[キーワード]エコツーリズム、大型類人猿、コミュニティ・コンサベーション、持続的利用・地元住民
[F-061 大型類人猿の絶滅回避のための自然・社会環境に関する研究]
(5)エコツーリズムとコミュニティ・コンサベーションによる環境保全の研究[PDF](547KB)
京都大学大学院 理学研究科 |
山極 寿一 |
京都大学 野生動物研究センター |
中村美知夫 |
<研究協力者> |
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京都大学大学院 理学研究科 |
安藤智恵子・浅井健一郎・松浦直毅 |
コンゴ民主共和国 自然科学研究所 |
Kanyunyi A. Basabose |
[平成18~20年度合計予算額] 32,374千円(うち、平成20年度予算額 10,213千円)
[要旨]
エコツーリズムは、自然資源の劣化をもたらすことなく、持続的に地元に経済効果をもたらし、その資源の価値に対する認識を高める効果が期待されている観光のひとつである。したがって、エコツーリズムを正しく推進するためには、1)資源を持続させるための方策、2)地元住民の参画、3)経済効果、という3つの目的が統合され達成されなければならない。
  本研究は、われわれの調査地で現在おこなわれているエコツーリズムを調べることによってどのような改善が必要であるかを検討し、近い将来エコツーリズムが実施される可能性の高いところではそのための基盤を整備し、有効な対策を提言することを目的として実施された。
  現在エコツーリズムが実施されている地域について、地元住民や行政関係者を集めて数回にわたる会合を開き、国立公園や保護区と地元が抱える問題点、環境保全や類人猿に関する知識、エコツーリズムに関する認識や期待などについて話し合いをもち、そこで得た情報を基に分析をおこなった。また、エコツーリズムの実態に関する資料、保全事業についての資料を収集した。問題点として、住民への環境教育や保全への理解促進が十分に図られていないこと、エコツーリズムが訪問客にも地元にも満足する状態で運営されていないこと、地元への利益の還元が満足する形ではおこなわれていないことなどの共通点が見いだされた。エコツーリズムの実施可能性の高い地域では、住民の伝統的知識を生かし、科学的見地に基づく環境保全の方法を講じながら、住民の積極的な参加を促す企画が不可欠であることが示唆された。
  調査地はいずれも日本人研究者が長期にわたって学術的調査をおこなってきた場所であり、その調査を手伝ってきた地元住民も多いため、類人猿保護への関心も高い。政府や大型NGO主導ではなく、住民参加による地元主導型の観光を研究者の助言の上で企画すれば、コミュニティ・コンサベーションの有効な手段として活用できるであろう。