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[キーワード] コムギ、イネ、気孔コンダクタンス、オゾンフラックス、多層モデル

[C-062 東アジアの植生に対するオゾン濃度上昇のリスク評価と農作物への影響予測に関する研究]

(2)オゾン沈着プロセスモデルの開発[PDF](1,102KB)

  愛媛大学 農学部  地域環境水文学研究室

  大上博基

<研究協力者>

 

  愛媛大学 農学部農学研究科(平成19年度修了)

  稲田健太

  愛媛大学 農学部(平成19年度卒業)

  本廣真吾

  愛媛大学 連合農学研究科(平成18年度修了)

  賀 斌

  中国科学院 土壌科学研究所

  ZHU Jianguo

  [平成18~20年度合計予算額] 22,853千円(うち、平成20年度予算額 6,871千円)

[要旨]

  本サブ課題では、中国江蘇省の農業地帯に設置した実験コムギ畑および水田で微気象観測と植物生理生態測定を行い、オゾン曝露量の影響を組み込んだ気孔コンダクタンス(gs)モデルを構築することにより、個葉におけるオゾンフラックスを推定するモデルを開発した。
  冬コムギ1品種とイネ5品種の止葉について、気象条件、展葉後の日数(フェノロジー)と群落頂部における累積オゾンドウス(AOT40)、時刻をパラメータとして、gsをモデル化した。本モデルにより、AOT40が増加するにつれてgsが低下するプロセスが再現でき、そのプロセスが作物種とイネ品種間で異なることも明らかにできた。さらに、サブ課題(3)の化学輸送モデルで、このgsモデルを用いて東アジア地域における植生のオゾン沈着量を予測できるよう、群落上空のオゾン濃度から群落高さのオゾン濃度を推定するサブモデルを開発した。このモデルは、オゾン濃度の鉛直分布を対数分布で表現しており、粗度長がパラメータである。このモデルにより、群落高さのオゾン濃度を良好に再現できた。
  次に、気象条件やAOT40の影響を組み込んだ品種別の止葉個葉光合成(P)モデルを開発した。その結果、オゾンの影響によるgsの低下とPの低下を関連付けることができ、AOT40が増加するにつれてPが低下するプロセスとその影響の品種間差を明らかにすることができた。
  gsモデルとPモデルを用いて、止葉展開から収穫までの期間の止葉によるオゾン沈着積算量(AFst6)とNPPを推定した。コムギでは従来、AFst6と減収の関係(ドウス・レスポンス)から減収を予測する試みが進められてきた。しかし、本研究でイネ4品種を比べた結果では、NPPの低下率が最大であった品種SY63で、AFst6の増加率が最も小さかった。この結果から、オゾン沈着積算量から減収率を求める方法の問題点が明らかとなり、減収を予測できる新たな影響指標を検討する必要が指摘された。本研究結果からは、Pモデルによる減収予測の有効性が期待できる。