平成19年度 環境の保全に関する施策
平成19年度 循環型社会の形成に関する施策


第1章 地球環境の保全


第1節 地球温暖化対策


1 国際的枠組みの下での取組


(1)気候変動枠組条約の下での取組
京都議定書の未締結国に対し、引き続き締結を働きかけます。
現在、温室効果ガスの排出量は地球の吸収量の2倍以上であり、早期に世界全体の排出量を半分以下にすることが必要です。そのため、京都議定書の第1約束期間終了後(2013年以降)の次期枠組みが、すべての国がその能力に応じ排出削減に取り組むことを可能とするとともに、米国、中国、インドを含む主要排出国による最大限の削減努力を促す実効あるものとなるよう、各国と連携しつつ、様々な機会を捉えて議論の進展に貢献します。
さらに、地球温暖化防止のため、地球環境ファシリティ(GEF)等の多数国間基金への拠出、二国間の技術・資金協力の推進、国際海事機関(IMO)における外航船舶からの温室効果ガス排出量に関する検討等を引き続き実施します。
クリーン開発メカニズム(CDM)共同実施(JI)等の京都メカニズムを更に活用していく観点から、有望なプロジェクトを正式にCDM/JIプロジェクトとして実施することができるよう、政府が一体となって引き続き様々な支援を行います。
これまで行ってきた開発途上国等におけるプロジェクトの発掘及び事業化を更に強化するため、プロジェクトの実施可能性調査を引き続き行うとともに、ホスト国の承認体制やホスト国での事業ニーズの調査、CDM/JI事業実施マニュアル等、CDM/JIプロジェクトを実施する民間事業者が必要とする情報を収集し、効果的に提供します。
また、ホスト国におけるCDM/JIプロジェクトの受入れに係る制度構築、人材育成及び実施計画の策定等に対する支援事業についても、引き続き実施します。
さらに、京都議定書の目標達成のため、我が国は国内対策に最大限取り組んだとしてもなお目標達成に不足すると見込まれる差分について、京都メカニズムを活用したクレジットの取得によって確実に対応することが必要であり、政府はNEDOを活用して費用対効果を考慮したクレジットの取得を引き続き行います。
IPCCの評価報告書の執筆・審議に参加する専門家をサポートする等、IPCCの活動に対する人的、技術的、資金的な貢献を行います。また、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためにIGESに設立されたインベントリータスクフォースの技術支援組織を引き続き支援します。

(2)気候変動枠組条約外での取組
「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する対話(G20対話)」の成果が、2008年(平成20年)に我が国で開催されるG8サミットにおいて報告されることとなっています。我が国としては、各国と協力し実りある成果を出せるようそのプロセスに積極的に貢献していくとともに、米国、中国、インド等の主要排出国による一層の取組を促す実効ある枠組みの構築につながるよう、主導的な役割を果たします。
京都議定書を補完するクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)においては、我が国が議長を務める鉄鋼及びセメントをはじめとした8つの分野のタスクフォースについて、官民が協力して、クリーンな技術の開発、移転のための活動を積極的に促進していきます。
「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合を引き続き開催し、2013年(平成25年)以降も見据えた実効的な国際取組のあり方について検討を深めていきます。
地球温暖化アジア太平洋地域セミナーを引き続き開催し、同地域における地球温暖化の諸課題について交渉から離れた場での意見交換やキャパシティ・ビルディング等を通じた途上国支援に努めます。
国際的な取組や国内の取組の枠組みの目安となる中長期的な目標の策定に向けた必要な作業を進めます。

2 国内対策

今後、京都議定書目標達成計画に規定された施策の一層の強化など対策の加速化を図るとともに、2007年度(平成19年度)に行う計画の定量的な評価・見直しは、その結果が2008年(平成20年)から始まる第一約束期間の排出量・吸収量に直結するものであることを踏まえ、対策・施策の進ちょく状況を厳格に評価し、6%削減約束を確実に達成できる内容としていきます。

(1)温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策
ア エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進
省CO2型都市づくりのための面的対策推進事業などを進め、都市や地域の構造、公共交通インフラを含め、日本の経済社会構造を変革し、省CO2型の都市や交通システムを構築することを目指します。この際、エネルギーの需給に関連する各主体が、他の主体と連携してエネルギー効率の更なる向上を目指し、他の主体の省CO2化に積極的に貢献する取組を推進します。
自主行動計画については、産業構造審議会と中央環境審議会が行った経済産業省所管33業種のフォローアップの結果、今後の課題として示された自主行動計画の深掘り・対象範囲拡大等(1)未策定業種に対する自主行動計画策定の働きかけ促進、2)定性的目標の定量化等の促進、3)政府による厳格なフォローアップの実施、4)目標引き上げの促進)、目標未達成業種の目標達成の蓋然性の向上、CO2排出量の削減を一層意識した取組の推進などについて、積極的に取り組んでいきます。
また、新エネルギーの面的導入を促進するため、地域に新エネルギーを集中的に導入する先導的なモデル事業の実施、地域における分散型新エネルギーのネットワーク構築に係る技術開発等を推進します。安全の確保を大前提に、国民の理解と協力を得つつ、原子力発電を着実に推進します。さらに、クリーンエネルギー自動車やバイオ燃料を積極的に導入し、住宅・建築物や個別のエネルギー関連機器の省エネ化を引き続き推進していきます。

イ 非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進
廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を、引き続き推進します。

ウ 代替フロン等3ガスに関する対策の推進
産業界の計画的な取組の促進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、法律に基づく冷媒として機器に充てんされたHFCの回収等の施策を、引き続き実施します。
具体的には、改正後の特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(以下「フロン回収・破壊法」という。)による冷媒フロン類の回収率の向上に向けて、普及啓発に取り組みます。また、代替物質を使用した製品等の利用を促進するため、省エネ型自然冷媒冷凍装置の導入補助等を引き続き行うとともに、発泡断熱材、エアゾールなどのノンフロン化をさらに推進するための調査検討を実施します。さらに、代替フロン等3ガスの使用・排出実態の調査、排出量見通しの算定を行い、追加的対策を検討します。

エ 温室効果ガス吸収源対策の推進
温室効果ガス吸収源対策としては、京都議定書目標達成計画の下で、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林の整備・保全、木材及び木質バイオマス利用、国民参加の森林づくり等の取組を、国、地方公共団体、事業体及び国民の連携・協力の下に着実かつ総合的に実施します。また、日本の吸収量が国際的にも認められるよう、森林等の吸収源に関するガイダンスであるIPCC良好手法指針に則した報告・検証体制の強化を図ります。

(2)横断的施策
ア 温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度
温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度が着実かつ適切に実施されるよう、関係する事業者や団体等に、制度の趣旨や算定方法について十分な周知を図るとともに、報告された排出量等を確実に集計し公表します。

イ 国民運動の展開
チーム・マイナス6%」の活動を通じて、引き続き国民に対し、ライフスタイルを見直していく取組を求めるメッセージの発信を行います。テレビ・新聞・雑誌等を効果的に活用した、広範で集中的なキャンペーンを、経済界を始めとする各界と連携しながら実施することにより、ライフスタイル変革の国民運動を促進します。

ウ 公的機関の率先的取組
平成19年3月に閣議決定された新たな政府実行計画に基づき、目標の確実な達成への取組を推進していきます。また、前計画(平成17年4月閣議決定)の目標年度であった18年度の政府の事務及び事業に伴い排出される温室効果ガスの総排出量を推計し、公表するとともに、そのほかの数量的目標や対策の取組状況についても、点検を行い、結果を公表します。

エ 税・課徴金等の経済的手法
税、課徴金等の経済的手法については、第7章第8節参照。

オ 国内排出量取引
費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験の蓄積を図るため、自ら定めた削減目標を達成しようとする企業に対して、経済的なインセンティブを与えるとともに、排出枠の取引を活用する自主参加型の国内排出量取引の制度を、引き続き運用します。
国内排出量取引制度については、他の手法との比較やその効果、産業活動や国民経済に与える影響等の幅広い論点について、総合的に検討していくべき課題です。

(3)基盤的政策
ア 排出量・吸収量算定手法の改善等
気候変動に関する国際連合枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を報告します。また、温室効果ガス排出量・吸収量のさらなる精度等の向上に向けた算定方法の改善を必要に応じて行います。さらに、情報解析などを行うほか、インベントリ作成の迅速化等を図ります。

イ 地球温暖化対策技術開発の推進
技術開発は、京都議定書目標達成計画において、その普及を通じて、環境と経済の両立を図りつつ、将来にわたり大きな温室効果ガス削減効果が期待できる取組として位置付けられており、第3期科学技術基本計画や分野別推進戦略関係各府省が連携し、産学官で協力しながら総合的に推進します。

ウ 観測・調査研究の推進
地球温暖化の実態を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、地球環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。地球環境研究総合推進費では、温暖化により世界や日本の気候が今度どのように変化するのか、より正確で分かりやすい形で国民各層及び国際社会に対して提供するため、新規の戦略的研究課題を開始します。
また、平成18年2月に英国環境・食糧・地方開発省(Defra)と共同で開始した、日英共同研究プロジェクト「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」の第2回国際ワークショップを、19年6月にロンドンで開催します。今回のワークショップでは、研究者、政策立案者、産業界など幅広いステークホルダーの参加を得て、低炭素社会へ向かうための具体的な道筋に焦点を置いて議論を行い、その成果を広く世界と共有します。さらに、地球温暖化分野の観測に関わる関係府省・機関が参加する連携拠点の運営や人工衛星(GOSAT)等を用いた温室効果ガスの観測技術の開発を行う等、温室効果ガス、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化するとともに、気候変動影響に対して脆弱なアジア太平洋地域を中心に、影響の監視・評価を行うネットワークの構築を進めることを通じ、同地域の温暖化対策への積極的参加を促します。


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