モントリオール議定書20周年とフロン回収・破壊法改正 記念シンポジウム

環境省地球環境・国際環境協力オゾン層保護についてオゾン層の状況や取組の概要シンポジウム「地球環境とフロン」
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モントリオール議定書20周年とフロン回収・破壊法改正記念シンポジウム 『地球環境とフロン』
2007年10月5日 東京国際交流館

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パネルディスカッション議事録

司会 お待たせいたしました。これよりパネルディスカッション「フロン回収の徹底について」を開始いたします。コーディネーターは、東京大学名誉教授の富永先生です。富永先生は、日本のオゾン層問題の第一人者で、我が国で最も早くからオゾン層破壊問題を研究されてきました。富永先生は、環境省の中央環境審議会臨時委員、フロン類等対策小委員会委員長として。また、環境省の検討会である成層圏オゾン層保護に関する検討会・科学分科会の座長として、専門的な知見から日本のフロン対策を推進されております。それでは富永先生、よろしくお願いいたします。

富永 ご紹介いただきました富永でございます。このフロンとオゾン層破壊問題に30年以上かかわってきた者として、本日司会の役を仰せ付かりました。大変光栄に存じます。これからの2時間、よろしくお願いいたします。  まずパネリストの方々を私からご紹介したいと思います。まず私の左に座っておられます、日本青年会議所の奥原会頭。奥原様は、事業者の立場からフロン問題にかかわってこられました。

奥原 ただいまご紹介いただきました、社団法人日本青年会議所の会頭を務めております奥原でございます。青年会議所は、20歳から40歳までの人間が所属しておりまして、全国に714の各地青年会議所に4万名が活動をしております。大体中小企業の経営をしている人間、あるいは勤め人もいますが、ほぼ事業をやっている傍ら、まちづくり、いい国を作ろうということで、運動もさせていただいております。事業者としての見地、そしてまちづくりをしている見地から、話をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

富永 それではお隣ですが、国立環境研究所総合影響評価研究室長の小野先生。小野先生は、大気汚染とか紫外線、それから地球温暖化などの健康影響の研究がご専門でありまして、国の内外で大変ご活躍でございます。

小野 国立環境研究所の小野でございます。今日はフロン対策ということですが、なぜそもそもこういうことをやらなければいけないか。やはり、私たちにとって、私たちの健康、あるいは他のいろいろな影響が出てくるんだという観点で、少しご紹介をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

富永 そのお隣は西薗先生ですが、NPO法人、ストップ・フロン全国連絡会の代表を務めておられまして、また群馬大学の先生、准教授でもおられます。西薗先生は、このストップ・フロン全国連絡会を通じて、フロンの排出禁止を中心として、今まで活動をしてこられた方でございます。

西薗 こんにちは。今ご紹介いただきました西薗と申します。ストップ・フロン全国連絡会という市民の立場から、このフロン問題を考えるということで、1992年ごろから約15年にわたってかかわってまいりました。それで、私どもは海外で活動する時には、ジャパン・オゾン・セーブ・ネットワーク、略称でJASONという名前を使っております。これはご存じかと思いますが、『13日の金曜日』という大変怖い映画の主人公の名前なのですが、多分海外の方にはインパクトがあるのではないかということで、いつもフロン問題に対する一つのお目付け役として、少し尊大な言い方ですが、頑張れたらいいなと思って今までやってきております。よろしくお願いいたします。

富永 次は、衆議院議員の山本公一先生。山本先生は、環境・農林水産政策などに精通しておられまして、このいわゆるフロン回収・破壊法ができました時に、中心になって大変ご尽力いただいた方でございます。

山本 ご紹介いただきました衆議院議員の山本でございます。私自身、14年間政治をやっておりまして、フロンの回収・破壊法案の立法に携わることができたということを、政治家冥利に考えております。今日はそういう立場で、お話をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

富永 最後に、環境省地球環境局の南川局長でございます。南川局長は、オゾン層破壊や地球温暖化などのいわゆる地球環境問題を担当する部局の局長でありまして、また以前、オゾン層保護法を作る時にも、大変ご尽力になったと伺っております。

南川 環境省の南川でございます。よろしくお願いします。20年前でございますが、富永先生のご指導を受けながら、オゾン層保護について、日本における制度化に取り組みました。20年たちまして、今はオゾン層の保護と地球温暖化の防止という両面から、この問題に取り組んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。

富永 ありがとうございました。それでは、早速パネルディスカッションに移りたいと思います。先ほどローランド先生の特別講演の中で、このフロンとオゾン層問題のメカニズムと申しますか、サイエンスの問題、それから、モントリオール議定書という国際的な対応、そういった歴史・現状について、大変詳しく伺ったわけです。それから、今回はモントリオール議定書20周年ということですが、同時に10月1日から改正されたフロン回収・破壊法の施行がございました。ですから、それを記念するという意味もありまして、このパネルはどちらかというと、回収・破壊と、その促進一つの重点がありますので、ローランド先生のお話から、回収の話題への橋渡しというところを、最初にご説明したいと思います。

panel-01

まず、これは私ども東京大学のグループが、いわゆるCFCの12、11、それから113を1970年代からずっと測ったデータです。地球環境の中のCFCが、70年代は非常に早く増えてきたものが、この赤い印で示した、最初のモントリオール議定書の規制が始まった頃に急に大気中の濃度の増え方が鈍っております。これは明らかに、モントリオール議定書という国際的な規制によって、大気中に放出されるCFCが減ったということです。それから更に見ていきますと、95〜96年あたりにもそういうところがあって、それで現在は先ほどの話にもありましたように、寿命が長いものですから少しずつ減っていくわけです。CFCについては、このように少なくとも先進国からの全廃、それから、途上国も間もなく全廃ということで、新規の放出よりもむしろ作った後、冷媒などとして機器の中に残っているものをどうするかという問題、これが一つ残っています。

panel-02

CFCはそういうわけで減ってきたわけですが、その代替品として開発されているこのHCFCとかHFC、特にHCFCですが、これを見ますと、このように、90年代から現在にかけて、CFCに代わって急に増えているという状況があります。HCFCの22と141bは、モントリオール議定書の新しい改正の中でも出てきましたけれども、今までですと、規制は掛かっていますが、全体が排出されなくなるのはだいぶ先の方なんですね。そういう意味で、HCFCの寄与が、オゾン層破壊の面でもこれからまだ続いていくという状況にありますので、このHCFCの全廃が、できるだけ前倒しにされるということも重要であります。それから、先ほどと同じように、やはり作られたものが機器からできるだけ排出されないような努力が必要であるわけです。

panel-03

次の画面を見ていただきますと、二つの図がありますが、この上の図の赤い帯の中に入っていますのは、CFCとHCFC、つまり、オゾン層破壊物質の中の塩素や臭素の成層圏における濃度を、ここまでは実際の値で、これから先は予測でかなり幅は広いのですが、今後どういうふうにこれが減っていくかということを、大体2100年ごろまで示したものです。それに対して下の方は、地球全体としてのオゾン量がどういうふうに推移するかということで、これも非常に幅が広いシミュレーションですが、この黒い線で示しているのは、実際に減ってきているというデータで、これは先ほどのローランド先生のお話にもありました。  
今後については、オゾン層の回復ということから見ますと、CFC、それからHCFCの規制がきちんと行われていけば、いずれこの今世紀の後半には、オゾンホール出現以前の状態に回復するであろうという予測になっております。ただ、先ほど申しましたように、今後寄与すると考えられるHCFCへの対応によっては、回復が少し早くなったり、遅くなるということがあるかもしれませんが、これはいろいろな不確定要素を含んでおりますので、大ざっぱにこういうことだということであります。

panel-04

最後の画面でもう一度同じものをお目に掛けますが、ここで指摘したいのはHFCの134aでして、これはオゾン層に対しては無害です。ですから、代替品として最後にはここに行き着くと最初は考えられていたわけです。ご覧のように、これは、この上の二つのHCFCよりももっと早いスピードでどんどん増えています。しかし、これはモントリオール議定書では、オゾン層を壊さないので対象になっていないのですが、これらすべてのいわゆるフロン類、CFCも含めて、すべてのフロン類は、温室効果ガスでありますので、今問題になっている地球温暖化という意味では、HCFC以上にHFCが増えているということは大変大きな問題です。しかし、HFCでは、生産全廃という議論ではなく、むしろ排出をできるだけ抑えなければいけないという議論です。そこで、この他のものも含めて、当面、回収、あるいは破壊ということが、オゾン層保護という面だけではなくて、地球温暖化を防ぐという意味でも重要で、それが今回のパネルで回収とか破壊という問題が中心になってくる一つの背景であると申し上げたいと思います。  
今日のパネルは、2部構成になっておりますが、最初の部分では、もう一度このフロンとオゾン層破壊、地球温暖化との関係、これは詳しくは先ほどの特別講演の中にもありましたので、繰り返しではなく一部補足するような形で、また、地球温暖化との関係ということで、パネリストの方にお話をお願いいたします。  
それから、後半第2部。今回はこちらに多くの時間を割くことになりますが、フロンを今申しましたように回収したり、あるいは破壊するということの意義、それから、それが今のようにオゾン層破壊だけではなく、温暖化の防止も非常に重要だといった重要性、また、そこでは市民や事業者がどういう役割を持っているか、その辺を中心にして、議論を進めさせていただきたいと思います。  
それでは、早速第1部に入ることにいたします。既にフロンとオゾン層破壊とか、地球温暖化のサイエンスのようなことは、先ほどの話でもありましたので、ここでは小野先生に、オゾン層破壊が人の健康や動植物の生態系にどんな影響を与えるのかということにつきまして、お話をいただきたいと思います。

小野 最初にパワーポイントを使って、どんな影響が出るかということでお話をさせていただきたいと思います。フロンが、オゾン層破壊が、どうして健康に影響があるかというと、その多くはUV、有害な紫外線を増やし、それを通して、人にいろいろな影響が出てくるだろうということが分かってきています。  
ではオゾンが減った時に、紫外線が増えると、これは一般的に皆さんご存じかと思うのですが、実際のデータでどんなふうになっているかということが、いろいろご関心があるかと思いますが、非常に分かりやすい例は、やはり皆さんお耳にすることがあると思いますが、いわゆるオゾンホールが出来た時に、実際に紫外線がどうなっているかということで、これは南米のちょうど一番南の方にございますが、オゾンホールが出来た時に、南米の一番南の方にいくつか大きなまちがあるのですが、そういったところにオゾンホールが掛かった場合です。すると、オゾンが320DUぐらいの時には、UVインデックスというのは大体5ぐらいです。それが2日後にオゾンホールがちょうど南米の突端に掛かると、オゾンが半分くらいになり、もうその時には紫外線が倍ぐらいに増えるということで、これはオゾンが減ること、増えることによって、紫外線が大きく影響を受けるという典型的な例であります。

panel-05

あともう一つ、私たちが日本などで身近にオゾンと紫外線との関係を見ることができるのかということですが、実はオゾンというのは、季節変化を持っています。それから紫外線というのは、太陽が高くなると強くなります。ですから、単純に紫外線とオゾンだけを見ていくと、なかなか分かりにくいのですが、いくつか細工をしてみますと、ここにございますように、オゾンが月ごとに変動し、それに対応して、紫外線が非常に奇麗に変動します。ですから、私たちのような中緯度にある日本でも、オゾンの変動というのがそのまま紫外線に反映しているというデータでございます。

panel-06

今のがオゾンと紫外線ということですが、では本当にオゾンが減っているかということで、これは先ほどもお話がありましたので、ちょっと簡単にしますけれども、全球的には過去30年、40年で、コンスタントにオゾンが減ってきて、また最近少し回復に向かいつつあるということになります。

panel-07

ただ、紫外線の方はですね、オゾンの方ほど簡単ではなくて、いろいろな気象条件や地域の特性で変わってくるところがございますので、こういうふうに各地の結果を見ていますと、それぞれの地域で紫外線が増えたり減ったりするということで、いろいろな細工をするとオゾンが減ることによって紫外線が増えるというのは観測はできるのですが、普通の観測結果だけではなかなか分かりにくい部分がございます。

panel-08

これが日本の例ですが、日本の場合も、過去50年ほど、オゾンの観測がされておりまして、コンスタントにずっと減ってきていまして、最近ちょっと回復気味にあるという結果です。一方、紫外線は、トータルで見ますと、オゾンがちょっと増えている時期にもかかわらず、紫外線も実は増えているということで、単純に見ますと、気象条件やさまざまな条件で、なかなか分かりにくくなっています。しかしながら、オゾンが減ると紫外線が増えるということが、これまでの知見で分かっております。

panel-09

先ほど富永先生から、オゾンが将来どういうふうになるかというお話をされましたが、それに対応する形で、紫外線については大体今ぐらいがピークで、今後、オゾンが回復することによって、多分紫外線が減っていくだろうと見られております。ただしこれは、北半球と南半球、あるいは極域とでかなり違うということが見積もられております。

panel-10

あといくつか、実際にどんな影響があるかということをご紹介したいと思います。これは30年ほど前のデータで、アメリカの白人のデータです。緯度帯ごとに紫外線の強さを横軸にして、それぞれの地域での皮膚がんの発生率を見ると、白色人種の場合には、皮膚がんと紫外線の関係が見えることが分かります。ただ、日本人などの有色人種の場合には、全体として皮膚がんの発生率が低いということですので、幸いというか、日本人の場合には、ここまではっきりとした紫外線と皮膚がんの関係というところまでは分かっておりませんが、さまざまな研究でやはり紫外線の増加によって、皮膚がんが増えるだろうと言われております。

panel-11

これがその一つですが、これは1998年に出されたUNEPの報告書にあるものなのですが、将来いろいろなシナリオによって、皮膚がんがどういうふうになるかということで、今のところ一番下の新しいもので見ればいいのですが、2050年ぐらいに、皮膚がんのピークが来て、その後回復するだろうと言われています。ここで注意しなければいけないのは、先ほどのグラフにありますように、紫外線は今が大体ピークで、これからずっと減少していくというふうに見られているわけですが、皮膚がんについては、やはり30年、40年ぐらいの遅れで、これからまだ増えるんだということはやはり注意しなければいけないと思います。

panel-12

紫外線による影響として、皮膚がんのほか、目への影響、免疫への影響がありますが、目については白内障や翼状片といった病気が、紫外線の増加によって増えるだろうといったいくつかの研究が出てきております。

panel-13

もう一つ、免疫抑制ということで、紫外線を当てることによって、免疫が抑制され、それによっていろいろな病気が起きるのではないかということで、これは非常に有名なクリプケさんという方の実験結果なのですが、紫外線を照射すると、皮膚がんが出来ます。実は紫外線によって作られた皮膚がんというのは、同系のマウスに移植しても拒絶されてうつらないんですね。ところが、紫外線を当てておきますと免疫が落ちます。ですから、拒絶できなくなって定着するということです。つまり、紫外線を当てることによって、免疫が落ち、それによって、さまざまな悪影響が出るということですね。実際にはいくつかございまして、これははっきりした因果関係までは分かっていないのですが、熱帯地方でさまざま感染症、例えば、結核やマラリア、エイズなど、もちろん低栄養や貧困といった問題もありますが、免疫抑制がかかわっているのではないかと言われております。

panel-14

トータルでどれぐらい紫外線の影響があるかということを、WHOで見積もっております。死亡という形で見ますと、ここにございますように、がんが圧倒的です。がん以外は、ほとんど死亡には寄与しないのですが、もう一つここにDALYsという形で、これは健康な方が亡くなった場合には1年と計算します。ただし、病気、例えば白内障ですと、失明した場合には、1年じゃないけれど、0.8ぐらい亡くなっているのと同じような換算をします。ですから、どれぐらい負担があるかということで言いますと、こういった形で見ますと、皮膚がんと同様に、目への影響や、日焼けといったものが大きな影響があるという形になります。

panel-15

もう一つ大事として、皮膚がんやがん疾患というのは、紫外線が多くなると影響が出ますが、紫外線がずっと少なくなると、リスクはどんどん減っていくだろうと言われています。実はあまり日本では問題にはならないのですが、世界的な規模で見ると、紫外線が不足して、ビタミンDの合成が足りなくなっている地域がまだあるということが最近分かってきています。ですから、こういった形で、今私たちの場合にはこの辺(資料中の右寄り部分)を考えておりますので、こちらのこと(資料中の左寄り部分)はあまり私たちにとっては現実に問題はないのですが、一般的にはこういうU字の形だということです。

panel-16

最後に、健康が私の専門ですので、そちらを中心にお話ししましたが、それ以外にも、さまざまな影響が出るだろうと言われております。ここにございますように、例えば陸上、もちろん土壌中も含めて、さまざまな生物にUV-Bの影響が現れ、単独の種がやられるだけでなくて、種の構成、生態系が変わってくるということが、陸上や水圏で起きると言われています。  

それから、その他には思い掛けないところですが、いろいろな材料も紫外線によってやられます。皆さん方が一番お気付きになるのは、多分車などですね。使っているとだんだん外装が悪くなりますね。この大半は紫外線の影響ということでございます。もう一つ、大気ですとか、地球の循環そのものにも影響するだろうと言われています。  

あと、最後になりますが、オゾン層破壊による影響というのは、フロンの温室効果ガスのところも含めまして、温暖化とも関係するということで、こういったところまで考慮した形で影響を見ていく必要はあるだろうと言われております。  

いろいろなことをバラバラと申し上げましたが、オゾン層破壊によって紫外線が増えると、その影響は、現在がピークではなくて、これから数十年掛けていろいろな影響が出てくるということで、これからやはり気を付けていく必要があると考えております。

富永 ありがとうございました。オゾン層破壊がいろいろな影響を起こすということですが、それに対する対策ということで、モントリオール議定書におけるフロン対策、それから温暖化との関係、これについて南川局長にお願いします。

panel-17


南川 モントリオール議定書というものが、ウィーン条約に基づいて1987年、20年前に採択されております。現在では、191か国がこれに締結をしておりまして、入っていない国というのは、例えばイラクとか、東ティモールといった国でございます。このモントリオール議定書ですが、CFC、それからHCFCを含め、さまざまなオゾン層破壊物質について、生産量と消費量を明確なスケジュールに従って、段階的に削減していき、最終的には全廃しようというものであります。  
先進国・途上国、別々のスケジュールを適用しております。強力なオゾン層破壊物質でありますCFCについては、先進国では96年に既に全廃されております。途上国では、2010年の全廃に向けて、現在削減活動が行われております。また、CFCの代替物質であるHCFCですが、これもオゾン層破壊効果を持っておりまして、先進国では96年以降凍結、そして2020年に原則全廃ということで、現在その削減の活動が行われております。途上国は、まだCFCの削減中ということで、HCFCについての規制はございません。  
ただ、こうした状況の中で、先般9月ですが、モントリオールで締約国会議が開催されました。そこでは、特に途上国のHCFCの規制強化が話題になりまして、この下にございますように、2040年という全廃期限があったわけですが、それが2030年に全廃、しかも、量も段階的に減らしていくといったことが決められたわけでございます。20周年という節目に、重要な合意が得られたと考えております。

panel-18

日本では、88年に議定書を締結するための国内法として、オゾン層保護法というものが制定されました。私、当時担当をしておりまして、そのころは地球規模の問題という概念がございませんでした。越境汚染ということかと思いましたがそうでもないということで、今では信じられないことですが、これが環境問題かどうかということを、非常にまじめくさって議論したことを覚えております。この法律ができましてから、日本が議定書に加入したわけでございます。この法律の下でCFC、HCFC、しっかり生産量・消費量の規制を行っております。どんどん段階的に両方とも減ってきています。このうち、CFCについては、96年に原則全廃をしています。HCFCにつきましても、議定書の目標と要求というものを大幅に超えて削減を達成しておりますし、今回一部規制強化がございましたが、これもクリアできるということでございます。

panel-19

これは日本におけるフロンの出荷量でございます。CFC、HCFC、それからこれはモントリオール議定書の規制物質ではありませんが、代替物質であるHFCというものについての量を示しております。全体としてフロンの出荷量は、90年代の前半に大きく削減され、その後は徐々に減ってきています。現在は、HCFCが主でございましたが、徐々にそれがHFCに移行しているということでございます。HFCは、モントリオール議定書の対象ではございませんが、京都議定書の温暖化の規制の対象になっています。

panel-20

この流れですが、フロンであるCFC、HCFCについては、オゾン層破壊効果と、それから地球温暖化効果もございます。この二つは、オゾン層保護の観点からのモントリオール議定書の対象物質でございます。代替フロンであるHFCは、京都議定書において削減対象になっておりまして、議定書ごとの住み分けがあり、こういった形の規制が分けて行われています。こういったことで、HCFCのみならず、HFCも減らしていく必要があるわけですが、ノンフロンになかなか転換しにくいところもございます。したがいまして、私どもとしては、CFC、HCFCのみならず、HFCについても、この温暖化問題という観点から、その代替物質、代替技術を開発すると共に、回収・破壊が重要だと考えております。

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京都議定書では、ご存じの通り、90年を基準にして6%削減する必要がございます。残念ながら現在、約8%の増でございます。これにつきましては、マイナス6というのはなかなか達成困難ということもございまして、森林の整備による吸収源を3.8%、政府による途上国への技術協力によって1.6%ということで、マイナス0.6とほぼトントンにしようということが、実際の目標ではございます。ただし、原発の不調、更にはなかなか排出量が減らないということで、現在その削減に努めているところでございます。HFCのウェイトは、全体の排出量から見ますと、1.1%から1.5%という貢献をしており、それ自身は決して大きな数字ではございません。ただし、今後もHFCが増えていくということを考えますと、その削減を図っていく必要があるということでございます。

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このため、政府において、京都議定書の目標を達成するための計画を作っております。そして、HFCなどの代替フロン等3ガスについて、追加対策として三つの課題を挙げております。一つ目が、冷媒として機器に充てんされたHFCの回収をしっかり行うということでして、そのために今般フロン回収・破壊法の強化を行ったところでございます。  

二つ目が、代替物質の開発や、代替製品の利用の促進でございます。また三つ目が、産業界での計画的な取り組みの推進ということでございます。このようにフロン対策は、オゾン層のみならず、温暖化防止ということから重要でございますし、大変対策が急がれていると考えているところでございます。

富永 ありがとうございました。最近温暖化の問題とかいろいろ出てくる中で、オゾン層破壊については、だんだんに基礎的な部分が忘れられているということがございます。今日は、モントリオール議定書20周年記念ということもあって、特別講演と、今までこの第1部でパネリストにお話しいただいた部分で、かなり基本的な事柄を再確認することができたという意味があったかと思います。それを踏まえて、ここから後は、回収・破壊という問題にもう少し絞って、またいろいろなお立場からパネリストのお話を伺いたいと思います。  

まず西薗先生に、フロンはいろいろな用途に使われておりますが、このフロン対策については、市民としてどういう取組み、役割というものをこれまで考えてこられたかを中心に、お話を伺いたいと思います。

西薗 私は、先ほどご紹介いただいたとおり、大学に籍を置いておりますが、もうお一方、高崎経済大学という、私のいる群馬大学の隣の大学の石井史先生という方が、もうお亡くなりになられておりますが、いらっしゃいました。私どもは、フロンの専門の研究者ではございません。もともとは重金属の環境汚染についての研究をしておりました。大学でいろいろ教えてくる中で、この大気科学の問題、フロンの問題が、大変な問題であるということを授業の中でいろいろ下調べする中で感じておりました。
そうした中で、1990年ごろのお話ですが、実際の事業者にいろいろとお話を聞きますと、日本は非常にたくさんフロンを使っていて、確かに生産規制はかかっているけれども、どうも使い方が十分うまくやっているとは言えないんじゃないか、という疑問を持っておりました。

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これはフロンの用途についてのUNEPのデータですが、ちょうどローランド先生がオゾン層の破壊について研究された頃の74年には、ご覧の通り、黄色で示されたエアゾール噴射剤が非常に多かったのです。だいぶ飛びますが、90年代に入りますと、噴射剤はだいぶ減りまして、これは先ほどのローランド先生のお話にもあった通りです。そして、こちら、水色の冷媒、それから、この発泡剤というのは、断熱材、スポンジのようなもので建物の例えば壁の中や冷蔵庫の壁の中に入っているわけですが、そういうものが増えてまいりました。  
これが91年になりますと、もうモントリオール議定書は動いておりますので、どんどんCFCが減りまして、こちらのHCFC、あるいはHFCに変わってくるわけです。もうこれは97年、今から10年も前なのですが、この時代になりますと、これは世界の中での動向ですが、3分の2ぐらいが冷媒用途なんですね。ですから、もちろん他の分野もゼロになったわけではありませんが、やはり近年は冷媒用途に対する対策をどうするかということが、非常に重要になっていることが分かります。

panel-25

こちらはですね、日本の国内での冷媒の転換の様子の推計です。こちらは環境省・経産省あたりが出したデータだと思います。この黄色い部分が、先ほどからお話に出ておりますHFC、新しく使われるフロンですね。それに対しまして、当然規制の掛かっているCFCはほとんど既になくなっておりますが、現状では、HCFCが切り替わる途中という感じでしょうか、まだだいぶ生き残っている段階です。ただ、これでやっぱり気になりますのは、結局冷媒用途のフロンは、種類は変わるけれども、総量としては、恐らくなかなか減らないだろう、つまり、我々の今の生活というのは、なかなかフロンからは抜けられないだろうということが言えるかと思います。  
私は群馬に住んでおりますので、海なし県ですが、おいしくお刺し身もいただいております。おいしくビールも飲ませていただいておりますが、これも全部フロンのおかげです。空調は、これは先ほど来のこの年のような暑さがありますと、空調もなしというわけにいきませんが、やはり今の日本において、フロンがどういう活躍をしているかというのは、食品の低温流通ですね。ここでは明らかに不可欠な用途ですし、食品に限らず多くのものの製造段階でも、その低温技術というのは、プラントの中では不可欠なものになっていると思います。そういうことを考えますと、結局ここをフロンでないものに置き換えられる部分というのは、当然努力していくべきだと思いますし、それは適切な転換を図っていくべきだと思いますが、かなり長い期間にわたってフロンをきちんとコントロールしていく必要があるだろうということが分かってまいります。

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どんな分野があるのかを見てみますと、これは、今どのぐらいフロンが国内にあるかというごく大ざっぱな数字です。何万トン単位のごく大ざっぱな数字ですから、細かいところはともかくとしまして、カーエアコンで4万トンぐらい、家電関係で9万トンぐらいあるだろうと。さらに、もっと大きな機械があるんですね。この建物の空調も恐らくフロンを使っている可能性がありますが、そういうもので10万トンぐらい。これは機械が大きいですからね。それから、先ほど来申し上げている、例えばスーパーマーケットとか、コンビニとか、そういうところの食品流通もしかりです。そして、この黄色で書いたところは、ちょっと分野が違う、法律的には今はまだ規制がかけられない部分なのですが、先ほどの断熱材、これもかなりたくさんありますね。スプレー噴射剤は減っていますが、皆さんもご存じかと思いますが、ダストクリーニングスプレー、ほこり飛ばしのスプレーですね。あれが実はフロンを使っているものが多いんですね。これは量としては分かりませんが、まだ世の中にはあるということです。  
日本はフロン大国ですから、今日本国内に30万トンからのフロンを抱えています。これを全部排出してしまったらという懸念が非常にあるわけです。これは私がこの運動を始めた15年前も変わっておりません。そのころはCFCが主体ですから、むしろもっと悪い状況だったと思います。

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我々、市民としてでは何ができるかということで、市民ですから、大変過激なこともいろいろさせていただきました。今思いますと、よくこんなことができたものだなと思いますが、『ニューヨークタイムス』に意見広告を出しました。日本国内にあまりインパクトはなかったかもしれませんが、むしろ日本にもそういう活動があるんだなということで、アメリカの方からはいくつか反応がありました。

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これは、これが前代表、創始者の石井史先生ですが、今から10年前のモントリオールの議定書会議ですね。これは決して私はイチゴが嫌いだと言っているのではなく、この下に書いてありますが、メチルブロマイド、これはフロンではございませんが、農業用途で使っているやはりオゾン層破壊物質でして、これを何とかなくそうという、そういう訴えをしているところであります。

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一方国内でも、こういう垂れ幕を持って、これは当時の岩垂環境庁長官ですが、長官室までお邪魔しまして、子どもたちをだしに使ってという市民運動がよくやる手なんですが、子どもたちの描いた絵や作文を、環境庁に持ち込んでアピールをするというような、こういう一つの市民運動的なアピールですね、これもやりました。

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しかし、そういう反対運動だけで物事はやっぱり解決しないということで、まず海外のNGOの方が、我々よりも先進的な活動を、当時は組織的な活動をしておりましたので、海外のNGOの方に来ていただきまして、いろいろ手法を教えていただきました。大変びっくりしましたね。日本ではまだそういう市民運動というものがきちんと定着していないような時期ですから、その中でいろいろなデータをローランド先生ですとか、富永先生のような方の研究データをきちんと整理して、これをどういうふうに政策に反映していくかという、一つの政策提案型ですね。そういう市民運動ができるんだなということを、このころに我々も非常に初めて知りました。

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その中で、こういうことをやはり多くの方に共有していくためには、なるべくそういう機会をたくさん作って、しかも分かりやすい形でということで、この神戸宣言というのはその一つですが、神戸で開いたこのシンポジウムでは、フロンの排出禁止であるとか、あるいはできる部分は脱フロンをしていこうとか、そういう社会を作っていこうという一つの宣言を出したりもいたしました。

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ただ、実際に行動に移すということがやはり必要ですから、阪神淡路大震災のときに、非常にビルがたくさん壊れまして、その時に、取り残された物質がやはりありましたので、そのビルの中に残されている空調機器とか、そういうものからのフロン回収にご協力いただいたというか、業者の方に本当に頑張っていただいたという、そういう時の絵でございます。

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それで、やっぱり一番大事なことは、先ほど来申し上げていますが、我々がフロンを回収するわけではありません。排出禁止をするわけではありません。実際にハンドリングしている方がやるわけですから、その事業者の方が実行可能なシステムづくりというのをしなければいけないだろうということを常に思っておりまして。これは今から13年も前になりますが、この桐生市というのは、私が住んでおりますまちです。ここで建物が壊れる時に、実際にフロン回収をやってくださいということで、その事業者の方にもご協力いただいて、こういう形でやったりもいたしました。これは日本では本当にハシリだったんだろうと思います。

panel-34

そういう中で、やはりこれは国の政策としてこういうことを決めていかなければいけない、つまり、法律にしていかなければいけないだろうということを、私どもは感じまして、じゃあこれはやはり中央省庁に乗り込むしかないと、随分環境省にもお邪魔しました。また地元の方にですね、この時には業界の方、実際に関係ある自動車や家電、設備関係の方にご登壇いただきまして、そしてまた、こちらは自民党の谷津先生、それから今は民主党にいらっしゃいますが、広中和歌子先生のお二人にも来ていただきまして、とにかく国政の場でこれを取り上げてくださいというアピールもいたしました。

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その結果、我々がやったからというわけではないのですが、例えばそういうことに非常によく反応してくださったのが行政ですね。日本には当時3,000の市町村が、今は合併で減りましたが、3,000の市町村が一般廃棄物、普通のごみの中で粗大ごみとして冷蔵庫を扱っていました。冷蔵庫の中のフロンは、ほんのちょっとなので、集めてもものすごく効果があるわけではないのですが、何しろ皆さんのご家庭にあるものですから、冷蔵庫をやるということは、非常に皆さんの認識が高まるわけですね。

 
そういう中で、オゾン層保護法自体は、生産規制には非常にいい法律で、先ほど来その効果は語られておりますが、残念ながら排出に関しては禁止がないんですね。その冷蔵庫が一つの契機になったと思いますが、3,000の自治体のうちの半分以上が、家電リサイクル法以前に、自治体が回収をやるという活動が起こりました。これはすごく大きな影響力があったと思います。その結果、家電リサイクル法というものが2001年に施行されましたが、この時にフロン回収はきちんと行われるようになりました。  

次が、私どもが一番深くかかわった法律になりまして、このお話は後で山本公一先生から、その成り行きについてはお話があると思いますが、10万トン抱えている業務用のもの、あるいは4万トン抱えているカーエアコンを何とかしようということで、このフロン回収・破壊法というのが現在は動いております。そして2007年10月にまさに改正が今なされたことになります。  

そして、自動車リサイクル法は2005年からですので、第2種特定製品の部分がここに移行して、現在カーエアコンはこちらの方で動いています。つまり、現在の日本の法律は、今のような三本立てで排出禁止関係、それと生産規制のオゾン層保護法がリンクした形でフロン対策が進んでいます。これも一つの到達点だと私どもも評価しております。また、これからもこの体制がもっと充実されるように、私どもも協力できるところはしていきたいと思っております。

富永 ありがとうございました。フロンの排出の禁止、あるいは抑制という意味で、いろいろな法律ができるにあたっての市民の立場からのお話を伺ったのですが、国の方の立場から、山本先生に一つお願いしたいと思います。

山本 今、西薗先生からお話がございました、フロン回収・破壊法案。私、これができます時に、ちょうど自由民主党の環境部会長をやっておりました。当時、フロンの問題について、西薗先生を始めNGOの方々が、環境部会長ですので再三再四ご陳情に見えていらっしゃいました。当方も、2000年の2月に部会でこの問題を取り上げましたところ、自主的にやっていますよねと言いながら、回収率が低いということが、議員の間で話題になってまいりました。  

その折も折、自由民主党の当時の政調会長から、議員立法をやれないような部会なら、もうやめてしまえというような厳しいお話がございました。私も、そういう後押しもございますので、フロンを少し研究してみよう、フロンのいわゆる回収・破壊法案を研究してみようと言って、ことを起こしました。  

当時、民主党さんも既に法案をお作りになっていました。私ども、拝見をいたしました。監視と罰則だけではたしてフロンの回収というのがうまくいくのかな、というのが率直に受けた感想でございました。政権与党である自由民主党がやるのであれば、実効性の上がるものにしたいと、その思いが私どもに強くございました。  

さまざまな現場にお伺いをし、そして自由民主党の部会にも、これは自由民主党にとって初めてのことでしたが、西薗先生たちに最初から部会のヒアリングの舞台に入ってきていただきました。最初から自由民主党の立法作業の中に、NGOの方々に入っていただいたということ、これが後々この法案ができ上がっていく過程において、大変大きな力になりました。業界に対して、役所に対して、そしてマスコミに対して、大変大きな力になりました。そして、何よりも立法化しようとする議員にとって、非常に大きな後ろ支えになっていただきました。  

正直この法律を作りますのに1年半掛かりました。さまざまな反対がございました。党内からも異論がございました。役所間でも異論がございました。その時に、やめるなと言ってくれたのは、西薗さんたち、そして今少し役が偉くなりましたけれども、環境省の若い、当時の若い官僚たちでした。そういうこのフロン回収・破壊法案、なぜ議員立法で行ったかということを、多分これからの環境絡みの法律というのは、議員立法が一番いいんだという一つのものの言い方をさせていただきたいと思います。  

どうしても、役所間、業者間、多岐にわたる問題については、残念ながら日本の行政というのは縦割りでございます。いわゆる政府提出法案としては、なかなか成立してまいりません。そういう意味において、議員立法は自由です。このフロン回収・破壊法案が私に言わせますと、ある種実効性のある法律になってきたのは、議員立法だったからだろうと思っております。  

なぜ実効性のある法律になってきたかといいますと、私がある現場に行きました時に、回収している業者のところに行きました時に、カーエアコンの関係ですが、当時18%という回収率しかございませんでした。何でこんなに低いんですかと聞くと、私たち解体業者は、自動車を解体して、この部品は売れるから回収・解体をしているんだ、フロンというのがもしこれと同じようにお金になるんだったら、私たちはもっともっと喜んで回収をしますよと言われたんです。「あ、そうか」と。この人たちに喜んで回収してもらうためには、お金がいると。  

最終的には、自動車メーカーが協力をしてくれました。フロンを回収して、破壊に回せば、回収した人はお金になる。監視と罰則だけでフロンを回収してくださいよと言っても、ひょっとしたら今よりもまだまだ低い回収率であったかもしれない。少し回収率が上がってきたことについて、私は実効性ある法律ができたなと。それは議員立法であったが故だろうと思っております。ただ残念かな、さっきお話がありました、業務用空調機器の部分。私はもう少しこの法律ができたことによって、数字が上がっていくのかなと思いましたが、あまりいい回収率が上がってきておりません。後ほど、南川局長からお話があろうかと思いますが、今年法改正が行われました。そういう意味において、環境省には、この業務用空調機器の世界のフロンの回収については、格段の努力を今後も続けてもらいたいなと思っております。  

そして、西薗先生からお話がございました自動車リサイクル法。今、カーエアコンの部分は、自動車リサイクル法に包含をされています。多分、フロン回収・破壊法案が西薗先生たちの後押しによって、我々が一所懸命頑張らなかったら、自動車リサイクル法は、まだひょっとしたらできていなかったかもしれないような思いを、私は抱いております。西薗先生が、とにかく今やってくださいと、将来、自動車リサイクル法はできるんでしょうけれども、今、自動車のカーエアコンの中に入っているCFCは、今廃車になろうとしているんだと、今でなければ間に合いませんと、自動車リサイクル法ができた時では、もう間に合わないんです、今やってくださいというお話がございました。  

自動車リサイクル法に先駆けて、フロン回収・破壊法案ができました。そして自動車リサイクル法が成立が早まっていきました。冒頭ごあいさつで申し上げましたが、政治というのは、先生方のような熱心なNGOがあって初めて、実効性のある法律ができていくんだなということを、私は肌身で感じました。後押しがあって初めてできるのです。理念法とよく言いますが、モラルに頼るだけの理念法では、なかなか環境問題というのは解決が付かない問題が多々ございます。実効性のある法律を作っていくためには、政治とそして生産現場として、そしてそれを後押ししてくれるNGOの方々が一体となって解決していく方法を、これからも私どもは見いだしていきたいなと、この法律の成立過程を今思い出してみながら、しみじみと感じております。

富永 ありがとうございました。さて、そのフロン回収・破壊法ですが、このたび改正されて施行ということになりました。その辺の経緯、どうして改正されることになったか、どういうふうに改正されることになったのかというところを、行政の方から南川局長、一つよろしくお願いします。

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南川 まずこのフロン回収・破壊法ですが、山本先生からお話があったように、平成13年に議員立法でできております。2001年でございます。当時、まだ私は多分官房の総務課で、国会担当をしておりまして、山本部会長の部屋に日参しながら、担当の課長、あるいは室長がその指示を受けながら作業をしているということをずっと見ておりました。  

また、私はその後で実はですね、廃棄物リサイクルの責任者になりましたが、その際に自動車リサイクル法にかかわりました。それも、やはりこのフロン回収・破壊法案が先にできているということが、相当の促進材料になったということを身に染みて痛感した次第でございます。当時の富永先生、あるいは西薗先生のご尽力にも深い感謝を表したいと思うところでございます。  

この法律、先ほどございましたように、制定当初はですね、業務用のエアコン、冷凍庫、カーエアコン等が廃棄される際に、フロンを大気中に漏らさずに回収・破壊しようということでできました。現在は、一部そのカーエアコンからのフロンにつきましては、自動車リサイクル法に移行されましたので、ここにございますように、業務用の冷凍機器・空調機器などが対象でございます。また対象物質は、オゾン層破壊物質であるCFC、HCFCのみならず、京都議定書の対象物質でございますHFCも対象としている、世界に冠たる法律でございます。今ございましたが、役所ベースですと、世界にない制度を作るということは、大変手間の掛かることでございます。そういう意味でも、議員立法で推し進めていただいたことに大変感謝をしております。

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次でございますが、これが、現在の法律の概要でございます。流れは左から右にまいります。まず法のシステムでありますが、業務用の冷凍空調機器の所有者、第1種特定製品廃棄者という法律上の堅い名前になっておりますが、これが機器を廃棄する際に、登録を受けたフロンの回収業者に依頼をして、回収をしてもらうということで、現在百数十万台が毎年廃棄されております。それから、次に回収業者で回収されたフロンというものが、大臣の許可を受けた破壊業者に持ち込まれ、そこで熱分解をされるわけでございます。

 
この法律は、機器を捨てる人が回収業者を呼んで、しっかりと回収業者にフロンを回収してもらう。そしてフロンの回収業者と破壊業者は、県や国の管理の下、しっかりと回収と破壊の仕事をしてもらうということで成り立っているところであります。したがいまして、業者に対する監督ということも、国と県できっちり行うようになっております。

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この法律ができまして約3年たちましたが、残念なことに回収率が約3割という状況にございます。政府としては、京都議定書達成の大きな一環としまして、3割を6割に引き上げたいということを目標として決めたわけでございます。そのため、今般のフロン回収・破壊法の改正を行ったということでございます。

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今回の改正の概要とそのポイントでございます。目的はオゾン層の保護と地球温暖化防止の両方でして、その冷媒フロン類の回収・破壊の実施をきちんと確保しようということでございます。大きく二つの課題がございましたので、その課題に対応する形で、二つ内容の改正をいたしました。  

まず上の太い矢印ですが、廃棄時に機器の所有者がフロンを適切に、フロン回収を適切に発注しない、あるいは、発注しても、回収業者に直接発注しない場合に、機器の製造業者や産廃業者に丸投げするということから、フロン回収の義務が不明確になるということがあります。これは廃棄物にとっては多々あることでございます。この課題への対策としまして、フロンが充填されている業務用冷凍空調機器が、所有者の手から離れて、フロン回収業者のところで回収が行われるまで、さまざまな人が関与する場合があるわけですが、これをすべて伝票で管理するという行程管理制度というものを設けたわけでございます。  

それから、業務用の機器が廃棄となるタイミングにつきましては、その機器が設置してある建物の解体が行われる時が多いわけでございます。したがいまして、建物の解体が行われる際に、その工事をビルオーナーから委託された業者は、オーナーに対してその建物にフロン回収義務がある空調機器があるかどうかを書面できちんと説明してもらおうという、機器の確認と説明の義務化ということも、今回加えたわけでございます。  

それから、下の大きな矢印ですが、二つ目の課題としまして、これまでのフロン回収・破壊法ですと、機器の廃棄時のみ、その回収・破壊を義務付けておりました。それ以外にも、フロンが出る機械としましては、例えば、修理によるパーツの取り換え時のフロン回収や、機器がリサイクルに回される際の回収について、手当てがありませんでした。この課題に対応するという観点から、そのパーツの取り換えなどの整備や、リサイクルに回る場合の取り外しにおけるフロン回収につきましても、回収業者に費用を払って、適切にフロンを回収してもらう義務というものを所有者に科したところでございます。  

以上が主な改正内容でして、何とかこれによりまして、私どもとしては回収率を現在の倍にしたいと思っております。この10月からちょうど施行されたところでございます。この業務用の冷凍空調機器、非常に機器が多岐にわたります。また、フロン回収につながる機器の移動作業に携わる方も多数に及ぶわけでございます。ぜひ多くの方のご理解を得て、オゾン層保護、地球温暖化防止のために、このフロン回収・破壊を徹底してまいりたいと考えているところでございます。

富永 ありがとうございました。今のようないろいろな対策を求められる側と申しますか、事業者の立場から、奥原会頭、いかがでしょうか。

奥原 私は今までご意見をいただいた方々の立場とはちょっと違って、中小企業ですが会社を経営している事業者の1人としての立場から、もう一つは、日本青年会議所としてJC運動をしている立場として、この二つの立場からの環境問題について、少しお話をさせていただきたいと思います。  

まず事業者としてです。先ほど山本先生も言われておりましたが、喜んでもらえる回収をしたら、法律ができたらということでした。ご存じの通り、会社というものは、もうからないとつぶれてしまう。私も経営をしている1人として、会社をつぶすわけにはいかない。環境はもちろん大切なことです。ただ、環境に携わること、環境に対することによって、もし会社がつぶれてしまったら、経営者としての立場は本末転倒になります。働いてもらっている人もいますので、その人たちを路頭に迷わせるわけにはいきません。だからといって、じゃあ環境に全く対策を取らないと言っているわけではありません。ここで重要なのは、やはり経済的なインセンティブです。補助金があれば一番、もちろんお金があることに越したことはありませんが、例えば設備を投資する時の融資の制度を整備するとか、あるいは金利を少し優遇していただくとか、そういったことが必要ではないかと思います。  

そして私、実は14〜15年前、1992年から94年ぐらいにかけて、モントリオール議定書で一番最初に規制されたフロンの洗浄剤、その代替品、そして洗浄装置というものの拡販をしていた経緯があります。このフロンの洗浄剤は95年で全廃ということでしたので、時限的な仕事でありました。その時に私、たまたま商社におりまして、機械を販売する部門におりました。機械を専門としている部門ですから、当然化学品のことは分かりません。ただ、商社にいたために、化学品部門というのもありました。そして化学品部門は、機械のことは分かりません。そして、この部門間を超えた協調から一つの事業が生まれたと。更に商社であるが故に、情報がよく入ってきた。今でこそインターネットというツールがありますので、情報を得ることは家にいてもできます。ただ当時は、インターネットというのはそんなに普及はしておらず、あっても速度が遅いために、情報をインターネットで収集するということが、まだ進んでいなかったことを考えると、商社に入ってくる情報というのは、すごく有益でありまして、その情報を使ってさまざまなニーズというものを検索することができました。  

今は冷媒のことがよく話されますが、当時は洗浄剤として、金属加工部品の油、切削油を洗浄する際にフロンを使っておりました。また、プリント基板、よくICチップに基盤がありますが、これを奇麗に洗うのにフロンが使われておりました。当然これに対して手で洗っているわけではありませんから、機械を使って洗っています。その機械も、フロンというのは、火がつきにくく、爆発しないということで、普通に開放型の機械を使っていたのですが、代替品は有機溶剤ということで、どうしても火がついてしまいます。いわゆる防爆装置の仕組みを施さないと燃えてしまうわけです。となると、機械を変えなければいけない。  

洗浄剤は、フロンとそれに代わる代替品が同じ値段だったら、事業者としてそれほど負担にはなりません、どうせ買うものですから。ただ設備となると、設備投資ということで本当に大きな負担になります。例えば、ボルト・ナットを作っている零細企業と言われている会社には、ねじを作る時に、どうしても工作機械が必要になります。その工作機械で作った後に洗浄する、その洗浄機器を変えてくださいと言うと、零細企業の人から見ると、非常に大きな負担なわけです。もちろんそこもフロンと代替品の費用が同じであれば、そこの負担はないのですが、機械は誰が面倒を見てくれるのか、これを変えろということはおれたちに死ねということかと、切実な思いを持っている事業主さんもいらっしゃったわけです。  

私がその時に携わったのは、いわゆる大手の企業、一部上場をやっているようなところで、これは環境に対する対策ということで、企業イメージもあって、後ろ向きな投資ではありましたが、これに積極的に取り組んでいただいた企業が多かったものですから、そういった機械や洗浄剤を売ることができました。  

ということで、やはり大手は資本力もありますのですぐに対策ができますが、日本を構成している会社の97%くらいは中小企業・零細企業なわけですから、すべて画一的に環境に対して負担をしろというのは、何%になるか分かりませんが、経営者から見ると、つぶれてしまえと聞こえてしまうんです。ですから、ぜひインセンティブというものを、そして法整備や環境というものをぜひ整えていただきたい。そして、どこに行ったらその情報が取れるかということ、たとえば環境省のホームページなどに情報が置いてあるよということを、インターネットで家でも見れる社会になっていますので、広報的にやっていただければと思います。それから、私どもは、仕事をしている事業主であります。学術的なことには携わっていないのですが、できるのであれば、今使っている装置がそのまま流用できて、オゾン層を破壊しない、温暖化に歯止めを掛ける、そんな代替品というものを作っていただくことも必要なのかなと感じております。  

そしてもう一点、青年会議所という立場でお話しさせていただきますと、青年会議所というのは社団法人格という公益法人であります。私も今年、会頭という役を務めておりますが、これに対して報酬は一切出ておりません。全部手弁当で運動を、まちづくりをしている団体であります。世界的にも、今120の国と地域に18万人が青年会議所ということで活動をしております。  

実は、昨日おとといと、このアジア太平洋州のオセアニアまで入れたこの青年会議所のメンバー、そしてASEAN、SAARCと言われているところで、青年会議所がない国の若い人間が集まって、少し世界平和に向けてどう取り組むか。全く仕事から見ると、全然違うことなのですが、それぞれの国づくり、地域づくり、まちづくりというものに対して、究極の目的が世界平和の実現なわけですから、それに対しての議論・意見交換をする場を作って、東京で昨日までやっておりました。ここでも環境問題にきちんと取り組みましょう、世界平和に向けて実現しましょう、この問い掛けに対して、反対意見を持っている方は多分いらっしゃらないと思うんです。我々、青年会議所活動をしているメンバーも、それにどうやって積極的に取り組むかということを、昨日おとといとやらせていただきました。  

要は、誰もが環境問題に対しては、積極的に取り組みたい、取り組まなければならない。今少し我慢すれば、50年後、例えば100年後、我々の子どもたちが本当に安心・安全な社会で暮らしていけるということを目指していくのであれば、今ある問題に対しては、積極的に取り組みましょうということを、やはり声高に言っていかなければいけません。そのためには、事業者としてどうするか。会社がつぶれない、従業員を路頭に迷わせない程度に、我々も負担することは負担しようと。ただ、その反面、ぜひ少しでも資金負担、あるいは事業者が負担に感じないような、いわゆる機械が流用できる、同じ機械で使える代替品の開発。そして、法整備に至っては、インセンティブが何か与えていただければ、我々がどちらにしても機械を変えなければいけないのであれば、設備投資をしなければいけない。それに対して、どれだけの資金を最小限にしていくかを考えると、その辺のことは我々にはどうしても法整備、あるいは環境づくりはできないわけです。だからこそそこをお願いし、それをしていただいたものを情報として、我々がどこで入手できるか、そういったことをやっていただければ、多分すべての経営者、すべての会社・事業主は、それに対して積極的に取り組んでもらえると思っておりますし、我々が日本では4万人のメンバーがいます、積極的にそれは取り組んでいきたいと思っております。  

そして、青年会議所として目に見える環境の対策ということに対しますと、環境省が提唱していますチームマイナス6%、これは夏のエアコンの温度設定を少し高くしましょうと、その代わりクールビズにしましょうということで、我々も7月から9月までの会議は、すべてクールビズ。それに対して、結構我々、ファッションに疎い人間が多いものですから、ファッション部会というのがありまして、そこがこんなかっこいいシャツを作りましたと。JCのロゴが入ったシャツも作って、ネクタイを締めなくてもいい開襟で、少しでもスマートに見えるようなものも考え、それを着ながら会議をしていく、そんなこともやらせていただいております。全国でもこれは広がりつつあります。  

我々は、何度も繰り返しますが、事業主でありまして、会社をつぶしてはいけない。でも、環境に対しては、積極的に取り組まなければいけない。そのために、我々もできる限りの努力をする。できる限りの環境づくりを、いろいろな方面の方々にお願いしたいし、その情報を持って、ぜひ我々も取り組んでいきたいと考えております。

富永 ありがとうございました。パネリストの方々に、それぞれのお立場から一通りお話を伺ったのですが、今度は、最初に言い残されたこと、今後に対していろいろおっしゃりたいことがおありだと思いますので伺っていきたいと思います。今度はあまり時間がございませんので、手短に自由にご意見を伺いたいと思います。まず西薗先生、いかがでしょうか。

西薗 皆さんのお話を聞いていて、やはりこういう場でいろいろな立場の方が集まって情報交換ができる、あるいは情報が共有できるということですね。これは非常に重要なことだと感じております。結局、世の中のことを環境の問題であっても、環境影響に応じて我々の行動に移していくというのは、一つの理想論ですけれども、なかなかやっぱりそれは人間の心理で言うと難しいところがありますね。やはり皆さんが関心を持って、特に今であれば温暖化の問題がそうだと思いますが、関心の高いことというのは、当然行動に移せば、今の奥原さんのお話でも、頑張りますよと会社が言えば、我々もじゃあ応援しますというふうにお互いに人間の心理としては頑張り、応援するという立場ができるかと思うのですが。フロンの問題というのは、特にこの30年、地球環境問題のやはり一つの典型として走ってきた問題ですから、これはもう忘れてはいけないと思いますし、これからもぜひこういう場を作っていただいて、皆さんで情報共有をして、きちんとやっていくことが必要だと思っています。

 
その中で、個別のことを少しだけ言いますと、断熱材とか、先ほどのダストクリーニングスプレーとか、特にダストクリーニングスプレーは、最初から放出する用途、飛ばすことを前提に作っている製品です。こういうものは、今はフロンを使わなくても、技術的にでき上がってきていると思います。そういう分野はぜひ、適切なハードルを国として考えていただきたい。つまり、簡単に言えば、脱フロンの方向に持っていっていただきたい。

 
先ほどお話ししたように、冷媒はそうはいかない部分が確かにあります。できる分野もあると思いますが。ですから、そういう部分はきちんとやはりやる、実効性のある制度を、今回の法改正がそれに当たると思いますが、これを今後も目指して、我々もそれをずっと見ていきたいと思っております。

 
でも、一つ気になりますのは、やはり海外ですね。今、日本はそうやって形ができつつありますけれども、やっぱり世界全体を見ますと、特にお隣の中国を始めとして、日本の10倍の規模の経済が動くかもしれないところでも、それがきちんと伝わっていけばいいなと、それが一番の願いです。

富永 小野先生、いかがですか。

小野 私も今のお話をお聞きして、多分紫外線の方に限ってみますと、モントリオール議定書が着実に進んでいく、それから、ここでお話がありましたように、フロンの回収というものが、より積極的に進んでいくということで、先ほど示しました紫外線の今後の回復というのが、恐らく私の希望としてはもうちょっと前倒しで早く回復するということを期待しています。  

ただ、そうはいいましても、皮膚がんのところで申し上げましたように、これまでのツケと言っては悪いのですが、影響がこれから30年、40年かけて出てくるということがございます。ただし、生態系や材料についても申し上げましたけれども、例えば生態系といったところに関しては、なかなか対応が難しいです。ただ、私たち健康に対する影響に関しては、一つ大きな違いがございます。これは、紫外線の回復が今後順調に進む、あるいは、より早くなるということを抜きにしても、私たち一人ひとりがその対策が打てるということです。ですから今度は、その行政がフロンの回収、あるいはオゾン層の回復ということに取り組むのと同様に、私たちはその一人ひとりとして、やはり自分たち、あるいは自分の周りの子どもたちといったところで、健康被害を防ぐということが可能ではないかということを考えております。  

今日の資料の中に、「オゾン層ってどうなってるの」というパンフレットが入っているかと思いますが、この中にもその影響を防ぐためにさまざまな取組みが可能であるということが書いてあります。ですから、紫外線というのは目に見えませんけれども、今、さまざまな情報がインターネット等で利用可能です。ですから、紫外線がどんな時に強いのかとか、どういうふうにやれば紫外線を防ぐことができるとか、そういった情報をやっぱりうまく活用していただいて、一人ひとりが被害を防ぐということをぜひ心掛けていただきたいと思います。

富永 どうもありがとうございました。では奥原会頭、いかがでしょうか。

奥原 先ほど、昨日おとといと会議をやったと言いました。27か国のアジア太平洋州の国と地域から47人が参加したのですが、その議題が先ほどもご紹介した通り、世界平和というものをどうするか、どう希求できるか。そのカテゴリーを四つ抽出した中に、環境問題というのがありました。当然と言えば当然だと思います。  
ただ、今ここでも集まっていただいていて、しかも日本でかなり高いレベルで環境対策をしていく。じゃあ日本だけが環境対策をすれば、オゾン層が広がらないか。オゾンホールが広がらないか。やはり近隣の国。近隣というか、全部の国、すべての地球上の人たちが取り組まないといけない。そういうふうに思えば、我々は27か国ではありますが、全員が一致して、将来のためにこういうことをしましょうということの話をしました。  

もちろん、例えば今回も、日本以外に住んでいる方々がいないから、もうどうしようもないじゃないかといって、何も行動を起こさないのではなく、我々からでもまず行動を起こさなければならない。日本から、「日本ってすごく環境を重視している国だね」と言われれば、多分これは喜ばしいことだと思いますし、近隣、あるいは他の国々の方々も、じゃあうちもやろうよというふうになるのではないかなと思います。それが結果的には、全世界レベルにおける環境問題、それに対する対策、そしてそれが、本当に一長一短ではなかなか環境問題というのは解決しないと思いますが、でも早期解決につながっていくのではないかと思っております。  

青年会議所といたしましても、世界に120の国と地域のネットワークがあります。そして、国連とのつながりもあり、国連のマークを国連の関連団体以外で唯一使う許可をもらっている団体として、国連とも連携を取りながら、いろいろな活動をやっていきたいと思っております。それにおきまして、また皆さん方からもさまざまなご理解とご支援をいただきたいと思いますし、またご協力もいただきたいと思っております。

富永 ありがとうございました。それでは山本先生、いかがでしょうか。

山本 今日、地球環境とフロンのシンポジウムに出させていただきました。私は京都会議の時、大木大臣の下で環境政務次官を務めておりまして、京都議定書の約束に携わってまいりました。いよいよ約束期間が始まります。さっき南川局長の話にありましたように、大変苦戦をしております。  
この種の問題というのは、哲学なんだろうと時々考えることがあります。日本だけが頑張って、一体地球って助かるのかということをよく言う人がいます。だけど、日本が率先してやることによって、ひょっとして地球は助かるんだろうと、私は常にそう思っております。このフロンの問題をきっかけにして、今日お集まりの皆さん方が、ぜひ来年から始まる約束期間、日本が約束を守れるように、これからもより皆さんの世論を盛り上げていただきたいなと、この場を借りましてお願いしておきたいと思います。

富永 ありがとうございました。南川局長。

南川 ありがとうございます。私は国内の地球環境問題の責任者でもあります。オゾン層保護はもとより、温暖化対策に全力を挙げてまいります。来年からいよいよ約束期間が始まりますが、このフロン、HFCを始め、CO2、メタン、さまざまな物質の排出削減にぜひ取り組んでいきたいと思います。障害は大変多ございますが、それにめげずに頑張っていきたいし、ぜひ皆さんの協力をいただきたいと思います。  

それから、やはり国内と同じように、アジア地域、なかんずく中国の問題ということが、極めて重要でございます。温暖化対策はもちろんでございます。また、このフロンにつきましても、HCFCを例に取りますと、中国の生産量が全世界の56%と、半分以上でございます。そういう意味では、中国にいかに協力要請、あるいは中国を説得して対策を取ってもらうということが、極めて重要でございます。これはHFCだけではございませんで、他の部門でも言えることでございます。隣の大国との関係を大事にしながら、アジア地域全体の環境対策にもしっかりと積極的に望んでいきたいと考えております。

富永 ありがとうございました。今日のこのパネルは、フロンの回収という問題にかなり集中して、いろいろと議論していただいたわけですが、この今日のシンポジウム全体として見ますと、このフロンとモントリオール議定書というのは、これはある意味では、科学と国際的な政治、あるいは対応策というんでしょうか、途上国、先進国ではかなりいろいろな意味で規制が進んでおります。まだ途上国の問題というのもあって、決して楽観視していいわけではないということも、ここで再認識することができたのではないかと思います。  

そういう意味では、今いろいろなセクター、いろいろな立場からのお話がありましたが、こういう地球環境問題、非常に複眼的にいろいろなことを見ながら、それから国は国、事業者は事業者、市民は市民、そして研究者の立場は研究者の立場、それぞれの立場がありますが、それが非常にうまくかみ合って、協力し合わないと、やはりこういう問題の解決策を見つけていくのは難しいなということを改めて感じた次第です。  

さて、パネルの方はそろそろこれで終わりに近付いておりますが、パネルを終わります前に、今日ははるばるアメリカから、このフロンとオゾン層問題のいわば創始者、発見者でもあり、最近までいろいろな問題に主導的に取り組んでこられたローランド先生がせっかくおいでになっておりますので、このパネルに限ることではなく、このシンポジウムに出席されて、あるいは今回こちらにおいでになって、こういった問題について何か日本に対する、メッセージなりコメントを頂戴できればと思いますので、よろしければ壇上においでいただいて、一言いただければと思いますがいかがでしょうか。

ローランド あまり長くしゃべるつもりはありません。私が申し上げたいコメントは、まさに数学的なものです。つまり、私たちが知る限り、温室効果ガスが大気に排出された後の大気からの減少は、指数関数的な振る舞いをとるということです。寿命の長い物質ですから、いろいろなところに到達し、いろいろなものと混合します。富永先生が最初に紹介くださった東京大学の南北の測定結果を比較すると、CFC-11の濃度は北半球・南半球で同程度になっており、CFC-12は濃度が違っていますが、同じ濃度だということは、至るところで混合しているということです。  

もう一つ結論として導けるのは、CFC-12は50年の寿命を持っているとしましょう。CFC-12の場合は100年の寿命です。100年の寿命というのは、100年たったらなくなるということではありません。100年というのは分子の平均寿命です。すると、100年の寿命を持つCFC-12の大気中濃度は現在540pptですが、2107年、つまり100年後に、100年の寿命を持つCFC-12の濃度は、ゼロにはならず、200pptぐらいでしょう。指数関数的減衰によってこの数字が導き出されます。今540pptで、2107年には200ppt、2207年には75pptくらい、2307年には30pptくらいになるでしょう。このように、非常に寿命が長いのです。ですから、この分子を大気中に放出しないようにするということを重視しなければなりません。それは、回収して再利用するのではなく、回収して破壊してしまうという考え方とも非常に関係しています。おそらく、50年以上の寿命を持つ分子については、温暖化の傾向を食い止めるという現在の関心の観点からは、特に50年以上の寿命を持つ分子は、今後長きにわたって重要視されるでしょう。私が思ったことの1つは、一般的に、100年の寿命ということの意味が知られていないのではないかということです。これは指数関数的な平均寿命であって、もっと長い時間残るのだということが知られていないのではないかと思います。  

あと二つほど申し上げたいと思うのですが、そのうちの一つは、私たちが1974年にこの問題に取り組み始めた頃、CFC-11と12が主な物質でしたが、その後113も出てきて、オゾンアセスメントを今見てみると、200〜300の分子が検討対象になっていることがお分かりになると思います。  

それからもう一つの側面ですが、議論上の観点から面白いと思った物語を1つ引用します。オレゴンとカリフォルニアで、1975年に、対策をとりましょうという提案がなされました。純粋なCFC-12をトランジスタ電子部品のパネル上に噴射することによって、電子機器の試験用に使っているという一人の人物がいました。それは製品の欠陥を発見する標準的な方法であり、噴射されると非常に冷却されて、回路がうまく機能していれば、それは溶けてしまってなくなってしまいますが、機能していない回路があるのかどうか分かるというものでした。それはトランジスタの交換を行うための用途だったのですが、彼が出した質問は、CFCは噴射剤でして、すべての噴射剤を禁止することになっていたのですが、彼の製品は純粋なCFC-12であっても他に何も噴射しないので、噴射剤ではなく冷却剤だと言うのです。つまり、冷却剤も噴射剤なのかという定義を行う法律をどのように調整するかということが必要になりました。CFC-11も噴射剤ではないと彼は言い始めました。純粋なCFC-11は、ビーカーに取り出して使うことで、非常に有効に実験を行うことができました。少量の使用でも、膨大な数の様々な化学物質が使われています。フッ素を含んだ何百という分子には注意が必要です。この人物はその産業を去っていますが、その産業は何千ものフッ素化合物をあなた方のために作っています。これらのフッ素化合物、またはフッ素を含んだ化合物に目を光らせることがいかに大変なことか、お分かりになると思います。これはここまでにしておきましょう。  

最後に申し上げたいことは、日本での努力、つまりこの物質を回収して破壊し、大気に排出されないようにするという取組みは褒めたたえるべき大変すばらしい努力であると思います。

富永 ありがとうございました。それではちょうど予定された時間になりましたので、本日は大変多数のご参加をいただきまして、ありがとうございました。パネルディスカッションの部分を担当しております私としては、パネルは有益なパネルで終わったと思わせていただきたいと思います。どうか皆様、今後とも一つ、このオゾン層問題に限らず、地球環境問題には前向きに取り組むという意味で、これからもご協力いただきたいと思います。ありがとうございました。それでは全体の司会者にバトンタッチいたします。

司会 先生方、ありがとうございました。パネルディスカッションにありました通り、この10月1日から、改正フロン回収・破壊法が施行されています。フロンの回収は、オゾン層保護のみならず、地球温暖化防止のためにも、大変効果の高い対策です。関係事業者の皆様のご協力・ご尽力により、改正法にのっとってフロン回収の徹底を図っていく必要がありますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。また、ご家庭においても、エアコンやカーエアコンなどでフロンが使われており、その漏洩防止に努めることが重要です。機器の適正な取り扱い、廃棄処理にご協力をお願い申し上げます。  
本日は、モントリオール議定書20周年と、フロン回収・破壊法改正記念シンポジウム、地球環境とフロンにご参加いただき、誠にありがとうございました。これにて、シンポジウムを終了いたします。皆様、お気を付けてお帰りください。ありがとうございました。

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