第3節 化学物質の環境リスクの管理

1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく取組

 化学物質審査規制法に基づき、平成19年度は、新規化学物質の製造・輸入について626件(うち低生産量新規化学物質については242件)の届出があり、事前審査を行いました(図5−3−1)。


図5−3−1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント

 また、昭和48年の化学物質審査規制法公布時に製造・輸入されていた化学物質(既存化学物質)等の安全性点検を行っており、平成19年度には、分解性・蓄積性について48物質、人への健康影響について10物質、生態毒性について25物質についての安全性評価に関する審議を行いました。さらに、既存化学物質の安全性点検を加速するため、国と産業界が連携し、国内製造・輸入量が1,000t/年以上の既存化学物質について、安全性情報を収集し、国民に対し分かりやすく情報発信することを目的とする「官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(通称:Japanチャレンジプログラム)」を推進しました。具体的には、様々な機会で本プログラムの普及に努めるとともに、協力依頼文書の送付や企業への訪問により本プログラムへの事業者の参加を促しました。

 また、平成19年11月には、紫外線吸収剤としてプラスチック樹脂製品等に使用されていた物質(2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)を新たに化学物質審査規制法の第一種特定化学物質に指定し、製造等を事実上の禁止としました。

 化学物質審査規制法の第一種特定化学物質が他の化学物質の製造過程で非意図的に副生する事例が複数確認されたことを受け、副生成物として微量含有される第一種特定化学物質の取扱いに係る考え方を明確化しました。(http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/oshirase/hcb.html

2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく取組

 化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)については、同法施行後の第6回目の届出として、平成18年度に事業者が把握した排出量等が都道府県経由で国へ届け出られました。その集計結果及び国が行った届出対象外の排出源(届出対象外の事業者、家庭、自動車等)からの排出量の推計値の集計結果を、平成20年2月に公表しました(図5−3−2、図5−3−3、図5−3−4)。公表日以降、届出された個別事業所のデータについて、国民からの開示請求を受け、そのデータの提供を行っています。MSDS(化学物質等安全データシート)制度については、パンフレットの配布等を行い、より一層の定着を図りました。


図5−3−2 化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR)の実施の手順


図5−3−3 届出排出量・届出外排出量の構成(平成18年度分)


図5−3−4 届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量(平成18年度分)

 また、化学物質排出把握管理促進法の施行7年後(平成19年3月)の見直しとして、平成19年2月から、中央環境審議会及び産業構造審議会の合同会合において、PRTR制度、MSDS制度、事業者による化学物質の自主的な管理の改善等の要素ごとに、施行状況の評価、課題の整理、措置の検討を行い、平成19年8月に中間取りまとめを公表しました。さらに、本中間取りまとめを受け、平成19年10月に、薬事・食品衛生審議会、化学物質審議会、中央環境審議会の合同会合を設置し、化学物質排出把握管理促進法対象物質見直しに係る検討を開始しています。

3 ダイオキシン類問題への取組

 ダイオキシン類対策は、「ダイオキシン対策推進基本指針」(以下「基本指針」という。)及びダイオキシン法の2つの枠組みにより進められています。

 平成11年3月に策定された基本指針では、「今後4年以内に全国のダイオキシン類の排出総量を平成9年に比べ約9割削減する」との政策目標を導入するとともに、排出インベントリーの作成や測定分析体制の整備、廃棄物処理・リサイクル対策の推進を定めています。

 一方、ダイオキシン法では、施策の基本とすべき基準(耐容一日摂取量及び環境基準)の設定、排出ガス及び排出水に関する規制、廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理に関する規制、汚染状況の調査、土壌汚染に係る措置、国の削減計画の策定などが定められています。


(1)環境への排出と人への影響

 ア 環境中の汚染状況

 全国的なダイオキシン類の汚染実態を把握するため、平成18年度にダイオキシン法に基づく常時監視などにより、大気、水質、底質、土壌等の調査を実施しました(表5−3−1)。


表5−3−1 平成18年度ダイオキシン類に係る環境調査結果(モニタリングデータ)(概要)

 イ 排出インベントリー

 ダイオキシン法及び基本指針に基づき国の削減計画で定めたダイオキシン類の排出量の削減目標が達成されたことを受け(図5−3−5)、平成17年に国の削減計画を変更し、新たな目標値として22年までに15年に比べて約15%の削減をすることとしました。19年12月のインベントリー(目録)では、18年の排出総量の推計は、15年から約20%の削減がなされており、順調に削減が進んでいます。


図5−3−5 ダイオキシン類の排出総量の推移

 ウ 人の摂取量

 平成17年度に人が一日に食事及び環境中から平均的に摂取するダイオキシン類の量は、体重1kg当たり約1.22pg-TEQと推定されています(図5−3−6、図5−3−7)。この水準は、耐容一日摂取量の4pg-TEQ/kg/日を下回っています。


図5−3−6 日本におけるダイオキシン類の一人一日摂取量(平成17年度)


図5−3−7 食品からのダイオキシン類の一日摂取量の経年変化


(2)ダイオキシン法の施行

 ア 特定施設の届出状況の把握

 ダイオキシン法に基づく特定施設のうち大気基準適用の特定施設については、平成18年度末現在、全国で12,359施設があり、廃棄物焼却炉が11,382施設(4トン/h以上の大型炉:1,100、2〜4トン/hの中型炉:1,501、2トン/h未満の小型炉:8,781)、産業系施設が977施設(アルミニウム合金製造施設:816、製鋼用電気炉:112等)でした。また、18年度に552の廃棄物焼却炉が廃止又は排出基準の適用を受けない小さな規模に構造が変更されました。

 水質基準適用の特定事業場については、平成18年度末現在、全国で1,931事業場の届出があり、その大部分(1,478事業場)が廃棄物焼却炉に係る廃ガス洗浄施設・湿式集じん施設・灰の貯留施設でした。

 イ 規制指導状況

 ダイオキシン法に定める排出基準の超過件数は、平成18年度は大気基準適用施設で105件、水質基準適用事業場で3件、合計108件(平成17年度128件)で、前年度に比べ減少しました。また18年度において、法に基づく命令が発令された件数は、大気関係29件、水質関係1件で、法に基づく命令以外の指導が行われた件数は、大気関係4,318件、水質関係267件でした。

 ウ 土壌汚染対策

 環境基準を超過し、汚染の除去等を行う必要がある地域として、これまでに5地域がダイオキシン類土壌汚染対策地域に指定されています。このうち3地域では、対策計画に基づく事業が完了し対策地域の指定が解除されました。残る地域についても、対策が実施され、うち1地域では対策が完了しました。これらの対策に係る都道府県等が負担した経費に対し助成を行いました。さらに、ダイオキシン類に係る土壌環境基準等の検証・検討のための各種調査を実施しました。


(3)その他の取組

 ア ダイオキシン類の測定における精度管理の推進

 平成17年に改定された「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」に基づいて実施するダイオキシン類の環境測定を伴う請負調査について、測定に係る精度管理を推進するために、測定分析機関に対する受注資格審査を行いました。さらに、分析技術の向上を図るため、地方公共団体の公的検査機関の技術者に対する研修を引き続き実施しました。

 イ 河川・港湾等の底質対策について

 河川等においては、環境基準値を超える底質を除去し、分解・無害化するための対策技術の実用化に向けて「河川、湖沼等における底質ダイオキシン類対策マニュアル」及び「底質のダイオキシン類対策技術資料集」に基づき、また港湾においては、「港湾における底質ダイオキシン類対策技術指針」及び「港湾における底質ダイオキシン類分解無害化処理技術データブック」に基づき、水質・底質の実態調査を行い、対策工法・監視計画等について検討を進めています。

 さらに、港湾・河川事業共通の新たな技術基準や処理工法に関する「底質ダイオキシン類対策の基本的考え方」を初めて取りまとめ、公表しました。

 ウ 調査研究及び技術開発の推進

 ダイオキシン法附則に基づき、臭素系ダイオキシン類の毒性やばく露実態、分析法に関する情報を収集・整理するとともに、環境中の臭素系ダイオキシン類の排出実態に関する調査研究等を進めました。

 また、ダイオキシン類の各種環境媒体や食物を通じたばく露等に関する科学的知見の一層の充実を図るため、血液中のダイオキシン類の蓄積量調査や環境中でのダイオキシン類の実態調査などを引き続き実施しました。

 さらに、廃棄物の適正な焼却技術、汚染土壌浄化技術、ダイオキシン無害化・分解技術の開発の促進や底質・土壌のダイオキシン類調査測定に関するマニュアルの改訂及び簡易測定法の導入に向けた検討等に取り組みました。

4 農薬のリスク対策

 農薬の使用は生理活性を有する物質を環境中に放出するものであり、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあることなどから、農薬は、農薬取締法に基づき規制されており、農林水産大臣の登録を受けなければ製造、販売等ができません。農薬の登録を保留するかどうかの基準(農薬登録保留基準)のうち、作物残留、土壌残留、水産動植物の被害防止及び水質汚濁に係る基準を環境大臣が定めています。

 生態系保全を視野に入れた取組を強化するために改正した、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準について、個別農薬の基準値の設定を行いました。また、食品衛生法に基づく魚介類への残留農薬基準の設定に対応し、より適切なリスク管理を行うため、水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改正について検討を行いました。さらに、農薬登録保留基準については、国内外の知見や国際的な動向を考慮して、その充実を図るための検討を行いました。

 特定農薬については、「特定防除資材(特定農薬)指定のための評価に関する指針」に基づき指定に向けた検討を行いました。

 さらに、農薬の環境リスク対策の推進に資するため、農薬使用基準の遵守状況の確認、農薬の各種残留実態調査、農薬の生態影響調査、農薬の飛散対策に関する調査、農薬の吸入毒性に関する調査等を実施しました。

 その他、POPs条約を踏まえ、過去に埋設されたPOPs等廃農薬について、埋設農薬や汚染土壌の調査、掘削等の作業手順や留意事項をまとめた「埋設農薬調査・掘削等マニュアル」を作成しました。

5 PCB対策

 PCBについては、昭和47年から新たな製造がなくなり、さらに49年に事実上製造・輸入禁止となって以降、約30年間にわたって保管が続けられてきましたが、国はPCB特別措置法に基づき、PCB廃棄物の拠点的処理施設を整備し、処理を推進しています。また、これとは別に電力会社等の多量のPCB廃棄物を所有している事業者の中には、自社でPCB廃棄物を処理する取組もあり、PCB特別措置法に定められた平成28年7月までにすべてのPCB廃棄物を処理することを目指して取り組んでいます。



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