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[H−6 地下水利用に伴う広域的ヒ素汚染に関する地球環境保全のための環境計画に関する研究]

(3)農業用水及び農作物におけるヒ素の動態に関する研究


厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所

 環境衛生化学部

安藤正典

 環境衛生化学部

 第2室  

徳永裕司・Tarit Roy Chowdhury・内野正


[合計予算額]

 平成12年〜14年度合計予算額 4,205千円
 (うち、平成14年度予算額 2,187千円)

[要旨]

 インド西ベンガル州の地下水のヒ素汚染地域ではヒ素を含む数百m3に及ぶ地下水が大口径のtubewellを通して灌漑地に放出されている。農業用水を地下水に依存しているインド西ベンガル州Murshidabadd地区Jalangi区画とDomkal区画のヒ素汚染地域の農耕地から集めた土壌、農産物並びにその地域で生活する各家庭から集めた農産物中のヒ素を含む17種類の元素について検討を行った。灌漑用に用いられている大口径のtube-we11の平均的なヒ素濃度は0.085mg/l(n=10)であった。農耕地の土壌中のヒ素濃度の平均値は10.73mg/kg(n=180)、休耕地の土壌中のヒ素の平均濃度は5.31mg/kg(n=172)であった。Jalangi地区とDomkal地区で平均的なヒ素濃度(ng/g)の最も高い農産物はジャガイモの皮(292.62と104)、野菜の葉(212.34と294.67)、アルムの葉(331と341)、パパイア(196.5と373)、米(226.18と245.39)、小麦(7と362)、カミン(47.86と209.75)、ウコン粉(297.33と280.9)、穀物(156.4と294.5)、野菜(91.7と123.2)、スパイス(92.2と207.6)、その他(138.4と137.8)であった。ほとんどの植物の皮はヒ素を土壌中から吸収していた。生鮮食品中のヒ素濃度(ng/g)は、それぞれ、ジャガイモ(5.47と3.40)、タマネギ(1.28と1.28)、ニンニク(0.04と2.53)であった。調理した食品中のヒ素濃度は生鮮食品中のヒ素濃度よりも高かった。
 地下水の大量汲み上げによるヒ素の土壌および農産物への汚染を研究するため、Murshidabad地区のHariharpara区画とRaninagar-II区画を中心に調査を行った。調査した4本の大口径tubewe11による年間の全ヒ素汚染量は6.79kg(平均値:1.79kg、範囲:0.56-3.53kg)であり、土壌への年間吸着量は5.02kg/ha(範囲:2-9.81kg/ha)であった。4本のtubewellで灌漑されている農耕地の表層、植物の根の周りの土壌、地上から0〜30cmの土壌中のヒ素濃度は、それぞれ、14.2mg/kg(範囲:9.5-19.4mg/kg、n=99)、13.7mg/kg(範囲:7.56-20.7mg/kg、n=99)、14.8mg/kg(範囲:8.69-21.0mg/kg、n=102)および14.2mg/kg(範囲:7.56-21.0mg/kg、n=300)であった。灌漑用地下水のヒ素濃度が高くなればなるほど、農耕地のヒ素濃度は高くなった。農耕地での農産物の根、茎、葉および全草での平均的なヒ素量は996ng/g(範囲:0.04以下-4850ng/g、n=99)、297ng/g(範囲:0.04以下-2900ng/g、n=99)、246ng/g(範囲:0.04以下-1600ng/g、n=99)および513ng/g(範囲:0.04以下-4850ng/g、n=297)であった。各植物体中のヒ素濃度は灌漑用水および土壌中のヒ素濃度の増加に応じて増加した。全ての場合において、平均的なヒ素濃度は根、茎、葉の順であった。平均的にヒ素は根から各組織に運ばれ、茎から葉へは減少していた。


[キーワード]

 ヒ素汚染地域、農耕地、灌漑用水、農産物、土壌