課題名

A-5 紫外線増加が生態系に及ぼす影響に関する研究

課題代表者名

田口 哲 (農業環境技術研究所(創価大学))

研究期間

平成8−10年度

合計予算額

141,735千円 (うち10年度 46,616千円)

研究体制

(1) 紫外線増加が森林生態系に及ぼす影響に関する研究(森林総合研究所、茨城大学、千葉大学)

(2) 紫外線増加が作物・野菜・花卉に及ぼす影響の評価に関する研究

   作物に対するUV-Bと温暖化要因との交互作用効果に関する研究(農業環境技術研究所)

  紫外線増加が野菜・花卉に及ぼす影響の評価に関する研究(中国農業試験場)

(3) 紫外線増加が海洋基礎生産量に与える影響に関する研究

   紫外線増加が植物プランクトンと動物プランクトンの相互関係に与える影響に関する研究

(北海道区水産研究所、広島大学)

  紫外線増加が海洋基礎生産量に与える影響のモデル化に関する研究

(北海道区水産研究所、創価大学)

(4) 紫外線増加が野生植物に与える影響の評価に関する研究

(国立環境研究所、北海道東海大学、神戸大学、秋田県立農業短期大学)

研究概要

1.序(研究背景等)

 人間活動により発生したフロンガスが原因となり、南極上空にオゾンホールが観測されるようになった。近年、その大きさは増大する方向にあり、オーストラリアやニュージーランドもその傘下にはいることがある。また北極の上空にもオゾンホールができつつある。オゾンホールが拡大すると、地球上に到達する紫外線、特に280320nmUV-Bの増加が促進されることは、すでに知られている。このように増加しているUV-Bの影響は人類を含む地球上の生物全てに対して危惧されている。現在まで、限られた生物に対するUV-Bの影響が調査されてきた。しかし、それらの結果をもとに、地球上の生物に対するUV-Bの影響を評価することは、到底出来るものではない。地球上の生物は、それぞれが独立して生息しているわけではない。現在まで、生物が構成している生態系に対するUV-Bの影響については、ほとんど研究されていない。今まで調査されてきた個々の生物から得られてきた研究成果をもととして、さらにその生物が構成している生態系に対する影響の評価方法の確立が必要である。

 

2.研究目的

 野外実験を主体とした陸上生態系と海洋生態系における紫外線増加が及ぼす影響を解明することを目的とする。陸上生態系には森林・樹木(アカエゾマツ・ブナ)、野生植物(アキノキリンソウ)を自然群集に、作物・野菜・花卉(コムギ農林61、キタカミコムギ、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコン)を人工群集に実験対象植物として選んだ。特に紫外線照射装置を加えた野外実験の有効性を植物の成長を指標として検討する。一方、海洋生態系では低次生産者として最も重要な位置を占める植物プランクトンと動物プランクトンを実験対象生物として選んだ。自然太陽紫外線照射下で、それぞれの成長、細胞サイズ、化学組成を指標として検討することを目的とする。

 

3.研究の内容・成果

(1)紫外線増加が森林生態系に及ぼす影響に関する研究

 樹木苗をUV-B照射試験に供試し、生態系の次世代を構成する幼木に達するまでの初期生育に対するUV-Bの影響を検討した。樹木では草本性農作物に比較して感受性の高い種が多く存在し、強度のUV-Bは植物体の形態形成だけでなく初期生育量にも影響を及ぼすことが明らかとなった。しかし弱いUV-Bの存在が樹木の初期生育を促進する結果も数樹種で捉えられた。一定レベル以上の紫外線量増加は森林生態系の持続的存続の危機や現存量の減少にも結びつくと考えられた。

 UV-Bが樹木に及ぼす影響の発現機構に関しては未解明であり、細胞内のDNAにシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)やピリミジン(6-4)ピリミジノン光産物(6-4PP)の形成を引き起こす種々の有害な影響について、UV-B照射苗を対象に分析を行った。UV-B照射によってこれらの産物が発現・増加することが初めて樹木において確認された。UV-B付加照射によってDNA損傷量は増加するが、さらに強いUV-Bを照射すると逆に損傷の検出量が減少する場合も有り、UV-Bが遺伝子損傷に与える影響が草本性植物と同様であるかを判断するには、さらに検討が必要である。

 紫外線照射による樹木の二次代謝産物の分析等から、UV-B感受性の評価をし、また紫外線ストレスの定量化を試みた。感受性の樹種を供試し、抽出物質の吸光度を測定することによりUV-B照射によって特異的に増加するピークが認められ、それをストレス化合物によるものとした。抽出精製したストレス化合物の測定を行い、化合物はkaenpferol-3-glucosideであることが推定された。以降、数種の樹種を用いて同様の試験を行ったところ、どの樹種においても紫外線を曝露した植物にkaenpferol-3-glucosideの蓄積が認められた。樹種によってUV-Bに対する生長量の応答は異なるが、紫外線の照射強度の増加によりkaenpferol-3-glucosideの蓄積が促進されることが明らかになった。樹種別にkaenpferol-3-glucosideの応答が明らかになれば、ストレスの定量化が可能となる。

 標高の大きい高山では日射に含まれるUV-Bの割合が相対的に大きく、それは主に直達UV-B成分が大きいことによる。低地ではUV-Bの散乱成分は大きくなる傾向があった。同じ太陽高度が与えられる場合を比較すると、高山では低地よりも日射量、UV-Bともに大きく、また日射に含まれるUV-Bの割合も大きかった。高山では紫外線が強いと言われる定説を定量的に明らかにした。UV-B到達量を求めるモデルによりUV-Bの分布を予測したところ、その妥当性が明らかになった。このモデルによって緯度別高度別の分布図を作成し、UV-Bの気候学的分布のアプローチによるハザードマップとすることが可能となった。

(2)紫外線増加が作物・野菜・花卉に及ぼす影響に関する研究

 〆酳に対するUV-Bと温暖化要因との交互作用効果に関する研究

 UV-B増加が作物の生育、収量に与える影響を明らかにするため、コムギを用いた栽培試験を実施した。UV-Bと温暖化に関するCO2および気温、栽培方法に関する施肥法、品種などを補助的要因として取り上げ、多因子計画に従い、各因子の効果を検討した。UV-Bは野外の0.8倍相当を対照区とし、野外の約1.6倍(つくば市における20-30%のオゾン層破壊相当)の照射区を設け、ガラス室内でランプによる調光照射を行った。

 結果は、1)生育過程における茎数の変化に、CO2や品種によってUV-B増加の効果が異なって現れること(交互作用効果)を確認した。2)UV-B増加は分げつを促進したが、CO2が低い場合は最終茎数の減少をもたらした。3)穂数(最終茎数)の差は子実粒数の差につながったが、子実重(収量)については、UV-B増加の主効果および交互作用効果は認められなかった。4)品種によるUV-B感受性の差として、キタカミコムギではUV-Bの影響を受けにくいのに対し、農林61号では、UV-B増加による分げつ促進や生育後半の伸長抑制が確認された。

 ∋膤粟増加が野菜・花卉に及ぼす影響の評価に関する研究

 オゾン層破壊による紫外線の増加が、我が国の重要な露地野菜であるアブラナ科葉根菜類の生育・収量に及ぼす影響を調査した。供試した品種数は、キャベツ類、ハクサイ、ダイコン合わせて230品種である。これらのうちキャベツ、ブロッコリー、ハナヤサイとダイコンの12品種は収穫期までの数ヶ月間という長期間、他は定植直後の24週間程度の短期間紫外線増加の影響を調査した。紫外線照射は、圃場に自動調光型UV-B照射装置を設置して、処理区の紫外線生物学的影響量が常時対照区の2倍(想定されるオゾン層破壊量の4倍相当)になるように、紫外線ランプを調光して行った。このような照射条件下でも、供試した全ての品種で可視的な障害は一切観察されなかった。短期間の試験に供試して統計検定を行った品種数は、繰り返しを含む述べで145品種である。このうち乾物増加量に有意差が認められたのは16品種であった。そのうち、13品種では乾物増加量が減少したが、3品種で逆に増加した。これらのうち14品種は繰り返し実験に供したが、2度以上繰り返して有意差が認められたものはなかった。長期間紫外線を照射した12品種のうちハナヤサイ1品種とブロッコリー1品種に有意な影響が認められた。前者は収量が減少したが、後者は増加した。このように、紫外線増加の影響は、減少だけでなく、増加に働く場合もあることが明らかにされた。また、生育に及ぼす影響について品種群毎に検討したが、品種群による大きな差は認められなかった。こうしたことから、中緯度帯で想定される10%程度のオゾン層破壊が、野菜生産量に及ぼす影響は小さいと推定された。

(3)紫外線増加が海洋基礎生産量に与える影響に関する研究

 〇膤粟増加が植物プランクトンと動物プランクトンの相互関係に与える影響に関する研究

 海洋のネット動物プランクトンとして最優占するカイアシ類は、卵からノープリウスを経て成体に至るまで通常13の発育段階を有しているが、その中で遊泳能力が完全に欠如して、しかも色素含量の低い卵のステージが最も紫外線に対して脆弱であることが明らかになった。暖海域では採集した8種類のカイアシ類について卵の艀化に及ぼす紫外線の影響を調査した結果、水柱に広く分布するカイアシ類の卵は紫外線の影響を強く受け、一方極表層性カイアシ類の卵はほとんどその影響を受けなかった。表層性種は紫外線吸収物質であるマイコスポリン様アミノ酸と活性酸素を沈着化する働きを持つカロチノイド色素の含量が高いため、紫外線に対する耐性が高いのではないかと推定された。カイアシ類の成体雌の生理活性速度の指標として摂餌量と産卵速度に及ぼす紫外線の影響を調査し、高い紫外線ドース下ではそれらの活性は低下することを明らかにした。また微小動物プランクトンの一群である有鐘繊毛虫類の一種(Favella taraikaensis)を異なる紫外線条件下で培養した処、本種は日間UVBドース1.1kJm-2以上では全く増殖できなかったので、動物プランクトンの中では特に原生動物が紫外線増大の影響を顕著に受けるのではないかと推定された。冷水域の親潮域では紫外線の効果は平均値としては一次生産者とその捕食者に対して同等であるが、若干、動物プランクトンに対して効果が大きいと考えられること、個々の実験結果では、紫外線の効果が一次生産者と捕食者に対して異なること、紫外線感受性の季節変化が両者で異なることなどから、植物プランクトンが増えるとか、動物プランクトンが増えるといった方向性は一定ではないが、明らかに海洋表層の低次栄養段階の生物の構成に影響を及ぼしていたことを明らかにした。さらに微小動物プランクトン中、最も卓越する無殻繊毛虫が、紫外線による影響が最も顕著であることを現場で確かめた。以上の結果から、植物プランクトン同様に動物プランクトンも紫外線の影響を顕著に受け、場合によっては動物プランクトンの方が植物プランクトンよりも脆弱であることも示され、今後の紫外線の増大は海洋の低次生産段階において変化を引き起こす可能性が示唆された。

 ∋膤粟増加が海洋基礎生産量に与える影響のモデル化に関する研究

 植物プランクトンの基礎生産量に対する紫外線の影響は積算された紫外線の波長特性に依存することが、提唱されている。また、大気中と比較すると海水中の紫外線の波長特性は深度と時間とともに大きく変動するので、積算した紫外線の波長特性を考慮して紫外線の影響を明らかにすることは大変有効である。さらに、海洋の植物プランクトンヘの紫外線の影響はUVBの負の影響(破壊・抑制)ばかりでなく、UVAの生の影響(回復・修復)もある。以上のことから、UVA+PARに対するUVBの相対的な割合を指標として、はじめに、水柱内で植物プランクトンが光合成を行うことが出来る真光層に対して、UVBUVAが透過する相対的な深度の季節変動を明らかにすること、次に、植物プランクトンの成長、細胞サイズ、化学組成を指標として、植物プランクトンの自然群集を用いるとともに、検証のため培養植物プランクトンを用いて、紫外線の影響を明らかにすることを目的とした。

 19957月から19993月まで計42回、真鶴湾定点(39˚19’49"N139˚10’33"E)で、光合成有効光子量(PAR)、紫外線(UVR)の紫外線BUVR)と紫外線AUVA)の空中値と水中透過率を測定した。植物プランクトンによる基礎生産が行われている真光層に対するUVBUVAの相対透過深度は、一般的に冬季に大きく、夏季に小さいことが、一年周期で起こり、1996年から1998年まで、毎年、繰り返し起こっていることが確認された。この季節変化の要因は、晩春には植物プランクトン・クロロフィルa濃度の急激な増加と、その後、夏季に見られる溶存有機物質の増加であることが示唆された。さらに19969月から19989月まで、毎月1回、同定点で基礎生産量に対するUVRの影響を明らかにする現場実験を行った。一日の基礎生産量に対するUVBの阻害率は最大41%にも達した。一般的には、5月から12月までは阻害率は高く、1月から4月までは低くなる傾向を示した。この傾向はUVB/UVA+PAR)比が最も小さくなる1月から0.005を超えるまでの期間に阻害率が低く、その後UVB/UVA+PAR)比が7月あるいは8月に最大となり、12月まで減少する期間に阻害率が高くなることと一致していた。すなわち、10μm以下の比較的小型のサイズの植物プランクトン群集が優占している季節には、阻害率が高くなる傾向があり、UVB照射量が高くなると、その影響は強くなることが示唆された。この3年間で行った培養植物プランクトンを用いた照射実験では、珪藻が最もUVBの影響を受け、ハプト藻が中位の影響を受け、緑藻が最もUVBの影響を受けないことが観察され、種によりUVBの影響が異なることが明らかとなった。

(4)紫外線増加が野生植物に与える影響の評価に関する研究

 白山のアキノキリンソウのうち山頂部の集団(ON)と登山口の集団(BD)に、UV-Bを照射したときの生理的な影響を検討した。1週間UV-B照射した場合BDでは葉面積成長阻害とUV-B照射量との間に負の相関が、ONでは葉面積成長阻害及びアントシアニンの蓄積とUV-B照射量との間にそれぞれ負および正の強い相関が認められ、BDよりも一定量のUV-Bに対して大きく反応する傾向があった。以上の結果から、BDONではUV-Bに対して応答性が異なると考えられる。

 札幌及び西表島において太陽光紫外線をキュウリ子葉に曝露しDNA損傷産物の形成が起こるかどうか検討したところ、札幌より西表島での損傷産物量の方が多い傾向が見られた。さらに西表島において太陽放射によって形成されるDNA損傷量を追跡した結果、野外における太陽紫外線は、植物のDNAに損傷を与えるレベルであり、オゾン層破壊によってDNA損傷量が増加する可能性があることが確認された。

 ホウキモロコシ芽生えの光回復酵素についても検討した。その結果、ホウキモロコシ芽生えにはCPDおよび6-4PPに対する別々の光回復酵素が存在し、CPD回復酵素の誘導は光により制御されていることが示唆された。光回復酵素活性の作用スペクトルを求めると400420nmにピークが認められたが、この結果はこれまでに報告されている作用スペクトルとは異なり、高等植物のCPD光回復酵素は、他の生物とは異なるクロモフォーを持つ可能性が示唆された。紫外線によるフラボノイド合成の制御機構を解析するため、紫外線によってシロイヌナズナの2つのACCaseのうちどちらが紫外線で誘導されるかを検討した。その結果、acc1が主要な紫外線応答遺伝子であることを見いだした。

 

4.考察

(1)強度のUVBは樹木の植物体の形態形成だけでなく、初期生育量にも影響を及ぼすが、弱いUVBの存在が樹木の初期生育を促進する結果も数樹種で見られ、一定レベル以上の紫外線量増加は森林生態系の持続的存続の危機や現存量の減少にも結びつくと考えられた。樹種によってUVBに対する生長量の応答は異なるがUVBの照射強度の増加により二次代謝産物であるkaenpferol-3-glucosideの蓄積が促進されることが明らかとなったので、ストレスの定量化が可能となる。UVB到達量を求めるモデルによりUVBの分布の予測が可能となり、ハザートマップの作成が可能となった。

(2) UVB増加が作物の生育、収量に与える影響を明らかにするため、コムギを用いた栽培試験を実施した。品種によるUV-B感受性の差として、キタカミコムギではUVBの影響を受けにくいのに対し、農林61号ではUVB増加よる分げつ促進や生育後半の伸長抑制が確認された。

 ◆Р罎国の重要な露地野菜であるアブラナ科葉根菜類230品種で行った長期紫外線照射実験では、供試した全ての品種で可視的な障害は一切観察されなかった。短期紫外線照射実験では、乾物増加量に有意差が認められた品種は16であったが、2度以上繰り返して実験を行って有意差が認められた品種はなかった。紫外線増加の影響は減少だけでなく、増加に働く場合もあり、中緯度帯で想定される10%程度のオゾン層破壊が、野菜生産量に及ぼす影響は小さいと推定された。

(3) 動物プランクトンのなかで最も優占するカイアシ類では、遊泳能力が完全に欠如して、色素含量の低い卵の段階が最もUVBに対して脆弱である。しかし、極表層性のカイアシ類の卵はUVBの影響を全く受けない。これは紫外線吸収物質と活性酸素を沈着下する働きをもつカロチノイド色素の含量が高いため、UVBに対する耐性が高いと推定された。この極表層性のカイアシ類を除くと、ほとんどのカイアシ類の卵はUVBの影響を受ける。またカイアシ類よりも小型の微小動物プランクトンの一群である有鐘繊毛虫のFavella taraikaensisは、日間UVBドース1.lkJm-2以上では、全く増殖できなかったことから、これらの原生動物は、UVB増大の影響を顕著に受けると推定された。UVBの影響は、植物プランクトンと微小動物プランクトンに対して異なること、UVB感受性の季節変化が両者で異なることから、海洋表層の低次栄養段階の生物の構成に影響を与えることが示唆された。

 ◆Э∧プランクトンが光合成を行うことのできる真光層に対して、UVBUVAの相対透過深度は冬季に大きく、夏季に小さいという明瞭な季節変化を示したことは、クロロフィルa濃度の増加とその後に起こる溶存有機物質の増加によることが示唆された。一日あたりの基礎生産量に対するUVBによる阻害率は、5月から12月までに高く、最大41%で、1月から4月までには低くなる傾向にあった。このことは、10μm以下の比較的小型の植物プランクトン群集が優占している季節には、阻害率が高くなる傾向にあり、UVBの増加とともにその傾向は強くなることを示唆している。また培養植物プランクトンでは、珪藻がUVBの影響を最も受け、ハプト藻が中位の影響を受け、緑藻がUVBの影響を最も受けないことが明らかとなり、種によりUVBの影響が異なることが示唆された。

(4)本研究ではアキノキリンソウを材料として、紫外線の野生植物への影響を調べた。その結果、実験植物と同様に野外に生育している植物でも、紫外線によって葉面積成長の阻害が起こることを明らかにした。また、高度の異なるところに生育している集団では、紫外線に対する応答が異なることを明らかにした。次に太陽光紫外線によって植物に遺伝子損傷物質が蓄積する事、その生成量は太陽光にしめるUV-Bの比率に依存することを明らかにした。以上の結果から、オゾン層の破壊によってUV-Bが増加することで、植物の遺伝子に突然変異が蓄積する可能性が出てきた。今後は太陽光紫外線でどの程度遺伝子の変異が蓄積するのかを明らかにする必要がある。本研究では紫外線に対する防御反応の誘導機構を解析するため、植物の光回復酵素の性質を明らかにした。その結果、これまで報告されている動物や微生物のものとは構造が異なる可能性を明らかにした。また、フラボノイド合成を調節しているACCaseに紫外線で特異的に誘導されるアイソザイムが存在することを明らかにした。

 

5.研究者略歴

課題代表者:田口哲

1944年生まれ、北海道大学大学院水産学研究科終了。カナダ国立ベッドフォード海洋研究所特別研究員、テキサスA&M大学海洋学科助手、ハワイ大学海洋学科助教授、北海道区水産研究所海洋部生物環境研究室長、現在、創価大学工学部教授、農業環境技術研究所非常勤研究員

主要論文:

Ichikawa, T. and S. Taguchi 1998. Influence of UVB radiation on growth, carbon/chlorophyll a ratio, and chlorophyll a specific absorption coefficient of marine diatom Thalassiosira weisflogii International Association of Theoretical and Applied Limnology 27 (in press).

Kaneshiro, T., K. Hamasaki, T. Toda, and S. Taguchi 1997. Effects of ultraviolet radiation (UVB) on growth of Chaetoceros gracilis. Proceedings of l4th International Diatom Symposium, September 2-8, 1996, Tokyo, pp. 241-255,

Goes, J. I., N. Handa, S. Taguchi, and H. Saito 1996. Metabolism of neutral monosaccharide constituents of storage and structural carbohydrates in natural assemblages of marine phytoplankton exposed to ultravio1et radiation. Limnolgy and Oceanograghy 41:1478-1489.

 

サブ・サブ・テーマ代表者

(1): 岡野通明

1962年生まれ、千葉大学大学院自然科学研究科修了・学術博士、

現在農林水産省森林総合研究所森林災害研究室主任研究官

主要論文:

中村幸一、岡野通明、吉武孝(1997):紫外線量の増加がアカエゾマツとブナの幼苗に与える影響について、日林論、p281-282.

青島史子、岡野通明、今久、吉武孝(1999):標高の異なる2点でのB領域紫外線量の観測、日林論、p1057-1058.

 

(2) 大浦典子

1968年生まれ、広島大学理学部卒業、現在、農業環境技術研究所地球環境研究チーム研究員

主要論文:

山口武則、大浦典子、山川修治、竹澤邦夫、福原道一1995: エコトロン−施設の概要と研究例−. 農業環境技術研究所資料. 18, pp84.

山口武則、大浦典子、山川修治、竹澤邦夫、福原道一1995. わが国の農業分野におけるエネルギー消費と二酸化炭素排出量の評価. システム農学. 11: 145-154.

 

◆大原源二

1949年生まれ、千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了、農林水産省野菜茶業試験場主任研究官、現在、農業水産省中国農業試験場気象資源研究室長

主要論文:

大原源二、1985. 長期連続光合成速度測定法の開発、農業気象. 40: 369-377

Ohara, G., 1987, Improvement of the heating system control in protected cultivation. Acta Horticuturae. 230: 527-532.

大原源二、米村健. 1996. 温室倒壊機構の解明に関する調査研究. 中国農試研究資料. 27: 1-19.

 

(3) Ш愼9明

1963年生まれ、東北大学農学部卒業、北海道区水産研究所資源管理部研究員、

現在、北海道区水産研究所海洋環境部主任研究官

主要論文:

Saito, H., S. Uye and S. Taguchi 1998. Effects of ultraviolet radiation (UVB) on marine zooplankton : migratory vs neustonic copepods. Global Environmental Research 3 : 15-22.

Uye, S., H. Saito and S. Taguchi 1997. Effects of enhanced ultraviolet ray on marine plankton. Photomedicine and Photobiology 19 : 19.

Goes, J. L, N. Handa, S. Taguchi and H. Saito 1996. Metabolism of neutral monosaccharide constituents of storage and structural carbohydrates in natural assemblages of marine phytoplankton exposed to ultraviolet radiation. Limnology and Oceanograghy 41 : 1478-1489

 

(4): 中嶋信美

1963年生まれ、名古屋大学大学院農業研究科修了、国立環境研究所地域環境研究グループ新生生物評価研究チーム主任研究員

主要論文:

Takeuchi, Y., M. Murakami, N. Nakajima, N. Kondo, and O. Nikaido 1998. The photorepair and photoisomerization of DNA lesionsion etiolated cucumber cotyledons after irradiation by UV-B depends on wavelength. Plant Cell Physiol, 39(7), 745-750.

村瀬憲昭、近藤矩朗、清水英幸、中嶋信美、伊豆田猛、戸塚績1997. キュウリ第一本葉の成長と生理活性に及ぼすUV-B照射の影響 大気環境学会誌 32(1); 38-45.

Takahashi, S., N. Nakajima, H. Shimizu, H. Kamada, G. Y. Bae, K. Ishizuka, O. Nikaid, and N. Kondo 1996. Determination of cyclobutane pyrimidine dimer in the DNA from UV-B irradiated cucumber leave. Environ. Sci., 9(4), 461-466.