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[キーワード]地球温暖化(気候変動)、国際レジーム、京都議定書、遵守手続、 国境(税)調整

[H−064 気候変動に対処するための国際合意構築に関する研究]

(3)気候変動対処を目的とした国際レジームの構成要素となる諸制度の実施および今後の進展(What)に関する研究:遵守手続き[PDF](498KB)

  龍谷大学 法学部

高村ゆかり

  [平成18〜20年度合計予算額] 6,504千円(うち、平成20年度予算額 3, 000千円)

[要旨]

  京都議定書の遵守手続は、他の環境条約の遵守手続と共通する基本的構造を維持しつつ、他方で、これまでの遵守手続にない2つの特質、(1)決定プロセスの制度化、精緻化、「準司法手続化」と、(2)不遵守に対する厳格な対応への指向を有する。こうした特質は、公正な国際競争条件の確保という要請と、市場メカニズムの適正な運営の確保という要請を背景とする。議定書3条1項の排出削減義務の不遵守に遵守委員会の執行部が決定できる措置の評価は分かれるが、実際には、京都ユニットの適正な取引を確保する議定書のしくみにより、京都メカニズムの利用を望む締約国には、措置の決定に拘束力いかんにかかわらず、措置に従うインセンティヴが働く。さらに、京都メカニズムのめざましい進展の下では、民間アクターの多額の経済的利益が関わるようになり、各国国内で、京都メカニズムの継続への支持、締約国の京都議定書の遵守への圧力を生み出しうる。他の環境条約の遵守手続では、不遵守となる行為の違法性や有責性を認定するよりも遵守を確保し促進する強い指向性を有している。原則として不遵守国の遵守努力への援助、非強制的対応がなされ、制裁的措置は、例外的に、しかも、条約の定める権利・資格停止の範囲内で行われる。誠実に義務の履行に努力したが結果的に遵守できない場合が生じうる環境条約の場合、違法性を認定し制裁を科すという対応では不遵守の原因に対処し得ず、レジームに参加し、誠実に義務を履行しようとする国の参加のインセンティヴをそいでしまうことに留意が必要である。  
  非締約国のレジームへの参加を促し、炭素漏出(カーボンリーケージ)に対処するため現在欧米で制度化が検討されている、自国の排出枠取引制度のもとで、同等な削減努力を行っていない国からの産品の輸入に際して輸入者に排出枠の保有を義務づける手法は、炭素税の国境税調整と同様に、輸入産品に義務づける排出枠の算定といった技術的な課題に加え、制度設計次第で、WTO協定との適合性が問題とされうる可能性があることに留意が必要である。