[キーワード]類人猿、森林保全、地域住民、森林の持続的利用、環境変動
[F-061 大型類人猿の絶滅回避のための自然・社会環境に関する研究]
(2)地域住民による森林利用の実態と環境変動についての研究[PDF](691KB)
明治学院大学 国際学部 |
勝俣 誠 |
<研究協力者> |
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京都大学 霊長類研究所 |
古市剛史・松岡絵里子 |
明治学院大学 国際学部 |
坂巻哲也 |
京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科 |
木村大治 |
中京大学 教養部 |
小川秀司 |
法政大学 人間環境学部 |
安岡宏和 |
滋賀県立大学 人間文化学部 |
黒田末寿 |
コンゴ民主共和国 生態森林研究所 |
Ndunda N. Mwanza |
コンゴ民主共和国 生態森林研究所 |
Kanyunyi A. Basabose |
ウガンダ共和国 バララ大学理学教育学部 |
Aineomuchunguzi Adalbert |
[平成18~20年度合計予算額] 45,655千円(うち、平成20年度予算額 15,021千円)
[要旨]
アジア、アフリカ地域の人間の生活域の拡大と人口増加を考えると、類人猿と人間が共存する地域で地域住民の合意と積極的な参画の得られる森林保全計画を立案することが重要である。本研究では、地域ごとの保全計画立案のための基礎資料を得ることを目的に、住民の森林資源利用と森林の環境変動のモニタリング調査をおこなった。首都からアクセスがよく比較的社会資本の整備が進んだカリンズでは、主食は自給するバナナが中心だが生産に季節性があり、他の主食作物の購入にも頼っていた。タンパク源は購入する牛肉に依存し、農作物の売却である程度の現金収入を得ていた。燃料は、薪の半分は人工林、残りの半分は自然林の枯れ木から得ていた。概して森林資源への依存度は低く、研究活動や小規模なエコツーリズムの導入で雇用と現金収入を生み出せれば、地域住民の生活に大きな影響なく森林保全を進められることがわかった。一方、首都から遠く社会資本の整備も大きく遅れているルオーでは、主食のほとんどは自給できているが、果実や野菜類は森林での採取も多く、動物性タンパクのほとんどは森林と河川の動物に頼っていた。農作物の売却による現金収入はほとんどなかった。薪は焼き畑の燃え残りでまかなっていた。以上から、保全による森林利用の制限は、この地域の住民の生活に大きな影響を及ぼすと考えられ、研究プロジェクト等の誘致による現金収入の拡大、生産性の高い家畜の導入、河川漁業の技術改良、交通網整備による農作物売却の機会拡大などが今後の課題となった。NGOなど地域住民の自発的な活動がルオーなどで起こり始めていることから、コンゴ民主共和国で地域住民参加型の森林資源管理方式が実効性と持続可能性を備えるための制度的環境について、森林行政やNGOへのヒアリング調査をおこなった。以上で得られた結果を、それぞれの地域の行政組織などに提示し、地域の実情に即した保護管理プログラム作成の参考にした。国際学会等の報告では、地域ごとの個別の状況を丁寧に調べて保護計画を立てる手法が高く評価された。