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[キーワード]栄養塩類流出、Universal Soil Loss Equation、蒸発散、産出水、水源涵養

[E-4 熱帯域におけるエコシステムマネージメントに関する研究]

(1)森林認証制度支援のための生態系指標の開発に関する研究

④森林伐採に伴う土壌流出と集水域生態系に与える影響評価に関する研究[PDF](875KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  生物圏環境研究領域  熱帯生態系保全研究室


奥田敏統(現広島大学大学院総合科学研究科)

  EFフェロー(マレーシア工科大学)

Zulkifli Yusop

<研究協力者>

 

  独立行政法人国立環境研究所
  生物圏環境研究領域  熱帯生態系保全研究室


沼田真也・吉田圭一郎・鈴木万里子

  マレーシア工科大学

Mazlan Hashim

  [平成14~18年度合計予算額]  7,398千円(うち、平成18年度予算額 0千円)

[要旨]

  本研究では熱帯域で急速に進む森林伐採や土地利用改変が、河川への土壌や栄養塩類流出にどのような影響を及ぼすか、また、一方で森林を保全することでどの程度の保水能力が流域単位で得られるかを明らかにすることを目的とした。まず、マレーシア半島のパソ森林保護区を含むパイロットサイト内の集水域(1987 km2)において、Universal Soil Loss Equation (USLE)モデルにより、土壌流出量および栄養塩流出量を求めた。集水域全体からの総土壌流出量は7.15 mil ton/yr (35.9 ton/ha/yr)と推計され、最も土壌流出量が激しいのは非樹木性農耕地(477 ton/ha/yr)で、天然林は最も少ない値となった(12.1 ton/ha/yr)。天然林は集水域の59%を占めているものの、土壌流出量は集水域全体からの総流出量の19.7%に過ぎなかった。単位面積あたりの栄養塩類の流出は天然林で最小、樹木以外の各種耕作地で最大であった。また、1980年から1990年までの河口における堆積物収量は、0.58 ton/ha/yrから6.44 ton/ha/yr の範囲(平均は1.52 ton/ha/yr)であったのに対し、同時期の堆積物移動率(Sediment delivery ratios: SDR)は0.02から0.18の範囲(平均0.04)であった。これらの結果をもとに、丘陵地の沈降や下流に移動する流水水路において再堆積した土壌の割合を推定した結果、丘陵地から流出した土壌の4%が最終的に河口に到達し、多くは河川内に堆積、もしくは溶存することが明らかとなった。また、本研究では衛星画像から地表面熱収支解析アルゴリズム(Surface Energy Balance Algorithm for Land, SEBAL)を用いて、パイロットサイト内のTriang流域からの蒸発散量の推定を行った。その結果、全流域の瞬間蒸発散量(ET)は1,135 mm/年となった。主な土地利用タイプ毎の平均蒸発散量はほぼ等しく、3,112(森林)、3,111(ヤシ園)および3,109 mm/日(ゴム園)であった。一方、通常の年間降雨量(2,294 mm,1995年)があった年と乾燥年(1,443 mm,2002年)とで産出水量を比較したところ、1995年は1,159 mm/年、2002年は308 mm/年となり、約4倍近い隔たりがあることが分かった。