第2章
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大気環境の保全(地球規模の大気環境を除く) |
第1節 大気環境の現状 |
1 酸性雨
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2 光化学オキシダント
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(1)問題の概要 光化学オキシダントは、工場・事業場や自動車から排出される窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)を主体とする一次汚染物質が太陽光線の照射を受けて光化学反応により二次的に生成されるオゾンなどの総称で、いわゆる光化学スモッグの原因となっている物質です。強い酸化力を持ち、高濃度では眼やのどへの刺激や呼吸器に影響を及ぼし、農作物などにも影響を与えます。 (2)光化学オキシダントによる大気汚染の状況 ア 環境基準の達成状況 平成14年度の光化学オキシダントの測定局は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)は663市町村、1,160局で、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)は23市町村、29局です。 光化学オキシダントに係る環境基準(1時間値が0.06ppm以下であること)の達成状況は、極めて低く、一般局と自排局を合わせて、昼間(午前5時~午後8時)に環境基準を達成した測定局及び1時間値の最高値が0.12ppm(光化学オキシダント注意報レベル)未満であった測定局数は、図2-1-2のとおりです。 |
ウ 非メタン炭化水素の測定結果 昭和51年8月中央公害対策審議会から「光化学オキシダントの生成防止のための大気中の炭化水素濃度の指針について」が答申され、炭化水素の測定については非メタン炭化水素を測定することとし、光化学オキシダントの環境基準である1時間値の0.06ppmに対応する非メタン炭化水素の濃度は、午前6~9時の3時間平均値が0.20~0.31ppmC(成分ごとに炭素原子数をかけて合算したppm値に相当)の範囲にあるとされています。 平成14年度の非メタン炭化水素の有効測定局は、249市町村344の一般局と、131市町村185の自排局でした。昭和53年度から継続して測定を行っている6一般局と、52年から継続して測定を行っている8自排局の午前6~9時における年平均値の経年変化は図2-1-5のとおりです。 |
3 窒素酸化物
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(1)問題の概要 一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)等の窒素酸化物(NOx)は、主に物の燃焼に伴って発生し、その主な発生源には工場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。NOxは光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、酸性雨の原因物質となり、特にNO2は高濃度で呼吸器を刺激し、好ましくない影響を及ぼすおそれがあります。 (2)二酸化窒素による大気汚染の状況 平成14年度の二酸化窒素に係る有効測定局(年間測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。以下同じ。)は、一般局733市町村1,460測定局、自排局252市町村413測定局です。年平均値の平均値は、一般局0.016ppm、自排局0.029ppmで、図2-1-6に推移を示したとおり一般局はほぼ横這いの傾向が続いており、自排局は緩やかな改善傾向にあります。 環境基準の達成状況の推移は、図2-1-7のとおりで14年度は、一般局99.1%、自排局83.5%で、前年度と比較すると、一般局で横ばい、自排局で改善傾向が見られました。 |
また、平成14年度に環境基準が達成されなかった測定局の分布をみると、一般局については、東京都、神奈川県及び大阪府の3都府県に、自排局については、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府及び兵庫県からなる「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(平成4年法律第70号。以下「自動車NOx・PM法」という。)の対策地域を有する都府県に加え、京都府、福岡県、長崎県の3府県にも分布しています(図2-1-8)。 自動車NOx・PM法に基づく対策地域全体における環境基準達成局の割合は、平成10年度から14年度まで43.1~69.3%(自排局)と低い水準で推移しています(図2-1-9)。また、年平均値は近年ほぼ横ばいの状況にあります(図2-1-10)。 |
4 粒子状物質
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(2)浮遊粒子状物質による大気汚染の状況 平成14年度の浮遊粒子状物質に係る有効測定局数は、一般局731市町村1,538測定局、自排局225市町村359測定局でした。年平均値の平均値は、一般局0.027mg/m3、自排局0.035mg/m3で、図2-1-11に推移を示したとおり前年度に比べて改善し、近年ほぼ横ばいからゆるやかな減少傾向がみられます。 長期的評価に基づく浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成率の推移は図2-1-12のとおりであり、平成14年度は、一般局52.5%、自排局34.3%と前年度に比べていずれも低下しています。環境基準を達成していない測定局は全国42都府県に分布しています。 |
5 硫黄酸化物
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6 一酸化炭素
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平成14年度の一酸化炭素(CO)に係る有効測定局数は、一般局111市町村126測定局、自排局204市町村309測定局でした。年平均値の推移は図2-1-14のとおりであり、一般局0.4ppm、自排局0.7ppmと近年漸減傾向にあります。 平成14年度においては、前年度に引き続き、一般局、自排局ともすべての測定局において環境基準を達成しています。 |
7 有害大気汚染物質
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近年、低濃度ながら、多様な化学物質が大気中から検出されていることから、これらの有害大気汚染物質の長期暴露による健康影響が懸念されています。 平成14年度に環境省及び地方公共団体等が実施した有害大気汚染物質のモニタリング結果によると、環境基準の設定されている物質(ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びジクロロメタン)に係る測定結果は表2-1-2のとおりでした(ダイオキシン類に係る測定結果については第5章参照)。 |
8 騒音・振動
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(1)問題の概要 騒音・振動の苦情件数は、公害に関する苦情件数のうちの多くを占めています。騒音苦情の件数はここ数年徐々に増加しており、平成14年度は15,461件でした(図2-1-15)。発生源別にみると、苦情の総数の4割近くを占める工場・事業場騒音に係る苦情の割合が減少しているのに対して、建設作業騒音に係る苦情が増加しています。また、近年では、低周波音も大きな問題となっています。 また、振動の苦情件数も、騒音同様徐々に増加する傾向にあり、平成14年度は2,614件でした。発生源別にみると、建設作業振動に対する苦情件数が最も多く、工場・事業場振動に係るものがそれに次いでおり、苦情原因として依然大きな割合を占めています。 |
航空機騒音問題については、民間空港2港及び防衛施設5飛行場において、夜間の発着禁止、損害賠償等を求める訴訟が提起されています。航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、全般的に改善の傾向にあるものの、ここ数年は横ばいとなっており、平成13年度においては測定地点の約74%の地点で達成しました(図2-1-17)。 新幹線鉄道騒音については、平成14年度までに、東海道・山陽新幹線及び東北・上越新幹線沿線については、主に住居地域を中心におおむね75デシベル以下が達成されましたが、一部の地域で75デシベルを達成していない地域が残されています。 また、平成9年度開業した北陸新幹線高崎・長野間については、測定地点の46%の地点、14年度延伸開業した東北新幹線盛岡・八戸間については、測定地点の78%の地点で環境基準が達成されました。新幹線鉄道振動については、振動対策指針値はおおむね達成されています。 |
9 悪臭
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10 その他の大気に係る生活環境の現状
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第2節 酸性雨の防止に関する国際的枠組みの下での取組と新たな国際的枠組みづくり |
第3節 酸性雨・黄砂に係る対策 |
1 酸性雨対策
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2 黄砂対策
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第4節 光化学オキシダント対策 |
1 光化学オキシダント緊急時対策
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2 炭化水素類排出抑制対策
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第5節 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策 |
1 固定発生源対策
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(1)ばい煙発生施設 大気汚染防止法では窒素酸化物、硫黄酸化物、ばいじん等のばい煙を発生する施設について排出規制等を行っています。平成13年度末現在におけるばい煙発生施設の総数は約215千施設で、種類別にみると、ボイラーが137千施設(64%)と最も多く、次いでディーゼル機関が 27千施設(12%)です(図2-5-1)。ばい煙発生施設に対し、平成13年度には、改善命令が4件行われました。 |
(2)窒素酸化物対策 大気汚染防止法では、ばい煙発生施設の種類及び規模ごとに排出規制がなされており、昭和48年以降、逐次、排出基準の強化・規制対象の追加等の見直しが行われています。 さらに、工場・事業場が集合し、施設ごとの排出規制では二酸化窒素に係る環境基準の確保が困難であると認められる地域(本章第1節3(2)参照)においては、都道府県知事が作成する総量削減計画に基づき工場単位で規制する総量規制が実施されています。 平成11年度における固定発生源からの窒素酸化物総排出量は、年間408百万m3N(837千t)でした(図2-5-2)。これら、固定発生源から排出される窒素酸化物については、低NOx燃焼技術(2段燃焼法、排ガス再循環法、低NOxバーナー等)や排煙脱硝技術等による対策が講じられています。13年度末現在における排煙脱硝装置の設置基数は1,478基、処理能力は376百万m3N/hでした(図2-5-3)。 |
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(4)硫黄酸化物対策 硫黄酸化物については、大気汚染防止法において、K値規制による施設単位の排出規制に加え、国が指定する24地域において、都道府県知事が作成する総量削減計画に基づき、工場単位の総量規制が実施されています。 平成11年度における、固定発生源からの硫黄酸化物の年間総排出量は、220百万m3N(629千t)でした(図2-5-5)。これら固定発生源から排出される硫黄酸化物については、重油の脱硫や排煙脱硫装置の設置等の対策が講じられており、13年度末現在における排煙脱硫装置の設置基数は1,908基、総処理能力は221百万m3N/hです(図2-5-6)。 |
2 移動発生源対策
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第6節 多様な有害物質による健康影響の防止 |
1 有害大気汚染物質対策
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2 石綿対策
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第7節 地域の生活環境に係る問題への対策 |
1 騒音・振動対策
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また、政府では、道路交通環境が厳しい地域を対象として、警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成される道路交通環境対策関係省庁連絡会議において対策が検討されていますが、この会議において取りまとめた「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針」(平成7年12月)に沿って、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の各種対策の総合的実施を図っています。また、この実施方針を受け、現在までにほとんどの都道府県等で関係行政機関の参加による道路交通騒音対策のための協議会等が開催され、対策が検討されています。 なお、要請限度制度に基づき、自動車騒音について、平成14年度に地方公共団体が苦情を受け測定を実施した199地点のうち、要請限度値を超過したのは30地点で、同様に、道路交通振動については、測定を実施した121地点のうち、要請限度値を超過したのは3地点でした。また、自動車騒音に関して、市町村長が道路管理者に対して意見陳述を行った件数は、平成14年度は7件でした(表2-7-2)。 |
(4)航空機騒音対策 一定の基準以上の騒音を発生する航空機の運航を禁止する耐空証明(旧騒音基準適合証明)制度については、逐次規制の強化が行われ、昭和53年に強化された騒音基準に適合しない航空機については、平成14年4月1日以降運航を禁止しています。また、緊急時等を除き、新東京国際空港については午後11時から午前6時までの間、大阪国際空港については午後10時から午前7時までの間、航空機の発着を禁止しています。さらに、大阪国際空港においては、午後9時以降定期便のダイヤを設定しないこととしています。 発生源対策を実施してもなお航空機騒音の影響が及ぶ地域については、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(昭和42年法律第110号)等に基づき空港周辺対策を行っています。同法に基づく対策を実施する特定飛行場は、東京国際、大阪国際、福岡等15空港であり、これらの空港周辺において、学校、病院、住宅等の防音工事及び共同利用施設整備の助成、移転補償、緩衝緑地帯の整備、テレビ受信料の助成等を行っています(表2-7-3)。 |
また、大阪国際空港及び福岡空港については、周辺地域が市街化されているため、同法により計画的周辺整備が必要である周辺整備空港に指定されており、国及び関係地方公共団体の共同出資で設立された空港周辺整備機構が関係府県知事の策定した空港周辺整備計画に基づき、上記施策に加えて、再開発整備事業、代替地造成事業等を実施しています。 コミューター空港、ヘリポート等については、環境基準が適用されない小規模なものが多く、平成2年9月に制定したこれらの騒音問題の発生の未然防止を図るために必要な環境保全上の指針を踏まえて、諸施策を実施しています。 自衛隊及び在日米軍の使用する飛行場周辺の航空機騒音については、消音装置の設置・使用、飛行方法の規制等についての配慮が中心となっています。在日米軍における音源対策、運航対策については、日米合同委員会等の場を通じて協力を要請しており、厚木、横田、嘉手納及び普天間の各飛行場における航空機の騒音規制措置が合意されています。 自衛隊等の使用する飛行場に係る周辺対策としては、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」(昭和49年法律第101号)を中心に、学校、病院、住宅等の防音工事の助成、移転補償、緑地帯等の整備、テレビ受信料の助成等の各種施策が実施されています(表2-7-4)。 なお、平成15年度末現在29飛行場周辺について同法に基づく区域指定がされており、住宅防音工事の助成等が実施されています。 |
(5)鉄道騒音・振動対策 東海道・山陽・東北及び上越新幹線については、「国鉄改革後における新幹線鉄道騒音対策の推進について」(昭和62年3月閣議了解)及び環境庁長官の勧告等に基づく運輸大臣の通達を受けて、鉄道事業者が対策を実施しました。具体的には、音源対策として、防音壁の嵩上げ、改良型防音壁の設置、レール削正の深度化、バラストマットの敷設、低騒音型車両の開発等各種の騒音・振動対策を実施してきました。 障害防止対策として、騒音レベルが75デシベルを超える区域に所在する住宅及び70デシベルを超える区域に所在する学校、病院等に対し防音工事の助成等を実施し、振動においても、振動レベルが70デシベルを超える区域に所在する住宅等の防振工事の助成及び移転補償等を実施し、いずれも申出のあった対象家屋についてはすべて対策を講じています。さらに、有効な騒音・振動防止対策の開発等を推進しています。 新幹線以外のいわゆる在来鉄道については、新設又は高架化等のように環境が急変する場合の騒音問題を未然に防止する必要があるとの観点から、「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」(平成7年12月)(表2-7-5)を踏まえ、騒音対策の適切かつ円滑な実施に努めています。 |
2 悪臭対策
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3 ヒートアイランド対策
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4 光害(ひかりがい)対策等
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第8節 大気環境の監視・観測体制の整備 |
1 国設大気測定網
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2 地方公共団体大気汚染監視体制
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3 環境放射性物質の監視・測定
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