第2部 環境・循環型社会の形成の状況と政府が環境の保全・循環型社会の形成に関して講じた施策


第1章 地球環境の保全


第1節 地球規模の環境の現状


1 地球温暖化


(1)問題の概要
近年の人間活動の拡大に伴って二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスが人為的に大量に大気中に排出されることで、地球が過度に温暖化するおそれが生じています。特に二酸化炭素は、化石燃料の燃焼などによって膨大な量が人為的に排出されています。我が国が排出する二酸化炭素の地球温暖化への直接的寄与度は、約95%を占めています(図1-1-1)。

図1-1-1わが国が排出する温室効果ガスの地球温暖化への直接的寄与度


(2)地球温暖化の現況と今後の見通し
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年(平成19年)に取りまとめた第4次評価報告書第1作業部会報告書によると、全球平均地上気温は1906〜2005年の間に0.74(0.56〜0.92)℃上昇し、20世紀を通じて平均海面水位は17(12〜22)cm上昇しました。また、最近50年間の気温上昇の速度は、過去100年間のほぼ2倍に増大し、海面上昇の速度も徐々に増大しています。同報告では、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高いとしています。
また、同報告では、世界全体の経済成長や人口、技術開発、経済・エネルギー構造等の動向について複数のシナリオに基づく将来予測を行っており、1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年〜2099年)の平均気温上昇は、経済、社会及び環境の持続可能性のための世界的な対策に重点が置かれ、地域間格差が縮小した社会では、約1.8(1.1〜2.9)℃とする一方、高度経済成長が続く中で化石エネルギー源を重視した社会では約4.0(2.4〜6.4)℃と予測しています。
同報告では、新しい知見として、温暖化により、大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少するため、温暖化が一層進行すること(気候−炭素循環のフィードバック)、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い既に海洋がpHで0.1酸性化し、21世紀中に更にpHで0.14〜0.35の酸性化が進行すると予想されています(表1-1-1)。

表1-1-1地球温暖化の影響の現状

また、日本では20世紀中に平均気温が約1℃上昇しました(第1部(総説)図1-4)。日本においても、気候の変動が生態系、農業、社会基盤、人の健康などに多大な影響を与えることが予想されます。

(3)日本の温室効果ガスの排出状況
日本の2005年度(平成17年度)の温室効果ガス総排出量は、13億6,000万トン*(注:以下、*は二酸化炭素換算)でした。京都議定書の規定による基準年(1990年。ただし、HFCPFC及びSF6については1995年。)の総排出量(12億6,100万トン*)と比べ、7.8%上回っています。また、前年度と比べると0.2%の増加となっています(図1-1-2)。

図1-1-2日本の温室効果ガス排出量

温室効果ガスごとにみると、2005年度の二酸化炭素排出量は12億9,300万トン(1990年度比13.1%増加)、1人当たりでは10.12トン/人(同9.4%増加)でした。部門別にみると(図1-1-3、図1-1-4)、産業部門からの排出量は4億5,600万トン(同5.5%減少)でした。また、運輸部門からの排出量は2億5,700万トン(同18.1%増加)でした。業務その他部門からの排出量は2億3,800万トン(同44.6%増加)でした。家庭部門からの排出量は1億7,400万トン(同36.7%増加)でした。

図1-1-3二酸化炭素排出量の部門別内訳


図1-1-4部門別エネルギー起源二酸化炭素排出量の推移と2010年目標

2005年度における二酸化炭素以外の温室効果ガス排出量については、メタン排出量は2,410万トン*(同27.9%減少)、一酸化二窒素排出量は2,540万トン*(同22.0%減少)となりました。また、HFC排出量は710万トン*(1995年比64.7%減少)、PFC排出量は570万トン*(同59.6%減少)、SF6排出量は410万トン*(同75.7%減少)となりました(図1-1-5)。

図1-1-5各種温室効果ガス(二酸化炭素以外)の排出量


2 オゾン層の破壊

CFCHCFCハロン臭化メチル等の物質によりオゾン層が破壊されていることが明らかになっています。オゾン層が破壊されると、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害を発生させるおそれや、植物やプランクトンの生育の阻害等を引き起こすことが懸念されています。また、オゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化への影響も考えられます。
オゾン層は、熱帯地域を除き、ほぼ全地球的に1980年代を中心に減少しました。日本上空のオゾン全量についても1980年代を中心に減少しましたが、1990年代以降はほとんど変化がないか、緩やかな増加傾向が見られます(図1-1-6)。

図1-1-6日本上空のオゾン全量の年平均値の推移

また、2006年(平成18年)の南極域上空のオゾンホールは、最大級に発達しました(図1-1-7)。現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。

図1-1-7南極上空のオゾンホールの面積の推移

オゾン層破壊物質のうち、北半球中緯度におけるCFC-12の大気(対流圏)中濃度については、1990年代後半以降ほぼ横ばいです。一方、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。
オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)の科学アセスメントパネルは、2006年(平成18年)に次のことを報告しました。
1) 対流圏における人為起源のオゾン層破壊物質の総濃度は、1992年(平成4年)〜1994年(平成6年)の最大値から減少し続けている。成層圏におけるオゾン層破壊物質の総濃度は、1990年代後半の最大値から減少傾向にある。ただし、成層圏の臭素量は依然として増加している。
2) 南極域のオゾンホールは、数十年間発生し続けると考えられる。南極域のオゾン濃度は、2060年〜2075年頃に、オゾン濃度が正常であったと考えられる1980年(昭和55年)以前の値に戻ると予測される。

3 酸性雨・黄砂


(1)酸性雨
酸性雨により、湖沼や河川の酸性化による魚類等への影響、土壌の酸性化による森林への影響、建造物や文化財への影響等が懸念されています。酸性雨は、原因物質の発生源から数千kmも離れた地域にも影響を及ぼす性質があり、国境を越えた広域的な現象です。
日本では、昭和58年度から酸性雨のモニタリングやその影響に関する調査研究を実施しており、平成16年に取りまとめられた、昭和58年度〜平成14年度の計20年の調査結果の概要は、次のとおりです。
1) 全国的に欧米並みの酸性雨が観測されており(全平均値pH4.77)、また、日本海側の地域では大陸に由来した汚染物質の流入が示唆された。
2) 現時点では、酸性雨による植生衰退等の生態系被害や土壌の酸性化は認められなかった。
3) 酸性雨に対し生態系が脆弱であると考えられる岐阜県伊自良湖(いじらこ)等への流入河川や周辺土壌において、pHの低下等酸性雨の影響が疑われる理化学性の変化が認められた。ただし、これらの変化はいずれも直ちに人の健康並びに流域の植物及び水生生物等の生態に何らかの影響を及ぼすレベルにはない。
なお、最近の降水のpHは図1-1-8のとおりです。

図1-1-8降水中のpH分布図

このように、日本における酸性雨による影響は現時点では明らかになっていませんが、一般に酸性雨による影響は長い期間を経て現れると考えられているため、現在のような酸性雨が今後も降り続けば、将来、酸性雨による影響が顕在化するおそれがあります。

(2)黄砂
近年、中国、モンゴルからの黄砂の飛来が大規模化しており、中国、韓国、日本等でその対策が共通の関心事となっています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象については、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあります。このため、黄砂は、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的影響による環境問題として認識が高まっているとともに、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。

4 海洋環境

平成16年度の海洋環境モニタリング調査によれば、九州北岸沖において、ブチルスズ化合物など一部の物質が堆積物中からバックグラウンドレベルを上回って検出されましたが、その濃度レベルから人の健康に影響を及ぼすおそれはないと判断しています。
また、紀伊半島、四国沖における廃棄物の海洋投入処分地点を対象とした堆積物中の有機スズ化合物の補足調査では、底質から高濃度の有機スズ化合物が検出されましたが、当該地点は水深が4,400mであることから、人の直接・間接による摂取の可能性は低く、健康に害を及ぼす可能性は低いと考えられます。
平成17年度の海洋環境モニタリング調査によれば、北海道南岸沖及び日本海北部などを対象として調査を実施しましたが、過去の調査と比較して、特段の汚染の進行は認められませんでした。
なお、海洋環境モニタリング調査結果のデータについては、(独)国立環境研究所が整備した「環境GIS」で公表しています。(http://www-GIS.nies.go.jp/kaiyo/top.asp
また、平成18年の日本周辺海域における廃油ボールの漂流・漂着に関する調査の結果、漂流調査ではほとんど採取されず、漂着調査では平均採取量は前年に比べ若干増加しました。日本周辺海域を除いた北西太平洋海域においては、昭和57年以降低いレベルで推移しており、18年はほとんど採取されませんでした。同年の海上漂流物の調査の結果、プラスチック等の海面漂流物は、夏期の日本周辺海域に多く分布しています。
最近5か年の日本周辺海域における海洋汚染(油、廃棄物、赤潮等)の発生確認件数の推移は図1-1-9のとおりです。平成18年は470件と17年に比べ110件増加しました。18年の海洋汚染のうち油による汚染についてみると、船舶からのものが210件と約7割を占めており、そのほとんどが取扱不注意によるものでした。油以外の汚染についてみると、陸上からのものが85件と約6割を占めており、そのほとんどが故意による廃棄物の排出でした。

図1-1-9海洋汚染の発生確認件数の推移

平成18年の観測によると、日本周辺海域及び北西太平洋海域で、水銀及びカドミウムは例年と変わらない濃度レベルで推移しています。

5 森林

世界の森林は、陸地の約30%を占め、面積約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて、年平均732万haの割合で減少しました。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及びアジア地域のうち東南アジアで森林の減少が続いています(図1-1-10)。

図1-1-10世界の森林面積の年当たりの変化率(2000年〜2005年)

森林消失の原因として、農地への転用、非伝統的な焼畑移動耕作の増加、過度の薪炭材採取、不適切な商業伐採、過放牧、プランテーション造成、森林火災等が挙げられます。また、近年では、森林減少の原因の一つと考えられている違法伐採問題に関して、国際的な取組の重要性が指摘されています。

6 砂漠化

国連砂漠化対処条約(UNCCD)ファクトシート1及び2においては、砂漠化の影響を受けている土地は、世界の陸地の4分の1に当たる36億haに達するとされています。そして、2億5千万人以上の人々が砂漠化の影響下にあり、約10億人の人々が砂漠化の影響を受ける危険性があると指摘されています。
砂漠化の原因として、干ばつ等の自然現象のほか、過放牧、過度の耕作、過度の薪炭材採取、不適切な灌漑による農地への塩分集積等が挙げられます。その背景には、開発途上国における貧困、人口増加、対外債務の増加等の社会的・経済的要因が絡んでいます。

7 南極地域の環境

南極地域は、人類の活動による破壊や汚染の影響をわずかしか受けていない地球上に残された最大の原生地域であり、地球環境のモニタリングの場など、人類共通の財産としてかけがえのない価値を有しています。一方、近年においては基地活動や観光利用による環境影響も懸念されているため、南極地域の環境の保護が国際的な協力の下進められています。


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