課題名

H-6  地下水利用に伴う広域的ヒ素汚染に対する地球環境保全のための環境計画に関する研究

課題代表者名

安藤 正典 (国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部)

研究期間

平成12−14年度

合計予算額

82,595千円 (うち14年度  23,970千円)

研究体制 本研究は図1に示した概念で以下の体制で実施した。

(1)ヒトヘの健康影響とその防止対策手法の開発

 ^用地下水ヒ素汚染の状況調査と暴露量評価による安全性の閾値の設定に関する研究

(国立医薬品食品衛生研究所)

 中毒患者の増加の抑制、疾病予防、疾病回復のための基礎的研究

(九州大学)

(2)自然環境汚染状況と生態系影響調査と回復手法

(独立行政法人国立環境研究所)

(3)農業用水及び農作物におけるヒ素の動態に関する研究

(国立医薬品食品衛生研究所)

(4)大容量上水道システムにおけるヒ素除去処理手法の開発と配水体制の研究

(北海道大学)

(5)飲料井戸などの小規模飲料水におけるヒ素除去手法の開発

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(東京大学)

 簡易および農業用装置の全国設置のプロトコール作成

(東北学院大学)

(6)他地域におけるヒ素汚染に関する諸問題解決のためのワークショップ

(独立行政法人国立環境研究所)

1 研究概念(○内の番号はカッコの研究番号)

研究概要

1.序(研究背景等)

 多くの開発途上国では、図2に示すように人口増加にはじまる貧困、食糧不足が大きな課題で、その対策の一つとしていろいろな形で土地利用による食糧確保や社会経済的自立の可能性を求めている。その方策の一つとして、地下水の汲み上げによる灌漑によって広大な農耕地確保の方策が採られ、収穫量の増加により地域社会の経済の発展を目指している。開発途上国では短期的な社会経済問題を優先し、その結果大きな課題を次世代あるいは自然環境や地球環境に長期間にわたり多大の影響を残している。その典型的な問題が、中国、モンゴル、タイ、チリ、インドネシア、インドあるいはバングラディシュと世界で有数の人口密集地域の開発途上国では、地下水汲み上げによる重金属汚染に伴う周辺環境の汚染とヒトヘの影響である。地下水汲み上げによるヒ素の自然環境汚染・破壊あるいはヒトヘの健康影響が、社会経済問題も複雑に絡み合って深刻な状況となっている。また、これらヒ素汚染地域における地球規模の汚染による影響は不明である。

 インド、バングラディシュに跨る西ベンガル湾周辺の堆積層の地域は、世界で有数の人口密度を有し、しかも雨季と乾季が明確に分かれていることから、大河を有するにもかかわらず、乾期には農耕地に灌水できず農作物の収穫が期待できなかった。このことから、両国では人口問題と社会経済問題を一挙に解決できる方策として地下水汲み上げによる灌漑の政策をここ40年来推進してきた。その結果、未曾有の地下水ヒ素汚染による皮膚がん、肺がん、角化症、黒皮症などのヒ素中毒患者が多発している。ヒ素汚染地域では人口の20%以上がヒ素中毒を発症し、年に8%の割合で患者が増加しているという深刻な事態に至っている。これに加えて、汲み上げられたヒ素含有地下水は農耕地はもちろんのことベンガル湾周辺までも自然環境を汚染し、生態系への影響、さらには地球環境規模での負の影響も懸念されるところである。

 

 

 

2 研究の背景

 

2.研究目的

 西ベンガル周辺諸国とわが国との共同研究によって地下水ヒ素汚染に伴うヒトの健康影響、地質水門学的検討、生態影響の状況調査と回復の可能性、ヒ素汚染井戸の小規模飲用水及び大容量飲用水の除去方策の確立のための研究を行うことを目的とし、図1に示したプロジェクト概念に従って研究を行った。

(1)ヒトヘの健康影響とその防止対策手法の開発

 1)飲用地下水ヒ素汚染の状況調査と暴露量評価による安全性の閾値の設定に関する研究

 インドの西ベンガル州の地下水のヒ素汚染地域で生活する住民の爪、頭髪及び尿等と飲料水、食料品やその材料を採取し、これらからのヒ素を含む17元素の分析並びに住民の毛髪中のヒ素を含む17元素の分析と尿中ヒ素代謝物の分析を行い、ヒ素による健康影響について検討した。

 2)中毒患者の増加の抑制、疾病予防、疾病回復のための基礎的研究:疾病予防・回復の一助とするため生体内における亜ヒ酸曝露によるNADPH oxidaseの活性化および活性酸素・フリーラジカル種の産生の程度を評価するシステムの構築を検討した。

(2)自然環境汚染状況と生態系影響調査と回復手法:ヒ素は還元メチル化されやすく大気中への揮散が予想されるため、ガス状ヒ素化合物は良い現場捕集方法について検討し、契機どう暴露を予測した。

(3)農耕地、用水及び作物のヒ素動態把握と地球環境汚染としての寄与に関する研究:農業用水による耕作地及び農作物へのヒ素汚染の実態を把握すること及びガンジス川河川や土壌並びにベンガル湾海水や土壌中のヒ素量を測定することによって地球規模でのヒ素の挙動を検討した。

(4)大容量上水道システムにおけるヒ素除去処理手法の開発配水体制の研究:ヒ素と共存する高濃度の鉄を有効利用する空気酸化凝集処理法の実用実験を行い、低コストな浄水処理方法の適用性の検討、ヒ素除去実験プラントを建設しさまざまな実験条件の下でのヒ素除去性能を検討した。

(5)飲用井戸等の小規模飲用水におけるヒ素除去手法の開発

 1)ヒ素除去装置の開発及び農業用水ヒ素除去手法の開発:小規模飲料水供給システムに適用するヒ素除去装置の開発、プラント実験を行うとともに、既存の簡易ヒ素除去装置の性能評価を行った。

 2)簡易および農業用装置の全国設置のプロトコール作成:構築したヒ素除去の新機能細胞を改良し、ヒ素除去の傾向の把握に努めた。また、植物を使った浄化法等についても検討した。

(6)他地域におけるヒ素汚染に関する諸問題解決のためのワークショップ:アジア地域で確認されているヒ素汚染とその対策の現状を集約したワークショップを開催した。

 

3.研究の内容・成果

 本研究では図3に示した過程を研究することによって全プロジェクトを実施した。

(1)ヒトヘの健康影響とその防止手法の開発

 1)飲用地下水ヒ素汚染の状況調査と暴露量評価による安全性の閾値の設定に関する研究

 インドおよびバングラデシュの地下水のヒ素汚染地域で生活する住民の健康影響評価を検討するため、インド西ベンガル州Mushidabad地区およびバングラデシュのジョソール県を訪れ、ヒ素汚染水を飲料あるいは調理用に使用する家族から飲料水、尿及び毛髪を採取し、飲料水、毛髪および尿中のヒ素のヒ素化合物の分析を行い、ヒ素による健康影響について検討した。

 (1)インドを対象にした平成12年度の調査では、12家族の内、9家族が、平成13年度の調査では19家族の内、1家族が飲料水のヒ素基準は50ppb以上のヒ素汚染水を使用していた。バングラデシュを対象にした平成14年度の調査では、21家族の全員が安全な水を用いていた。しかし、調査した13本のtubewellの水の内、8本のtubewellの水が飲料あるいは料理用に使用していないが、ヒ素基準の濃度を上回っていた。

 (2)ヒ素のメチル化体であるDMAMMAの和を尿中の総ヒ素量で割ったもの(%)の正常範囲は、7090%と報告されていが、平成12年度の調査で2名の子供(27.3及び16.5%)、平成13年度の調査では11名、平成14年度の調査で2名に無機ヒ素の代謝異常が観察された。

 (3)正常な無機ヒ素の代謝能を有するヒトを対象に各ヒ素化合物の間での関連性を検討したところ、AsIII)、MMADMAあるいはそれらヒ素代謝物(AsIII)、MMADMA)と総ヒ素量との問には良い相関関係(P<0.05)が成立し、飲料水のヒ素濃度の高い水を利用している家族の尿中のヒ素量は高い値を示した。

 (4)正常な無機ヒ素の代謝能を有する夫婦を対象に男女間での尿中ヒ素の代謝物であるAsIII)、MMADMAの関連性を検討したところ、各代謝物とも男女間に有意な相関性があった。

 (5)正常な無機ヒ素の代謝能を有するヒトを対象に年令と尿中各ヒ素化合物の関係を検討した。年令とDMA及び年令と総ヒ素量の間に統計的に有意な相関関係(P<0.05)があった。

 (6)飲料水中のヒ素濃度と毛髪中のヒ素濃度には関連性があった。

 (7)1回採取尿でのヒ素の平均値と24時間採取尿での平均値には、統計的に有意な差が観察されず、1回採取尿で24時間の値を類推できることが分かった。

 2)中毒患者の増加の抑制、疾病予防、疾病回復のための基礎的研究

 ヒ素の発がん機構の一つとして考えられる、生体内におけるフリーラジカル産生部位の特定を目的として、生体計測ESR画像解析法について検討した。生体計測L-band ESRの外部磁場内に磁場勾配を発生させる三次元磁場勾配コイルおよび掃引コイルを設置し、磁場勾配内におけるESRシグナルの測定を行い、ラジカル種の二次元空間画像を構築した。さらに、ESRI画像とMRI画像を取得し両画像を重畳画像化するためのアルゴリズムを構築した。マウスにCmPを投与し、CmPの生体内挙動をESRIにより解析した。フリーラジカル産生評価法として各ピクセルにおけるシグナル減衰速度を画像化することによりフリーラジカル産生部位の空間情報を取得することが可能となった。

(2)自然環境汚染状況と生態系影響調査と回復方法

昨年度の本課題では、特に毒性の強いトリメチルアルシンなどガス状ヒ素の存在の有無を確認するための新たな捕集方法の検討を進めたが、本年度は従来法で現状を明らかにしていくことを目的として、大気粉じん中の粒子状ヒ素の濃度とその存在状態に関する研究を進めた。西ベンガル地方のヒ素汚染地帯のいくつかの家屋で、炊事中を中心にかまどの近くで携帯型エアサンプラを用いて室内大気粉じんの捕集を行い、捕集粉じんから水溶性ヒ素の総ヒ素濃度を測定した。いずれの家屋でもかまどに煙突などはなく、牛糞主体の燃料を燃やした煙はそのまま室内に出て窓や出入り口から外へ排出される形となっているが、水溶性ヒ素がいずれのフィルター捕集試料からも検出された。計算上は平均して10ng/m3の濃度で水溶性ヒ素が大気粉じん中に存在することになる。平均して一人あたり一日15m3の空気を肺に吸入するとされているので、1日あたり200ngを越える水溶性ヒ素が呼気を介して肺の中に出入りすることになる。実際には炊事以外の時間帯にはこの濃度はより低い可能性が考えられること、また肺内に入ったとしてもすべてがそのまま沈着し体内に吸収される訳ではないことなどから、この数値をそのまま呼気経由の暴露量推定値と捉えることには問題がある。しかしながら、この数字はフィルター上の総ヒ素濃度ではなく水溶性画分の濃度であり、これらは一旦体内に沈着すれば容易に溶けだして吸収されたり周辺組織に影響を与える可能性が高い画分であることが示唆された。飲料水のWHO基準値10ng/Lに対して1日摂取量2Lから計算される値20ngと比較しても、上記の値はかなり大きなものである。ヒ素汚染地帯にすむ人々のヒ素曝露影響を考える上で、大気経由のヒ素曝露の可能性を無視することはできず、より精密な調査とリスク評価が必要であることを示した。

 牛の餌である干し草(D)、新鮮な牛糞(A)、天日乾燥した牛糞(B)、牛糞燃焼後の灰(C)、それに大気粉じん(E)の試料から抽出されたヒ素化合物の形態は、いずれも無機のひ酸(AsV))として含まれていた。次いで試料中に多いのがカコジル酸(DMAA)で、牛糞の天日干し乾燥中に増えているようにも見えた。また同じく天日干しの間にモノメチルアルソン酸のピークが大きく増加していた。一方、これらの有機ヒ素は焼却後の灰には残っていなかった。興味深いことに、いずれにもトリメチルアルシンオキサイド(TMAO)が微量ながら検出され、1ないし2個のメチル基を含む有機ヒ素とは違い、焼却後の灰の中にも極わずかに残っていた。これら以外に比較的高分子の未知のヒ素化合物が検出された。

 以上の結果から、餌の干し草と牛糞(新鮮)のヒ素化合物は類似していること、牛糞乾燥中にメチル化が進んで無機ヒ素(AsV))の相対的な割合が減少しメチル化ヒ素化合物が増加すること、これらは燃料として焼却時に消失し、灰並びに大気粉じん中には主に無機ヒ素(ASV))が残ること、などの様子がわかった。一方、大気粉じん並びに干し草、牛糞に比較的多く、また焼却灰にもごくわずか見えるTMAOの起源は、TMAOは還元的条件下では容易に分子内酸素を失いトリメチルアルシンに変化することから、或いは燃焼中の炎内部での還元 トリメチルアルシンヘの変化 揮散 炎の外周での急速な酸化 一部のTMAOへの逆戻り、粒子への付着、といったプロセスを示す可能性あるいは、大気中の寿命が長いトリメチルアルシンが酸化して作られるTMAOが大気粉じんに紛れ込んでくる可能性も考えられた。

(3)農耕地、用水および作物のヒ素動態把握と地球汚染としての寄与に関する研究

 インド西ベンガル州のMurshidabad地区のDomkalJalangiHariharparaおよびRaninagar-II4区画で調査を行った。

 1)Domka1区画とJalangi区画の農耕地の表層土中のヒ素濃度と灌漑用水中のヒ素濃度の間に非常に良い相関関係が成立した。

 2)Domkal区画とJalangi区画で採取された農産物に吸収されたヒ素量は、土壌中のヒ素濃度に影響されてい。野菜の皮には大量のヒ素が吸収されており、皮を剥いた野菜の果肉部分のヒ素濃度は低かった。

 3)Hariharpara区画とRaninagar-II区画の灌漑用のtube-wellから採取した水の中のヒ素量は、0.0190.12mg/lであった。この2区画の4つの農耕地で使用されるヒ素の年間排出量は1.79kg/yearであり、単位面積当たりのヒ素量は5.02kg/haであった。

 4)Hariharpara区画とRaninagar-II区画の表層土、農産物の根の周りの土壌、0-30cmの深度の土壌並びに4つの農耕地から得られた土壌中から得られたヒ素の平均値は、それぞれ、14.2mg/kg(範囲:9.5-19.4mg/kg)、13.7mg/kg(範囲:7.56-20.7mg/kg)、14.8mg/kg(範囲:8.62-21.0mg/kg)及び14.2mg/kg(範囲:7.56-21.0mg/kg)であった。表層部分のヒ素濃度が最も高く、深度が大きくなるに従い、土壌中のヒ素濃度が減少することが観察された。

 5)Baruiparaの農耕地の各深度に応じた土壌中のヒ素の分布の平均値は、唐辛子、ショウガおよびサトイモの耕作地では、それぞれ、15.3mg/kg(範囲:12.1-17.5mg/kgn=18)、17.5mg/ml(範囲:12.2-21.0mg/kgn=18)、15.3mg/kg(範囲:11.4-19.8mg/kgn=18)であった。

 6)Hariharpara区画とRaninagar-II区画の4つの農耕地の表層の土壌中のヒ素濃度と灌漑用水のヒ素濃度の間には、統計的に有意な相関関係(R2=0.738P<0.001)が成立した。同様に、灌概用水中のヒ素濃度と農産物の周りの土壌あるいは各深度での土壌中のヒ素濃度の間でも、有意な相関関係が成立した。灌漑用水中のヒ素が農耕地の表層土のヒ素汚染に関係していることを示唆した。

 7)Hariharpara区画とRaninagar-II区画の4つの農耕地から採取された農産物の根、茎、葉及び全植物中のヒ素濃度の平均値は、それぞれ、996ng/g(範囲:0.04以下-4850ng/gn=99)、297ng/g(範囲:0.04以下-2900ng/gn=99)、246ng/g(範囲:0.04以下-1600ng/gn=99)および513ng/g(範囲:0.04以下-4850ng/gn=297)であった。灌漑用水中のヒ素濃度と根、茎および葉のヒ素濃度の間には良い相関関係(P<0.05)が観察されたが、土壌中のヒ素濃度と根、茎および葉のヒ素濃度の間には、統計的に有意な相関関係は得られなかったがその傾向を伺うことができた。

(4)大容量上水道システムにおけるヒ素除去処理手法の開発と配水体制の研究

 本研究は、地下水調査による現地ヒ素汚染状況の把握及び共存物質を含めたの地下水質の特徴づけと、現地パイロットプラントによるヒ素除去実験及びそれに付随する室内実験の大きく2つに分かれている。研究対象地域としてバングラデシュの西端、インドとの国境沿いに位置しているナワブガンジ地区を対象とした。この地区の人口は約40万人で市街地の人口は約13万人(ともに1991年)である。ナワブガンジはバングラデシュの中でも地下水ヒ素汚染の深刻な地域の一つであり、ひどいもので1mg/Lを超えるヒ累が地下水から検出されている地域である。

 1)地下水ヒ素汚染状況調査

 調査地点は、現地の技術者と相談の上、ナワブガンジ市街地の広範囲にわたるように10ヵ所のtubewellを選定した。また同時にdugwell(掘り抜き井戸)の水質調査も行った。現地調査は日別変動や季節の変動(特に雨期と乾期による地下水の違い)を見るために、200011月から20024月の問、6回にわたり行った。

 調査の結果、多くのtubewellからバングラデシュ水質基準値(0.05mg/L)を超える濃度のヒ素が検出された。また、ヒ素だけではなくWHO飲料水水質ガイドライン値を超える濃度の鉄やマンガンも検出された。また、一部のdugwellにおいて最大0.014mg/Lという高濃度のウランが検出された。地下水質の日別変動は数日間では見られなかった。季節変動については、ヒ素の季節による最大濃度と最小濃度の比が1.83.4と大きかった。10tubewel1のうち9地点で雨期にヒ素濃度が最大となった。鉄についても同様の傾向が見られたが、それ以外の物質については季節による顕著な違いは見られなかった。地下水中におけるヒ素濃度と鉄濃度の関係については、全体としてヒ素濃度と鉄濃度の間に相関は認められないが、ヒ素が0.2mg/L以下の場合に限るとヒ素と鉄濃度の間に正の相関が見られた。

 2)パイロットプラントによるヒ素除去実験

 ヒ素除去実験プラントをナワブガンジに設置した。プラントの概要をFig.1に示す。プラントは2塔のろ過塔(φ200mm×2,000mm)にマンガン砂を1,000mmの高さで充填したもの(通常処理)、およびその後段にNF膜を設置したもの(高度処理)からなる。実験期間中の処理原水水質は、pH6.56.9、水温約30℃、ヒ素・鉄・マンガン濃度はそれぞれ98190μg/L2,5009,900μg/L455700μg/Lであった。

 実験プラントにおけるヒ素除去性能をFig.2に示す。Fig.2における実験条件は、曝気酸化を行い、酸化槽滞留時間15分、ろ過速度150m/dである。処理原水のヒ素濃度は132μg/L、第一ろ過塔(SF1)通過後、第二ろ過塔(SF2)通過後、NF膜処理後の濃度はそれぞれ4322< 0.5μg/Lであった。現状のプラントにおいては、砂ろ過塔のみでバングラデシュ水質基準値(0.05mg/L)を満たすことができたが、WHOガイドライン値(0.01mg/L)を満たすためには、NF膜を用いた高度処理が必要であった。また、同条件下における鉄濃度は、原水、SF1後、SF2後、NF後でそれぞれ4600140< 1.0μg/Lであった。鉄はSF1後までに97%が除去されている。原水中の鉄はほとんどが2価鉄の状態で存在しており、酸化槽において鉄の大部分が3価に酸化され、その一部がヒ素と共凝集するという機構で、SF1におけるヒ素除去の主要な部分は説明できる。

(5)飲料井戸などの小規模飲料水におけるヒ素除去手法の開発

 1)バングラディッシュにおける飲料水供給装置のヒ素除去性能評価

 2001年〜2002年にバングラデシュNarayanganj地域、Manikgonj地域、Nawabganj地域にて現地調査を行った。現地で使用されている井戸水および建設後ヒ素除去装置から試料を採取し、AsIII)からAsV)への酸化を防ぐため硫酸ないし硝酸を加え、密栓して暗所で保存した後、機器分析に供した。形態別のヒ素濃度はIC/ICP/MS法により、また鉄濃度はICP/MS法により測定を行った。

 2)細鞄表層工学によるヒ素除去方法

 ArsRリプレッサータンパク質はヒ素と特異的に結合すると考えられる。大腸菌の細胞表層の最外層を構築するLamBタンパク質には機能を付加したいタンパク質を組み込んでも膜構成に悪影響を与えず、細胞内から外界に突出している部位(アミノ酸153-154)があることが知られている。アミノ酸153-154を構築するlamB遺伝子にarsR遺伝子を組み込み、いくつかのlamB-arsRキメラ遺伝子作成した。

 検討の結果、pTV+lamB-atsRpTV+lamBの除去量を比較するとlamB-arsRでより多くのヒ素が除去できた。最もヒ素が除去できたpTV+lamB-arsRでは0.5mg/1のヒ素濃度の培養液で最大1.54μgのヒ素除去が確認された。

 3)ヒ素発光センサーの開発

誘導物質のヒ素が添加されるとlux遺伝子の転写が始まり、発光反応するプラスミドを開発し、これを用いた実験の結果、3価ヒ素濃度1μg/l1mg/lで定量性が確認され、現在、水道試験方法で用いられるジエチルジチオカルバミン酸銀吸光光度法の定量限界と同等以上の検出感度を得ることができた。また、5価と3価のヒ素測定では、発光パターンに違いがみられ、すべての濃度において3価ヒ素の方が高く、かつ速く発光することが分かった。このことより、5価と3価のヒ素濃度を同時に測定できる可能性が示唆された。

 4)植物のヒ素吸収能

 現地において入手可能な素材のヒ素吸着能力を調べた結果、加工しない椰子繊維とシュロ竹の毛での吸着能が卓越していた。また、ファイトリメディエーションとして現地でよく見かけるシダ植物のタニワタリのヒ素吸収量が多かった。

(6)他地域におけるヒ素汚染に関する諸問題解決のためのワークショップ

 1)他地域におけるヒ素汚染に関するワークショップ

 初年度の平成12年度に国立環境研究所が主催した国際ワークショップでは、インド、タイ、中国の研究者を招聘し、それぞれバングラデシュ、タイおよび中国における汚染や健康被害の状況と対策について現在の情報を集約した。平成13年度は国連大学と共催でワークショップを開催し、中国の汚染地域の1つである山西省で地域住民検診の担当医師や防疫センターの担当者およびバングラデシュの研究者を招聘し、より広範な視点からの情報収集と議論を深めた。なお、国際的な視点から対応を考えている国際保健機関(WHO)の南アジア地域(SEARO)の担当者や国内からは環境省・環境保健部長はじめ関連研究者にも参加してもらい、約100名の会となった。最終年度である、平成14年度は、平成153月に「国際ウォーターフォーラム」において、前年と同様国連大学と共催で、同テーマのシンポジウムを提案し、その中で同様な活動を行った。国立環境研究所からは中国CDC(前中国予防)医学科学院の環境保健研究所の金所長を招聘したほか、UNICEFWHOなどの国際機関が調査しているデータや取り組みについても報告された。筆者は、金所長と共同で中国で最近行われた全国調査の結果や国立環境研究所における砒素中毒メカニズムに関する研究の動向について紹介した。

 2)衛生教育と社会性

 バングラディシュの衛生状況は;・衛生観念の重要性についての教育および意識の欠乏、・水道施設に関する立案、政策のための政府組織、民間組織、増資者組織、衛生支援活動(WSS)間の調整と協力の不足、・WSS設備需給の欠乏、・不適切な資金運用と貧弱な経済ステータス、・適正なテクノロジー不足、・既存の技術についての理解の不足、・モニタリングシステムの評価能力不足、・適切なトレーニングと教育プログラムの不足、・NGO、政府やその他の組織からの支援不足、・女性に与えられた権限不足などである。とくに、バングラディシュではコミュニティ・リーダーの支配力が強く、指導者(多くは地主)あるいは家長(男性)の意見に従わねばならない。高学歴でも家族計画性のない男社会である。この現状を打開しなければ女性の進出と社会開発は望めないと結論した。

 

 

3 人への暴露からみた、研究概要

 

4.考察

 (1)ヒトヘの健康影響とその防止手法の開発

 インド及びバングラデシュでの飲料水中のヒ素基準は50ppb以下である。調査した52家族の内、10家族がヒ素の飲料水基準を越える水を使用していた。飲料水のヒ素濃度の高い水を利用している家族の尿中のヒ素量は高い値を示し、尿中のそれぞれの代謝物量は良い相関関係を示した。249名の尿中のヒ素代謝物の調査により、14名が肝臓でのヒ素代謝機能の異常が観察された。尿中の総ヒ素量を夫婦間で比較した場合、男女間で濃度的な差が認められず、男女間でのヒ素の代謝機能に差がないことが分かった。年令と尿中総ヒ素量を比較したとき、年令と増加と反比例して尿中総ヒ素量が低下することが観察され、年令が高くなるとヒ素の体外は排出が低下することが示唆された。飲料水中のヒ素濃度と毛髪中へのヒ素排出濃度の間には良い相関性が観察され、飲料水からのヒ素暴露の履歴を毛髪中のヒ素濃度により評価できることが示唆された。

 ヒ素の毒性発現にフリーラジカルの関与を示唆する報告が数多くなされており、これを明らかにするには生体内におけるフリーラジカル産生を評価する方法の開発が欠かせない。本研究において、CmPをスピンプローブとする生体計測ESR/スピンプローブ法がフリーラジカル産生を評価するための有効な手法であることが明らかとなった。さらに、フリーラジカルの空間位置情報を取得することを目的とした生体計測ESR画像解析法により生体内のフリーラジカル産生部位の特定が可能となった。以上、本研究において開発した手法はヒ素の毒性発現機序を解明する上で重要な手法と考えられた。

(2)自然環境汚染状況と生態系影響調査と回復方法

 本年度の研究の結果、ヒ素汚染地帯の室内大気粉じん中に1立方メートルあたり10ngにも及ぶ水溶性ヒ素が付着していることを明らかにした。また、その主体が無機のひ酸であること、少量ではあるがトリメチルアルシンオキサイドも存在していることを明らかにした。この結果は、ヒ素汚染地帯の人の健康影響評価において呼気経由のヒ素曝露にも留意して丁寧な検討を行う必要があることを示すものであり、またこれまで主張されてきた飲料水曝露による肺ガンの発生の可能性にっいても、新たな角度からさらに検討、見直しをする必要性を示したものと考えられた。また、室内大気ヒ素曝露の原因として、大量のヒ素含有灌漑用水の汲み上げ、利用によって、家畜の有効利用(牛糞の燃料としての利用)という生活の知恵が逆にヒ素汚染をさらに拡大させる要因となっている様子を明らかにした。さらに、粉じん中のヒ素の化学形態分析から、周囲の環境中を毒性の強いトリメチルアルシンが飛び回っている可能性もあることを明らかにした。

 以上の結果から、このヒ素汚染地帯の人々の健康を守るためには飲料水からヒ素を除くだけでは不十分であり、灌漑用水の利用や伝統的な生活様式まで含めた根本的な見直し、改革が必要であることを示唆するものと言える。しかし、飲料水比較して灌漑用水は大規模に汲み上げられており、灌漑用水の使用量に対応したヒ素除去を実施することは現実的に極めて困難な状況になっている。一方、牛糞の利用をやめれば、とたんに炊事のための代替燃料確保の問題に突き当たる。当面の即効的かつ実現可能な対策としては、かまどに煙突をつけて閉鎖的な室内空間での暴露量を減らすことが考えられよう。その上で、実際の曝露の状態についてより精密、定量的な調査を行い、リスク評価を進めながら対策の必要性、実行可能な案を検討していくことが今後の重要な課題と考えられた。

(3)農耕地、用水および作物のヒ素動態把握と地球汚染としての寄与に関する研究

 農耕地の表層土、農産物の根の周りの土壌および表層から30cmまでの深度の土壌中の平均的なヒ素濃度と灌概用水中のヒ素濃度の間に非常に良い相関関係が成立し、農耕地のヒ素濃度は灌漑用に使用される地下水濃度に依存していた。表層部分の土壌のヒ素濃度と30cmまでの土壌のヒ素濃度は深度に反比例してヒ素濃度が低下し、灌概用に用いられた地下水のヒ素が表層から深部に浸透することによる影響が示された。タマネギ、ジャガイモ等の果肉部分のヒ素濃度は、皮部分のヒ素濃度に比べて著しく低く、皮の部分へのヒ素の滞留が示唆された。農耕地での農産物の根、茎、葉のヒ素濃度は、根、茎、葉の順でヒ素濃度が低く、根から吸収されたヒ素が各部位に運ばれていることが示され、ヒ素濃度の高い灌漑用水を用いてる農耕地で収穫された農産物の根、茎、葉でのヒ素濃度は高い値を示した。

(4)大容量上水道システムにおけるヒ素除去処理手法の開発と配水体制の研究

 1)地下水ヒ素汚染状況調査

 地下水調査で測定した金属等無機物質・有機物質濃度及び物理化学的指標などを用いて多変量解析である因子分析を行った。その結果、第1因子は正の方向にアンモニアイオン濃度、有機物濃度、鉄濃度が、負の方向に酸化還元電位、硫酸濃度が位置しており、地下水の酸化還元性を表していると考えられた。このことと、地下水中の総ヒ素濃度の増加に伴い3価のヒ素の割合も増加している傾向が見られたこと、またヒ素と共存している場合が多いと見られる鉄についても2価鉄の状態で存在していることから、ヒ素濃度は地下水が還元状態の時に地層中に含まれている水酸化鉄などと一緒に溶出してくる場合が多いのではないかと推測された。しかしながら、前述のようにヒ素濃度と鉄濃度が必ずしも相関関係にはなく、本調査においてはヒ素濃度が高い場合に鉄濃度が低いという地下水も見られた。ゆえに、地下水へのヒ素の混入については、他の要因が影響している場合もあることが示唆された。

 2)パイロットプラントによるヒ素除去実験

 今回の共沈法を用いたプラントは、今後さまざまな種類の原水に対応するため、またヒ素の除去率をさらに向上させるためには、いくつかの点について改良の余地があると考えられた。

 第一には、地下水中の鉄/ヒ素比が低いことがあげられ、このことに対する改良は鉄系やアルミ系の凝集剤を添加することが考えられた。第二に、原水の塩素要求量が大きく、酸化槽におけるヒ素の酸化が十分に行えなかったことがあるが、改良としては、次亜塩素酸の注入量を塩素要求量に見合う量に増やすこと、あるいは他の酸化剤を使う、また曝気と酸化剤の併用や注入場所などの改良点が考えられた。第三に、ヒ素濃度だけではなくマンガン濃度も減少させる必要があり、pHの調整、塩素の添加などが有効であるが、ヒ素の除去に適したpHとマンガン除去に適したpHとは相反するので、例えば前段のろ材を普通のろ過砂としてヒ素・鉄除去、後段のろ材をマンガン砂としてマンガン除去(pH調整あり)と機能を分けることも有効な手段の一つと考えられた。これら三つの要因は独立したものではなく相互に関連性があるので、システム全体のバランスを保った上で総合的な改良を行うことが重要である。また、薬品類の現地入手性やランニングコスト等も考慮する必要があることが明らかとなった。

(5)飲料井戸などの小規模飲料水におけるヒ素除去手法の開発

 1)地下水中でのヒ素の存在形態はすべて無機のAsm)およびAsV)であったため、両者の濃度の合計を全ヒ素濃度と見なした。井戸水から採取した地下水中に含まれる全ヒ素濃度は、すべてバングラデシュ国内の飲料水基準50μg/Lを超過していた。

 Arsenic Iron Removal PlantAIRP)は、井戸水を空気と接触してヒ素の酸化と鉄との共沈殿を促進させた後、上向流砂ろ過槽によりヒ素沈殿物を除去する装置である。2カ所のAIRP共に処理水中のヒ素濃度はバングラデシュの飲料水基準50μg/L2倍ないし8倍超過していた。一方、同じ原理のIron cum Arsenic Removal PlantIARP)では飲料水基準を満たす処理性能を示した。IARPでは上向流砂ろ過槽に加えて下向流砂ろ過槽が設置されているため、上向流では捕捉されない微小のヒ素沈殿物が除去され、高いヒ素除去性能を示したと考えられた。

 German Filter Plantは、地下水を噴霧してヒ素の酸化と鉄との共沈殿を行い、砂充填カラムによる残留鉄分の除去を経た後、粒状酸化鉄充填カラムによりヒ素を除去する装置である。処理水中のヒ素濃度はAsIII)、AsV)ともに検出限界の10μg/L未満であり、WHOの飲料水基準である全ヒ素濃度10μg/Lと同程度の高いヒ素除去性能を示した。ただし、他の地点と比較して地下水原水のヒ素濃度が低いため、高濃度のヒ素汚染に対する除去性能について確認を要することがみれた。

 Pitcher Treatmentは、素焼きの壺にろ過材を充填し複数の壺を直列に配置して井戸水を滴下してろ過する装置であった。Narayanganj地域で調査対象とした装置は、2段の壺から構成され上段に粗砂と鉄屑、下段に細砂と木炭が充填されており、またNagabganj地域の装置は、3段の壺にすべて細砂とレンガ片が充填されていた。処理水中のヒ素濃度は共に国内の飲料水基準を約1.8倍および1.2倍超過していたが、後者の装置については原水のヒ素濃度に対し90%以上の除去率を示した。Pitcher Treatmentによるヒ素除去性能は、壺の段数および充填材の種類に依存する面が大きいと考えられた。

(バングラデシュにおけるヒ素汚染地下水簡易処理技術の性能評価)

 このように、現在バングラデシュ国内で導入されているヒ素除去装置の中には、十分な除去性能を有していない装置が存在することがわかった。本結果を現地のNGOにフィードバックし、各装置のヒ素除去機構に基づいて設計面での改良や充填材の種類の変更などを行い、除去性能の向上を図ることが必要である。また性能面以外での課題点として、現地資材の活用による初期導入コストの低減、装置の維持管理の簡易化、ろ材の洗浄後に発生するヒ素含有汚泥の処理等が挙げられる。

 2)ヒ素発光バイオセンサーに関しては、大腸菌細胞にヒ素が取り込まれる現象をリアルタイムにバイオイメージング可能なヒ素発光センサーを構築できた。3価ヒ素濃度1μg/l1mg/lで定量性が確認され、現在、水道試験方法で用いられるジエチルジチオカルバミン酸銀吸光光度法の定量限界と同等以上の検出感度を得ることができた。

 一方、衛生観念の認識と衛生教育の必要性がみられたが、最近は就学率が向上している。現在は支援活動が活発化しているが、バングラディシュ政府の積極的な関与が求められる。いずれコミュニティ・リーダー(地主・男性社会)の支配力が強く、この現状を打開しなければ女性の進出と社会開発は望めないことが認められた。

(6)他地域におけるヒ素汚染に関する諸問題解決のためのワークショップ

 中国では、無機砒素に汚染された井戸水の利用に伴う健康被害(中毒症状)は明らかに顕在化しているケースも多いが、すでに中国の山西省の例では、現在では砒素濃度の高い井戸の利用を中止し、安全な井戸水を共同で利用するなどの対策が採られているところが多いが、実態には不明な点もある。また、今後の全国的な汚染調査によって新たに検出される地域が出てくる可能性もある。なお、関連して、中国での砒素問題の特徴として、石炭燃焼に伴う室内大気の砒素汚染による中毒例が貴州省で発生している。これらの砒素汚染地域ではフッ素汚染も同時に見られる場合も多く、慢性影響としてはそれらの複合影響も考慮することも必要と思われた。いずれにしても、砒素の慢性影響としては、皮膚症状や皮膚がんのみならず肺癌その他の多臓器に亘るがんリスク上昇も予測されることから、影響の拡大防止や汚染地域での疫学調査と健康管理の充実が望まれる。ただし、そのための医療スタッフや制度的な制約が大きいため、住民への中毒や汚染対策に関する知識の普及やと同時に、医療関係や技術関係を含む専門家の養成のキャパシティビルディングの必要が強調された。

 バングラデシュやインドの西ベンガル地域では汚染地域の人口も大きく、かつ、中国に比較して経済的側面を含め種々の制約が大きい傾向が指摘されてた。砒素汚染は鉱山労働者や住民のケースを含めその他の東南アジア諸国でも新たに問題化しているものもある。なお、UNICEFは、最近、上記のような砒素汚染地域のそれぞれについて、汚染の程度や曝露人口などの情報等を収集するため、積極的に調査を進めてきていた。

 砒素中毒のメカニズムについての実験研究では、ラットなどでは発がん性が確認されてこなかったが、最近の砒素代謝に関する研究では、メチル化のプロセスが人とラットで異なっていることが毒性発現の違いの原因ではないかとされており、人での発がん性が間接的に示唆されていることが示された。

 

5.研究者略歴

課題代表者:安藤正典

1944年生まれ、明治薬科大学薬試薬学科卒業、薬学博士、

現在国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部長

主要論文:

(1) G. Samanta, U. K. Chowdhury, B. K. Mandal, D. Chakraborti, N. Chandraskaran, H. Tokunaga, M. Ando: Michrochem. J. 65, 113-127 (2000).

(2) H. Tokunaga, T. Roychowdhury, N. Chandraskaran, T. Uchino, M. Ando: Appl. Organometal. Chem., 16, 406-414 (2002).

(3) U. K. Chowdhury, M. M. Rahman, M. K. Sengupta, D. Lodh, C. R. Chandra, S. Roy, Q. Quamruzzaman,

(4) H. Tokunaga, M. Ando, D. Chakraborti: J. Environ. Sci. Health, 38, 87-113 (2003).

 

主要参画研究者

(1) Р歛蠡緝充

   ◆内海英雄

1947年生まれ、東京大学薬学部卒業、薬学博士、現在九州大学大学院薬学研究院教授

主要論文:

(1) Matsumoto K, Utsumi H. Development of separable electron spin resonance-computed tomography imaging for multiple radical species: an application to .OH and .NO. Biophys J. 2000 Dec; 79 (6) : 3341-9.

(2) Sano H, Naruse M, Matsumoto K, Oi T, Utsumi H. A new nitroxyl-probe with high retention in the brain and its application for brain imaging. Free Radic Biol Med. 2000 Mar 15; 28 (6) : 959-69.

(3) Han JY., Takeshita K., Utsumi H. Noninvasive detection of hydroxyl radical generation in lung by diesel exhaust particles. Free Radic. Biol. Med., 30, 516-525, 2001.

 

(2): 柴田康行

1954年生まれ、東京大学理学部卒業、理学博士、現在国立環境研究所動態化学研究室長

主要論文:

(1) Determination of arsenic compounds ..., A. Chatterjee, Y. Shibata et al, Anal. Chem. 72, 4402 (2000)

(2) Identification of volatile selenium compounds ..., A. Chatterjee, Y. Shibata, et al., Anal. Chem. 73, 3181 (2001)

(3) Synthesis of arsenical adduct, A.Z.M.S. Chowdhury, Y. Shibata et al., Phosphorus, Sulfur and Silicon, 177, 497 (2002)

 

(3): 課題代表者

 

(4): 眞柄泰基

1941年生まれ、北海道大学工学部衛生工学科卒業、工学博士、国立公衆衛生院水道工学部長、

現在北海道大学大学院工学研究科都市環境工学専攻教授

主要論文:

(1) Y. Magara: Sustainable development of water services industry, Water Sci. Technol., 46 (11-12), 1-6 (2002)

(2) Yuko Sato, Meea Kang, Tasuku Kamei, Yasumoto Magara: Performance of nanofiltration for arsenic removal, Water Res., 36, 3371-3377 (2002)

(3) Shosaku Kashiwada, Yuta Ohnishi, Hidenori Ishikawa, Nobukazu Miyamoto and Yasumoto Magara: Comprehensive Risk Assessment of Estradiol-17, p-Nonylphenol, and Bis-Phenol-A in River Water in Japan, Environ. Sci., 8(1), 89-102 (2001)

 

(5) Щ核槝舵

1947年生まれ、東京大学大学院工学系研究科修了、工学博士、東京大学工学部助手、

東北大学工学部助手、東京大学工学部講師、同助教授、アジア工科大学院助教授(派遣)

東京大学工学部教授、東京大学環境安全研究センター教授、

現在東京大学環境安全研究センター教授・センター長

主要論文:

(1) Ozaki, N., and Yamamoto, K. (2001) Hydralic effects on sludge accumulation on membrane surface in crossflow filttration. Water Research, 35, 13, 3137-3146. J. I.

(2) Oh, T. Urase, H. Kitawaki, M. M. Rahman, M. H. Rhahman, K. Yamamoto (2000):

Modeling of arsenic rejection considering affinity and steric hindrance effect in nanofiltration members, Wat, Sci. & Technol., 42, 3-4, 173-180.

(3) 呉政益、浦瀬太郎、山本和夫 (1998):ナノろ過プロセスでの種類および化学形態の異なる金属の阻止特性、環境工学論文集, 35, 255-263.

   ◆Ю亢粁豹

1948年生まれ、東北大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士、

現在東北学院大学工学部教授

主要論文:

(1) Yoshinobu Ishibashi, Yu Yuemei, Begum Shaila Luxmy and Dor Soma : The Present Situation of Water Supply and Sanitation and the Necessity of Hygienic Education in Developing Countries, Environmental Systems Information Center, Asian Institution of Technology, No. 44/45, 1998.

(2) 大友公房、及川栄作、石橋良信:微生物学的ヒ素除去としての細胞表層工学の適用、東北学院大学環境防災工学研究所紀要、第13号、2002.

(3) 石橋良信他:クリプトスポリジウム-解説と試験方法-、日本水道協会、2003.

 

(6): 兜 真徳

主要論文:

(1) Michinori Kabuto (Edt.): Proceedings of the 1st international workshop on health risks of arsenic pollution of drinking water in South Asia and China. NIES No. 166, 2001.

(2) Proceedings of the UNU-NIES International Workshop: Arsenic contamination in ground water-Technical and policy dimensions, held on 18 February 2002.