課題名

C-3 酸性物質の臨界負荷量に関する研究

課題代表者名

堀田 庸(農林水産省 林野庁 森林総合研究所 立地環境科)

研究期間

平成5−7年度

合計予算額

106,0107年度 35,054)千円

研究体制

(1) 植物における臨界負荷量に関する研究

 ヾダ及び湿性酸性物質の植物影響評価に関する研究(農林水産省農業環境研究所)

 ∈の生理活性阻害に関与する酸性物質の実験的研究(通商産業省名古屋工業技術研究所)

(2) 土壌における臨界負荷量に関する研究

 ‥攵蹇歐∧系における臨界負荷量の評価に関する実験的研究(環境庁国立環境研究所)

(東京農工大学)

 ⊃肯單攵蹐砲ける酸性物質の臨界負荷量の評価に関する研究(農林水産省森林総合研究所)

 E攵蹐隆望彷修良床舛亡悗垢觚Φ(農林水産省農業環境技術研究所)

(3) 酸性物質の土壌影響評価モデルの開発に関する研究(農林水産省農業環境技術研究所)

研究概要

 植物生理学的手法、実験生態学的手法、土壌化学的手法を用い、植物と森林生態系における酸性物質の臨界負荷量推定に必要な基礎的情報を得るとともに、広域の臨界負荷量を推定するために欠かせない生態系の変動単位を把握する。これらより得られた成果を基礎として、生態系における臨界負荷量推定のためのパラメータを確定し、臨界負荷量のモデルを開発する。さらに、土壌情報、国土数値情報などの既存のデータベースを利用し、広域の臨界負荷量を明らかにする。

研究成果

1.筑波地域において林外雨、林内雨の溶存成分データを用い、物質収支モデルにより乾性降下物量を推定した結果、その量は湿性降下物量の4倍に達した。農作物への高濃度(100ppm)過酸化水素水暴露によって、成長阻害は認められなかった。山岳地において過酸化水素の連続測定を行い、その濃度が光化学反応モデルから予測される値と一致することを認めた。

 

2.スギ、ヒノキ、アカマツの水耕実験により、正常に成長するためにはpH3.2以上であること、窒素の吸収量の季節変化は10倍あること、硝酸イオンの過剰負荷は水の吸収を阻害することを明らかにした。

 

3.土壌の酸性化とスギの成長の関係を解析した結果、Alの濃度が20ppmをこえるとスギ苗木の成長が低下すること、水溶性の塩基/A1比が10以下になると成長が低下し始めること、塩基/Al比の低下にともない相対成長率や炭酸固定効率が低下することを明らかにした。これらから、臨界負荷量の評価において、塩基/Al比のようなA1とカチオンのバランスが重要であると判断された。

 

4.土壌酸性度は樹種により違いがあること、同じ樹種においても樹幹流の影響で樹幹周囲とそうでないところとでは土壌酸性度に違いがあることを明らかにした。塩基の欠乏と樹木生理の関係では、スギの衰退度が高いところで葉中のK濃度が低いことを認め、K濃度が低下すると乾燥ストレス下で光合成速度の低下と気孔閉鎖が遅くなることを認めた。

 

5.森林土壌の緩衝能の発現機構を明らかにするとともに、緩衝能は交換性塩基量と関係が深いことを明らかにした。また、既存の森林土壌情報を全国規模でデータベース化し、クラスター分析により臨界負荷量に係わる因子を抽出した結果、Ylが区分に有効であることを確認した。

 

6.わが国に広く分布する火山灰土壌は、一次鉱物の溶解によるカチオン供給速度が高いが、酸性化した場合は多量のA1が溶出すること、また硫酸イオン吸着能は高いが既に多量の硫酸イオンを吸着していることを明らかにした。林地土壌の表層の硝酸化成により生成されるプロトンは、降雨により供給される量より多いことを明らかにした。

 

7.臨界負荷量推定のための既存の定常マスバランスモデルを群馬県、広島県、島根県に適応し、酸性化限界指標の評価を行うとともに、全国を対象として臨界負荷マップを作成した。また、酸性化過程を予測するためのダイナミックモデルを開発し、酸性化実験データとの比較を行いその推定精度を確認した。今後、信頼性の高い臨界負荷量推定のためには、適切な限界指標の設定と、生態系の物質循環に関する精度の高いデータの蓄積が必要であることが明らかとなった。