検索画面へ Go Research


[キーワード] [キーワード]ウエストナイル熱、吸血昆虫、血液原虫、シギ・チドリ類、渡り鳥

[F-062 渡り鳥によるウエストナイル熱及び血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究]

(2)吸血昆虫における病原体のモニタリング調査に関する研究[PDF](2,076KB)

  日本大学生物資源科学部
  動物資源科学科 野生動物学研究室


村田 浩一

  日本大学生物資源科学部
  獣医学科 実験動物学研究室


佐藤 雪太

  [平成18~20年度合計予算額] 42,740千円(うち、平成20年度予算額 10,000千円)

[要旨]

  シギ・チドリ類の渡りルートの中で希少鳥類の生息する北海道、関東圏、沖縄本島、石垣島、南大東島の湿地や干潟および東南アジア地域のタイ王国ならびに極東ロシアの越冬地と繁殖地を調査地に選定し、シギ・チドリ類がウエストナイルウィルス(WNV)を伝播する可能性の評価のため、当ウイルスと同様の感染環を有する鳥マラリア(Plasmodium spp./Haemoproteus spp.)、Leucocytozoon spp.Trypanosoma spp.、microfilaria、鳥ポックスウイルスを指標病原微生物とし、希少鳥類、野鳥および吸血昆虫(主に蚊)を対象として調査研究した。釧路湿原およびコムケ湖周辺など北海道内の湿地において捕獲されたシギ・チドリ類から採取した血液中に鳥マラリア原虫を確認した。本原虫のmtDNA cyt b遺伝子の塩基配列を解析すると、釧路湿原のタンチョウ(Grus japonensis)から検出された鳥マラリアのものと100%相同であった。このことから、シギ・チドリ類が中継地として利用する国内の湿地において、同所的に生息する鳥類との間で蚊を介した病原体の感染が成立する可能性がある。沖縄県漫湖水鳥・湿地センター、東京港野鳥公園および谷津干潟で定期的に蚊を捕集し、当地に生息する種とその発生時期を調べた。その結果、干潟に生息する蚊のほとんどがWNVを媒介する可能性のある種であることが分かり、一部の蚊からは鳥マラリア原虫遺伝子の断片が検出された。また、干潟において蚊が最も多く発生する時期は、シギ・チドリ類が最も多く飛来する時期と重なっていた。つまり、シベリア地域から渡ってきたシギ・チドリ類が節足動物媒介性感染症の病原体を保有していれば、国内各地の干潟でシギ・チドリ類と留鳥間で蚊を介した病原体感染が起こり得ることを示唆するものである。以上から、北海道と沖縄の渡り鳥飛来地の重要拠点をモニタリングスポットに設定し、蚊と各種野鳥の血液原虫、microfilariaおよびDNAウイルスを指標病原微生物として、本研究で開発した標準化手法を用いた定期的かつ経年的な監視調査を実施すれば、渡り鳥による病原体の感染ルート解明リスク評価、リスク管理に有用な情報が得られ、WNV国内侵入時の制御にも役立つと考える。