平成19年度 環境の状況
平成19年度 循環型社会の形成の状況

第1部 総説

総説1 低炭素社会の構築に向け転換期を迎えた世界と我が国の取組

第1章 すべての国が力を合わせて取り組む地球温暖化対策

 2007年(平成19年)12月、インドネシアのバリ島で開催された気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「気候変動枠組条約」という。)第13回締約国会議において、「バリ行動計画」を始めとする様々な合意が成立しました。国際社会は、京都議定書第一約束期間後の2013年以降の地球温暖化対策に関する合意が2009年の締約国会議で得られるよう作業を進めることに合意しました。バリ行動計画は、特に重要な意義を持っています。世界各国が深刻な利害対立を乗り越えながら一丸となって、地球温暖化の防止に向け、実効性のある合意を積み重ねていく一歩となるものだからです。

 気候変動に関する政府間パネルIPCC)は、地球温暖化の影響が世界の気候システムに多くの変化を引き起し、我々人類の将来にも重大な影響を及ぼすと予測しています。こうした中、我が国は、今年のG8議長国として、本年7月に開催される北海道洞爺湖サミットで地球温暖化を始めとする環境問題を主要議題として取り上げることとしており、バリ行動計画を踏まえ、地球温暖化問題解決に向けたイニシアティブを発揮していく必要があります。

第1節 バリ行動計画の意義

 気候変動枠組条約に基づく京都議定書の第一約束期間(2008〜2012年)を目前に控えた2007年(平成19年)12月、同条約の第13回締約国会議及び京都議定書の第3回締約国会議(以下「バリ会議」という。)が、インドネシアのバリ島において開かれました。また、この2007年は、IPCCが第4次評価報告書において、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高いとし、その地球環境への深刻な影響を一層明確にした年でもあります。この報告書は、バリ会議での議論にも大きな影響を与えました。

 1997年(平成9年)に採択され、2005年(平成17年)に発効した京都議定書は、温室効果ガスの排出削減義務を先進国及び市場経済移行国(以下「附属書I国」という。)に対し課す画期的なものでした。これは「共通だが差異のある責任及び各国の能力の原則」に基づき、まずは附属書I国が率先して取り組むという考えを反映し、附属書I国以外の国は削減義務の対象外となっていました。それに加え、最大排出国のアメリカが参加していないことから、京都議定書により削減義務を引き受けた国々の排出量は世界全体の約30%を占めるに過ぎないという課題があります(図1−1−1)。また、京都議定書を採択した1997年(平成9年)以降も、世界は大きく変化し続け、京都議定書上削減義務のない開発途上国の経済発展などに伴う排出量が増加し、今後更なる増加(図1−1−2)が予想されています。このため、IPCCなどが指摘している深刻な影響回避のために必要な温室効果ガスの大幅な削減には、すべての主要排出国の参加が必要とされています。


図1−1−1 世界のエネルギー起源二酸化炭素排出量


図1−1−2 世界の二酸化炭素排出量の予測

 バリ会議では、2013年以降の新たな国際的な枠組みを決定するために、いつまでに、どのような行程を踏んで、何を議論するのかについて協議が行われました。しかし、その交渉は難航しました。以前から開発途上国の間では、地球温暖化の責任は、産業革命以降、温室効果ガスの排出量を増加させてきた先進国にあり、排出削減の義務は先進国がまず負うべきであるとの根強い反発がありました。一方、アメリカは、開発途上国も実効性のある枠組みへの参加が必要であると主張するなど、各国の考え方には大きな違いがありました。このような中で我が国は、クールアース50を踏まえ、2013年以降の枠組みに関し、[1]2009年までに合意形成の必要があること、[2]すべての主要排出国が参加する新たな特別作業部会を気候変動枠組条約の下に立ち上げ、京都議定書に基づく特別作業部会とも連携を図りつつ交渉を行うべきこと等の我が国の基本的立場を説明し、活発に調整を行いました。

 合意を目指す各締約国の努力は、会期が終了する予定であった14日を過ぎても行われました。翌15日には、全体会合にユドヨノ・インドネシア大統領、潘基文国連事務総長が出席して各国の歩み寄りを呼び掛け、議論を続けた結果、その日の午後になってようやくバリ行動計画の採択に至りました。

 難産の末誕生したバリ行動計画では、気候変動枠組条約の下にすべての締約国が参加して2013年以降の枠組み等を議論するため、京都議定書の下に設置されている特別作業部会(以下「議定書AWG」という。)と並行して新たな特別作業部会(以下「条約AWG」という。)を立ち上げ、2009年までに新たな枠組み等について採択することが合意されました。このバリ行動計画の合意内容は、我が国の基本的立場に沿ったものとなっており、バリ行動計画の採択には我が国としても大きく貢献したということができます。


バリ行動計画の採択(写真提供:気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)事務局

 また、議定書AWGにおいては、IPCCの第4次評価報告書第3作業部会の成果に言及しています。議定書AWGでは、IPCCがこれまでに示したシナリオの中で、最も低い水準で大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるためには、地球の温室効果ガスの排出量を今後10年から15年の間にピークに達するようにし、その後、今世紀半ばまでに2000年比50%を大幅に下回る極めて低い水準までに削減する必要があると指摘していることに留意することとしています。さらに、議定書AWGは、このIPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書で評価されたシナリオの中で最も低い水準を達成するためには、附属書I国が全体として温室効果ガスの排出量を各自可能な手段で2020年までに1990年に比して25〜40%の範囲まで削減する必要があると指摘していることを認識したとしています。その上で条約AWGが結論を出す年と同じ2009年までに附属書I国の2013年以降の新たな削減目標について結論を得ることなどが決められました。

 さらに、京都議定書第3回締約国会合では、開発途上国に対する適応策(避けられない温暖化の影響を回避・低減する対策)を支援するため、クリーン開発メカニズムCDM)のクレジットの2%を原資として設置される「適応基金」の理事会を設置するなどの運営体制が決定されました。

 これらの合意事項は、地球温暖化による悪影響を極力回避するため、京都議定書で削減義務のある我が国やEU等の先進国のほか、同議定書に不参加の最大排出国のアメリカを始め、近年排出量が急増している中国やインド、国土の水没に悩む小規模島嶼国、干ばつに苦しむアフリカ諸国など、立場や主張の違うすべての国が参加し、実効性のある枠組みの構築を目指したものです。開発途上国は、自らの排出削減努力なくして地球温暖化の進行を食い止められないことが科学的に明らかになるにつれ、先進国の支援を条件としながらも、気候変動枠組条約の原則である「共通だが差異のある責任と各国の能力」の下で協調する方向に舵を切り始めました。また、2013年以降の排出量削減目標やそれに至る手法等についても、気候変動枠組条約締約国間の新たな話合いの場ができたことにより、世界の地球温暖化対策は今、まさに新たな段階に入ったということができます。



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