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[キーワード]バイオエアロゾル、耐塩細菌、微生物生態系、微生物種組成、黄砂

[RF−072 黄砂バイオエアロゾルの越境的健康被害調査のためのサンプリング・同定に関する研究]

(2)黄砂バイオエアロゾルの分離培養・同定・分類に関する研究[PDF](1,560KB)

  金沢大学 理工研究域物質化学系

牧 輝弥

<研究協力者>

 

  中国科学院 大気物理研究所

石 廣玉

  中国科学院 大気物理研究所

陳 彬

  [平成19〜20年度合計予算額] 2,536千円(うち、平成20年度予算額 1,234千円)

[要旨]

  黄砂粒子に付着した微生物(黄砂バイオエアロゾル)が、中国大陸から日本まで飛来し、生態系(動植物や微生物)や人健康へ影響をおよぼす可能性が高く、社会的かつ学術的関心を集めつつある。特に、本研究では、環境ストレス全般に強い耐性をもつ耐塩細菌に注目し、「大気中で生残しやすい耐塩細菌が、黄砂とともに長距離輸送され、生息範囲を広げる」と想定した。しかし、大気エアロゾルの捕集には高度な技術を要するため、大気中の細菌群についての核心的な報告例は少ない。
  そこで、係留気球を用いて、黄砂の発生源(中国敦煌市(タクラマカン砂漠))および黄砂の飛来地(金沢、珠洲)の上空(地表から高度600-1000m)から黄砂バイオエアロゾルを入手し、大気微生物群に関する以下の知見を得た。1、蛍光顕微鏡観察によって黄砂粒子に付着する細菌粒子を確認した。2、大気中の耐塩細菌を対象とした生物学的分析手法を確立し、大気中の細菌群が、15%から20%の高塩分濃度下でも増殖でき、高い耐塩性を示すことを明らかにした。3、全調査地点の大気中およびタクラマカン砂漠で得られた耐塩細菌からは、共通の遺伝子配列が検出され、地上から大気へと耐塩細菌が垂直混合されており、長距離輸送の可能性のある細菌種(Bacillus属)を突き止めた。
  今回確立した、「耐塩細菌群を対象としたバイオエアロゾル分析手法」は、日本へ飛来する耐塩細菌群の分散状態の解析を可能とし、自然生態系、農作・牧畜・養殖業および人健康への影響について有意義な知見を構築できると思われる。また、大気中での挙動が分かっていない耐塩細菌の生理生態の解明は、微生物生態学に新たな知見を築くとともに、新奇の耐塩細菌の分離につながるであろう。
  しかし、調査地点数および回数がまだ少ないため、今後、黄砂飛来地である環日本海において調査地を増やし、日本へ飛来する耐塩細菌群の分散状態を明らかにしたい。