環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護同行日記:トップ

新年あけましておめでとうございます!

2008年1月1日(火)

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。私は大晦日に砕氷艦「しらせ」に戻り、観測隊員や自衛官と一緒に、楽しく年越し及び新年を迎えることができました。

 さて、早速ですが、昨年末の12月26日(水)~31日(月)、昭和基地から南に50kmほど離れた「スカルブスネス」という場所に往復ヘリコプターに乗って行ってきました。今回は、その一部をご紹介したいと思います。これが初めての南極大陸への上陸ですが、この時の感動はきっと忘れることはないと思います。

上空から見たスカルブスネス

 昭和基地のある東オングル島の対岸に広がる南極大陸は、そのほとんどが雪や氷に覆われて真っ白なのですが、所々に茶色の岩が露出した場所があり、総じて「露岩域(ろがんいき)」と呼ばれています。今回行ってきた「スカルブスネス」も「露岩域」の一つで、むき出しの岩が広がる大地に、大小の湖沼が点在しています。ところで「スカルブスネス」とは読みにくい地名ですが、やはりこれもノルウェー語です。「鵜(う)の岬」という意味ですが、実際、一面の白い雪氷の中に鵜が羽を広げたような形の茶色い大地が広がっていて、なかなか的を射たネーミングだと思いました。

湖沼観測の様子

 今回、私は、南極という極限環境において生息可能な生物の生態や遺伝的特性の研究を主な目的として行動する、観測隊生物チームの湖沼観測に同行してきました。生物チームは、「スカルブスネス」にある様々な湖沼の水や湖底の堆積物をサンプリングして、南極地域における生物の生態を解明しようとしています。私は、生物グループが実施する各種サンプリングを実際に見ることにより、アイスドリルによる氷の穴明けや湖水及び湖底堆積物の採取など、一連のサンプリング活動が南極地域の環境に与える影響は大きくないことを確認することができました。私の滞在中は、6個の湖沼でサンプリングが行われたので、毎日4時間程度のトレッキングにもなり、仕事と同時に大自然を満喫することも出来ました。

 また、「スカルブスネス」には4年前に観測隊が建てた小さな小屋があります。そこで生物チームの隊員と寝食を共にすることで、観測隊員と懇親を深めるとともに、廃棄物の分別・持ち帰りやペンギンとの隔離距離(5m以上)の確保など、各隊員が基本的な環境への配慮事項をしっかり遵守していることが分かり、大変有意義なものとなりました。また、観測活動により鳥類が卵やヒナを放棄してしまうような悪影響は見られず、むしろ少人数の観測隊パーティなどに臆することなく、極限の地でたくましく生きている鳥類の姿も確認することができました。

トウゾクカモメも子育て中

 この「スカルブスネス」には、トウゾクカモメやアデリーペンギン、ユキドリといった鳥類が多く生息しており、どれも短い夏を利用した繁殖の真っ最中です。アデリーペンギンのヒナなどをエサとするトウゾクカモメも、自分達のヒナのために必死でエサを取ろうとしており、まさに食う側と食われる側の命を賭けた攻防が繰り広げられていました。「ペンギンのヒナがかわいそう」と思ってしまうかも知れませんが、トウゾクカモメもエサが取れなければ絶滅してしまいます。冷酷かも知れませんが、ここは動物園ではなく、全てが自然なのです。ここ南極では、このような自然の営みが、人間が辿り着くはるか昔から行われてきたのですね。人間の存在が、自然の中ではちっぽけであるということを改めて感じた毎日でした。