待されます。


(6)環境人材の育成に向けた施策の展開

 これまで述べてきたようなアジアの急速な経済成長・工業化に伴う環境問題と資源消費等への対応や、長期的な視点で持続可能な社会づくりが強く求められている今日、これらを担う人材が強く求められています。このような人材の育成については、わが国政府の提案に基づき、2005年からの10年が「国連持続可能な開発のための教育の10年(ESDの10年)」と位置づけられ、世界各国で持続可能な社会づくりに取り組む人材育成が進められています。わが国では、「わが国における『国連持続可能な開発のための教育の10年』実施計画」(平成18年3月関係省庁連絡会議決定)に基づき、ESDの10年の初期段階の重点的取組事項として高等教育機関でのESDの取組が位置づけられました。さらに、平成15年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」において国際的に活躍する環境リーダー育成イニシアティブをアジアにおいて展開していくことが盛り込まれました。

 これを受け、環境省では「日本を含むアジアにおいて自らの体験や倫理観を基盤とし、環境問題の重要性・緊急性について自ら考え、各人の専門性を活かして職業活動や市民生活等を通じて持続可能な社会づくりに取り組む強い意志を持ち、行動する人材(環境人材)」の育成に必要な方策を検討し、平成20年3月に「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン」を策定しました。この具体化のため「アジア環境人材育成イニシアティブ」として、平成20年度より日本の大学・大学院が企業、行政、NPOやアジアの大学等と連携・協力して行う「環境人材育成のための大学教育プログラム開発事業」を実施しています。また、環境人材育成に取り組むアジアの大学院のネットワークを構築するため、同年6月にアジア環境大学院ネットワーク(ProSPER.net)を立ち上げ、現在日中韓、アセアン諸国、インド、オーストラリアなど18の大学と国際機関が参加し、共通のプログラム開発等の取組を始めています。さらに、平成21年4月からは、アジアの環境人材育成を進めるための産官学民のプラットフォームとして環境人材育成コンソーシアム準備会も立ち上げられました。

 また、平成20年の日中韓環境大臣会合の場で我が国の提案により、日中韓の学生団体のネットワークを形成するために、21年に日中韓の学生団体間の会合を開催する旨が合意されました。このことを受け、日中韓の学生団体のネットワーク会合を開催し、アジアの環境人材育成に向けたに日中韓の若者の連携を進めていくこととしています。



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