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昭和基地の環境保全について

回想録2

 我が国観測隊が、観測を専門とする「観測部門」と基地運営を専門とする「設営部門」から構成されていることは、これまでもお伝えしてきた通りですが、「設営部門」の中に環境保全を専門とする隊員がいます。観測隊の成果として表舞台に出ることは多くないのですが、観測隊を支える大切な柱の一つですので、この場をお借りして少しご紹介したいと思います。

 環境保全隊員とは、その名のとおり、昭和基地の環境を保全するために派遣されている隊員です。その業務は非常に幅広く、隊員が日々の観測や生活で排出する汚水や廃棄物の処理はもちろん、過去に残置された廃棄物の国内への持ち帰り、さらには島内一斉清掃活動のとりまとめなど、昭和基地の環境保全を一手に担っています。

島内一斉清掃の様子

 過去に新聞記事等でも取り上げられていることから、ご存じの方もおられると思いますが、廃棄物や汚水の処理について法的規制の無かった10年ほど前までの昭和基地は、「ゴミの山」などと揶揄されるほど廃棄物が散在し、廃棄物の埋め立てや野焼きも行われていました。しかし、「環境保護に関する南極条約議定書」を国内担保する「南極地域の環境の保護に関する法律」が施行されたことを受け、近年では野焼きの禁止や汚水処理装置の導入等、廃棄物や汚水の処理について大幅な改善がなされてきました。また、法施行以前に残置された雪上車などの大型廃棄物についても、平成16年から始まった「クリーンアップ4カ年計画」に基づき、国内への計画的な持ち帰りが行われています。今年も、8台の雪上車を含む238トンもの廃棄物が復路の「しらせ」に積まれており、日本で適正に処理されることとなっています。

 このような環境保全の取り組みにより、昭和基地の環境は10年ほど前に比べると格段に改善されたと言えるでしょう。特に、環境保全隊員のモラル意識は非常に高く、各隊員に対して廃棄物の分別を細かく指示しているほか、汚水処理装置等の日常メンテナンスもしっかりと行っています。また、環境保全隊員に刺激され、各隊員も、日々の廃棄物の分別や飛散防止等には細心の注意を払っている様子が伺えました。

 しかし、その一方で、過去に残置された廃棄物のうち土中に埋め立てられたものについては、環境保全隊員によって片付く程度の問題ではなく、観測隊全体、さらには数年かけて計画的に取り組むべき大きな課題です。専門家による視察等により、昭和基地の環境の更なる改善に向けた更なる注力の必要性を強く感じました。