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[キーワード]海底境界面、フラックス、渦相関法、再懸濁物質、現地観測

[RF-074 海洋環境変動に及ぼす堆積物再懸濁現象の影響予測に向けた物質動態詳細測定法の開発]

(2)巻上げ時における化学物質フラックスの定量化[PDF](677KB)

  独立行政法人港湾空港技術研究所
  海洋・水工部

桑江朝比呂

  [平成19~20年度合計予算額] 4,201千円(うち、平成20年度予算額 1,966千円)

[要旨]

  本研究では、泥質堆積物直上において流速と酸素濃度を高時間解像度で同時測定し、渦相関法を適用することにより、海底境界面における酸素フラックスを連続観測した。本研究により、酸素フラックスが海底境界面における流動に応じて数十分~数時間という時間スケールで大きく変動する動態が現場で実測された。また、渦相関法によって測定されたフラックスは、既報値を大きく上回るものであった。海底面における水平流速や懸濁物質濃度と酸素フラックスとの間に明瞭な関係性はみられなかった。一方、海底面に作用する乱れエネルギーと巻き上げフラックスとの間および巻き上げフラックスと酸素フラックスとの間には有意な関係性がみられた。これらの結果から推定されるメカニズムは以下のとおりである。(1)酸素フラックスの増大には巻き上げフラックスの増大が大きく寄与している。(2)巻き上げを伴わない場合には、単に底面における乱れが強くなることに起因する酸素フラックスを増大させるような諸過程の効果は覆い隠されてしまう。(3)しかしながら、巻き上げフラックスの増大に伴う酸素フラックスの増大は、再懸濁物質自身による酸素消費よっては説明できないことから、巻き上げに伴う底面の侵食により、間隙水が直上水中へ放出するによって、間隙水中に含まれていた還元物質が酸素を消費するというプロセスが重要である。本成果は、海底境界面における酸素フラックスが浅海域の水質変動や生態系に与える影響の解明や予測に大きく寄与しうる。