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シドニーに向けて北上を続けています

2008年3月16日(日)

「しらせ」を襲う荒波

 「しらせ」は、今月12日(水)から東経150度線に沿って北上を始め、海洋観測を続けながら、オーストラリアのシドニーを目指して航海中です。復路でも、昨年12月5日の日記でご紹介した「吠える40度、狂う50度、絶叫する60度」と呼ばれる暴風圏を通っているのですが、14日(金)までは船の動揺も少なく、このまま事なきを得るのではないかと安易に考えておりました。しかし、やはりそう甘くはいかず、15日(土)は終日、最大瞬間風速30m/秒にも及ぶ暴風が吹き荒れ、荒波が容赦なく「しらせ」を襲いました。このため、この日は海洋観測はおろか、まっすぐ歩くことも容易に出来ませんでした。

 幸運なことに、暴風をもたらした低気圧は15日(土)夜には「しらせ」から遠ざかり、この先もシドニーまで大きな動揺はない見込みです。しかも、幸運なことは重なるもので、復路では夜に晴れるケースが多く、北上を始めた12日(水)以降も連日のようにオーロラを観ることができました。

今次隊限りで退役する「しらせ」(昭和基地沖停泊中)

 さて、3万馬力のパワーを駆使し、1982年から25年もの間、暴風圏の荒波や凍てつく海氷を突き進み、我が国南極地域観測を支えてきた「しらせ」も、今次隊をもって退役となります。第51次隊からは、初代「宗谷」、2代目「ふじ」、3代目「しらせ」に次ぐ、4代目の砕氷艦が就役します。なお、4代目の砕氷艦は公募の結果、再度「しらせ」と命名されることが決定されているのですが、残念ながら今年11月に控えた第50次隊の出発までには建造が間に合いません。このため第50次隊は、オーストラリアが南極観測に使用している「オーロラ・オーストラリス」という砕氷船を借りて、昭和基地までの観測隊員及び物資の輸送が行う予定です。

 なお、「しらせ」は、東京・台場の「海の科学館」に展示保存されている初代「宗谷」や、名古屋港ガーデンふ頭に係留されている2代目「ふじ」とは異なり、退役後の引受先が見つかっていないため、解体される方向で検討が進められています。25年もの長い時間、観測隊員や物資を昭和基地まで送り届けてくれた「しらせ」。残りわずかとなった航海ですが、その雄姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと思います。