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[キーワード]東アジア、アンモニア発生、窒素循環モデル、森林流域、窒素流出

[C-052 酸性物質の負荷が東アジア集水域の生態系に与える影響の総合的評価に関する研究]

(5)東アジア集水域の酸性物質による生態系影響総合評価モデルの開発[PDF](1,116KB)

  独立行政法人農業環境技術研究所
  物質循環研究領域


新藤純子

  独立行政法人農業環境技術研究所
  生態系計測研究領域


岡本勝男

  [平成17~19年度合計予算額] 22,627千円(うち、平成19年度予算額 6,302千円)

[要旨]

  東アジアは化石燃料の燃焼や農業起源のアンモニア発生による窒素負荷の増加が著しいと考えられている。東アジア9カ国を対象に、FAO統計や中国統計年鑑などのデータ、将来の食料需給予測(中国に関しては一部サブテーマ4の結果)に基づいて、家畜ふん尿と肥料からのアンモニア発生量を見積もり、1980年から2030年までの経年変化を推定した。畜産品生産量に基づいて推定した家畜からの発生量は従来の家畜一頭当たりの発生量に基づいた方法と比較して、中国、カンボジアなどの発展途上国で違いが大きく、前者は過小評価、後者は過大評価である可能性が高いと考えられた。農業由来のアンモニア発生量は特に中国とベトナムでの増加が顕著であり、対象領域では2000年現在のアンモニア発生量が約667万tNと推定された。これは化石燃料由来の窒素酸化物の1.5倍の発生量であり、また2030年の発生量は2000年の約2.0倍となると予測された(家畜飼料を自国生産する場合)。また、大気からの窒素負荷の森林生態系内での循環を広域的に推定するモデルを作成し、前述の発生量から推定した、アンモニアと窒素酸化物の沈着量分布に基づいて、我が国および東アジアの森林流域からの窒素流出濃度の変化を推定した。モデルは主として大気からの窒素沈着、衛星データ(Terra/MODIS)ベースの純生産量に基づく樹木による吸収とリターの分解過程、土壌、地下水中での脱窒などによる窒素除去過程を考慮した。モデルにより我が国の渓流水濃度の全国的な傾向が概ね推定できることを確認し、東アジアに適用した。大気からの窒素負荷の上昇は、最近の20年間に主として中国の東岸諸省、長江下流域、また東南アジアではベトナムにおいて、森林流域からの窒素濃度の上昇を招き、今後もこれらの地域で上昇が続く可能性が示された。