むすび 低炭素社会の構築に向け、転換期を迎えた世界

 地球温暖化は確実に進みつつあり、私たちの地球は今、危機的な状況にあります。このままでは地球規模で生態系が劣化し、水不足や食糧危機、貧困問題などの世界を取り巻く様々な問題がますます深刻化するおそれがあります。ひいては、我々人類の生存基盤そのものも脅かしかねない状況にあり、社会経済の持続可能な発展に支障を来すおそれがあります。地球環境問題は、人間の安全保障の問題とも密接に関連し、人類が直面する最大の試練であると言うこともできるでしょう。そして、この試練を乗り越え、地球の危機を回避し、低炭素社会を構築して、次の世代に引き継いでいけるかどうかは、まさに、今を生きる私たちの決断と行動にゆだねられているのです。

 世界では、平成19年12月の気候変動枠組条約第13回締約国会議におけるバリ行動計画の合意を契機に、地球温暖化に対処するため、各国が深刻な利害対立を乗り越えながら、一丸となって実効性のある合意を積み重ねていく動きが高まっています。しかし各国間で立場や考え方の違いが生じてきており、今後、バリ行動計画で合意された京都議定書第一約束期間後の枠組みの実現に向けて、世界全体で取組を進めていくことは決して容易なことではありません。

 世界がこの問題に取り組むために、我が国は、環境先進国として、国際的な連携に基づく地球温暖化防止に向けた取組を主導していく必要があります。我が国は、自然と調和した生活文化や歴史を有し、また、環境・エネルギー問題を克服するための技術を培ってきました。地球規模で温室効果ガスを削減していくために、我が国には、地球温暖化対策を更に加速させ、同時に、開発途上国に対して我が国の経験をいかした国際協力を展開することが求められているのです。本年7月には、地球温暖化を始めとする環境問題を主要議題とする北海道洞爺湖サミットが開催されることとなっています。我が国は、このサミットにおいて議長国として、世界の温室効果ガス排出量を確実に減らしていくことができるよう、主要排出国全員が参加する仕組みづくりに向けて、責任をもって取り組んでいきます。

 地球温暖化問題は、資源やエネルギーを効率よく利用する努力を行いながら、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直すことを迫るものです。そして、低炭素社会の構築に向けては、社会を構成するあらゆるセクターが、地球の有限性を認識し、温室効果ガスの排出を最小化するための配慮を徹底することが必要です。今、地球の危機を回避するため、現在の社会を構成している一人一人が地球温暖化問題を自分の問題と捉え、直ちに行動を開始することが求められています。



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