環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

南極大陸上陸

2010年12月23日(木)

 前回の日記以降、海上に流氷が多くなり、日増しに厚さも増してゆきました。しらせが「チャージング」という船体を砕氷のために氷に乗り上げる度に、船内では地震のような揺れを感じ、割った氷が船体の側面に当たると雷が鳴ったような音が響いて、慣れるまでに眠れない日もありました。昨年は氷が厚く、昭和基地に接岸するのが困難だったようですが、今年も氷が厚く一回のチャージングで数十メートルしか進まないこともありました。

チャージング写真拡大
氷上のペンギン写真拡大

 しかし、しらせは着実に進み、ついに昭和基地の周辺にある定着氷という閉ざされた氷の地域に到着しました。ここからヘリコプターで緊急物資や人を昭和基地や野外調査の現場に送るのですが、すぐに「出発!」とはなりません。まず、しらせの船内に格納していたヘリコプターを甲板に出し、羽を取り付ける作業から始まります。次に試運転をしてようやく飛べるのですが、南極の天気はこの作業をずっと待ってくれるわけではなく、風が吹き始め飛べない状況となってしまいました。ヘリコプターが飛べなくなると、予定していたスケジュールを変更しなくてはなりません。乗る予定だった人たちが集まり、どの予定を削るのか、また行き先を変更するのか相談することになります。南極では天気や状況が変わるたびに、スケジュールも変更しなくてはならないので、それだけでも大変です。

出発!写真拡大

 そして、ようやく23日に晴天、微風と、ヘリコプターが飛べる条件が整い、昭和基地に第一便が飛びました。私はスケジュールの変更により、初日からGPSを使った地殻変動などを調査する野外調査へ同行するため、「ルンドボークスヘッタ」という露岩地域へ行くことになりました(氷に覆われていない岩場など「露岩地域」とよびます)。南極大陸第1日目が野外でテント泊という、いきなり南極を肌で感じることのできる日程になり、興奮してしまいました。しかし、南極はそんなに生易しくはなく、夜でも日は出ているのですが、夕方以降日が傾くと一気に寒くなり、テントの中に入っていても寒い状況です。

露岩地域写真拡大

 そんな中、観測隊の人は計測機器の調子が良くないため、夜遅くまで調整していました。南極での野外調査は主に夏しかできません。しかし、その時間は短く、特に昭和基地外での調査はヘリコプターのスケジュールや天候のために、時間の制限が厳しいのです。そのため、計器の調子が悪いとか、作業が上手くいかないとなると寝る間を惜しんで作業が続けられます。

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