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[キーワード]国内移入種、ハス、出現予測モデル、出現予測マップ、GIS

[RF-075 国内移入魚による生態系攪乱メカニズム究明とその監視手法の構築]

(2)国内移入魚の異環境への適応性に関する研究[PDF](1,561KB)

  九州大学 大学院工学研究院
  流域システム工学研究室


河口洋一

<研究協力者>

 

  九州大学 大学院工学研究室

佐藤真弓

  九州大学 大学院工学研究院

中島 淳

  九州大学 工学部

奥中智行

  [平成19~20年度合計予算額] 5,876千円(うち、平成20年度予算額 4,155千円)

[要旨]

  国外から移入された外来生物(国外移入種)が生態系にもたらす負の影響は、魚種ではオオクチバスやブルーギルが良く知られた例であるが、国内における在来魚種の本来の分布域外への移入については、これまであまり問題視されていない。しかしながら、国内移入魚は国外移入魚と同様に、在来魚種や生態系に深刻な影響をもたらす可能性が懸念され、その定着条件を把握することは、これまで見過ごされてきた国内移入魚へのリスク対策として重要である。
  ハス(Opsariichthys uncirostris uncirostris)は、コイ科に属する魚食性の淡水魚で、九州へは琵琶湖産アユの放流に混じって移入されたと考えられ、河川以外では有明海沿岸域のクリークと呼ばれる農業用水路で生息が確認されている。クリークには、希少種を含む多くの淡水在来魚種が生息しており、魚食性であるハスのこれら在来魚種への捕食の影響が懸念される。そこで本サブテーマでは、佐賀市内の有明海沿岸域クリークにおける本種の生息状況を調査し、出現・非出現に影響を与える環境要因を推定した。更にGIS(地理情報システム)を用いて、調査地域における出現予測マップの作成を行った。
  クリーク46地点における野外調査の結果、15地点において生息が確認された。また、夏季・冬季水深、水路幅、流速、取水口までの距離、土地利用、標高、在来魚種数、外来魚種数(国内・国外移入魚)を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、標高と取水口までの距離で、最もハスの出現が予測されるモデル式が得られ、また取水口までの距離が有意な負の効果を示した。このことから、クリークにおけるハスの定着には、局所的な環境要因よりも、河川との連結性の影響が大きい可能性が高く、今後、在来魚種の保全を考える上で考慮する必要があると考える。このモデル式を、筑後川周辺のクリークデータに当てはめて、AUC値から検証したところ、筑後川周辺でのハスの出現予測にも十分適用できることが示された。また、得られた出現予測マップにより将来的にハスが出現する危険エリアの推測が可能となった。