課題名

B−61 市町村における温室効果ガス排出量推計および温暖化防止政策立案手法に関する研究

課題代表者名

中口毅博(特定非営利活動法人環境自治体会議環境政策研究所所長)

研究期間

平成14−16年度

合計予算額

39,022千円(うち16年度 11,777千円)

研究体制

(1)市町村における民生部門等の温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析

(特定非営利活動法人環境自治体会議環境政策研究所)

(2)市町村における運輸部門温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析

(独立行政法人国立環境研究所)

(3)市町村における温暖化対策の類型別体系的整理および政策手段の効果推計

(特定非営利活動法人環境自治体会議環境政策研究所)

研究概要

1.序(研究背景等)

 京都議定書の目標達成のための総合的な対策は国レベルで行う必要があるが、個別の具体的対策 は地域レベルで推進する必要がある。地方公共団体の地球温暖化対策に対する責務は、「地球温暖 化対策の推進に関する法律」第四条にも、「地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じ た温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進するものとする。」と明記されており、国内の 各自治体で有効かつ効率的な温暖化防止政策を早期に実施することが不可欠である。
 しかし、市区町村レベルで政策実施の前提となる温室効果ガスの排出量推計を行っている自治体 はきわめて少数である。これは市区町村レベルでは排出量推計のための統計データが乏しく推計手 法が確立していないためである。したがって、効果的な温暖化防止政策を実施するためには、市区 町村レベルで入手可能な統計データを用いて排出量を推計する手法を提供することが急務である。 その上で、政策手段の効果を定量的に示すことができるように、研究サイドからの情報提供を図る ことが重要となっている。

2.研究目的

 サブテーマ1では、市町村が民生部門・産業部門の温室効果ガス排出量を容易に推計できるよう な手法を開発するために、まず民生部門CO2排出量を推計する。一般家庭および事業所のエネルギ ー消費構造をアンケート調査により把握し、既存統計との関係の解析結果をもとに民生部門CO2 排出量推計モデルを作成し、市町村別排出量を推計する。さらに民生部門と運輸部門の2010年の市 町村別排出量将来予測値を推計する。また、産業部門(製造業)の市町村別排出量も推計する。
 運輸部門のCO2排出量は、乗用車の大型化や保有台数と総走行距離の増加などによって90年代前 半に大幅に伸び、2002年時点で対1990年比20.4%増の261百万t-CO2となっている。そこで、サブテ ーマ2では、運輸部門について、市区町村が運輸部門の温室効果ガス排出量を容易に推計可能な手 法を開発することを目標とした。パーソントリップ(以下、PT)調査等の詳細な交通データと交通 手段別CO2排出係数から、全国の市区町村について交通手段別CO2排出量を算出するとともに、 その地域差の要因を明らかにし、政策評価の基礎資料として提供することを目的とした。
 サブテーマ3では、市町村が自分の地域に適した温暖化対策を選定し行政計画への位置づけがで きるような手法を開発するために、地球温暖化対策実態調査結果に基づき温暖化対策を分類すると ともに、温暖化計画や推進組織の有無など対策実施率を規定する要因の抽出を行う。また、実施さ れている温暖化対策との関連や、市町村の社会構造、土地利用、公共事業などの諸要因との関係を 解析する。さらに、いくつかの政策手段について削減効果の推計を行ったうえで、市町村の類型別 に効果の高い温暖化対策を整理する。さらに、対策実施効果の簡易推計プログラムを開発する。

3.研究の内容・成果

 (1)市町村における民生部門等の温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析
 民生部門家庭における市町村別エネルギー消費量の推計方法を検討した結果、推計式として、各 市町村の世帯人員別世帯数に県庁所在都市の世帯人員別消費原単位を乗じてから建て方別補正係 数を乗じ、さらに燃料ごとのコントロールトータルで補正する方法を採用した。この方法を用いて 市町村別エネルギー消費量を推計した結果、全国の傾向としては人口規模が小さくなるほど電気、 LPG、灯油の使用比率が大きくなるのに対し、人口規模が大きくなるほど都市ガスの使用比率が大 きくなることが確認された。また人口規模別にみると、人口100万以上の都市が総計で全国の約2割 を占める一方で、人口30万以下の中小都市も約6割を占めていることが明らかになった。



 民生部門業務のCO2排出量推計は、岩手県での小規模事業所エネルギー消費実態調査結果に基づ き、事務所、商業、サービス業の小規模事業所のエネルギー消費原単位を求め、都道府県別従業者 規模別従業者あたりエネルギー消費原単位を作成し、2001年の事業所・企業統計調査の事務所・商 業・サービス業の市町村別従業者規模別従業者数をそれぞれ乗じて、市町村の燃料種類別エネルギ ー消費量を求めた。CO2排出量の人口規模別割合をみると、都市ガスを除き、人口30万未満の中小 市町村で約6割を占めていた。これは中小都市における省エネルギー対策の重要性を示している。
 民生部門家庭の将来予測は、世帯類型別世帯数の予測値に世帯類型別エネルギー消費原単位の予 測値を乗じて算定した。また民生部門業務の将来予測は、従業者数あたり原単位予測値を当該市町 村の従業者数予測値に乗じて推計した。その結果、2010年には人口が減少する市町村が75%あるに も関わらず、96%の自治体の民生部門排出量が増加することが明らかになった(図-2)。また人口規 模別にCO2排出量の増加率をみると、人口10〜30万、30〜100万の中規模都市でCO2の増加が著 しいことが予想される(図-3)。





 運輸部門の将来予測は、サブテーマ2において全国の市町村単位で自動車部門温室効果ガス排出 量を網羅的に推計した結果に、自動車輸送統計年報に基づく車種別の走行台km増減率と車種別CO2 排出係数を乗じた総和から2010年における運輸部門排出量を市町村ごとに予測して算定した。その 結果、国内全体でみると、市区町村数(1999年基準)で、75%の市区町村では2010年に人口減少が予 測されているにもかかわらず、そのほとんどで旅客部門排出CO2が増加する。その理由は、人口が 減少しても、人口あたりの乗用車保有台数は逆に増加し、いわゆる「1人1台化」が進展することに よる。このため新車(省エネ法基準達成車)への置換が予定どおり達成される条件を加味しても、人 口が減少する市区町村であっても、自動車からのCO2排出量が増加する。もとより、人口が増加す る市区町村でも排出量が増加する。これらの相乗的影響から、市区町村数にして国内の97%で旅客 部門排出CO2が増加すると予測される。なお貨物部門については、ほとんどの市区町村で横這いな いし減少と予測される。市町村ごとの自動車からのCO2排出量の増減指数(基準年を100とした場 合)の分布をみると、将来にかけて過疎化が激化する山間部等を除いて、多くの市町村で自動車か らのCO2排出量が増加する様子が示された。

 産業部門(製造業)の推計は、まず全国の産業細分類別燃料起源CQz排出量を求め、燃料使用額を 用いて都道府県へ配分し、電力起源のCO2排出量をそれに加えて各都道府県のCO2排出量とする。 同様に、各都道府県の排出量を市町村別の原材料使用額を用いて市区町村へ配分した。その結果、 人口規模3万〜10万およびl0万〜30万で排出量が多くなっており、人口30万未満の中小市町村で全 体の7割を占める。市町村別の排出量の分布をみると、太平洋ベルトに位置する市町村からの排出 が多いということがわかった。


(2)市町村における運輸部門温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析
 既存研究では、全国や都道府県の排出量を市区町村の活動量の比で按分する推計の事例が見られ るが、市区町村の地域的社会的特徴を十分に反映しているとは言えず、また削減策の検討には不向 きである。なお、運輸部門では、複数の市区町村にまたがって発生する移動が少なくないことから、 排出量の帰属先の整理の仕方も課題となる。
 具体的には、道路交通センサス自動車起終点(以下、OD)調査データ2)に基づいて全国の市区町 村について自動車CO2排出量を求めるとともに、センサス交通量に基づく推計、燃料販売量に基づ く推計を別途行い、排出量の地域への帰属・集計方法が異なる手法による結果の比較を通じて、地 域特性を明らかにした。また、排出量推計結果と社会・人口等の統計との連関分析を行い、市区町 村別の一人当たり自動車CO2排出量の特徴を明らかにした。一方で、本来は鉄道事業者からの排出 であるこのCO2を市区町村に按分するための手法を構築し、鉄道に起因する市区町村別CO2排出 量の推計もあわせて行った。また、全国の市区町村が、対策効果把握等を行うための枠組みとして、 交通の内訳を示す排出テーブルを構築・整備した。
 具体的には、まず、道路交通センサス自動車起終点調査データに基づいて全国の市区町村につい て自動車CO2排出量を求めた。なお、サンプル数が少ない町村部に関しては推計結果の信頼性に問 題があるため、市区郡単位の集計を基本的には示すこととした。分布図を図-4に示す。都道府県 別に集計した一人当たり自動車CO2排出量を図-5に示す。東京都市圏の東京、神奈川、埼玉、京 阪神都市圏の奈良、大阪、京都、兵庫では、相当に一人当たり排出量が小さく、大都市圏から離れ た所では、沖縄、広島、長崎が小さいことが分かる。
 市区郡別集計結果の例として、茨城県と神奈川県について人口ー人当たりの市区郡別CO2排出量 を登録地集計したものを図-6と図-7に示す。茨城県の年間排出量は619万t-CO2で、一人当たり 2.Ot-CO2となる。神奈川県の年間排出量は877万t-CO2で、一人当たり1.1t-CO2となる。この ように市区町村別の排出量と車種別の内訳を近隣の市区町村と比較可能な形で提供することは、各 市区町村の運輸部門排出量の現状把握に資すると考えられる。また、その特徴を知ることで、重点 的に対策すべき車種や業種が示唆されると考えられる。
 一方、排出地域の概念を整理した上で、OD調査の登録地集計の結果を、OD調査目的地集計、東京 都市圏PT調査(使用本拠地、目的地)、道路交通センサスの通過地集計、燃料販売統計による給油 地集計の結果と相互に比較した。その結果、登録車両の走行量が大きい割には目的地となる移動が 少ない等の地域特性を伺い知ることができた。例えばこの場合、地域内に拠点を持つ運送業者等と 連携を取った対策が重要となると考えられる。逆に、目的地集計の数値がより大きい地域では、事 務所や商業施設等の集客施設と連携を取った対策が重要になると考えられた。このように、異なる 手法による結果の相互比較を通じて、地域特性を明らかにするとともに、利用目的に応じて適切な 推計手法が異なることを指摘した。









 また、排出量推計結果と社会・人口等の統計との連関分析を踏まえて、市区町村別の一人当たり 自動車CO2排出量の特徴を明らかにした。自動車と乗用車類では、『人口/可住地面積』が負に働 いていることから、都市化が進んでマクロな人口密度が高くなっている地域の排出量が小さい傾向 があると考えられた。使用の本拠地で集計した一人当たり自動車CO2は、人口一人当たり商業販売 額が高い割に地価が安い地域では高い傾向があった。また、目的地で集計したものは、人口の割に 就業者数が多い地域で高く高齢者単身世帯が多い地域で低い傾向があった。一人当たり乗用車類C o2もほぼ同様の傾向を基本とした上で、転出入の社会移動が多い地域で高く核家族が多い地域で低 い傾向があった。貨物車類CO2について、人口密度の影響は見られず、人口の割に就業者数の多い 地域で高く、しかし商業地地価が高い地域では低い傾向があった。第二次産業就業者が多い地域の 貨物車類CO2が高い傾向が表れていると考えられる。なお、『土地平均価格』は、人口密度との相 関がやや高いため、解釈に注意する必要があるが、他にも中心地としての性格や駐車スペースに係 る費用を表しているとも考えられる。

 また、鉄道統計年報等から事業者別に求められる鉄道CO2排出量を路線別輸送量や駅別乗降客数 を用いて全国の市区町村へと按分し、明らかにした。本研究で構築した鉄道起因CO2排出量推計手 法による推計値とPT調査による推計結果は一長一短であるが、利用できるデータの制約から、現時 点では本研究で構築した推計手法を用いないと、全国3,368市区町村の鉄道起因CO2排出量は算出 できない。全国PT調査の個票の借用が可能になれば、全国PT調査集計結果を各種鉄道関連統計と組 み合わせることで、より精緻な全国市区町村別鉄道起因CO2排出量を推計することが可能になろ う。
 最後に、全国の市区町村が、排出量の検索や独自の調査結果に基づくデータ更新、将来予測、対 策効果把握等を行うための枠組みとして、トリップ数、平均移動距離等からなる排出テーブルを構 築・整備した、これを用いた試算により、対策評価のポテンシャルを容易に知ることができるよう になった。


(3) 市町村における温暖化対策の類型別体系的整理および政策手段の効果推計
 まず2001年の自治体調査結果に基づき、34種類の温暖化対策の実施パターンを数量化稽爐琶析 したところ(表-1)、「公共事業系―社会制度系」「人工系―自然系」「新技術系―在来技術系」の3つの軸で類型化できることが確認された。次に3つの軸上でのスコアの平均値を求めることによって 対策の傾向を分析したところ、農山村的性格が強い自治体は自然系・在来技術系の温暖化防止対策 が多く実施される傾向にあり、都市的自治体は人工系・新技術系の対策が多く実施される傾向にあ った(図-8)。





 また、温暖化対策と市町村の人口・産業・土地利用・自然特性との関係を解析した結果、CO2排出 要因としては、人口総数や昼間人口が増えるほど排出量が増加する一方、総人口中の従業・通学者 数が大きいほど排出量を減少させることが明らかになった。また、民生部門家庭のCO2排出実態 に基づき、市町村を均衡型、都市ガス優位型、灯油優位型、都市ガス・灯油優位型、LPG・灯油優位 型、LPG優位型の6つに類型化した。さらに、1自治体あたり対策実施数を目的変数、環境基本計画 策定有無、新エネルギービジョン策定有無、推進組織設置有無などの推進力要因と、地域特性要因 を説明変数とした数量化砧猜析を行った結果、表-2のように対策全体ではISO14001取得などの推 進力が大きく、政策分野別では、分野ごとに推進力要因が異なることが明らかになった。



 一方、民生部門家庭及び業務について、市町村が自らの地域の特性を把握し、エネルギー消費特 性等を踏まえて効果的な温暖化対策立案を行なえるよう、まず市町村を1)住宅における省エネ法地 域区分、2)農業地域類型、3)DID人口の全人口に占める比率を指標として30類型に分類した上、 いくつかの対策を想定し市町村のエネルギー消費実態を反映して対策実施によるエネルギー消費削 減量、CO2削減量を推計した。そして類型別に対策ごとのCO2削減量を整理した結果、対策によっ て類型ごとに効果の大きな対策の傾向があることが見出された。それを踏まえてCO2削減量に応じ て類型ごとに対策の判定を行ない、削減効果の観点から各対策の実施優先度について評価を行なっ た。家庭については気象的特性の違いによる対策効果の違いが顕著であり、省エネ法地域区分によ って優先的に検討すべき対策に異なる特徴があることが分かった。業務においては、気象的特性の 違いに加え、都市的地域ほど効果の高い対策もあり、同じ省エネ法地域区分の中においても優先す べき対策に違いがあることが見出された。
 また、市町村ごとに対策導入量を入力すると市町村全体のCO2削減効果が計算できる簡易推計シ ートを作成し(図-9)、対策検討の基礎情報の提供に資するものとした。


4.考察

 (1) 市町村における民生部門等の温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析
 民生部門家庭のCO2排出量を人口規模別にみると、人口100万以上の都市が総計で全国の約2割を 占める一方で、人口30万以下の中小都市も約6割を占めていることが明らかになった。また、民生部 門業務のCO2排出量推計結果を人口規模別割合でみると、都市ガスを除き、人口30万未満の中小市 町村で約6割を占めていた。これらの事実は中小都市における省エネルギー対策の重要性を示してい るといえる。
 また、2010年の民生部門将来予測結果を2000年の推計値と比較すると、75%の市町村で人口が減 少するにも関わらず、96%の市町村でCO2排出量が増加することが明らかになった。特に人口10〜 30万、30〜100万の中規模都市でCO2の増加が著しいことが予想されることから、中規模都市にお いて早急に効果的な温暖化対策の実行が不可欠である。
 一方運輸部門の将来予測結果をみても、75%の市区町村では2010年に人口減少が予測されている にもかかわらず、「1人1台化」が進展することによりほとんどの市町村で旅客部門排出CO2が増加 する。したがって公共交通へのモーダルシフトなどの対策を早急に講じる必要がある。
 さらに産業部門(製造業)の2000年の推計結果をみると人口規模3万〜10万および10万〜30万で排 出量が多くなっており、人口30万未満の中小市町村で全体の7割を占めることから、産業部門(製造 業)においても中小都市における対策が不可欠であるといえる。
(2) 市町村における運輸部門温室効果ガス排出量推計手法の開発および要因分析
 全国の市区町村を対象とした自動車車種別CO2排出量と鉄道CO2排出量を推計した。特に市区町 村別の自動車CO2排出量と車種別内訳を近隣の市区町村と比較可能な形で提供することで、各市区 町村の運輸部門排出量の現状把握に資する成果が得られた。特に、既存研究の47都道府県や195地方 生活圏に比較して、一部信頼性が低いものの1,372市区郡の排出量を求めたことに意味があると考え られる。
 また、排出量の帰属先の整理と異なる推計手法の結果の比較により、地域の特性や対策に応じた 推計手法の使い分けについて示唆を与えた。各種指標値との重回帰分析により、一人当たり自動車 CO2の高い地域の特性を明らかにし、可住地面積に対する人口が多い地域で乗用車CO2が低く、人 口に対する就業者数が多い地域で貨物車CO2が高い傾向を基調とし、郊外型大規模商業施設の立地 を伺わせる地域で排出量が多い傾向があることを示した。
 さらに、排出テーブルを構築し、トリップ当たり距離等の内訳を示すことで、データ更新や簡単 な施策効果の把握を可能とした。PT調査データ等の利用が可能であれば自動車以外のデータの補完 やより適切なデータへの更新を行うことが望ましい。具体的な対策を行う際には、この推計により 総排出量を把握することと組み合わせて、交通社会実験等を通じて対策前後のデータを取得するこ とで、より正確な対策評価を行うことが望ましい。
(3) 市町村における温暖化対策の類型別体系的整理および政策手段の効果推計
 温暖化対策の実施には、ISO14001取得や環境基本計画策定の効果が大きいことが明らかになった。 政策分野ごとにみると、公共事業実施時の環境配慮ではISO14001、地域エネルギー供給・利用シス テムでは、新エネルギービジョン策定、地域資源循環利用システムの整備では環境基本計画策定、 環境負荷の少ない交通システムの整備では排出量把握、環境負荷の少ない建築物・街区の整備では、 環境基本計画策定の効果が大きいことが明らかになった。このことから、温暖化対策を推進するに は、対策を講じたい分野に応じた計画や体制をそれぞれ整備することが重要であるといえる。
 また、民生部門家庭、業務それぞれについて具体的な温暖化対策の効果を定量的に把握し、評価 を行なった結果、民生部門家庭においては、気象的条件の違いから特に暖房や冷房に関わる対策の 効果に地域間で差が生じる結果となった。一方で冷蔵庫の効率改善、新築住宅の省エネ化、太陽熱 温水器、太陽光発電などは一般的認識と一致して地域を問わず効果の高い対策となっており、これ らは共通の対策と認識して優先的な導入検討が望まれるとも言える。民生部門業務については、照 明や動力のエネルギー消費量が多くを占めることもあり、家庭ほど気象的条件による影響を受けな いため地域により極端に効果の異なる対策は少ない結果となった。そのことはそれだけ地域を問わ ず効果の期待できる対策が多いことを示しており、建築物の省エネ化や蛍光灯の効率改善、BEM Sの導入などの効果の高い対策については優先的な実施の検討が望まれると言える。また一方で、 沖縄県では電力のCO2排出係数が大きいことから、電力消費量の削減によるCO2削減効果が他地域 に比べて大きいことや、全国的に都市的地域ほど大規模建築物や事務所ビルが大きいことなどを反 映して蛍光灯やパソコンの効率改善による効果が大きいなどの傾向も見出された。対策実施コスト 等を考慮した各市町村に適した対策導入可能性の検討については今後の課題となろうが、本研究に より削減効果の観点から対策検討に資する基礎的情報が得られたものと考えられる。

5.研究者略歴

課題代表者:中口毅博
      1959年生まれ、筑波大学比較文化学類卒業、現在、NPO法人環境自治体会議環境政策研究所
               所長、芝浦工業大学環境システム学科助教授兼務
           主要論文:中口毅博:市町村レベル自治体における温暖化対策立案のあり方. 資源環
                  境対策,40(4),p30-38(2004)
                  中口毅博:自治体における温暖化防止対策の特性とその推進力に関する分
                  析. 環境科学会誌17(3),p217-223(2004)
                  中口毅博:家庭エネルギー消費量の規定要因に関する研究,2003年11月,
                  環境情報科学論文集17,p253-258(2003)
主要参画研究者
(1):中口毅博(同上)
   上岡直見
    1953年生まれ、早稲田大学理工学部卒業、
    現在、NPO法人環境自治体会議環境政策研究所主任研究員
    主要論文:上岡直見:交通工学,38-3,7-11(2003)
           上岡直見:交通工学,20,24-35(2003)
(2):松橋啓介
    1971生まれ、東京大学大学院工学系研究科修士課程卒業、博士(工学)、
    現在、独立行政法人国立環境研究所PM2.5・DEP研究プロジェクト主任研究員
    主要論文:松橋啓介、田邊潔、森口祐一、小林伸治:自動車に起因する大気汚染物質排
           出量推計手法の開発(機暴杜牟菠別走行量を考慮したマクロ推計. 大気環
           境学会誌,39(6),280-293,(2OO4)
           Matsuhashi K., Newman P. : The potential for transit-oriented land use
           To save energy and retain open space - a case study of Tokyo and Perth,
           Proceedings of International Sustainability conference, CD-ROM (2003)
           松橋啓介:大都市圏の地域別トリップ・エネルギーから見たコンパクト・シ
           ティに関する考察. 都市計画論文集,37,469-474(2000)
(3):中口毅博(同上)