環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

(番外編)基地外の調査の思い出

2013年3月7日(木)

 今回は基地の外に調査に出たときの様子を紹介します。まず宿泊ですが、遠征先に小屋やカブース(そりがついた小屋)があればそこに泊まります。小屋がない地域に行く場合や他のチームが小屋やカブースを使用する場合等はテントを張ります。私はラングホブデの雪鳥沢、袋浦、S17では小屋(カブース含む)を使用し、スカルブスネス及びスカーレンでは小屋を他の調査チームが使用していたため、テントに泊まりました。

 小屋にはベッド、ストーブ、調理器具一式等があり、古い小屋でも快適に過ごせます。簡素ながらたくさんの物品が収納できるよう大きな棚もあります。調理も食事もこの中で行います。

設置したテントと小屋写真拡大

 テント泊の場合、調理、食事だけは小屋を使用させてもらい、就寝だけテントで行う場合と、調理、食事、就寝も全てテントで行う場合がありました。テントではストーブ等暖房はありませんが、食事用、団らん用に張った大きめのテントに人が集まり、食事をしていると寒さを忘れます。テントは当然ながら小屋ほどの高さはないため、頭を低くして入り、あとは長時間座っていることになります。このことさえ気にならなければテントも快適です。

 食事は日本から持ち込んだり、オーストラリアで補充した食材を調理します。食材は、当然ながらオーストラリア出発後には補充できないため、賞味期限が切れてしまっているものも多いのですが、基地内では冷蔵庫・冷凍庫があり、基地外でも外気温が低いためか、特に品質に問題はありませんでした。ただし、非常に乾燥した環境で米が乾ききっているのか、日本の炊飯器のとおりの水加減では芯が残ってしまうことがありました。

S17の航空拠点で摂った食事(鍋)写真拡大

 基地外に泊まり込みで調査に出る人数はチームによっては10人以上になることもしばしばありました。しかも日中の作業で疲れ、空腹のメンバーばかりなので、調理を担当する人は量の設定に苦心するようです。十分な量だと思って作っても大抵完食されるとのことです。

 基地外の生活でもどうしても廃棄物は出てしまいます。廃棄物には固形の廃棄物、液状の廃棄物があります。私が同行した際には、過去に何度も南極で基地外の調査を経験している隊員から廃棄物の処分方法について指導を受けました。私も液状廃棄物の処理について、どういったものが液状廃棄物と見なされるか、どういった場合にどういった処分方法が認められているか等について、隊員に法律を説明させていただいたことがありました。固形の廃棄物は可燃、プラスチック、空き缶、不燃等に分別をして、昭和基地に持ち帰ります。基地に持ち帰った固形の廃棄物は廃棄物の処理基準に従い細かく分別、処分します。

 ジュースの缶や使用した皿などは水や湯を注ぎ、残り物を溶かし、飲み干したり、拭き取って持ち帰ることで液状廃棄物の発生を抑えながら、食器などの洗浄も行います。排泄物は液状廃棄物という扱いになり、海域への排出や氷床への埋立てが法令上認められています。液状のものは海洋への排出や氷床埋立て等で処分しましたが、固形のものでも可能な分は、昭和基地に持ち帰って処分する等、法令に従いながらも原生地域である南極の環境への影響を小さくする配慮をしています。

ページのトップへ