第6節 国内における毒ガス弾等に係る対策

平成14年9月以降、神奈川県寒川町、平塚市において、道路建設現場等において作業員が割れたビンから流出した毒ガス等により被災する事故等が起きました。また、15年3月には茨城県神栖市において、住民から手足のしびれ、ふるえ等の訴えがあり、飲用井戸の水質を検査した結果、旧軍の毒ガス由来の可能性がある有機ヒ素化合物が検出されました。これらの問題を契機に、同年6月に閣議了解、12月には閣議決定がなされ、政府が一体となって、以下の取組を進めています。

1 全国調査

環境省は、平成15年6月の閣議了解に基づき、昭和48年の「旧軍毒ガス弾等の全国調査」のフォローアップ調査を実施し、その結果を調査報告書として保有・廃棄・発見・被災及び掃海等の状況に応じて整理し、地域ごとに138事案として取りまとめ、平成15年11月に公表しました(http://www.env.go.jp/chemi/report/h15-02/)(図5-6-1)。

図5-6-1旧日本軍の毒ガス弾等に係る情報の全国分布


2 個別地域の事案


(1)茨城県神栖市
茨城県神栖市においては、旧軍の毒ガス由来の可能性がある有機ヒ素化合物による地下水汚染と健康影響が生じていることを受け、平成15年6月の閣議了解に基づき、ジフェニルアルシン酸にばく露したと認められる人たちに対して、健康診査を行うとともに、医療費及び療養に要する費用を支給し治療を促すことなどによって、発症のメカニズム、治療法等を含めた症候や病態の解明を図るための緊急措置事業を実施しました。
また、有機ヒ素化合物による汚染が生じた原因を解明するため、汚染メカニズム解明調査を実施するとともに、汚染源掘削調査により発見したコンクリート様の塊及び汚染土壌等については、平成18年12月に、神栖市内の廃棄物処理施設において本格処理を開始しました。

(2)神奈川県寒川町・平塚市、千葉県習志野
平塚市においては、一部地域の地下水及び土壌から有機ヒ素化合物が検出されたため、調査を継続してきましたが、表層土壌調査などを実施した結果、有機ヒ素化合物の原体と考えられる白い塊及び汚染土壌を発見しました。
また、神奈川県寒川町・平塚市、千葉県習志野では、裸地以外の舗装や植栽等がされている土地について、土地改変時に安全を確保するための注意事項を示した安全マニュアル(土地改変指針)を土地所有者や建設事業者等に配布し、周知しました。

(3)その他の事案
その他の事案については、特に現段階で切迫した危険性はないものの、日常生活上の安全性の確認をするために大気、土壌等の調査が必要とされた事案のうち、平成17年度に安全性が確認された事案が10事案ありました。今後、これらの地域において掘削等を伴う土地改変が行われる場合に備えて、パンフレット等を配布し、被災の未然防止を図っています。

3 毒ガス情報センター

環境省では、閣議決定に基づき、毒ガス弾等に関する情報を一元的に扱うセンターを平成15年12月に設置し情報を受け付けるとともに、ホームページやパンフレット(http://www.env.go.jp/chemi/gas_inform/pamph/)等を通じて周知を図っています。


前ページ 目次 次ページ