南極での仕事について
ラジオ体操で始まる昭和基地での毎日
日本では週末3連休となった方もおられるかと思いますが、こちら昭和基地では、週末も平日も関係なく仕事が進められています。というのも、12月から2月という、非常に限られた夏期間の中で、南極地域観測隊員は、観測活動や基地の設営工事に関して、様々な業務をこなさなければならないためです。また、去る23日(日)はブリザードとも言えるようなレベルの風と雪に見舞われ、野外での作業は見送られました。その分を取り返そうとしてか、一日中太陽が沈まないという利点(?)を活かして、夕食後に再度仕事に戻る隊員も増えてきました。また、自分が担当する仕事に余裕のある時には、他の隊員を積極的に支援するなど、観測隊が一丸となって毎日頑張っています。腕利きの調理担当隊員が栄養バランスのとれた食事を提供し、万一の時には医療担当隊員がスタンバイしているとはいえ、各隊員は自分の健康を自分で守りながら、多忙な仕事と毎日向き合っています。まさに、「自分の健康は自分で守る」という当たり前のことが、普段の仕事や生活の中で常に求められているのです。私も、他の隊員に迷惑を掛けないよう、しっかり自分の健康を維持していきたいと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、今日は、環境省職員たる私の仕事について、少しご紹介したいと思います。21日(金)の日記で、「環境保護に関する南極条約議定書」と呼ばれる国際約束を守るために、我が国が「南極地域の環境の保護に関する法律」を施行していることについて少し触れました。環境省職員は、第一義的には、法の適正な執行状況を視察するため、南極地域観測隊に同行しています。実は、日本国民が南極地域(南緯60度以南の陸域及び海域)に入る際には、原則として、環境大臣による事前の「確認」を受けなければなりません。南極地域での活動計画を環境大臣に示し、その活動計画を環境大臣が「確認」しなければ、南極地域に入ることはできないこととなっているのです。これは、国家公務員たる隊員であっても同じことで、12月3日(月)の日記でご説明した「南極地域観測統合推進本部」の責任者である文部科学大臣から環境大臣に対して、観測隊全体としての手続きが一括で行われています。環境省としても、「確認しっぱなし」ではなく、隊員がきちんと活動計画に沿って仕事を行っているのか、隊員の仕事を現地で確認します。とはいえ、いわゆる「お目付役」というのではなく、むしろ、各隊員がきちんと法に則って作業をしていることを、この目で確かめることに、環境省職員が現地まで同行する意義があるのではないかと思ってます。このため、昭和基地や南極大陸各地で行われる観測活動や設営作業に同行し、その状況をつぶさに見て回っています。
魚を狙うトウゾクカモメ
また、今後様々な活動計画が環境大臣に対して示されることを想定し、事前に南極の環境に関する情報を自ら収集しておくことも、重要な任務です。例えば「ペンギンを大量に日本に持ち帰りたい」とか「大量の石を採掘したい」などといった申請があった場合などに備え、それが「確認」してよい程度の行為なのかどうか判断するための材料を事前に集めておくのです。仮に、その行為が環境に重大な悪影響を与えるようなものであれば、環境大臣は拒否しなければなりません。このため、植物の生育状況や動物の分布状況など、ありとあらゆる環境に関する情報を広く収集することも、私に与えられた使命です。
今日ご紹介した内容は、私が従事する仕事のうち最もベーシックな部分ですが、もっと様々な仕事を行う予定ですので、順次ご紹介してまいります。なお、明日から5泊6日、「スカルブスネス」という場所で行われる生物チームの野外調査に同行する予定です。この間昭和基地には戻らず、ずっと野外で生活しますので、年内の日記更新は出来ない見込みです。また、年明けにお会いしましょう。それでは皆様、よいお年をお迎えください。