第4節 海洋環境の保全


 国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、海洋生態系の保全を含めた海洋環境保全のための施策の充実強化を図ります。

1 未然防止対策

 海洋汚染の未然防止対策の一環として、日本に寄港する外国船舶に対して立入検査を行い、SOLAS条約やMARPOL73/78条約等の基準を満たしているかどうかを確認するポートステートコントロール(PSC)を的確に行っていきます。また、船舶によって輸送される化学物質に関しては、海防法に基づき、海洋環境保全の見地からの有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行います。また、漂流・漂着するプラスチック類の実態調査等を行います。
 さらに、6月と11月の「海洋環境保全推進週間」等を利用して、海洋環境保全思想の普及啓発に努めるとともに、海洋環境保全講習会等を通じて、関係者に対する指導を引き続き実施します。
 船舶の不法投棄については、「廃船指導票」を貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図ります。また、良好な漁場環境の維持・保全を図るため、廃棄物の回収、除去等を行う漁場環境保全創造推進事業を推進します。さらに、良好な漁場環境の保全を図ることを目的とした漁民の森づくりの活動に助成します。

2 排出油等防除体制の整備

 環境保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、1)関係地方公共団体、民間団体等に対する研修・訓練の実施、2)傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、3)油処理剤等の海洋環境への影響調査等を推進します。大規模石油災害時に油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行います。また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、1)油防除・回収資機材の整備、2)関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備への助成、3)防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等への助成を行います。さらに、流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を行います。
 海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制を確保し、防除資機材を配備するとともに、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携の下に行う各種訓練等の内容の充実により、官民一体となった排出油防除体制の充実を図ります。沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、データベースの情報の充実を図ります。油等の海上浮遊物の防除活動に資するため、一週間程度の長期にわたる漂流予測情報の精度向上を図っていきます。漂流予測体制の強化のため、マリンレジャーの活発な相模湾に整備した次世代型海流監視システムを引き続き運用していきます。

3 油濁損害賠償保障制度の充実

 漁業被害救済対策として、原因者不明の油濁事故に対処するため、民間団体が実施する被害漁業者への防除費の支弁等に対して引き続き助成を行います。また、漁業共済制度において養殖共済の赤潮特約に係る純共済掛金について助成を行います。
 油濁損害賠償保障法の改正により、タンカー以外の一般船舶に対して、座礁等による燃料油油濁損害の賠償に対する保障契約の締結を義務付ける等、日本独自の制度を創設したことにより、平成17年3月以降、保障契約を締結していない船舶については、日本への入港が禁止されることとなるため、油の汚染損害による被害者の保護が一層充実することとなります。

4 海洋汚染防止のための調査研究・技術開発等

 漁業被害の防止のための赤潮対策技術開発、各閉鎖性海域の特徴を踏まえた赤潮及び貧酸素水塊による漁業被害防止対策確立のための調査、防除に関する手法の検証及び開発・普及の推進等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等について助成します。
 バラスト水問題については、抜本的な技術的解決策が模索されている状況ですが、同問題に対する取組として、バラスト水の海域間移送を行わなくても安全かつ効率的な航行を可能とする船型(ノンバラスト船型)の開発を推進します。

5 監視取締りの実施

 海上環境事犯については、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効率的活用等により日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを強化していきます。また、引き続き年2回の「海上環境事犯一斉取締り」を全国で実施し、特に潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯に重点をおき、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施します。


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