環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護同行日記:トップ

西オングル島

2008年1月8日(火)

 「ルンドボークスヘッタ」から戻って息つく暇もなく、6日(日)~8日(火)にかけて、地圏及び測地グループとともに、昭和基地のある東オングル島に隣接する西オングル島に行って来ました。この二つの島の位置関係等については、12月12日(水)の日記でも紹介しておりますが、まさに目と鼻の先。離れ島への移動なので今回も往復ヘリコプターでの移動だったのですが、飛行時間はわずかに4分程度。しかも、ベースキャンプから少し歩くと、自分たちが飛び立ったばかりのヘリポートが遠くに見えます。

 しかし、運命とは皮肉なもので、1泊2日で昭和基地に戻るはずが、7日(月)が風速30m/秒にも及ぶ強風に見舞われたため、ヘリコプターが終日欠航となり、8日(火)の昭和基地帰着を余儀なくされました。このような時に焦っても仕方ないので、7日(月)は終日おとなしく過ごしたのですが、あまりに風が強いためテントから遠出することも出来ず、バタバタという音のためグッスリと眠ることも出来ませんでした。

 さて、本題の仕事の話に戻りたいと思います。まず、5日(土)にもご紹介した地圏グループは、西オングル島では地温計のデータ回収及び保守点検を行いました。地温計は、地殻や海氷にどのような変動が起きているかを通年でモニタリングするために設置されている機械で、定期的なデータ回収が行われています。

西オングル島の三角点

 「測地」とは、まさに地面を測ることで、地図を作る際には必ず必要となるものです。測地グループは、昭和基地周辺や露岩域において、地図を作成する際の基準となる点の保守・点検を行っています。日本では、登山愛好家が山頂の「一等三角点」を入れて記念撮影をしたりしますが、この「三角点」が実は南極にもあります。先日野外調査を行った「ルンドボークスヘッタ」にも1974年に設置された「三角点」が現在もしっかりと残されています。ここ西オングル島にも「三角点」が設置されており、私も測地グループの保守・点検に同行しました。

第1次隊上陸地点とみられる場所

 加えて、今回は、環境省職員として私独自の調査も行いました。それは、昨年5月に南極観測事業の実施主体となっている国立極地研究所がプレスリリースを行った「第一次南極地域観測隊の上陸地点」の現地確認です(※)。「環境保護に関する南極条約議定書)」については、12月21日(金)の日記でご紹介しておりますが、議定書では、歴史的価値のある場所や物を「南極史跡記念物」として指定し、これらを破損することを厳しく禁じています。現在、「1960年に死亡した福島紳を記念して昭和基地に建てられた石塚と銘板(通称「福島ケルン」)」が、この「南極史跡記念物」の一つとして指定されているのですが、仮に、この上陸地点が歴史的価値を十分に有すると国際的に判断されれば、将来、我が国が提案する第二番目の「南極史跡記念物」として指定を受ける可能性も出てきます。国際会議の場でその価値の高さを他の南極条約協議国に対し十分に説明できるように、現地を確認したものです。

南極史跡記念物「福島ケルン」

 上陸地点は雪がほとんどなく、ほぼ全容を見ることが出来ました。プレスリリースどおり、上陸式に使用したと思われる石組みや竹竿が置いてあり、50年の観測の歴史の重みを感じました。「南極史跡記念物」としての指定する方向で検討していくことを始め、我が国南極観測事業の金字塔として、今後も大切にしていくべき場所ではないかと思いました。

国立極地研究所プレスリリース