研究成果報告書 J98A0510.HTM

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[A−5.紫外線増加が生態系に及ぼす影響に関する研究]

(1)紫外線増加が森林生態系に及ぼす影響に関する研究


[研究代表者]

 

農林水産省林野庁森林総合研究所

●岡野通明

農林水産省林野庁森林総合研究所

 

森林環境部森林災害研究室

●岡野通明、吉武孝、中村幸一

気象研究室

●大谷義一

(委託先)

 

茨城大学農学部

●児玉治、長谷川守文、鈴木宗典、久池井豊、松田真菜

千葉大学園芸学部

●今久、松岡延浩、青島史子、岩見洋一

神戸女子大学家政学部

●橋本徹、松好紀子、栄谷直美、米原良子


[平成8〜10年度予算額]

44、574千円

(平成10年度予算額14、483千円)


[要旨]

 単木並びに小群落に対する短期・長期照射試験を主体とした研究から紫外線量増加による林木の被害や生長減少を同定し、紫外線影響の基礎的データを検討した。感受性樹種の実生稚苗ではUV-B照射により可視的に観察可能な形態形成の変化や生長阻害が発現し、自然界で測定される程度のUV-B強度でさえも著しい可視害から枯死に至る個体も認められた。一般に強いUV-B照射によっては生長阻害が引き起こされるが、UV-Bがまったく与えられない環境下でも生長阻害が発現し、適度なUV-B付与によって樹木の生長が促進されることがいくつもの樹種で認められた。このことはUV-Bが一概に有害な紫外線であると断定することは出来ず、与えられるUV-Bの強度との植物の感受性によって、有害であったり生長の昂進作用をもつことがあると示唆される。また樹木において初めて紫外線により細胞内のDNAにシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)やピリミジン(6-4)光産物(6-4PP)の形成を引き起こされていることがあきらかになった。
 UV-B照射によるストレスを定量化するため、樹木の二次代謝系に着目し、アカエゾマツとブナに蓄積したストレス化合物の単離・同定を行った。UV-B照射後の試料を供試したフラボノイド系色素やファイトアレキシンの分析等から、UV-B感受性の評価し、また紫外線ストレスの定量化を試みた。供試した樹種においてkaenpferol-3-glucosideがUV-B照射強度に伴って増加することから、これをストレス物質として同定した。草本性植物では同様の物質がUV-Bによるストレスによって生成される二次代謝産物であることが確認されている。供試した樹種すべてにおいてkaenpferol-3-glucosideは認められ、この同定によって紫外線ストレスを数値化する試みが行われようとしている。高度別の紫外線の詳細な測定を行い、高山亜高山で強いUV-B環境を定量的に明らかにするとともに、紫外線強度予測のためのモデルを構築し、緯度別あるいは高度別の森林 生態系への紫外線影響のハザードマップを作成を試みた。


[キーワード]

オゾン層破壊、UV-B、森林生態系、樹ホストレス、