[概要]
フロン類の一種であり、オゾン層に大きな影響をもたらす物質であるCFCは、毒性が低く安定していることから「奇跡の物質」として1930年に公表され、冷媒や噴射剤等として急速に普及が進んだ。1970年代になると、CFCから生じる活性塩素がオゾンを破壊することが明らかとなった。そこで、1975年頃から国連環境計画(UNEP)により取組みが開始され、1985年に「オゾン層保護のためのウィーン条約」が採択された。ウィーン条約の交渉の際には、オゾン層が破壊されているという科学的な証拠は明確にはなかったが、1980年代中盤にオゾンホールが発見され、その形成過程が明らかとなった。それらを踏まえ、1987年に「モントリオール議定書」が採択された。現在、最も高い成果を挙げている多国間環境協定として広く認知されている。
モントリオール議定書によって、オゾン層破壊物質の99%が段階的に削減されており、今世紀半ばにはオゾン層が回復する見込みである。これにより、皮膚ガンや白内障、生態系への影響等の被害を回避できたと考えられている。また、フロンは温室効果ガスであることから、温室効果ガスの削減にも大きな貢献をした。これらの成果は、健全な意思決定の基盤となる評価パネルの設置や、規定を小さく始めて徐々に強化すること、多国間基金等の革新的な資金メカニズム等、様々な特徴を土台として得られたものである。
2016年10月には、6年に及ぶ討議を経て、オゾン層破壊効果はないが温室効果の大きい物質であるHFCがモントリオール議定書の対象物質として追加される「キガリ改正」が採択された。20カ国以上の批准により、2019年1月1日から発効予定である。キガリ改正により、2100年までに0.5℃の気温上昇を防ぐことができると考えられている。
2017年はモントリオール議定書30周年ということで、様々な記念行事を実施する予定である。ぜひご覧いただきたい。