第4節 地域における人と自然の関係を再構築する取組

1 里地里山の保全

 里地里山は、二次林や水田等の農耕地、ため池、草地等を構成要素としており、人為による適度なかく乱によって特有の環境が形成・維持され、固有種を含む多くの野生生物を育む地域となっています。希少種が集中して分布している地域の5割以上が里地里山に含まれます。

 全国各地の里地里山の保全・再生活動を促進するため、国、地方公共団体、専門家、地域住民、NPO等が連携して、保全再生のための体制づくりを行い、地域戦略の策定、保全管理の実践等を行っていく「里地里山保全・再生モデル事業」を実施し、平成19年度までに、全4地域で地域戦略を策定するとともに、全体的な成果の取りまとめをしました。また、都市住民等が容易にボランティア活動に参加できるよう、活動場所のあっせんを行うとともに、保全活動を適切な方向に促進するため専門家の紹介等を行いました。

 また、棚田や里山といった地域における人々と自然との関わりの中で形成されてきた文化的景観の保存・活用のために行う調査、保存計画策定、整備、普及・啓発事業を補助する文化的景観保護推進事業を実施しました。

 さらに、地域の創意と工夫をより生かした「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」により、自然再生の視点に基づく環境創造型の整備を推進しました。また、上下流連携いきいき流域プロジェクトにより、里山林等における森林保全活動や多様な利用活動への支援を実施しました。

2 鳥獣の保護管理の推進

(1)鳥獣保護事業及び鳥獣に関する調査研究等の推進

 長期的ビジョンに立った鳥獣の科学的・計画的な保護管理を促し、鳥獣保護行政の全般的ガイドラインとしてより詳細かつ具体的な内容を記した、鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)に基づき、鳥獣保護区の指定、被害防止のための捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進しました。

 また、渡り鳥の生息状況等に関する調査として、鳥類観測ステーションにおける鳥類標識調査、ガンカモ類の生息調査、シギ・チドリ類の定点調査等を実施しました。

 また、野生生物保護についての普及啓発を推進するため、愛鳥週間行事の一環として愛知県において第61回「全国野鳥保護のつどい」を開催したほか、野生生物保護の実践活動を発表する「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催しました。


(2)適正な狩猟と鳥獣管理

 狩猟でのとらばさみの使用を禁止し、くくりわなの構造の規制の強化を行いました。

 また、カワウ、ニホンジカ、ウズラについては、これらの種の生息状況等を踏まえ、カワウを狩猟鳥獣に指定するとともに、ニホンジカの雌の捕獲等の禁止措置を解除し、ウズラの狩猟による捕獲等の5年間の禁止措置等を講じました。

 狩猟者人口は、約53万人(昭和45年度)から約19万人(平成17年度)まで減少し、高齢化も進んでいるため、被害防止のための捕獲に当たる従事者の確保が困難な地域も見られます(表6−4−1)。適切な狩猟が鳥獣の個体数管理に果たす効果等にかんがみ、都道府県及び関係狩猟者団体に対し、事故及び違法行為の防止を徹底し、適正な狩猟を推進するための助言を行いました。


表6−4−1 狩猟免状の交付及び狩猟による鳥獣の捕獲数

 さらに、適正な技術を有する鳥獣管理の中核的な担い手を育成し、将来にわたる鳥獣管理体制の構築を図るための「鳥獣保護管理に係る人材育成事業」の実施や、都道府県の特定鳥獣保護管理計画に基づく保護管理実施状況を調査・分析したほか、特定鳥獣保護管理計画の目的推進のため、モニタリング手法等に関する調査を実施しました。


(3)鳥獣保護管理制度の見直し

 シカやイノシシなどの鳥獣による農林業や自然植生等への被害が深刻な状況であり、一方で、鳥獣の生息環境の悪化、輸入した鳥獣の適切な管理が必要とされているなどの背景を踏まえ、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護法」という。)の一部改正法が平成18年6月に公布されました。

 平成18年度に作成した鳥獣保護事業計画のための基本指針における鳥獣保護管理を適切に進めるための人材育成の記述等を踏まえ、鳥獣保護管理を適切に進めるための人材の確保に関する事業等の取組を進めました。


(4)鳥獣被害対策

 農林水産業被害の著しい地域において、特定鳥獣保護管理計画等による適切な鳥獣の保護管理を推進しました。関東地域におけるカワウの保護管理については、関係機関等による協議会が作成した広域保護管理指針に基づく事業を実施し、中部・近畿地域においても協議会を開催し地域の生息状況に関する情報の共有を行いました。

 野生獣類の効果的な追い上げ技術の開発等の試験研究、防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止システムの整備、被害防止マニュアルの作成等の対策を推進するとともに、鳥獣との共存にも配慮した多様な森林の整備等を実施しました。

 また、農山漁村地域において鳥獣による農林水産業等に係る被害が深刻な状況にあることを背景として、その防止のための施策を総合的かつ効果的に推進することにより、農林水産業の発展及び農山漁村地域の振興に寄与することを目的とする鳥獣による農林水産業等に係る被害防止のための特別措置に関する法律が成立し、平成20年2月から施行されました。

 また、近年、トドによる漁業被害が増大しており、トドの資源に悪影響を及ぼすことなく、被害を防ぐための対策として、被害を受ける定置網の強度強化を促進しました。


(5)鳥獣の生息環境の整備

 鳥獣の生息環境が悪化した鳥獣保護区の生息地の保護及び整備を図るための鳥獣の繁殖施設その他の事業に取り組むため、改正鳥獣保護法において、保全事業が制度化されたことを踏まえ、浜頓別クッチャロ湖(北海道)、宮島沼(北海道)、片野鴨池(石川県)、漫湖(沖縄県)において保全事業に着手しました。


(6)国指定鳥獣保護区における渡り鳥の保護対策

 渡り鳥の保護対策として、出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅルの生息環境を改善し越冬地の分散を図るため、遊休地の確保等の事業を実施しました。

 また、我が国有数の渡り鳥の渡来地の一つである谷津干潟において、生息環境の調査等の事業を実施しました。


(7)高病原性鳥インフルエンザ対策

 高病原性鳥インフルエンザと渡り鳥等の野鳥との関係については、平成16年度から実施の野鳥のウイルス保有状況調査で、西日本22府県の調査を強化しました。また、平成17年度から実施の人工衛星を使った渡り鳥の飛来経路に関する調査を継続するとともに、国指定鳥獣保護区への渡り鳥の飛来状況の情報提供をホームページ等を通じて行いました。

 また、関連情報を提供するため、高病原性鳥インフルエンザの発生後から平成19年の春の渡り鳥の季節の終了まで、また、同19年秋から20年の春の季節にかけて国指定鳥獣保護区において飛来状況を調査しました。

3 野生動植物の捕獲・譲渡等の規制、生息・生育環境の整備等

(1)絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく取組

 平成20年3月末現在、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づき、日本に生息・生育する絶滅のおそれがある種のうち、哺乳類4種、鳥類39種、爬虫類1種、両生類1種、汽水・淡水魚類4種、昆虫類5種、植物19種の計73種を国内希少野生動植物種に指定しています。同法に基づき、平成20年3月現在、全国で9か所の生息地等保護区を指定しており、各保護区において、保護区内の国内希少野生動植物の生息・生育状況調査、巡視等を行いました。また、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(以下「ワシントン条約」という。)及び二国間の渡り鳥等保護条約等に基づき、国際的に協力して保存を図るべき677種類を国際希少野生動植物種として指定しています。

 国内希少野生動植物のうち、アホウドリ、トキ、ツシマヤマネコ等38種について保護増殖事業計画を策定しており、個体の繁殖や生息地の整備等の事業を行っています。また、絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖事業や調査研究、普及啓発を推進するための拠点となる野生生物保護センターが、20年3月末現在8か所に設置されています。主な事業、調査等は表6−4−2のとおりです。


表6−4−2 主な保護増殖事業等の概要


(2)猛禽類保護への対応

 絶滅のおそれがある猛禽類のうち、イヌワシ、クマタカ及びオオタカについて、繁殖状況のモニタリング、行動圏内における利用環境の分析等を実施しました。


(3)海棲動物の保護と管理

 沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンについては、地域住民への普及啓発を進めるとともに、全般的な保護方策を検討するため、地元関係者等との情報交換等を実施しました。

4 外来種等への対応

(1)外来種対策

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)に基づき、13種類の特定外来生物を新たに指定しました(表6−4−3)。また、奄美大島や沖縄本島北部(やんばる地域)の希少動物を捕食するマングースの防除事業のほか、アライグマ、カミツキガメ、アルゼンチンアリ、オオクチバス等についての防除モデル事業等、具体的な対策を進めています。


表6−4−3 特定外来生物一覧

 また、外来種の適正な飼育に係る呼び掛け、ホームページ等での普及啓発を実施しました。


(2)遺伝子組換え生物への対応

 カルタヘナ議定書を締結するための国内制度として定められた遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づき、平成20年3月末現在、127件の遺伝子組換え生物の環境中での使用について承認されています。また、日本版バイオセーフティクリアリングハウスhttp://www.bch.biodic.go.jp/)を通じて、法律の枠組みや承認された遺伝子組換え生物に関する情報提供を行ったほか、主要な輸入港周辺等において遺伝子組換えナタネの生物多様性への影響監視調査などを行いました。



前ページ 目次 次ページ