環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護同行日記:トップ

まさに自然の造形美!

2008年1月5日(土)

大陸から落ち込む氷河

 1月2日から5日にかけて、昭和基地から100kmほど南に位置する露岩域「ルンドボークスヘッタ」に往復ヘリコプターで行ってきました。ここは、観測地点の中で最も昭和基地から遠い場所の一つで、ヘリコプターでも片道40分程度を要します。ちなみに「ルンドボークスヘッタ」とは、これまた読みにくい地名ですが、ノルウェー語で「丸い湾」を意味するとのことです。上空から見ると、南北二つの半島に挟まれた海氷が半円状に湾曲していることから、この名前が付けられたようです。

モレーンと氷河

 さて、ここ「ルンドボークスヘッタ」は、比較的こじんまりとした赤茶色の露岩域で、複数の湖沼が点在しています。そして、それら湖沼に向かって大陸からの氷河が落ち込んでおり、所々にモレーン(氷河が運んできた岩や砂の堆積地)が見られるほか、遠くには巨大な「白瀬氷河」を望むこともできます。このような自然の造形美がコンパクトにまとめられていることから、非常に美しい自然景観が形成されており、私にとっても大変印象深い場所となりました。

「白瀬氷河」をバックに環境省の制服姿で

 さて、この美しい「ルンドボークスヘッタ」では、地圏グループの野外観測に同行しました。「地圏」とは、普段あまり馴染みのない言葉かも知れませんが、簡単に言えば地球の表面や内部の動きなどに関する研究で、「地質学」や「地形学」などがこれに入ります。今回の地圏グループの「ルンドボークスヘッタ」における野外観測の主たる目的は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)観測と重力測定でした。少し科学的な説明になってしまいますが、ある場所に設置した点の緯度・経度や標高などが、どのように経年変化しているかを継続的に観測しようとするものです。例えば、仮に今年観測した地点の標高が、10年前の観測値より1mm高いとすれば、それは地球内部の地殻に何らかの動きがあったと推測されます。地圏グループは、このような地球のダイナミックな動きを解明しようと、南極地域において研究を続けているのです。

重力測定の様子

 さて、私の業務についても少し触れておきたいと思います。まず今回の地圏グループの各種観測は、鉱物の採掘は行わず、観測装置を一時的に設置するだけのものであり、それらが環境に与える影響は極めて少ないことを確認することが出来ました。また、「ルンドボークスヘッタ」には小屋が無いので、ずっとテント泊だったのですが、廃棄物の分別・持ち帰りがしっかりなされていることや、PC電源用に一日数時間使用する小型発電機からの音が、近くを流れる沢の音にかき消される程度であることも分かりました。また、「ルンドボークスヘッタ」のほぼ全域を歩いたのですが、ペンギンやトウゾクカモメなどの営巣も見られませんでした。歴代南極保全係担当者からの引き継ぎや、書類上で確認していたことについて、実際に見て確認出来たことによって、今後の業務にも大いに参考になると感じました。

ゴミの分別状況

 現地の写真を数葉添付いたしますので、はるか南極における自然の造形美や地球のダイナミックさを感じるとともに、南極という世界共通の財産に少しでも関心を持ってていただければ幸いです。