第5節 森・里・川・海のつながりを確保する取組

1 生態系ネットワークの形成と自然再生の推進

(1)生態系ネットワークの形成

 平成19年度策定の「第三次生物多様性国家戦略」及び「国土形成計画(全国計画)」においても、生態系のネットワーク形成を通じた自然の保全・再生を図ることの重要性が位置づけら、国有林においては、「緑の回廊」の設定を進めており、平成19年4月現在、24か所約509千haが設定されています。


(2)自然再生の推進

 平成20年1月末現在、自然再生推進法(平成14年法律第148号)に基づく自然再生協議会が全国19か所設置されています(図6-5-1)。この中で、同月までに16か所で自然再生全体構想が作成され、うち8か所で自然再生事業実施計画が作成されました。19年度中に同法に基づく自然再生専門家会議を1回開催し、14の事業実施計画を議論しました。


図6-5-1 自然再生協議会(設置箇所)の全国位置図

 また、平成14年度から本格実施した自然再生事業について、19年度は直轄事業を7地区、自然環境整備交付金で地方公共団体を支援する事業を12地区、計19地区で実施しました。このうち14地区で整備事業段階にあり、5地区で整備事業に向けた調査計画を実施するとともに、自然再生を通じた自然環境学習の取組を行いました。

2 重要地域の保全

(1)自然環境保全地域

 自然環境保全法(昭和47年法律第85号)に基づき、原生自然環境保全地域として5地域5,631ha、自然環境保全地域として10地域21,593haを指定しています。これらについて適切な保全管理を行うとともに、白神山地自然環境保全地域において新たなモニタリング技術の研究開発を行いました。また、都道府県が条例に基づき指定する都道府県自然環境保全地域は536地域76,451haとなりました。


(2)自然公園

 ア 自然公園の指定、公園区域及び公園計画の見直し

 自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づいて指定される国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園は、国土の14.3%を占めています。

 平成19年8月には、丹後半島の海岸部、半島中央の世屋高原及び半島南部の大江山連峰から成る19,023haの地域を、丹後天橋立大江山国定公園として指定しました。また、同月、日光国立公園の尾瀬地域と会津駒ヶ岳及び田代山・帝釈山周辺地域を併せた37,200haの地域を、尾瀬国立公園として指定しました。国定公園では17年ぶり、国立公園では20年ぶりとなる新規指定であり、これで我が国の国立公園の数は29、国定公園の数は56となりました。また、国立・国定公園の適正な保護及び利用の増進を図るため、公園を取り巻く社会条件等の変化に応じ、公園区域及び公園計画の見直しを行っており、平成19年度は国立公園4公園、国定公園4公園において行いました。これらの見直しでは、西表国立公園における石垣島地域の公園区域への編入とそれに伴う西表石垣国立公園への名称変更、日光国立公園那須甲子・塩原地域の公園区域等の変更、下北半島国定公園における全般的な見直し等を行いました(図6-5-2)。


図6-5-2 国立公園及び国定公園配置図

 イ 自然公園の管理の充実

 平成19年9月より、吉野熊野国立公園の西大台地区において、全国で初めてとなる利用調整地区の運用を開始し、一定のルールのもとで優れた自然環境の持続的な利用を図る取組を始めました。

 また、平成20年3月末現在、自然公園法に基づく公園管理団体は、国立公園で4団体と国定公園で2団体が指定されています。知床では、平成19年11月に指定された団体により、森林の再生、登山道等の補修、調査研究などが、浅間山麓では平成20年3月に指定された団体により、自然環境の調査研究や、自然情報の提供、利用の助言などが行われています。

 国立公園等の貴重な自然環境を有する地域において、自然や社会状況を熟知した地元住民等を雇用し、国立公園内の海岸漂着ゴミ等の清掃、外来生物の駆除、景観対策としての展望地の再整備、登山道の補修、サンゴ礁保護のためのオニヒトデ等の駆除等の作業を国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業により行いました。さらに、アクティブ・レンジャーを全国に配置し、現場管理の充実に努めました。

 ウ 自然公園における環境保全対策

 自然公園事業等により太陽光パネルなど自然エネルギーを利用した地球環境にやさしい施設の整備を行いました。また、国立・国定公園内の植生、動物、自然景観の保護、復元等を目的とした保護施設の整備を図るため、植生復元施設、自然再生施設等の整備を行いました。

 自然公園の利用者がもたらすごみは、美観や悪臭の問題だけでなく生態系にも悪影響を及ぼすことがあるため、8月第1日曜日の「自然公園クリーンデー」に全国の自然公園で一斉に美化清掃活動を行うなど、関係地方公共団体等と協力し清掃活動を行いました。

 自動車乗入れの増大により、植生への悪影響、快適・安全な公園利用の阻害等が生じているため、国立公園内における自動車利用適正化要綱に基づき、中部山岳国立公園の上高地等で自家用車に代わるバス運行等の対策を地域関係機関との協力の下、実施しました。自動車利用適正化対策は、平成19年3月末現在16国立公園の25地区で実施されています。

 国立公園等の山岳地域における環境浄化及び安全対策を図るため、山小屋事業者等がし尿・廃水処理施設等の整備を行う場合に、その経費の一部を補助しており、平成19年度は主に北アルプス等の山小屋のし尿処理施設の整備を実施しました。

 国立公園のうち自然保護上特に重要な地域では、厳正な保護を図るため民有地の買上げを行いました。


(3)鳥獣保護区、生息地等保護区

 鳥獣保護法に基づき、鳥獣の保護を図るため特に必要がある区域を国指定鳥獣保護区に指定しており、平成20年3月末現在、全国で指定されている国指定鳥獣保護区は66か所、547,840ha、同特別保護地区は53か所、145,453haとなっています。

 種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種の生息・生育地として重要な地域を生息地等保護区に指定しており、平成20年3月末現在、全国で指定されている生息地等保護区は9か所、885.48ha、管理地区は9か所、385.37haとなっています。


(4)名勝(自然的なもの)、天然記念物

 文化財保護法に基づき、日本の峡谷、海浜等の名勝地で観賞上価値の高いものを名勝(自然的なもの)に、動植物、地質鉱物等で学術上価値の高いものを天然記念物に指定しており、平成20年3月末現在、名勝(自然的なもの)は147件(うち特別名勝12件)、天然記念物は982件(うち特別天然記念物75件)を指定しています(表6-5-1)。さらに、天然記念物の衰退に対処するため関係地方公共団体と連携して、特別天然記念物コウノトリの野生復帰事業など13件について再生事業を実施しました。


表6-5-1 数値で見る重要地域の状況


(5)保護林、保安林

 国有林においては、自然環境の原生の状態の維持、貴重な野生動植物の生息・生育地の保護、その他の自然環境の保全に配慮した管理を行う必要がある国有林の区域を保護林に設定し、保護林モニタリング調査等の適切な保護管理を行いました。平成19年4月現在で833か所、約78万haの保護林が設定されています。


(6)景観の保全

 景観の保全に関しては、自然公園法によって優れた自然の風景地を保護しているほか、景観法(平成16年法律第110号)に基づき、平成20年4月1日現在、青森県、秦野市(神奈川県)など、104景観行政団体で景観計画が定められています。また、文化財保護法により、20年3月末までに、人と自然との関わりの中でつくり出されてきた重要文化的景観を7地域選定しています。

 また、良好な河川、海岸、砂防等の景観の形成・保全の促進を図るため、「河川景観ガイドライン」、「海岸景観形成ガイドライン」及び「砂防関係事業における景観形成ガイドライン」等に基づき景観に配慮した取り組みを推進しました。


(7)ナショナル・トラスト活動

 国民自らが寄付を募り、自然環境や文化遺産などを取得、保全・活用するナショナル・トラスト活動をさらに促進するため、ナショナル・トラスト活動を行う特定公益増進法人に対する寄付に関して税制優遇措置を講じています。また、ナショナル・トラスト活動による企業遊休地等を活用した環境保全及び環境教育活動に向けた調査を行いました。

3 森林・農地

(1)森林

 森林の持つ多面的機能を持続的に発揮させるため、多様な森林づくりを推進しました。また、持続可能な森林経営の推進、地域森林計画の樹立等に必要な基礎資料を得るため、森林資源モニタリング調査を引き続き実施しました。

 また、森林の保全を図るため、特に公益的機能の発揮が必要な森林を保安林に指定し、伐採・転用等の規制を行うとともに、豪雨や地震等による山地災害の防止を図るため、周辺の生態系に配慮しつつ荒廃地等の復旧整備や機能の低い森林の整備等を行う治山事業を計画的に実施したほか、松くい虫等の病害虫や野生鳥獣による森林被害に対する各種防除措置の総合的な実施や、森林保全推進員による森林パトロールの実施、啓発活動等を推進しました。

 さらに、森林を社会全体で支えるという国民意識の醸成を図るため、森林ボランティア等広範な主体による森林づくり活動、全国植樹祭等国土緑化行事及び「みどりの日」・「みどりの月間」を中心に行う緑化運動、巨樹・巨木林や里山林等身近な森林・樹木の適切な保全・管理のための技術開発及び普及啓発活動を支援するとともに、森林での様々な体験活動を通じて、森林の持つ多面的機能等に対する国民の理解を促進する森林環境教育や里山林の保全・利用活用など、森林の多様な利用及びこれらに対応した整備を推進しました。

 国有林野については、公益的機能の維持増進を旨とする管理経営の方針の下で、林木だけでなく動物相、表土の保全等森林生態系全般に着目した多様な森林整備を行いました。


(2)農地

 生活環境の整備等を生態系の保全に配慮しながら総合的に行う事業等に助成し、農業の有する多面的機能の発揮や魅力ある田園空間の形成を促進しました。農村地域の生物や生息環境の情報の調査・地理情報化を行い、生物の生息・生育地と水路等の農業用施設との生態系ネットワーク化を図る技術の開発を進めました。さらに、水田周辺地域(農業用水路等)の生態系の現状把握を行うため「田んぼの生きもの調査」を実施しました。また、農業生産活動と調和した自然環境の保全・再生活動の普及・啓発のため、「田園自然再生活動コンクール」を実施するとともに、活動上の新たな課題に対する技術的支援を実施しました。

 棚田における農業生産活動により生ずる国土の保全、水源のかん養等の多面的機能を持続的に発揮していくため、棚田等の保全・利活用活動を推進したほか、農村の景観や環境を良好に整備・管理していくために、地域住民、地元企業、地方公共団体等が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動(グラウンドワーク)の推進を図るための事業を行いました。

 田園自然再生関連対策として、地域住民や民間団体等による保全活動と連携した生態系保全型の農地、土地改良施設の整備等を進めるとともに、景観保全、自然再生活動の推進・定着を図るため、地域密着で活動を行っているNPO等に対し支援を実施しました。また、農業用排水の水質保全と農業集落の生活環境の改善を図るため、農業集落排水施設の整備を推進しました。

 農業の多面的機能の基礎である農地・農業用水等の資源や環境の良好な保全と質的向上を図るため、効果の高い地域ぐるみの共同活動と環境保全に向けた先進的な営農活動を一体的かつ総合的に支援する施策を19年度より導入しました。

 また、資源の循環的な利用、農業生産活動に伴う環境への負荷の低減及びそれを通じた生物多様性の維持等の自然環境の保全を図る観点から、引き続き、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づき、たい肥等による土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者(エコファーマー)の育成等を推進しました。

 また、家畜排せつ物法に基づき、家畜排せつ物の利活用に必要なたい肥化処理施設等の整備に関する事業を推進するとともに、金融・税制上の措置を引き続き講じたほか、食品残さ等未利用資源の飼料化施設等の整備に取り組みました。都市部の農地においては、都市住民への農産物の供給や都市住民の交流の場としての活用を図るため、簡易な基盤整備や市民農園の整備等を推進しました。

4 都市緑地等

(1)都市公園の整備等

 都市における緑とオープンスペースを確保し、水と緑が豊かで美しい都市生活空間等の形成を実現するため、「都市公園整備事業」の推進を図りました。また、都市公園の整備、緑地の保全、民有緑地の公開に必要な施設整備を総合的に支援する「緑地環境整備総合支援事業」を実施しました。土砂災害に対する安全性を高め、緑豊かな都市環境と景観を創出するため、市街地に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして樹林帯を形成し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創出に寄与しました。


(2)緑地保全等の推進

 緑豊かで良好な都市環境の形成を図るため、都市緑地法(昭和48年法律第72号)に基づく特別緑地保全地区の指定を推進するとともに、地方公共団体等による土地の買入れ等を推進しました。また、首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)に基づき指定された近郊緑地保全区域において、地方公共団体等による土地の買入れ等を推進しました。さらに、風致に富むまちづくり推進の観点から、風致地区指定の推進を図りました。


(3)国民公園及び戦没者墓苑

 旧皇室苑地として広く一般に利用され親しまれている国民公園(皇居外苑、京都御苑、新宿御苑)及び千鳥ケ淵戦没者墓苑では、その環境を維持するため、施設の改修、園内の清掃、芝生・樹木の手入れ等を行いました。


(4)道路緑化

 CO2の吸収により地球温暖化を防止する等環境負荷を低減するとともに、良好な景観を形成するため、全国的に植樹や道路のり面緑化等の道路緑化を実施しました。


(5)緑化推進運動への取組

 緑化推進連絡会議を中心に、国土の緑化に関し、全国的な幅広い緑化推進運動の展開を図りました。運動の一層の展開と定着化を図るため、「平成18年度緑化推進運動の実施計画」に基づいた施策を実施しました。

 都市緑化の推進として、「春季における都市緑化推進運動」期間(4~6月)、「都市緑化月間」(10月)を中心に、その普及啓発に係る活動を実施しました。

5 河川・湿原等

(1)河川の保全・再生

 河川やダム湖等における生物の生息・生育状況の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を実施し、結果を河川環境データベース(http://www3.river.go.jp/IDC/index.html)として公表しています。また、世界最大規模の実験河川を有する自然共生研究センターにおいて、河川や湖沼の自然環境保全・復元のための研究を進めました。加えて、生態学的な観点より河川を理解し、川のあるべき姿を探るために、河川生態学術研究を進めました。

 地域住民やNPO、関係機関等と連携を図りながら、河川や乾燥化傾向にある湿地や干潟などの再生を進めることにより、生物の良好な生息・生育環境を復元しています。また、平成18年10月に策定した「多自然川づくり基本方針」に基づき、より一層河川環境の保全と創出に向けた取組を推進しました。さらに、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、災害復旧事業においても、河川環境の保全・復元の目的を徹底しました。

 また、水系を全体的に捉え、河川とダムの連携を図りつつ、河川環境の保全を目的とする「水系環境整備事業」を実施し、ダム貯水池においても湖岸の整備や緑化対策等によってダム湖の活用や親水性の向上を図りました。

 土砂災害の防止の実施に当たり、生物の良好な生息・生育環境を有する渓流・里山の環境等を保全・再生するため、NPO等と連携した山腹工などにより、里地里山などの多様な自然共生型の砂防事業を推進しました。また、土砂災害の防止と併せて、優れた自然環境や社会的環境を持つ地域等の渓流において、「砂防関係事業における景観形成ガイドライン」を活用し、自然環境との調和を図り、良好な渓流環境の再生や歴史的価値を有する砂防設備を活用した周辺環境整備など、個々の渓流の特色をいかした砂防事業を展開しました。

 がけ崩れ対策においては、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備及び崩壊土砂を捕捉する緩衝樹林帯整備を推進しました。


(2)湿地の保全・再生

 湿原等の湿地は、多様な動植物の生息・生育地等として重要な場です。しかし、これらの湿原などは全国的に減少・劣化の傾向にあるため、その保全の強化と、既に失われてしまった湿地の再生・修復の手だてを講じることが必要です。

 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全に関する条約」(以下「ラムサール条約」という。)に基づき、国際的に重要な湿地として、平成20年3月末現在33か所の湿地が登録されています。新たな湿地の登録に向けた調整を引き続き進めるとともに、ワークショップの開催やパンフレットの作成・配布による普及啓発等により、湿地の保全と賢明な利用の推進に努めました。

 平成15年に定めた社会資本整備重点計画では、既に失われた湿地の再生の取組として、回復可能な湿地や干潟について平成19年までに3割回復するなどの具体的な数値目標を定めており、これに基づき平成19年は、釧路川等33水系において湿地等の整備に取り組みました。


(3)山地から海岸までの総合的な土砂管理の取組の推進

 近年、土砂の流れの変化による河川環境の悪化や、陸域から海域への土砂供給の減少、沿岸での漂砂移動の変化等による海岸侵食等の土砂管理上の問題が顕在化しています。このため、土砂の流れに関係する問題の解決や、自然環境、景観の保全を図るため、総合的な土砂管理の取組を関係機関との連携を図りつつ実施しています。具体的には、透過型砂防えん堤の設置、ダムでの土砂バイパス、砂利採取規制、海岸でのサンドリサイクル等を実施するとともに、土砂管理技術の検討・開発を推進しています。特に釧路川では、湿原への土砂流入を抑制するため、山地から湿原までの土砂移動を捉えた計画を平成18年8月に策定し、湿原の上流に調整地や床止め等の設置を進めています。

6 沿岸・海洋域

(1)沿岸・海洋域の保全

 平成19年4月に海洋基本法(平成19年法律第33号)が制定されました。同法において、海洋政策の6つの基本理念の第1番目である「海洋の開発・利用と海洋環境保全との調和」の中に、海洋の生物多様性確保の重要性が盛り込まれています。また、平成20年3月には、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、同法に基づき、海洋環境の保全を含む海洋に関する基本的な計画が策定されました。

 ウミガメの産卵地となる海浜については、自然公園法に基づく乗入れ規制地区に指定されている地区においてオフロード車等の進入を禁止するなどにより保護を図りました。

 また、基礎調査の一環として「生態系多様性調査(浅海域生態系調査)」では、全国の干潟及び藻場の調査を引き続き実施しました。さらに、有明海・八代海における海域環境調査、東京湾における水質等のモニタリング、海洋短波レーダーを活用した生物調査、水産資源に関する調査や海域環境情報システムの運用等を行いました。

 また、2008年(平成20年)の国際サンゴ礁年に向けて、サンゴ礁保全のための地方公共団体、NPO、専門家、企業、市民などの多様な関係者からなる推進委員会を設置しました。


(2)水産資源の保護管理の推進

 水産資源の保護・管理については、漁業法(昭和24年法律第267号)及び水産資源保護法(昭和26年法律第313号)に基づく採捕制限等の規制や、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(平成8年法律第77号)に基づく海洋生物資源の採捕量の管理及び漁獲努力量に着目した管理を行ったほか、[1]保護水面の管理等、[2]「資源回復計画」の作成・実施、[3]外来魚の駆除、環境・生態系と調和した増殖・管理手法の開発、魚道や産卵場の造成等、[4]ミンククジラ等の生態、資源量、回遊等調査、[5]ウミガメ(ヒメウミガメ、オサガメ)、鯨類(シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、スナメリ、コククジラ)及びジュゴンの原則採捕禁止等、[6]混獲防止技術等の開発等を実施しました。


(3)港湾及び漁港・漁場における環境の整備

 港湾では、開発・利用と環境の保全・再生・創出を車の両輪としてとらえた「港湾行政のグリーン化」を図るため、水質・底質を改善する汚泥しゅんせつ、覆砂・干潟の創出及び緑地の整備などを推進しました。また、にぎわいの場となる「美しいみなと」を実現するため、横浜港等73港で緑地等を整備、堺泉港等12港で干潟等の整備を行ったほか、東京港中央防波堤内側、大阪湾堺臨海部、同尼崎臨海部における大規模緑地の創出に取り組みました。さらに、海洋環境整備船により浮遊ゴミや油の回収を行ったほか、景観に悪影響を及ぼす放置艇の解消を図るため、船舶等の放置等禁止区域の指定を促進するとともに、ボートパークの整備を推進しました。加えて、海辺の自然環境を活かした自然体験・環境教育を行う「海辺の自然学校」「海辺の達人養成講座」等の取組を推進しました。

 海洋の環境を改善するため、漁港区域内の汚泥・ヘドロの除去、藻場・干潟等の整備を行う水域環境保全対策等を全国1地区で実施したほか、藻場・干潟の整備保全事業を支援するための地方財政措置を講じました。また、磯焼け対策の適正な実施方法を内容とする磯焼け対策ガイドラインを活用した講演会や技術サポートを実施し、対策の普及・啓発に取り組みました。

 海水交換機能を有する防波堤等の整備、水産動植物の生息・繁殖が可能な護岸等の整備等を総合的に行う「自然調和活用型漁港漁場づくり推進事業」を全国43地区で実施しました。


(4)海岸における環境の整備

 快適で潤いのある海岸環境の保全と創出を図るため、砂浜の保全・復元により生物の生育・生息地を確保しつつ、景観上も優れた人と海の自然のふれあいの場を整備する「海岸環境整備事業」を、全国95か所で実施しました。また、海岸保全施設の機能阻害の原因となる大規模な海岸漂着ゴミを緊急的に処理するため、平成19年度に「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」の対象を「流木等」に限らず「漂着ゴミ」に、また、補助対象となる処理量を漂着量の「70%」から「100%」に拡充しました。



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