第3章 水環境、土壌環境、地盤環境の保全

第1節 水環境、土壌環境、地盤環境の現状

1 水環境の現状

(1)公共用水域の水質汚濁

 ア 健康項目

 水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、平成18年度の公共用水域における環境基準達成率が99.3%(17年度99.1%)と、前年度と同様、ほとんどの地点で環境基準を満たしていました(表3-1-1)。(環境基準の設定状況等については第5節を参照。)


表3-1-1 健康項目の環境基準達成状況(平成18年度)

 イ 生活環境項目

 生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標である生物化学的酸素要求量(BOD)又は化学的酸素要求量(COD)の環境基準の達成率は、平成18年度は86.3%(17年度83.4%)となっています。水域別では、河川91.2%(同87.2%)、湖沼55.6%(同53.4%)、海域74.5%(同76.0%)となり、河川では改善が進み、過去最高の水準となったものの、湖沼では依然として達成率が低くなっています(図3-1-1、図3-1-2、表3-1-2)。


図3-1-1 環境基準達成率の推移(BOD又はCOD)


図3-1-2 三海域の環境基準達成率の推移(COD)


表3-1-2 環境基準の達成状況(BOD又はCOD)

 閉鎖性海域の海域別のCODの環境基準達成率は、東京湾は68.4%、伊勢湾は43.8%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は70.7%となっています(図3-1-2)。また、17年の赤潮の発生状況は、瀬戸内海115件、有明海32件となっており、東京湾及び三河湾では青潮の発生も見られました。湖沼についてもアオコや淡水赤潮の発生が見られました。


(2)地下水質の汚濁

 平成18年度の地下水質の概況調査の結果では、調査対象井戸(4,738本)の6.8%(320本)において環境基準を超過する項目が見られ、汚染井戸の監視等を行う定期モニタリング調査の結果では、1,978本において環境基準を超過していました(表3-1-3、図3-1-3、図3-1-4)。施肥、家畜排せつ物、生活排水等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が、4.3%と最も高くなっており、これらに係る対策が緊急の課題となっています。一方、汚染源が主に事業場であるトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物についても、依然として新たな汚染が発見されています。


表3-1-3 平成18年度地下水質測定結果


図3-1-3 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過率(概況調査)の推移


図3-1-4 地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過本数(定期モニタリング調査)の推移


(3)水質汚濁による被害状況

 水道水源(約7割は河川等の表流水、約3割は地下水)の水質汚染事故により影響を受けた水道事業者等の数は平成18年度は89(平成17年度は82)でした。また、近年、湖沼等の富栄養化などによる藻類の異常な増殖等により、水道水の異臭味が問題となっており、18年度には、73の水道事業者等(被害人口の合計約266万人)(平成17年度は、83の水道事業者等(被害人口の合計約433万人))において異臭味による被害が生じました。

 なお、水銀等による魚介類の汚染に関しては、汚染が確認された水銀に係る2水域において、引き続き漁獲の自主規制等が行われました。

 地方公共団体が実施した平成19年度の海水浴場等の水質調査によれば、調査対象とした789水浴場(前年度の遊泳人口がおおむね1万人以上の海水浴場及び5千人以上の湖沼・河川水浴場等)すべてが水浴場として最低限満たすべき水質を維持しており、このうち、水質が良好な水浴場は、647水浴場(全体の82%)でした。

2 土壌環境の現状

 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和45年法律第139号)に定める特定有害物質による農用地の土壌汚染の実態を把握するため、汚染のおそれのある地域を対象に細密調査が実施されており、平成18年度は4地域28.98haにおいて調査が実施されました。これまで基準値以上検出面積の累計は134地域7,483haとなっています。

 市街地等の土壌汚染については、近年、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づく調査や対策が進められているとともに、工場跡地の再開発・売却の増加、環境管理等の一環として自主的な汚染調査を行う事業者の増加、地方公共団体における地下水の常時監視の体制整備や土壌汚染対策に係る条例の整備等に伴い、土壌汚染事例の判明件数が増加しています。都道府県や土壌汚染対策法の政令市が把握している調査の結果では、平成17年度に土壌の汚染に係る環境基準又は土壌汚染対策法の指定基準を超える汚染が判明した事例は667件となっています(図3-1-5)。事例を汚染物質別にみると、鉛、砒素、ふっ素などに加え、金属の脱脂洗浄や溶剤として使われるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンによる事例が多くみられます。


図3-1-5 年度別の土壌汚染判明事例件数

3 地盤環境の現状

 地盤沈下は、工業用、水道用、農業用等のための地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘土層が収縮するために生じます。代表的な地域における地盤沈下の経年変化は、図3-1-6に示すとおりであり、平成18年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は37都道府県61地域となっています。


図3-1-6 代表的地域の地盤沈下の経年変化

 平成18年度において年間4cm以上沈下した地域は1地域で、沈下した面積は1km2でした。年間2cm以上沈下した地域は5地域で、沈下した面積(沈下面積が1km2以上の地域の面積の合計)は17km2でした(図3-1-7)。


図3-1-7 全国の地盤沈下地域の面積(年度別推移)

 かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止しています。しかし、新潟県南魚沼地域や茨城県関東平野など一部地域では依然として地盤沈下が認められています。

 長年継続した地盤沈下により、多くの地域で建造物、治水施設、港湾施設、農地及び農業用施設等に被害が生じており、海抜ゼロメートル地域などでは洪水、高潮、津波などによる甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。



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