第6章 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進


第1節 自然環境等の現状


1 自然環境の現状


(1)地球規模の生物多様性の概況
ア ミレニアム生態系評価
2001年(平成13年)から2005年(平成17年)にかけて、国連の主唱により95ヵ国から1,360人の専門家が参加して、地球規模の生態系に関する総合的な評価である図2-1-1が実施されました。この評価により、人間の豊かな生活は、生態系が提供するサービスにより成り立っており、健全な生物多様性がそれを支えているという関係が分かりやすく示されました(総説参照)。代表的な24の生態系サービスについて、その状態と変化の状況を評価した結果、向上しているものは4項目のみ(穀物、家畜、水産養殖、気候調節)であり、15項目(漁獲、木質燃料、遺伝資源、淡水、災害制御など)は悪化していることが示されました。また、経済成長、人口変化、生態系管理、国家間協調の要素ごとに現在及び将来の政策オプションの異なるケースを組み合わせた4つのシナリオを設定し、2050年における人間生活の豊かさと生物多様性の喪失の程度を予測しています(表6-1-1)。

表6-1-12050年における各シナリオに基づく人間生活の豊かさの増減


イ 地球規模生物多様性概況第2版(GBO2)
2006年(平成18年)3月に開催された、生物の多様性に関する条約(以下「生物多様性条約」という。)第8回締約国会議(COP8)において、同条約事務局が作成した世界の生物多様性の状況を評価した報告書である地球規模生物多様性概況第2版(GBO2)が公表されました。GBO2では、生物多様性に関する「2010年目標」の進捗状況を評価するための15の指標により、生物多様性の状況を評価しています。その結果、12の指標で悪化傾向であるなど、生物多様性の喪失が依然進行していることが明らかになりました(表6-1-2)。

表6-1-2GBO2による生物多様性の状況に関する評価結果

これら2つの報告書により、世界の生物多様性の状況は悪化しており、2010 年目標の達成のためにはより一層の努力が必要であるということが明らかにされました。

(2)我が国の自然環境の現状
ア 自然環境保全調査による現状把握
我が国では、全国的な観点から植生や野生動物の分布など自然環境の状況を面的に調査する自然環境保全基礎調査(以下「基礎調査」という。)や様々な生態系のタイプごとの自然環境の量的・質的な変化を定点で長期的に調査する重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下「モニタリングサイト1000」という。)等を通じて、全国の自然環境の現状及び変化状況を把握しています。
上記調査からわかった自然環境の現状のうち、豊かな生物多様性を有し、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)の活動などを通じて、世界的にも保全の意識が高まってはいるが、近年、地球規模の気候変動による高水温、陸域からの表土流出、オニヒトデ等による悪影響が懸念されているサンゴ礁の生態系の概況は以下のとおりです。
沖縄島周辺ではサンゴ被度(海底に占めるサンゴの割合)が他の地区に比べて非常に低く、過去のオニヒトデの大発生や、大規模な白化被害からの回復が進行していないことが示唆されました。オニヒトデについては、宮古島・八重干瀬では平成17年度に大発生があり、石垣島と西表島の間に位置する石西礁湖でも増加傾向で、今後のサンゴ被度低下が懸念されます。奄美大島周辺では食害が島全体に拡大しており、サンゴ礁域以北の大隅半島、天草、串本、四国沿岸等の海域でも黒潮の流れに沿うようにオニヒトデの増加傾向が広がっています(図6-1-1)。

図6-1-1サンゴ被度の変化(2003−2005年度)

オニヒトデ以外の影響としては、石西礁湖で高水温による白化現象が確認されました。

イ 野生生物種の現状
絶滅のおそれのある野生生物の種を「哺乳類」「鳥類」等の分類群ごとに取りまとめたレッドリストでは、種の絶滅のおそれの高い順に「絶滅危惧IA類」、「絶滅危惧IB類」、「絶滅危惧II類」、「準絶滅危惧」のカテゴリーに分類しています(表6-1-3)。日本に生息・生育する爬虫類、両生類の3割強、哺乳類、汽水・淡水魚類、維管束植物の2割強、鳥類の1割強に当たる種が、絶滅のおそれのある種に分類されています。

表6-1-3我が国における絶滅のおそれある野生生物の種数(環境省版レッドリスト掲載種数表)

また、下北半島や西中国山地のツキノワグマ等のように生息地の分断などにより地域的に絶滅のおそれがある鳥獣や、ニホンザル、ニホンジカやイノシシなどのように地域的に増加又は分布域を拡大して、農林業被害など人とのあつれきや自然生態系のかく乱を起こしている鳥獣もいます。


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