II. 地球温暖化対策を総合的に推進し、京都議定書に定める排出量の削減目標を達成するために

1. 京都議定書の基本的仕組み

 京都議定書の基本的仕組みは、次のとおりである。

(1)対象ガスについて
 対象ガスは二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、さらに、HFC、PFC、SF6の合計6種類のガスである。

(2)目標について
 目標は、第1約束期間となる2008年から2012年までの5年間の温室効果ガスの二酸化炭素換算による合計排出量が、1990年の実績値(HFC、PFC、SF6の3ガスについては、1995年の実績値とすることができる。)の5倍量に京都議定書の附属書で各国毎に定める率(例えば、日本は94%。)を乗じた値を超えないことである。 (注)このような日本の削減目標について、この中間答申では、以下「2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減」というように簡単に表記する。
 (注) 各国の削減率(京都議定書附属書で定める値から100を引いたもの)
米国−7%、EU−8%、カナダ−6%、ロシア0%、豪州+8%、
ニュージーランド0%、ノルウェー+1% 等

 京都議定書では、条約附属書I締約国(旧ソ連、東欧を含む工業国)全体の削減量は、2008年からの5年間の温室効果ガスの二酸化炭素換算による合計排出量が1990年の実績値の5倍量に比べて少なくとも5%以上の削減になるようにすることが定められている。

(3)目標数値の算定方法について
 目標数値の設定に当たっては、IPCC「気候変動に関する政府間パネル」(国連環境計画(UNEP)及び世界気象機関(WMO)により設立された機関。)が定める100年地球温暖化係数が用いられる。6種のガスの量を、この係数により二酸化炭素に換算して合算した値に基づいて、目標値が定められている。
 (注) 各物質の地球温暖化係数
二酸化炭素 1、メタン 21、亜酸化窒素 310
HFC134a 1300、PFC14 6500、SF6 23900

 目標の遵守状況の評価は、6種のガスの排出量の「総量」ではなく、限定された範囲の人為的活動により増減した森林の吸収量を計算し、それを控除した「純」排出量を用いて行われる。なお、控除する吸収量に係る活動の範囲の定義については、京都議定書では限定的なものとなっているが、COP4以降更に検討することとなっており、その検討の結果を踏まえ、京都議定書の第1回締約国会合でその範囲の拡大が決定される可能性がある。

(4)その他
 目標は、現行条約上の2000年安定化目標が努力目標であったことと異なって、法的拘束力のある目標である。また、その達成のための方策として、京都議定書には、温室効果ガスの排出量の削減及び吸収量の増大に関する国内における措置のほか、排出量取引、いわゆる共同実施及びクリーン開発メカニズムといった、他国における削減量を算入する国際的な措置が定められている。
 (注) 排出量の取引 : ある附属書T締約国が割当量を越えて排出削減を達成した場合、その超過分を他の附属書T締約国に(有償で)譲り渡し、譲り受けた国の削減量に繰り入れる制度。
いわゆる共同実施 : ある附属書T締約国で排出削減をもたらす事業が行われた場合、この事業によって生じる排出削減量を、他の附属書T締約国(例えば当該事業への投資国)の削減量に繰り入れる制度。
クリーン開発メカニズム : 途上国自らが排出削減等の事業を行い、この事業によって生じる排出削減量を国際的にチェックした上で、附属書T締約国に(有償で)譲り渡し、その国の削減量に繰り入れる制度。

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