中長期ロードマップ調査 第五回全体検討会
議事録
- 日時:
- 2010年3月26日(金)9:00~12:00
- 場所:
- TKP 東京駅日本橋ビジネスセンターホール2A
- 出席者(委員):
- 西岡座長、赤井委員、飯田委員、大塚委員、荻本委員、大聖委員、伴委員、藤野委員、増井委員、三村委員、村上委員、屋井委員
- 議事
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- 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)について
- 地球温暖化対策の推進に伴う経済波及効果等について
■ 議事
1.議題1 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)について
1-1.資料説明(事務局)
資料1(事務局)及び資料2-1(藤野委員)について説明
1-2.資料2-1について質疑
- 西岡座長:モデルの分析は重要な要素だが、はじめからモデルで細かい姿を描けるわけではないので、個別のWGで検討していただいた結果をモデルにフィードバックするようにしている。また今回はマクロフレームについて固定ケースと変化ケースの両方の結果を示した。今の案について御意見いただきたい。
- 屋井委員:藤野委員の分析は大変よく分析していただいていることは分かっているが、7頁の前提について質問したい。地域づくりWGの結果を受けてということだが、地域づくりWGでは目標として一人当たり自動車走行量の10%削減を掲げたのであって、無条件に輸送量が低下するという予測をした訳ではないことに御留意いただきたい。人流の短距離旅客交通のところを公共交通に置き換え、短いところは一部自転車等に置き換えるまちづくりを推進して、がんばらないと目標に届かないというメッセージを出すことが地域づくりWGの目的であって、予測行為は行っていない。予測は、きちんとした方法論に基づいてやりたいが、まだ目標設定をしている段階。長距離の人流についてはあまり想定していない。あえて言うことでもないが、高速道路無料化の政策は、CO2を増やさない範囲の中で行われることが前提だとは思うが、それでも10%減らすということは今申し上げた範囲ですることである。また、物流についても課題で、自動車WGとも調整していない。経済と環境の両立を見ていくなかで、物流は代替手段がなく減少していくというのは描きにくいし、それについても地域づくりWGでは予測を行っていないので、モデルの結果と地域づくりWGの検討結果は誤解のないように分離していただきたい。やはり、ここについて、モーダルシフトを行うのであれば、ヨーロッパのように投資を行わなければ、簡単にはいかない。21頁で投資していく分野を示さずに、無条件にトレンドで物流が10%減っていく前提条件には問題がある。それを達成するため、環境と経済の両立をするにはどうしたらいいのかは書いてあるが、走行距離をいきなり減らすということではなく、どういう手段を講じることによってこの目標を達成するのか、手段の構成が含まれていないといけない。電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)が導入されないといけないが、走行量によって排出量は変わってくる。手段としては、EVやHEVを導入するということでよいが、どれだけ使われるのかを考えるのであれば、公共交通をもっと入れよう、代替交通はこれだ、更に利用をもっと増やす工夫をしようといってできるもので、ようやく目標の達成ができる。無条件に前提条件でこれだけ減るというのは乱暴な議論であり、WGとの整合性は取れていないので、公表の際には御考慮いただきたい。
- 大聖委員:7頁の旅客、貨物の減少について刷り合わせが必要だと思う。旅客については、ICTと書いてあるので、ナビゲーションシステムやITSの高度化だと思うが、自動車WGでも織り込んでいる。貨物については、国土交通省の目標達成計画、営自変換などを織り込むとこのような緩やかな傾向がある。30頁に環境対応車の販売ベースの普及率は74%とあるが、自動車WGではこれほど大きく導入することは想定しておらず、全体で50%ぐらいとしている。従来の車の燃費改善、環境対応車の普及とバイオに加え、交通対策としてエコドライブやナビゲーションシステムの高度化で10%盛り込み、合計で25%削減ぐらいになると想定している。整合性をぜひお聞かせいただきたい。
- 藤野委員:御指摘ありがとうございます。屋井委員から御指摘いただいた点だが、脱温暖化2050プロジェクトでは、コンパクトシティが広がるという前提で2050年に30、40%削減という推計をした。本来であれば、公共投資が行われ、まちづくりで道路が作り直されてようやく30、40%削減されるべきだが、プロジェクト当時、そのための投資額を推計するまでにはいたらなかった。そのため、社会のトレンドとして、豊かな生活のためにコンパクト化することを前提条件として、30、40%減るということにした。今後可能な限り資料を直したい。交通量の減少については、地域づくりWG、自動車WGとの関係も含め、状況を整理し、精査したい。大聖委員から御指摘いただいた次世代自動車の普及率は定義があいまいなところもあり、次世代自動車の中にハイブリッド、電気自動車以外も含めているので、分かりやすく精査し、いわゆるスタンダードとあわせて数字を示すようにしたい。
- 赤井委員:39頁の供給部門のグラフの縦軸はMtCO2でいいか。
- 藤野委員:Mtoeです。
- 赤井委員:48、49頁の発電電力量について、原子力が50%で、石炭、LNG、石油等、に水力を加えても調節可能な電力は約25%である。これぐらいのバランスで需要負荷に対する制御性は担保できるのか。
- 飯田委員:原子力の感度分析が入ったのは大変ありがたい。事実関係として、過去10年原子力の稼働率は上がっておらず、特に2001年以降は稼働率が80%以下で、60~70%で低迷している。京都議定書の時には、当初、2010年には20基を新設するとし、途中段階では13期新設と言っていたが、できたのは結局4基に留まった。新設数、稼働率を楽観視すべきでないという過去の経験がある。特に今後の10年で老朽化の時期を迎え、すでに美浜原子力発電所は40年を越えた。全体の発電量はキャパシティと稼働率の掛け算で決まってくる。キャパシティは増えず、稼働率があがらない状況を石炭火力で埋める、というのが過去10年繰り返してきたことである。そこの対策を考えることが必要。コンティンジェンシープランが次のステップだと思う。検討の幅としては、もっと下振れを検討してもよかった。
- 荻本委員:コンティンジェンシープランは原子力だけではない。今の数十倍導入されるとする太陽光発電(PV)が半分、風力が半分に留まるとしたらどうなるのかも全く同じ。10年という短いスパンで考えているので、いろんな対策にコンティンジェンシーがいる。原子力だけ特出しではないということを大前提で見ていただきだい。赤井委員からの御指摘は、変動電源が入って、調整電源が足りているのかということだった。調整できないときにはどんどん捨てるということが実現すればできるのかもしれないが、数十台、数千台ある中で一斉に捨てられるという技術は未だないので、それも分からない。今の検討は良くも悪くもコンティンジェンシーの中にいると御理解いただくのがよい。まとめの段階では、そういうファクターがある中で、今から10年で適切な選択をしていくのが重要ということしか言えないと思う。
- 藤野委員:御指摘のとおり。宿題をいただいたので、検討していきたい。
1-3.資料説明
1-4.質疑
- 村上委員:64、65頁に、投資回収額があるが、希望の持てる金額だと思う。ただ、現在、日本の光熱費のトータルは平均22万円ぐらいであり、私の計算では、断熱改修であれば250万ぐらいかかるので、すぐに20年などになってしまう。ここの数値はやや楽観的ではないかという気がする。
- 三村委員:資料2-2のようなものは具体的にイメージできるのでよいと思う。ただし、資料2-1の40頁にモデル分析の結果が出ているのでそれとの関係はどうなるのか。かかる費用は回収が可能であるということが書いてあるが、分野ごとに回収できるものとできないものの違いがある。特に家計に係る部分はこの点とうまくつながっているようにしないと、マクロなモデル分析の結果とのつながりがはっきりしない。
- 藤野委員:資料2-1と資料2-2のつながりについてもっと具体的に説明しなければいけないと感じた。
- 赤井委員:見る人にフレンドリーなプレゼンであり、非常によいが、だからこそ、色々聞きたくなる。投資回収年は、直感的に分かりやすい概念だが、今のエネルギーのコスト、価格そのものは、温暖化対策を内生化したものではない。会議の目的が温暖化防止、低炭素化と考えると、投資回収費用は必要だが、削減コストの情報もコストカーブ的に表すことが必要ではないか。前に温暖化対策投資額の表があるが、投資額と削減量の関係も必要ではないか。削減コストがミニマムになるようにという意味ではなく、バランスを考えるためにコスト情報が必要ではないか。
- 藤野委員:承知していたが、力尽きてできていない。
- 屋井委員:資料2-2は分かりやすくて意味はある。全体から見ると、個々の家計、家1軒という単位で考えるのは重要ではあるが、一方で賃貸住宅の人もいるし集合住宅の人もいるし、街区として計画的に作られているところもあるし、コンパクトシティも含めまちづくりをどうしていくかという考え方も必要。省エネ住宅・家電など、個人で対策をしているだけでよいという考えだけでは場合によってはうまくいかないこともある。何らかの関係性があるというメッセージも一緒に出してほしい。
- 西岡座長:屋井委員、大聖委員から、交通に関しての値や費用の根拠を示してという話があった。2つ目はコンティンジェンシープランがほしいということで、シナリオを一本ではなくて、幅はどれぐらい振れるのか、それにどういう対策をとるのかという話であった。
1-5.資料説明
1-6.質疑
- 荻本委員:たくさんの技術を様々な地域で導入しなければならない。自治体によるエネルギー供給計画の策定はかなりしんどい作業になる。参考になる雛形を作成しなければ、ばら撒いてもうまくいかないと思う。モデル事業を通じた検討があるが、行動を起こす前に、どういうものが本当に望ましいかのプランが大切だと思う。少しだけ考えることでかなり違ったことになる。着手の前にプランを策定することを明示的にいれてほしい。もう1点、エネルギー供給分野について。第4回全体検討会で、不確定なものとして、洋上風力を例に申し上げたが、56頁は前回から何も変わっていない。洋上風力はヨーロッパもうまくいっていないなかで、日本は台風が来るので風のパワーが2、3倍でコストアップだと分かった上で実証試験に着手するのか、優先順位は他と比較し大丈夫かと言いたい。洋上発電のプラント自体が成立しても、そこから陸上までの送電線は風車以上の値段になるが、入っていない。前回よりも強く申し上げたいが、10年しかないので、本当にできるか精査したものに金を投じるようブラッシュアップしていただきたい。
- 藤野委員:住宅・建築物分野について、耐震住宅への改修が急務に見える。今後耐震工事のボリュームというメインのストーリーと、2020年に改修50万戸の目標との関係性を見てほしい。また、地域づくりWGについて、コンパクトシティ、モーダルシフトの議論で投資額を積んでほしいという指摘があったが、逆に地域づくりWGでも地球温暖化対策税を使う話など計画を立てていただいた。計画実行に実際どれだけ税収や費用が必要になるのかを1つずつ積み、トップダウンとボトムアップの両方からやり取りしていきたい。
- 三村委員:この検討会の目的はCO2や温室効果ガスの削減と承知しているが、地域づくりWGの部分には、「都市気候を踏まえた」や「地域特性を配慮」ということがよく書いてある。低炭素化をすると同時に、複合的な効果があるという施策について考えていく必要がある。既にそれは36頁右上の括弧の中に既に書いてある。そこで、ここでは都市気候になっているが、同時に農村でも考えられるべきだと思う。来年度以降、この視点をいれるべき。
- 大聖委員:地域を限定したモデル事業について、モデル事業には最初に費用がかかるが、それを他の地域に水平展開する際には費用が大幅に下がるはずである。その社会経済的な費用を見積もることは非常に重要だと思う。普及に当たっては他地域への展開コストについてもうまく盛り込んでいかないといけない。
- 飯田委員:低炭素エネルギーのところで雇用を実現しないといけないということで、再生可能エネルギーについての制度設計は、事業投資を促す水準での固定価格買取ということで、内部収益率8%を一つの議論の方向性としてきた。現在並行して、経済産業省の全量買取制度のオプションが提示されているが、パラメーターサーベイ的に行われているように見える。今回のロードマップを絵に描いた餅にしないために、縦割り行政の弊害を排除する必要がある。第1回全体検討会で申し上げたが、この検討会は環境省がやっているのではなく、温暖化閣僚委員会の小沢大臣事務局長がやっていると見なすと、ロードマップに沿って各省がやることを統合する努力が必要になる。経済産業省がここでパブリックコメントから、内部収益率をマイナスにすれば、この時点でいきなり2つは別のものになる。地方自治体の縦割りもひどく、キャパシティービルディングをしなくてはならないこともあるが、この検討会を絵に描いた餅にしないためにも、今動いている施策で事務局長である小沢大臣のリーダーシップにより統合を図ってほしい。現在、エネルギー基本計画も検討中なので、全体の整合性、統合性を地球温暖化に関する閣僚委員会の事務局長の小沢大臣としてやってほしい。
- 西岡座長:全体として思い出したことは、京都議定書目標の6%を達成するために、いろんな省庁からいろいろな対策をやり、お金も出したが一体それはどうなったのかというのは反省すべきところだと思う。原因は、十分なフィジビリティがなく、ハードに走ったこともあったかと思う。或いは、省庁間の縦割りで、同じような案が複数の省庁から出てきたこともあった。今回はもう待ったなし。明快にこの道を行くという、一つ一つの道が確実に目標に向かっていくものにすることが仕事になる。最後に御指摘があった本検討会でロードマップは書くが、それぞれ実施をするのは、それぞれの省庁になるので、策定中の科学技術基本計画やエネルギー、国土づくりの話も取り込んでいく必要があると思っている。
2.議題2 地球温暖化対策の推進に伴う経済波及効果等について
2-1.資料説明
- 資料3について説明(増井委員)
- 資料4について説明(伴委員)
- 参考資料2について説明(下田氏)
- 参考資料3-1について説明(松橋氏)
- 大聖委員:自動車関係で一番悩ましい議論は、メーカーが国際市場での競争力の維持、強化が常に求められていることである。これまでは日本の市場が大きく、量産効果でコストダウンが図れ、それが競争力につながるという恵まれた状況にあった。しかし、今後新興国市場の拡大と技術進展が予想される中で、国内市場だけの問題と捉えるとミスリードになる。自動車メーカーにヒアリングしたが、そこで指摘されたことは、CO2削減のためにハイブリッドを志向するだけでは収益性を減らす可能性がある。他の地域では、ハイブリッドよりも安いガソリン車のニーズが高いとなれば、人材の確保や投資余力の問題まで含めて考えなければいけない。このような状況は自動車だけの問題ではなく、PVやLEDも技術革新とコストダウンは国際市場の場でも進行している。自動車ではそれを課題として挙げており、国内対策が日本の競争力にもつながるストーリーであるべきだと思う。
- 飯田委員:今回の結果でタスクフォースよりもポジティブな姿が出てすばらしいと思う。松橋先生の太陽光普及は消費者努力が必要という話だが、もう1点必要なのはビジネスセクターをしっかり活用すべき点。消費者は合理的な行動を必ずしもしないけれど、内部収益率8%のようなしっかり投資効果が得られるような固定価格買取制度にして、それこそメガソーラーをやれば儲かるという設定にすれば、ビジネスセクターは投資に向かって動くので、必ずしも住宅の屋根ばかりでなくなる。工場の屋根でも儲かるような形にしてメガソーラー等の普及を図るべきだというメッセージだと受け取った。併せて、参考資料4を私から提出したが、前政権やタスクフォースで36万円問題など負担ばかりがメディアで強調された。再生可能エネルギーに関しても月に100円、更に300円、500円になると負担ばかりが強調されてきた。これに対し、消費者関係団体にお集まりいただき、これは本当に負担なのかについてコンセンサス文書を作成した。そこでは、消費者が消費をすることでの環境影響の責任、より低炭素な温暖化防止の社会を選択する責任、そして将来の投資にもなるという3つのバランスの中で理解していこうというコンセンサスをまとめた。負担だけがメディアで一人歩きしないようなコンセンサス文書を作ったので、グリーン購入ネットワークや各消費者関係団体のホームページに掲載し、バランスのある将来の投資もあるということを幅広く社会的に確認していける一助になればいいと思っている。
- 荻本委員:モデル分析について質問。モデルの構造があっているのか、投入された前提条件があっているかで、結果がまったく変わるのは、資料2の御説明のとおりだと思う。ただ、資料4の9頁では設置費用低減が年率8%ということになっているが、PVは現在非常に高いレベルにあるので、減るかもしれない。その代わり、風力は今安いレベルにあるので、逆に増えていくかもしれない。色々な要素が凝縮されてこういう数字になっていると思うが、どの程度確かなのかも含めて評価していかなければならない。IPCCでは、グレー文章という言葉があり、出所がはっきりしないもので失敗したということが有名になっている。モデル自体やインプットデータの妥当性については、我々自身も厳しく捉えていかなければならない。程よい数字が出たから正解というのは、間違いである。全体的に、茨の道で、ロードマップにあったように、非常にたくさんのものを一気に始めてしまい、マンパワーやお金を分散させてしまって、問題が起こらないよう気をつけていかなければならない。
- 三村委員:モデルの計算のなかに、地域づくりの効果がどう入っているのかを聞きたい。ロードマップの議論の際に、個別対策だけでなく、地域全体を低炭素化にするという話があった。変数を見ると経済セクターの並びになっているが、横に切ったような対策の効果はどう入っているのか。
- 屋井委員:最終回の中で新しく資料が出てきていて発言しにくいが、モデルの限界や精度については委員も理解しておかないと責任が持てないので質問する。一般均衡、産業連関は理解できた。松橋先生にはDiscrete choiceを加えた一般均衡ということでお話いただいたが、パラメーター推計には使用したデータは、恐らく原単位のデータだと思う。効用の等価変分(EV)をLogit モデルの効用関数を元につくり、それを貨幣換算すればこういう結果になるのだと思う。所得の階層を18区分にしていることと、Logit モデルの効用関数がどういうように対応しているのかがよく分からない。恐らく、階層別にパラメーターを推計して、例えば16頁のCGEモデル(1)の結果を見ると、連続的になっていかなくて、高所得の段階で急に減ったりする理由はパラメーターの違いが反映されているからか。このような分析をする場合に、元になったデータの統計的有意性の評価が結果を見る際に重要になるのではないか。このような理解で正しいか確認をしたい。
- 赤井委員:産業連関分析で輸出の効果も加えていたが、輸出をしているつもりが本当は輸入の方が増えている技術や財もあるのではないかと思う。それは自動車やPVなど様々な分野で起こりうる。モデルで夢を描くことには反対ではないが、夢を描いてもその通りにはならないことは往々にしてある。きちんとした評価をやっているという外からの信頼性を高めるためにも、ポジティブ、ネガティブの両面を洗い出すべきだと思う。荻本委員もおっしゃっていたが、モデルは正しい未来予測を生み出すものではなく、入れたデータに対する結果が出てくるもの。例えば、バブル崩壊以降リーマンショックまでの状況を、モデルで一部想定できたとしても、経済情勢と比較して雇用がひどいままの世界が出現するとは誰も予測できなかったと思う。経済モデルが、GDPを予測できたとしても、雇用情勢を予測できない。そこには、いろんな意味の意思決定も働いていることも含め、モデルの限界がある。考え方のぶれで変わってくることを評価のコメントとして加えると良いのではないか。
- 西岡座長:伴委員、下田委員、松橋委員の順にお答えいただきたい。
- 伴委員 :まずグローバルな話だが、環境分野は日本が海外でも戦える分野なのではないかと思う。しかし、現実では負けている。皆さんに理解していただきたいが、よく日本企業が海外に出るのは資源流出というが、今の企業は日本とアジアを一体と考えている。単純に工場が中国やベトナムに移転したから日本がダメになることではないと考えていかなければならない。しかし、モデルにおいて海外に関しては輸出入への影響を除いてあまり考えていない。モデルの妥当性に関しては、当然なことで、いつもモデルで真実を追究できたり予測できたりするとは思っていない。我々は、頭の中で夢を追ったときにどうなるのかを考えるが、経済モデルの専門家は頭の中で考えることを具体的に式にしてコンピューターで計算する。したがって、どこをいじっているのかが全て分かる。どういうメカニズムで将来の希望が今に影響を与えるのかをモデルを通じて行っている。モデルによる分析は一つの思考実験としてすべきだと思う。経済モデルを40年やっていても当たったためしもないのは事実だが、大きくも外れない。この辺のところは皆さんも同じではないか。
- 下田氏 :地域づくりについては、どこまでどういうことができるのかは定かではないが、今回報告した分析は基本的に日本全体が対象である。ただ、同じことを当てはめて地域に対する経済波及や負担は計測したことはあるので、機会があれば取り組んでいきたい。輸出は、今回の想定は事務局にお願いして作ってもらった。輸入については現在の輸入比率を将来にも当てはめて作った。ただ、ここに関してはどれだけの輸出が発生するのかは検討する余地が残っている。産業連関分析は、ある意味数字を入れると、必ず一定の結果が出てくるものなので、御指摘のとおり、前提の数字が特に重要になる。御意見をいただきながら精査していき信頼性の高い分析を行っていきたい。
- 松橋氏 :屋井委員からのLogitモデルの質問だが、太陽光のマーケットモデルについては太陽エネルギー学会への投稿論文で統計的優位性を発表している。一般均衡モデルのなかでの家計の効用関数は、Logitではない。Logitの太陽光のマーケットは外付けで別に計算している。一般均衡モデルのなかでの家計の効用は、テクニカルにはCSという関数を用いて表現しているが、基本的には一般均衡の場合は、基準年の家計消費を説明できるような効用関数を作っている。統計的な信頼性とは違う言い方になるが、スタート時点の消費を説明できるような関数を設定している。三村委員について、地域の重要性については一国のモデルで表現は仕切れないと考えている。環境省が3年実施した一村一品の審査委員長を2年務め、地域から上がってくる代表的取組を見てきた。残念ながら取組は高く評価されなかったが、実際には、地域の人たちの心のこもったすばらしい取組だったと思っている。CO2削減だけでなく地域活性や老人福祉、子ども教育、地産地消などを、温暖化対策と組み合わせていいものが出てきたものあった。その取組を良く見ると、国の経済モデルでは表し切れないユニークなものがたくさんあった。国全体で進めるべきこと、地域の取組として進めるべきことが、両方あると思う。地域でよいものが出てきたら国も取り込む必要がある。一国のモデルをいい意味で裏切るような地域活性化と温暖化対策とを組み合わせた取組が出てくることが、日本を活性化してくなかでも非常に大切だと思う。最後に大聖委員からの車の国際競争の話だが、日本は厳しい目標に向かい低炭素化進めているが、そうなると国内市場で求められる商品と海外で求められる商品との間にずれが出てくることがある。それはいわば国内の炭素価格と海外でCO2の制約がないところとの炭素価格が経済学的に違うということになる。その際には、国際競争しているメーカーに対しては、国内外の炭素価格の違いについては何らかの形で補填する別の経済的措置も必要ではないか。国内で強く低炭素化を進めながら日本の企業の国際競争力も勘案していくことも必要ではないかと思っている。
- 増井委員:3人の先生には、それぞれモデルの得意分野を出していただいた。必ずしも整合していないし、前提条件の違いやモデル構造による違いも大きくある。来年も継続して検討するのであれば、前提の違いも考慮にいれ、ロードマップとの整合性も踏まえた分析を引き続きやっていきたいと思っている。
- 荻本委員:伴委員の資料4、22、23頁の発電量だが、2020年に石油と天然ガスと石炭がどういう割合で発電するか想定するのは難しい。再生可能エネルギーが入り、それが変動するとなると非常に難しい。日本は沖縄を含め10地域あるので更にややこしい。当たらないとも言わないけど遠くもないということで、ぜひ色々な意見を入れていただきたい。このままだとこうなると読める。こうなるとこうなるということをモデルの限界のなかでシェアしてやっていきたい。
- 西岡座長:12月に始まり、過密なスケジュールで検討いただき、ありがとうございました。日本橋ということは道路原票があるところで、いろんな街道につながっている。どの道を選ぶかは国民の選択で、ロードマップを書くのがわれわれの仕事。間違いがないようにするのが研究者の仕事になる。今後、引き続き国の方向を決める上での道しるべということで考えていきたい。
- 小沢環境大臣:皆様お疲れ様でした。一言御礼と感想、今後の対応の御報告をしたい。西岡先生はじめ、昨年の12月暮れより精力的な作業をしていただいて、聞くところ各WGが24回、全体5回、本当に精力的にやっていただいた。御尽力を賜りましたことこの場を借りて御礼したい。意見交換を聞かせていただき、心強く感じた。すべての皆様からの意見に感想は言えないが、地球温暖化対策は消費だけでなく投資と考えたほうがいい、そういう受け止め方もあるということや、日本とアジアはある意味一体だと考えていいというお話や、地域の取組は相当大きくなることで更なる展開につながるといった御指摘は、これから日本の環境政策を進めていく上で重要な考え方だった。モデルは伴先生からお話いただいた。学生時代の師匠が為替レートのモデル分析をしていたが、為替レートをしても当たるわけではないが、要するにどこをどう動かしたらどうなるのかの議論が見えることが重要だということを聞いた。伴先生のお話で、30年前に師匠から言われてことを思い出した。環境と経済成長は十分両立するというお話だと受け止めた。それが、前提条件やモデルの構造含めて、結論はどうかはまた議論いただきたいが、これまで環境政策は国民に我慢を強いることや経済生産量を下げるという話が前面に出ていたが、今回、ひとつ大きな目標を掲げることで投資が集中する、合理的機会が生まれることで投資をさらに集中させることで経済は成長するという道筋を示していただいた。画期的な中長期の検討会の皆さん方のひとつの示唆をいただいた。今後の形は決めていないが、政府のなかで環境省としての案を出そうと思っている。経済産業省などや関係省庁に参加いただいて閣僚委員会の下にどういうチームを作るのか仙谷大臣と進め方を協議している。広く国民的な議論がなされることを期待したく、そういう場を作っていきたい。専門的な研究会では先生方にさらに御活躍いただきたいが、国民的議論でも御指導いただきたい。先般19日の第4回検討会から本検討会を公開にしたところ、今日も満員御礼という話があった。御参加いただいた皆さま、ありがとうございました。先生方においては、オープンな議論でプレッシャーがあるとは思うが、私からの要請で公開を快く引き受けてくださったこと感謝したい。結論を大事にして国民的議論を作っていくことをお約束し、御礼としたい。
以上