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[S−3 脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案  手法の確立に関する総合研究プロジェクト]

2.温暖化対策の多面的評価クライテリア設定に関する研究[PDF](418KB)
  (Abstract of the Final Report)[PDF](178KB)

(1)長期目標設定のためのクライテリアとプロセスの国際比較研究(第T期 H16-18年度)
      低炭素社会へ向かう国際交渉と戦略の研究(第U期 H19-20年度)[PDF](457KB)

    東京工業大学大学院
    社会理工学研究科


蟹江 憲史

  [平成16〜20年度合計予算額]  19,487千円(うち、平成20年度予算額 3,185千円)

  本研究は、気候変動の影響を現代社会が抱えるリスクと捉らえ、リスクを出来るだけ低くするためにはどの程度の排出削減が必要となるのかを検討したものである。前半3年度では、許容する気温上昇、モデルにおける気候感度、国際制度のあり方という3つの要素について不確実性の幅を勘案した計算を行った。これらの不確実性を勘案した上で2050年の排出削減必要量を検討した結果、日本では2050年までに60%〜90%近くのGHG排出削減(1990年比)が必要だということが明らかとなった。
  その後2007年に開催されたハイリゲンダムG8サミットや2008年の洞爺湖G8サミットでは長期目標が国際政治的課題として浮上、GHG排出量を2050年に現状比で半減することがG8国際合意となってきた。これを受け、本研究課題でも、2050年GHG世界半減のときの日本へのインプリケーションを検討した。統合評価モデルAIM/ Impact[Policy]によって算出した「2050年半減」の示唆する気温上昇レベル・そのようなレベルの気温上昇がもたらしうる影響やグローバルパスを受け、2050年半減といったときの国際的な排出許容量の差異化を考えることで、日本の排出許容量の程度を導いた。日本のような先進国にとっては、2050年半減は、90年比でいえば70%〜90%というレベルでの排出削減を必要とすることがわかった。また、短期的気候変動レジームとの関連では、2050年世界半減を実現するとしても、2020年や2030年といったような時点での排出量をどこまで抑えるかや、安定化レベルの取り方の違いによって、温暖化影響は大きく変わる可能性があることが指摘できた。すなわち、2050年世界半減目標はそれ自体のみでは不十分であり、そこに到達するための削減努力を十分勘案しない限り、気温上昇が大きくなっていく可能性さえある。今後、2013年以降の国際制度構築を考える際には、こういった削減面、影響面の長期的効果を特に強く考慮したうえで目標検討論議を進める必要があることが明らかとなった。

  [キーワード]  長期目標、GHG排出削減目標、目標差異化、国際制度、2050年半減


(2)国際交渉における目的の検討と日本の戦略に関する研究[PDF](595KB)

    独立行政法人国立環境研究所
    地球環境研究センター  温暖化対策評価研究室


亀山 康子

    独立行政法人国立環境研究所
    社会環境システム研究領域 環境計画研究室


肱岡 靖明

    独立行政法人国立環境研究所
    社会環境システム研究領域 環境経済研究室


久保田 泉

    独立行政法人国立環境研究所
    地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室


高橋 潔

  [平成16〜20年度合計予算額]  6,421千円(うち、平成20年度予算額 1,233千円)

  温暖化防止を目的とした温室効果ガス削減に関する長期目標の設定は、影響が危険でないレベルでの大気中温室効果ガス濃度安定化を意味し、そのためには、危険なレベルの定義や影響の閾値と安定化濃度との関係を明らかにすることが重要となる。気候変動枠組条約は、その究極的な目標として「地球の気候系に対し危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準において、大気中の温室効果ガスの濃度を安定させること」を掲げているが、その具体的な安定化水準、排出経路、およびその法的意義に関しては十分な議論が無いまま、温暖化対策が議論されている。本研究では、上記の問題認識に基づき、(1)濃度安定化等の温暖化抑制目標とそれを実現するための経済効率的な排出経路、および同目標下での影響・リスクを総合的に解析・評価するための支援ツール“AIM/Impact[Policy]”を開発し、現在我が国の提案ともなっている「2050年までに現行より世界排出量を半減する」という目標が具体的に提示している排出経路を示し、(2)全球平均気温上昇量で見た場合の影響度について、IPCC第4次評価報告書で示された知見を整理し、(3)そこで得られた自然科学的観点から設定された長期目標に関して、近年の国際交渉で適切に扱うための基本的考え方を社会科学的観点から検討した。
  上記の研究の結果、(1)影響が生じるリスクを総合的に評価するモデルを開発することによって2050年半減目標に至る排出経路を示すことができた。(2)IPCC第4次評価報告書にて示された知見を気候安定化目標という観点から分かりやすいように整理し、全球平均気温上昇幅ごとの影響を分野ごとに示すことができた。また、(3)気候変動枠組み条約2条には単なる理念よりは強いが各国の義務とは異なる役割を担うことを想定して導入されたことが分かった。この研究の結果、2条で目指すべき長期的な気候安定化レベルから2050年半減目標、そして中期目標までをつなげて説明することができた。

  [キーワード]  地球温暖化、気候安定化、危険なレベル、統合評価モデル、多国間環境条約


(3)持続可能な開発と南北問題の観点からのクライテリア研究(H16-18年度)[PDF](436KB)

    京都大学大学院地球環境学堂
    地球環境政策論分野


松下和夫・松本泰子

<研究協力者>

 

    京都大学大学院地球環境学舎

井土聡子・溝口翔

  [平成16〜18年度合計予算額]  6,935千円

  本研究では、中長期的排出量目的を検討するに当たり、多面的評価を実施するためのクライテリア設定に関する研究を行った。
  まず気候変動対策長期的目標を他に率先して設定しているEUに焦点を当て、EUにおける「2℃以下」という気候変動に関する長期目標設定の政策形成過程を、その議論に影響を与えたと考えられる科学者グループによる知見や提言と政策立案との活発なインタラクションに焦点をあてながら検証し、予防的アプローチや主観的価値判断の重視など、「2℃以下」の論理的あるいは規範的根拠や基盤となる考え方を明らかにした。また、EUレベルでのそうした合意を可能にした主な要因と合意の政治的意味について検討した。
  そのうえで、温室効果ガス削減にかかる世界の目標を検討し、特に主として京都議定書以降の中長期的な目標を対象とした。これに関連し、世界の企業および自治体の温室効果ガス削減目標に関する先駆的な事例を概観した。
  また、わが国には京都議定書により課された目標があるが、京都議定書以降に関する中長期目標は、中央環境審議会地球環境部会気候変動に関する国際戦略専門委員会第2次中間報告(2005.5.12)を除き存在しないのが、本研究実施中の状況であった。このような状況の下で、わが国で今後中長期目標を検討し、また南北問題への配慮を具体化する際の前提として、自治体・企業の現在の目標設定とその考え方をレビューした。それらの大部分は京都議定書の約束期間を対象としている。具体的には、@日本の地方公共団体における地域温暖化対策推進計画における既存の目標とその考え方、A日本経団連自主行動計画における既存の企業の目標とその背景となる考え方、の調査と整理を行った。

  [キーワード]  京都議定書、削減目標、中長期目標、地域温暖化対策推進計画、経団連自主行動計画


(4)規範によるクライテリア設定に関する研究(第T期 H16-18年度)
低炭素社会における目標の検討と日本の戦略に関する研究(第U期 H19-20年度) [PDF](298KB)

    早稲田大学 国際教養学術院

太田 宏
(平成18年度まで青山学院大学)

  [平成16〜20年度合計予算額]  5,816千円(うち、平成20年度予算額 1,116千円)

  初年度は、2050年までの国際政治変動シナリオの基本的枠組みに関する研究が主なものであった。2050年までに、国際政治構造にどのような変動が起こるかを予測する上で、以下の3つの基本的な見方にしたがって国際政治動向を展望した。すなわち、競争型の世界、対立型の世界、そして協調型の世界へ向かう国際政治変動である。また、これらの基本的な国際政治変動がその可能性を最大限発揮した場合、各々「合理主義の支配」、「力の支配」、そして「規範の支配」の世界の実現ということになると想定した。研究の二年次から四年次にかけては、初年度の基本的な考え方に基づき、確固とした長期的な気候変動政策を策定するために、将来想定される国際ならびに国内政治状況を可能な限り体系的かつ包括的に概念化してシナリオ化することで、気候変動長期目標設定のロバストネス(頑健さ?)を高めるとともに、2050脱温暖化シナリオを評価する1つのクライテリアとした。
  上述の基本的な研究と並行して、18年度においては、国際協力体制に影響を与える主要国のうち、主に日本の気候変動政策を再生エネルギー政策に焦点を当てた研究も行った。また、アメリカの環境政策をめぐる政治に関する研究も行った。平成19年度においては、「低炭素社会に関する国際政治分析研究」に焦点をあて、初年度来の研究を深めた。本研究では、各国の目標検討に使用されたモデルやシナリオを検討した上で、これらに国際政治の中長期シナリオという視点が欠けていることを指摘した。最終研究年度である平成20年度研究では、気候安全保障と人間の安全保障の連関、北東アジアにおける環境協力の制度化に関する研究、アメリカの新政権の「グリーン・ニューディール」政策の現実性と現在の日本政府の気候変動政策に関する研究を行った。

  [キーワード]  国際政治変動シナリオ、中長期目標、低炭素社会、気候安全保障、人間の安全保障


(5)国際科学技術戦略の分析研究(第U期 H19-20年度)[PDF](337KB)

    国際大学大学院 国際経営学研究科

鈴木 政史

  [平成16〜20年度合計予算額]  2,291千円(平成20年度予算額 1,116千円)

  本サブテーマの研究は2つの柱からなる。1つ目の柱は温室効果ガス削減に向けた長期目標の設定に関する日本国内のステークホルダー・ダイアログのあり方を近い将来に提示できるような足がかりを作ることである。平成19年度は本柱を中心に研究を行った。どのようにステークホルダー・ダイアログを設計し実施すればよいか。問題は確立されたステークホルダー・ダイアログ方法論というものがなく様々な分野で模索している状況にあるという点である。平成19年度の調査をとおして、ステークホルダー・ダイアログの方法論は少なくとも2つの分野で検討されていることを把握した。本調査の2つ目の柱は企業の温暖化戦略である。平成20年度は本柱を中心に研究を行った。産業界は将来のステークホルダー・ダイアログには参加が欠かせない主要なステーク・ホルダーである。排出権取引やCDMなどの京都メカニズム、セクトラル・アプローチなどのポスト京都の政策的枠組み、低炭素社会に向けて長期的な枠組みに対して、日本の産業界はどのような見解をもっているのか。国際競争力や途上国への技術移転に関して、それぞれの国や地域の産業界はどのような見解をもっているのか。日本の産業界の見解と欧州や米国の産業界の見解の相違点はなにか。平成20年度は企業の温暖化戦略に関わる理論的な検討を行うと共に実証分析の先行文献を調査した。また2009年3月にデンマークのオーフスで開催された国際会議「Beyond Kyoto: Addressing the Challenges of Climate Change Science meets Industry, Policy and Public」に参加し、インタビュー調査を通して本件に関わる資料収集を行った。

  [キーワード]  ポスト京都と低炭素社会、企業の温暖化戦略、企業の国際競争力と途上国への技術移転、ステークホルダー・ダイアログ、国内対話の方法論